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私は魔王だけど、勇者に狙われないために早くバージンを捨てます!  作者: さいとう みさき
第四章:導かれて
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4-3:魔を狩る者

勇者が亡くなった。

そして勇者がいなくなると、魔王がどこかで復活するとささやかれている。


普通の街娘、ラーミラスはある朝おへその下あたりに違和感を感じて慌てて起きる。

そして服を脱ぎ、裸になってそこを確かめるのだが……


「なんで私に魔王軍の紋様が!?」


魔王は勇者にバージンを奪われて従順な下僕と化してしまう。

それを回避するには、完全に魔王化する前にバージンを捨てて魔王に成らないようにするしかない。

果たして、ラーミラスは魔王に成る前にステキな旦那様を見つけることが出来るだろうか?


「こんな所に魔族がいるとはな!! そこのエルフ、ガキ退いていろ!!」



 その男の声はそう言っていきなりラーミラスの前に飛び出て来た。

 年の頃三十路過ぎ。

 あからさまに冒険者の様な格好をしているが、その肩にはめられている肩当を見たロランは驚きの声をあげる。



「まさか! ローラルド王国の聖騎士団か!?」


「ああそうだ! 今は辺境の巡回中だがな、魔族は見つけ次第叩き潰す!! うらぁっ!!」


 そう言ってその男は槍をラーミラスに突き付けて来る。

 それをラーミラスは何と言う事無く人差し指と親指でつまむ。



 はしっ!



「何よ、いきなり攻撃とは穏やかじゃないわね?」


「ちっ、俺の槍をこうも簡単に! てぇめぇっ、上級魔族か!! だがっ!!」


 ラーミラスは少し面倒になって動かなくなるくらいに痛めつけようかと考えたその瞬間だった。

 その男は手に持つ槍の柄をグリっとねじって前後に開くとそこに宝玉が現れる。

 そしてその宝玉が輝き始めると、ラーミラスのつまんでいる槍の先が輝き始める。



「あつっ!」



 ラーミラスはそう言って慌ててその槍の先を放す。

 そして見れば指先が少し焦げている。



「魔族専用の武具だ! てめぇら魔族の魔素を分解する! さぁ、とっとと魔素に分解してやるぜ!!」


 そう言いながら槍を振り回しラーミラスに突きたててくる。

 だが、ラーミラスは焦げた指先をフーフー吹いていて全くの無防備だ。



「お姉ちゃん!!」


「ラーミラス!!」



 その切っ先が光る槍にアルスもロランも焦るも、ラーミラスは全く動じずその切っ先を爪を伸ばして弾く。

 だがその弾かれた切っ先はすぐに引かれてまた突きを繰り出される。

 ラーミラスはそれも伸ばした爪で弾きしばしその攻防が続く。



 ガッ!

 ガガッ!!



「くそっ!!」


「まったく、その槍って熱っついのよ! 火傷しちゃうじゃない!!」



 その攻防は一見均衡を保って見えたが、ラーミラスにはまだまだかなりの余裕があるように見える。

 ラーミラスは怒涛の突きをただ爪で弾くだけで、一度も攻撃をしていない。



「ちくしょう! ならばっ!!」



 男はラーミラスにその槍が届かないとわかると、一旦大きく引き下がる。

 そして懐からペンダントを取り出し、それを槍に装着する。

 ペンダントが槍のスロットにはめ込まれ、輝きを増すと同時に、槍の先端が更に輝きを増し光の刃が成型され、その矛先が数倍の大きさになる。



「喰らえ、ホーリースピアっ!!」


 

 彼はそう叫びながら爆発的な踏み込みで渾身の一撃を打ち込む。

 それは輝きを放ちながら、切っ先をラーミラスのそのたわわな胸にめがけ打ち込む。



 カッ!



 ぎがぁごがぁがりがりがりがり!!

 パキーン、パキーンっ!!



「あっぶなぁ~。爪が数本折れちゃったじゃないの。これまともに食らっていたら流石に危なかったわね」


「なっ!? バカなっ! 聖清石を使ったのだぞ!? 上級魔族でも一撃で葬れるものだぞ!?」


 ラーミラスは両の手の爪をクロスさせてその一撃を受け止めている。

 数本の爪が折れたがガリガリと音を立てて未だその矛先はその威力を止める事が無くラーミラスを襲おうとしている。



「だが聖なる光は貴様ら魔族を蹴散らす! 死ねぇっ!!」


「もうっ! 死んだらごめんなさいね!!」



 彼が更に踏み込みに力を入れようとして槍先の聖なる輝きを更に更に輝かせる。


 が、ラーミラスはため息交じりにそう言ってクロスさせていたのびた爪をばっと開き、手の平を見せる。

 そして次の瞬間何の前触れも無しにそこに魔力の光を輝かせる。



「へっ!?」



 切っ先が開かれた手のひらに触れる前にその魔力の光が放たれ、彼は一瞬でその光に飲み込まれる。


「なっ! ば、バカなぁッ!? 聖清石だぞ!? 女神様のお力を受けた物だぞ!? それをっ!」



 カッ!


 どごぼがぁああああああぁぁぁああぁぁぁぁぁああああぁぁぁんんっっっ!!!!




「うわっ!」


「ラ、ラーミラス!!」


 その一撃は彼を完全に飲み込み、周りの大地をえぐり、後ろにあった峰を削り取って空高くまで飛んで行き、消えた。


 が、えぐれ焼け焦げた大地に一つの影が残っていた。



「はぁはぁはぁ、なんて化け物だ……、聖騎士団の肩当が無かったら消し飛んでいた。貴様、一体何者だ!?」


「ふ~、良かった。死んでなかったみたいね。あれで死なれたらちょっと寝ざめが悪くなるものね。私はラーミラス、錬金術師よ。今はこんな成りだけどれっきとした人間よ? ちょっと魔族になりかけてるけど、人間だからね?」


「そ、それだけの力を持って人間だとぉ? 魔族になりかけてるだとぉ? ふざけるな! 我がローラルド王国の十二個しかない聖なる武具を持ってしても倒せぬは魔王位なものだ!! って、ちょっと待て…… 確か勇者は死んだ…… だが魔王は魔王城に幽閉されているはず…… まさか、魔王も死んだのか? と言う事は貴様は……」


 彼はよろよろと立ち上がりながら油断なくラーミラスを睨みつける。



「貴様が次の魔王か!?」


「ちっがーぅうわよっ! 私はまだ魔王に成ってないぃっ! れっきとした人間よ!!」



「くそ、こんな所で魔王に出会うとは……」


 そう言って彼は悔しそうにその場に倒れる。



 どさっ!



「え? あ、ちょ、ちょっとっ!!」





 それを見たラーミラスは慌てて駆けよるのだった。 



面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*読んで頂きありがとうございます。大変申しわけございませんが本作は不定期更新となります。どうぞご了承いただけますようお願い致します。


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[気になる点] >クロスさせていたのび太爪をばっと開き、手の平を見せる。  あやとりでもするのかな? >我がローラルド王国の十二体しかない  十二体って、生き物とかロボとかそんなのですかね?
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