第14話
ぐるぐるの階段丸い部屋。ぐるぐるの階段丸い部屋。
ダレカからもらった乾パンも透明な液体もなくなりました。
空腹と渇きが痛みと一緒に仲良く私の体の中で暴れ回ります。
それでも、体が動く限り、私は塔を登らなければならないのです。
ぐるぐるの階段丸い部屋……そして、通せんぼするナニカ。
私はナニカから生えた突起物を回して、部屋の中へ入ります。
部屋にはたくさんの布がぶら下がっていました。
いえ、ただの布だと思っていましたが、どうやら服みたいです。
私たちが着ている煤で汚れた服とは違い、たくさんの色があります。
赤・青・緑・暗い色・便の色・錆びたナイフの色・綺麗なナイフの色……と、色の種類が多すぎて、私ではそれらを表現することはできません。
その中でひときわ目立つ服がありました。
それは部屋の中央に置かれていて、透明な板に囲まれています。
服を守っているのでしょうか?
服の色はお空と同じ暗い色で、赤色が差し込まれたような布もあって、それにひらひらした部分もあります。
服の正面には真っ赤で大きな結び目みたいな飾りもありました。
私はその奇妙な服にとても興味を惹かれます。
ですが、透明な板が邪魔をして手が届きません。
透明な板に近づきます。
その板の中に誰かがいます。おそらく、私ではないでしょうか?
板の中の私は虚ろですが、傷だらけで、ぐるぐるに巻いた白い布は赤黒く変色していました。
右目の部分も崩れていて、なにがなんだかよくわからない生き物になっています。
私はそっと手を伸ばして、板の中の私と手を重ねます。
「固い。でも、薄そう」
袋から錆びたナイフを取り出して、柄の部分で板を叩きました。
すると、板は耳をつんざくような音を立てて、粉々になって床へ散らばりました。
固いのにへなちょこです。
板は透明で綺麗だけど、これじゃ何も守れないと思います。
散らばった透明な板に触れます。
「いつっ!」
透明な板はナイフよりも切れ味が鋭く、私の指を切りつけました。
零れる血がもったいないので、チューチュー吸いながら思います。
(壊れた後にこんなに凶暴になっても、意味がないと思うけど?)
いまいち、存在する理由が分からない透明な板です。
そう思っていたのですが、散らばった板が歩いて近づこうとした私の邪魔をします。
このまま進んだら足の裏を切られちゃうでしょう。
ここで私は、板が存在する理由に、一度は納得をしかけましたが……。
(壊した人を近づけさせないためなんだ……あれ? だけど、痛みを我慢すれば近づけるし……やっぱり意味がない?)
考えても答えは出ません。
ともかく、散らばった板を避けて服に近づきましょう。
前を向いて、一歩踏み込みます。その時、変わった草履があるのを見つけました。




