表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
屍食い少女は永遠の塔を登る  作者: 雪野湯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/25

第22話

 私が答えを返すと、女の人は短く驚いた声を漏らしました。

「え?」


「私の今の楽しみは、色んな美味しいを知ることですから」

「あら、そうなの? だったら、その美味しいのために――」


「はい、そのために命を奪う必要もあるでしょう。でも、あなたは命を奪うこと自体が楽しいんです。だから、全然違います」


 伸ばされた手を見つめていると、胸いっぱいに嫌な感情が満ちます。

「あなたは私にとって嫌な存在。そして、危険だと思われる存在。私の美味しいを邪魔する存在。だから、いらない」



 私の右手に錆びたナイフが宿ります。綺麗なナイフの方が切れ味が凄いですが、でも、ずっと一緒だったこの子の方が愛おしいです。

 愛おしい? 不思議な感情。

 どこから湧いたのでしょうか?

 

 私は女の人を見ます。

 女の人を見ていると、色んな感情や……知識が頭の中に……。

 嫌な人だけど、この人は必要。だけど、全部はいらない!


 私は錆びたナイフを手にして、女の人へ襲いかかりました。

 女の人の動きは緩慢で、まるで力を制限されているかのようです。



 ですので、私のような子どもでも簡単に――お肉にできます!!

 首を切りつけて、腹を刺し、心臓を穿ちました。

 女の人はなかなかしぶとくナニカを叫んでいましたが、そんなもの無視して、腹部の傷口から指を差し入れて、おなかから柔らかな中身を取り出します。


 柔らかなこれは……肝臓だ! そうだ、これは肝臓。今まで名前なんて知りませんでしたが、今ならわかります!


 肝臓をパクリと食べました。

「~~~~~~~~!! 美味しい~~!!」


 塔で騒がしかった人たちも美味しかったですが、この女の人はもっと美味しいです。

 あまりの美味しさに、我を忘れて貪ります。

 女の人は時折、「ちが」とか「だで」とか言っていましたが、やがては何も言わなくなりました。

 お腹に詰まっていたものを全部食べてしまいましたが、まだまだ空腹は満たせません。

 

 私は女の人の頭を見ます。

「脳は甘い味」

 錆びたナイフの固い柄の部分で頭を何度も叩きます。

 大人のお父さんでも、脳を取り出すのは大変な作業でした。


 ですが、今の私の体には信じれないほどの力が湧いて、いとも簡単に頭の骨を叩き壊してしまいました。

 血に染まり飛び出たピンク色の脳みそ。そう、これはピンクの色。色の名前も思い出しました。

 ピンクを口に入れてます。



「ふあぁぁああ~、あま~い……」



 その甘さは透明な液体――お水よりも、乾パンよりもずっと甘いもの。

 私はさらに頭蓋骨を叩き割り、脳みそを啜ります。

「ずず、ずずずず、ずず~、美味しい! もっと、もっと、もっと美味しいを!!」


 ここで、真っ暗だった世界が真っ白な世界へと変わりました。

 私は眠っていたベッドから起き上がり、半端に終わった甘いに不満げな表情を浮かべます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ