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屍食い少女は永遠の塔を登る  作者: 雪野湯


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第21話

 しわくちゃの人と男の人に袋を取り上げられました。

 大切な食べ物なので抵抗しましたが、別の男の人たちがたくさん現れて、それは叶いませんでした。

 私はもったいないけど涙を流してしまいます。


 すると男の人が、あとでもっと美味しい物をくれると言ってくれました。

 

 だから、涙を流すことをやめて、男の人としわくちゃの人の後について行くことにしました。


 二人に連れられて、分厚いナニカで仕切られた真っ白な部屋へ入れられます。

 そこはあまり広くありませんでしたが、部屋の真ん中に柔らかそうな段差があって、そこに寝転ぶように言われます。

 とても柔らかくて気持ちいいです。


 しわくちゃの人と男の人は外に出て、分厚いナニカを閉じます。

 そして二人は、真っ白な部屋の向こう側……透明な板を挟んだ別の部屋に姿を現しました。


 私に向かって、しわくちゃの人が話しかけてきます。正面にいるのに、どうしてか天井から声が響いてきます。

「これは安全措置だ。何が起こるかわからないからな」

「はぁ?」

「よくわかっていないようだな。まぁいい。では、囚人番号37564の人格データの準備を。この娘が自分を取り戻している間に、通信の不具合の原因及び退行刑などの各種エラーについて調べろ」


「はい。あ、君はそのまま目を瞑って、時期に眠くなるから」

「わかりました」



 目を閉じます。すぐに眠気が瞼を包んで、私は眠ってしまいました。



――暗くて何もない世界……そこに誰かが立っています。

 それは大人の女の人です。


 女の人は私に笑顔を向けてきました。


「フフ、ようやく私が私になるというわけね。しっかし、私って小さい頃こんな感じだったかしら?」

「あの、あなたは誰ですか?」

「私はあなたよ」

「いえ、違うと思います」

「そう? でも、私とあなたよく似ているじゃない」

「どこがですか?」



 女の人は暗いお空に向かって両手を大きく広げます。

「無垢なところよ!」

「無垢?」

「そう、あなたは塔を登ることに無垢で、そのために他者の命を奪うことにためらいがなかった」

「はぁ?」


「私も同じ! 他者の命を奪うことに無垢なだけだった。私の両手から零れ落ちる命の温かさは私を酔わせてくれる!」


「言っている意味が分かりません」

「フフフ、あなたは塔を登ることに無垢で、そのために命を奪う。私は酔うことに無垢で、命を奪う。だから同じ!!」

「そう……なんですか?」


「ええ、そうよ。フフ、私が私を取り戻したら、まずは演技ね。あの二人を騙さないと。善性に染まり、罪に怯える私を演じる。本当の自由を得るために」


 女の人が私に手を伸ばしてきます。

「さぁ、手を握って。あなたと私は一つになる。私とあなたは一つになる」


 この女の人と一つになることが、私に必要なことなのでしょうか?

 それならばそうしますが、疑問が残ります。



「あなたにとって、楽しいとは何でしょうか?」

「それは酔うために他者の命を奪うこと。あなたは塔を登るために命を奪うこと。そうでしょ?」

「いえ、違うと思います」

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