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屍食い少女は永遠の塔を登る  作者: 雪野湯


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第19話

「うわぁ~」


 透明なナニカに覆われた道の先に広がる暗い色のお空。

 そこには光るナニカでいっぱい

 そして、透明なナニカの下の方には、でっかく丸くて灰色のナニカがいました。

 それはあまりに大きくて、何なのかさっぱりわかりません。


 ですが、エレレーターと繋がっているようなので、もしかしたら、あのでっかくて丸い灰色は私がいた場所なのかもしれません。

「私は、私のいた場所から飛び出した? ここはお空よりも高い? それじゃあ、どこなんだろ?」



――ここは宇宙と呼ばれる場所だ――



 しゃがれた声が聞こえてきました。

 私はびっくりして、体を声へ向けます。

 透明なナニカに覆われた道の向こうから、白いナニカに乗ったしわくちゃの大人の人と、自分の足で歩いてくる大人の男の人がいます。

 しわくちゃの人が乗る白いナニカからは足が生えてませんが、どうやって歩いているのでしょうか?



 しわくちゃの人と大人の男の人は私の前で立ち止まり、しわくちゃの人がしわだらけの眉と眉と間に、もっともっとたくさんのしわをつけています


「永遠の塔を攻略した者が現れたと聞いて訪れてみれば……子どもだと? どういうことだ?」

「わかりません。塔及び惑星については地上の管理システムに任せていますので……もしや、下の者が生殖活動を行ったのでは?」

「馬鹿を言え。そのようなことあってたまるものか。あったすれば、この子に罪はなく、ただ苦しめただけになるぞ」

「たしかに。とにかく、確認してみます。え~っと、以前に下から送られてきた囚人データによると……」



 男の人は透明な板を見つめています。透明だから私にも男の人が見ているものが見えます。どうやら、ナニカの絵と睨めっこしているようです


 絵を見ていた男の人は難しそうな顔を見せました。

「囚人番号37564? そんなはずは……?」

「どうした?」

「いえ、囚人データによりますと、この子は元科学技術士官であり、快楽殺人者です」

「こんな幼子がか?」


「え~っと、ちょっとお待ちください…………ああ、なるほど」

「何かわかったのか?」

「ええ、記録によりますと。実年齢は27歳の女性で、退行刑とセットで永遠の塔に送られたようです」

「退行刑……肉体を子どもへ戻し、無力な存在として永遠の塔へ? そんな報告、聞いた覚えはないぞ?」


「ですが、記録ではそうなっています」

「馬鹿な……おい、そこの娘。お前は自分のことを知っているか?」


「私のことですか? 私は私です」

「過去のことを聞いている。ここに来る前に何をしたか覚えているか?」

「ここに来る前は、お父さんとお母さんに手を引かれて塔に向かっていました」

「記憶が戻っていない? それどころか、お父さんとお母さんだと?」



 しわくちゃの人は、男の人に顔を向けました。

 すると、男の人はこう返します。


「子どもを見つけた囚人が、家族ごっこをしていたのでは?」

「そのようなわけ……しかしだ……まぁいい。ともかく、娘の様子からして、何も覚えていないようだ」


「おそらくですが、前例にない処置のため、塔に登る途中で行われるはずの記憶再生がうまく機能しなかったのでしょう。つまりはエラーです。現状でも、地上の管理システムと通信が途絶えてますし」


「それでは意味のない罰になってしまったな。塔を登るという、意味のない行為に意味を見出すだけの存在。削げ落ちていく気力の中に、思念波を送り、善性を刷り込む。そこへ過去の罪を脳へ投影し、苦しみを味わわせる刑罰。目的のために死肉を()み、乗り越えるという狂気もまた罪として……」


「ええ、塔に登りついても、塔を登るという欲求と善の狭間でひたすら選択肢を与え、心を痛めつける刑罰。やがては善性である心に従い、自ら塔を降る者へと変わり、下へ戻れば記憶を消され、また塔へ登る者となり、塔の中を永遠に彷徨い歩く」



 しわくちゃの人は腕を組んで、大きなため息を吐きました。


「しかし、今回のエラーによって、登る者と降る者を余興としていた連中は皆殺しに。あれらは屑どもだが、大切な出資者だったのだが…………なぜ、登る者が己の欲望に従った場合の処置がなかったのだ?」

「前例がないからです。いえ、システム上、あり得ない出来事というべきでしょうか」


「ふむ……前例のない退行刑のせいで、奇妙なエラーが起きた? いや、有り得ん! これについてはしっかりと調査せねば」

「ええ、それには同意ですが……その前に、この子はどうします?」



 男の人が私を見ます。それに合わせるように、しわくちゃの人も私を睨みつけてきます。

 私はなんだか怒られているような気がして、おっかなびっくりに尋ねました。

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