第12話
右のお目目にはまだ、奇妙な液体がついているようで、ジュウジュウと不気味な音を立てています。
私は急いでダレカからもらった袋の中身を確認しました。
その袋にも液体がついたはずなのに、まったく変化はありません。丈夫な袋です。
そこから透明な液体の入った透明な入れ物を取り出して、右のお目目に液体をかけます。
これで奇妙な液体を取り除きました。
お目目はジュウジュウという音を失います。
私から離れた真っ赤なお目目が、私を見ています。
それを、口の中へと投げ入れました。
貴重なお肉――奇妙な液体にあげるわけにはいけません。
何度が口の中で転がして、噛み潰しました。
奥歯でぐにゅりと噛み、ニチャリニチャリとした音が口いっぱいに広がります。
ここで私は眉をひそめてしまいました。
「私のお目目、あんまり美味しくない」
お父さんのお目目もあまり味がありませんでしたが、私のお目目は味がないだけじゃなくて美味しくなかったのです。
――ちょっぴり傷つきました。
透明な液体で無理やり美味しくないお目目をおなかに流し込んでから、口直しに袋から乾パンを取り出そうとしました。
そこで袋の中にあった白い布が目に飛び込んできます。
白い布はぐるぐる巻きで、引っ張るとびよーんと伸びます。
これはなんだろうと思いましたが、足の裏の傷を見て、良いことを思いつきました。
「これで傷を覆えば、まだ歩ける!」
私は白い布で足をぐるぐる巻きにします。そして、綺麗なナイフを使って切って、結びます。
錆びたナイフとは全く違う、綺麗なナイフの切れ味に、少し怖さを感じました。
同じように手の傷もぐるぐる巻きにします。
右のお目目の方は巻きにくかったので諦めました。
壁に手を置いて、ゆっくりと立ち上がります。
全身がジュクジュクとした奇妙な痛みに覆われて、立ち上がるのも億劫です。
それでも、塔を登るために歩かなければなりません。
ぐるぐる巻きの白い布には血が染み込みます。私から飲み物が無駄に抜け出ている様子を見ているのは、とてもつらいです。
それでも、壁に体を預けながら歩き、部屋の奥へと向かいます。




