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【完結】幼馴染と異世界転生ライフ! ~幼馴染はヤンデレ女神で、俺は女神専用の最強ペットで~  作者: 茉莉多 真遊人


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15. 命ずる最強ペットと遂行するゴーレム(前編)

 俺はドラゴンのような巨大な飛行生物に変身した後、リシア、エベナ、ラピスを乗せて空を飛び、すぐにマイの囚われているであろう場所に辿り着いた。周りの空気が澱んでいるのか、空気や土の雰囲気など全体的にじめっとしており、陽の光もあまり届かないような暗い場所だ。


 それと木々から垂れ下がるつたのようなものが風もなく動いている。


「まさか」


「ラビリスアイノスと」


「目と鼻の先くらいだとは……」


 3人が驚くのも無理はなかった。


 マイの囚われていた場所は意外にも、ヒト族の領土ではなくて大森林から少し離れた場所に小さな森があり、名前からして卑猥(ひわい)な「触手の森」という通称がある森の中にある奥底までが長めにある洞窟だ。木々から垂れているのは近付く者を捕える種類の触手であり、男女関係なく捕える性質がある。


 まあ、18禁の世界観なのでそれ以上の話もあるが、ここでは割愛しておく。


 それよりも何よりも、大森林近くという事実が痛いところを突かれた感じだ。


 もし俺が怒りのままにヒト族の方へと向かっていたら、いつまでも見つからなかっただろうし、ヒト族をほぼほぼ根絶やしにしてしまって、そこでゲームオーバーだったに違いない。


 リシアには感謝しないとな。


「ああ、マイの匂いがする。早く助けないと……さて、強行突破するかどうかだが……」


 俺は【神視する玉座(ヘヴンアイズ)】で見た光景に安堵し、さらに、ゾウの獣人へと変化してマイにプレゼントしたネックレスに鼻を近付けてから、周りの空気に匂いを嗅ぐ。


 マイだ……マイの匂いがする。


 俺が確信を得て3人に相談しようとしたとき、すかさずリシアが話を止める。


「……カイ様……ちょっと待ってください。女神さまのその……臭いがすると分かるのですか?」


 何を言っているんだ?


 リシアの曇り顔に、俺はきょとんとした顔で見つめていると思う。


「もちろんだ。この一か月、どんだけ全身をくまなく嗅いだと思っている」


「カイ様、すみません。その力説はちょっと……」


「え、ダメ?」


「ちょっと……生理的に無理ですね……」


「生理的に無理か……」


 さすが、魔弾のリシアだ。


 俺の心の正鵠(せいこく)を的確に狙ってグサリと抉ってくる。


 リシアは一番コミュニケーション力が高く、よく話し相手になってくれるが、その分というか的確過ぎるが故にたまにきついときがあって、辛さを感じるときがある。


 無理って言われるのがどれだけ辛いか、俺は身に染みて理解した。マイにきちんとその時のことを謝らないといけないな、と改めて感じる。


 まあ、無理と生理的に無理は全然違う気もするが。


「それと、女性の臭いがどうとかは……カイ様……ちょっと……変態っぽい……」


「変態か……もうちょっとこう手心というか……」


「すみません、変態を変態としか表現ができず……」


 さすが、破壊のエベナだ。


 俺の当然だと思っていた常識を破壊した上で、俺の自尊心や立場さえも破壊している。


 変態を変態としか表現できずに申し訳ない、って言われる側が辛すぎるだろ。


「そうか……気を付けよう……というか、言う時は意外と言うんだな……俺、変態って言われてちょっと傷付いたんだけど……」


 俺が「傷付いた」まで言うと、エベナがあせあせしながら焦り始めたので許すことにした。エベナは一番、ぶっきらぼうというか、俺にダイレクトに伝えてくる感じで、それ故に、俺が何気なく返す言葉にも一番真面目に聞き入ってしまうタイプだ。


 普段中性的な澄まし顔の女の子が焦るのって、ちょっといいよね。


「先ほど私たち、特にリシアだったけど、感情をぶつけてもらったので、カイ様と私たちゴーレムとの仲良し度が上がったの♪」


 さすが、堅牢のラピスだ。ラピスがエベナから話を引き継いで話しかけてくる。ラピスはちょっと幼い容姿なこともあり、妹的な雰囲気で話しかけてくることもある。


 さらには、エベナがしてしまったミスをリカバリーに走ることが多く、まるで近接攻撃職のエベナの隙を近接防御職であるラピスが精一杯食い止めているかのようだ。


「え、仲良し度? 初めて聞くし、そもそも、怒りをぶつけても仲良し度が上がるのか?」


 それよりも気になったのは、仲良し度という初めて聞く単語だ。


 もう1か月くらい異世界で生活していて、「仲良し度」という恋愛シミュレーションに出てくるような単語に初耳なのはなぜだろうか。もしや、浮気の原因にならないようにマイが情報隠匿を図ったのかもしれない。


 まあ、当の俺としては知りたいような知りたくないような微妙なパラメータだ。俺がマイ一筋であるためには、仲良し度を上げ過ぎてはいけない気がしている。


「はい。私たちはプラスやマイナスに関わらず、カイ様から与えられた感情を糧として感情表現の度合いが増します」


「あ、そういうもんなの?」


 プラスとマイナスって、真逆だけど、ゴーレムの成長に影響はないのだろうか。明るく朗らかで元気なゴーレムにするためにポジティブである必要があるなら、そう心がけないといけない。


 まあ、ちょっとネガティブの影響で反抗期的なゴーレムを見てみたい気もするが……。


「ちなみに、仲良し度が上がると、砕けた言葉のバリエーションとやってもいいことが増えるよ♪」


 仲良し度……さっきは上げ過ぎてはいけないと思ったが、部下とのコミュニケーションにおいて、仲良しな方がいいだろう。


 しかし、やってもいいことってのはなんだろうか。


「仲良し度はともかく、やっていいことって?」


「たとえば、夜に——」


「はい、最初の一言目でだいたい分かりました! もう言わなくていい! それ以上は言わなくていい! それは解禁せずに封印だ! だいたい、そんなことマイが許さないし、そもそも、今、マイがピンチな時にそんな話題を出すのは不謹慎じゃないか!?」


 ラピスの言葉を遮って俺は場を制するように話し始める。


 すると、ラピスが俯き加減でムッとしているような雰囲気を俺にぶつけてくる。


「むぅ……カイ様に聞かれたから答えただけなのに……」


 ラピスが怒っていることを露骨に見せてくるのはだいぶ成長した感じがするぞ。ラピスが妹的な感じもするからか、そういうちょっとした変化でもちょっと嬉しくなる。


 それはともかく怒られているから謝らないとな。


「……そうだな……ごめん……俺が悪かった……」


 俺は謝りつつも、ちょっとずつ、3人の違いが性格でも明確になってくる今の雰囲気が好きになっていた。その気持ちが、マイを取り戻して……ちゃんとした日常に戻るぞ、という強い意志へと変わっていく。


 そんな感じで3人と仲良くわいわいとしていると、ふと、リシアが何かに気付いたように俺に伝えてくる。


「……あれ? そう言えば、嗅覚が良い犬や象になれるなら【神視する玉座(ヘヴンアイズ)】がなくとも女神さまの臭いを辿っていけたのでは?」


 ……あ。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 しばしの沈黙。先ほどは誰もが一番分かりやすいスキル【神視する玉座(ヘヴンアイズ)】を思い浮かべて話をそちらの方へと盛っていったが、俺の特殊性も含めて、できることを洗い出した方が良かったかもしれない。


「まあ、結果的に俺の【超変身】に秘められた能力を1つ開花できたからいいんじゃないかな。いや、そもそも転移魔法的なものがもし存在していたら、ほら、そういう匂いで追いかけることもできなかっただろうし!」


 俺のフォローと言うか力説に3人も肯いていた。


「そうですね」

「そうですね!」

「そうですね♪」


「ありがとう……」


 こうして、俺たちはいろいろと再確認をしながら、マイの囚われている洞窟へと真正面からぶつかることにした。


 俺やリシア、エベナ、ラピスの3人が洞窟の前まで近付く。


 すると、洞窟の奥の方からぞろぞろと武装したヒト族がやってきた。武装もフルプレートのがっちりした相手から身軽な軽装で済ましている者までいろいろといる。


「くそ! やはり、来たか!」


「敵襲!」


「相手はたった4人だ!」


「数で圧倒するぞ!」


 さらには、その後ろから魔法使いみたいなローブを羽織ったヒトまで現れたので、この世界でほぼ初めて実戦的な魔法が見られるかもしれないと少し期待してしまう。


「やはり? まるで知っていて出迎えてくれたみたいだな。さて、今回は俺たちがタワーディフェンスを攻略する側だな」


 たまに思っていた。


 この最強の力を防衛ではなく攻略に使ったらどうなるのか、と。


 力加減は大変そうだが。


「女神の飼う化け物め……ここからは一歩も通さんぞ!」


 結局、数十人くらいが洞窟から出てきて、戦闘態勢に入り始めるが、遅い。俺やリシアたちが突っ立っているから間に合っているだけだ。このまま突っ切れば、相手の準備不足で蹴散らせそうだ。


 あと、これで確定した。マイは中にいる。


「なるほど……確定だ。一応訊ねるが、貴様ら……どうして女神さまを攫った?」


 俺は問う。


 だが、それに言葉できちんと答えようとする者はいなかった。


 代わりに寄越してきたのは、俺への明確な敵意だ。


「ヒト族の繁栄のために!」

「ヒト族の繁栄のために!」

「ヒト族の繁栄のために!」


 ヒト族の繁栄、ね。マイを独占しようってことは、ヒト族「だけ」の繁栄なんだろうな。

しかし、真意は問いたださないといけない。


 きっと奥に親玉がいるだろうから、そいつと話をするしかないな。


「末端では話にならないな……女神さまの下へ進ませてもらうぞ」


 俺が1歩前に出るとすぐに、後ろから声が掛かる。


「カイ様」

「カイ様!」

「カイ様♪」


 リシア、エベナ、ラピスが俺を呼び止めたので、俺は頭だけを3人に向ける。


「ん?」


 そこには眩しいくらいに目をキラキラと輝かせていた3人がいた。


「ここまで連れて来ていただいたのですから、どうか私たちに命じてください」


 なるほど。3人が露払いをしてくれるということか。


 なら任せよう。


「そうだな。では、リシア、エベナ、ラピス……道を拓け。ただし、殺すな。だが、徹底的にぶちのめせ!」


 もっといろいろとカッコイイセリフを考えてみたけれど、シンプルで分かりやすいものにした。

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