第16話
ぐるぐるの階段。そして、すぐに通せんぼするナニカ。
ナニカから生えている突起物を回して、中へ。
中は真っ暗で、部屋の中央にだけ明かりがありました。
その明かりの中に変な人がいます。
顔を真っ白なナニカで塗りたくって、その上に変な絵を描いている人。鼻には真っ赤で大きな丸い付け物をしていました。
たぶん、男の人だと思いますが、彼は明るい声で話しかけてきます。
「おめでとう! よく、ここまで上がってこれたね!」
「はぁ? ここが塔のてっぺんなんですか?」
「いや、違うね! ここは少し手前の場所さ!」
「でしたら、私は上に向かわなければなりませんので」
そう言って、真っ暗な部屋のどこかにぐるぐるの階段がないかなと、探そうとしたところで、変な男の人は部屋中に声を響かせました。
「待ちなよ! ここは君をお祝いする場所なんだから! さぁ、勝者に拍手を!!」
変な男の人の声に合わせて、パチパチと何個も音が重なり、暗かった部屋に明かりが灯ります。
するとそこには、大勢の大人たちや子どもたちがいました。
私以外で子どもを見るのは初めてです。
大人たちも子どもたちも、私の知る煤けた服とは違う、色んな色の混じる丈夫そうな服を着ていました。
みんなは私に向かって手を叩き、おめでとうと言ってきます。
「おめでとう! まさか、降る者より早く、登る者がゴールするとは!」
「何十年ぶりかな? 久しぶりの大穴だった。だけど、子ども? 映像では大人だっただろ?」
「ああ、そうだっだよな。一体どういうことだ? そもそも、なんで下にそんなのがいるんだ?」
「演出だろ。ここ最近はマンネリ化してたからな」
「なら、子どものままで映せばよいものの」
「観客の中には子どもがいるから、配慮したのかもな」
「余計な配慮を。姿が子どもだろうと、こんな価値のない存在に誰が同情するってんだ? いや、そんなことよりも、こんな幼子に負ける降る者の情けなさよ」
「ああ、圧倒的有利なのに敗北するとは。それで、あいつはどうなったんだ?」
「心臓が停止して死亡が確認されたところだ。ほっとけよ。敗者のことなんて!」
みんなはなんだかよくわからないことを言っては手を叩き、ある人はおめでとうと言い、ある人は疑問を抱き、ある人は不満を口にしています。
そんな中で、変な男の人が私の前に立ちました。
「さ~って、罪深き存在にして無垢なる存在の君に問いたい!? 全てを忘れ、失い、ただ一つの目的だけを与えられた君は、今ここで君を取り戻したはずだ! さぁ、懺悔を見せてくれ!! 多くの人々のために!!」
変な男の人が何を言っているのかさっぱりわかりません。
だから私は、私の目的を話します。
「私はここから出て、先に進みたいのですが……」
「いきなり自由を願うのかい? ああ、構わないよ。ただし、その願いは命と天秤にかけられるもの! だから、問うよ! 君が願いを叶えたいと思うならば、ここにいる全員を犠牲にすることはできるかい!?」
「それはどういう意味ですか?」
「みんなの命を奪うということさ。さぁ~、苦悩するがいいさ! 君はそのためにここまでやって来た。それだけの罪を犯した。だから、苦しみ、もがく様子をみんなへ見せないといけないんだ!!」
大人の人たちも子どもたちも、私にナニカの返答を期待して体をそわそわとしています。
本当に、本当に、意味が分かりません。
分かりませんが、答えは決まっています。
「はい、皆さんの命を犠牲にしてでも、塔を登りたいと思います」




