486食目 鬼ヶ島を目指せ
鬼たちを適時【ファイアーボール】で焼き鬼にしながら、どんどん進んでゆく。
エルティナイトとブシンオーで圧倒的な火力を前面に押し出しつつ、ホワイトプリンスの的確な援護は呆れるほどに有効過ぎて、なんで今まで使わなかったの、と過去の自分を張り倒したい。
信じられるか? これ―――最終決戦なんだぜ?
「おんどるるえ、れっつ、いらいら、ぱーりー!」
「ふきゅんっ!? どうしたでござるかっ、ママ上っ!?」
その怒りを火球に乗せ、情け容赦なく鬼どもに当たり散らす。
大丈夫、陽の力はこれでもかと入れてあるから。陰の力もちょっぴり混じってるけど。
『ブシンビーム!』
ブシンオーの目から黄金の光線がズビャーと撒き散らされ、鬼どもが「ひぎぃ」と消滅してゆく。
いやぁ、もう楽ちん過ぎてブシンオーだけでいいんじゃないかな状態。
でも鬼どもも、そんなわけないだろ、と新戦力投入。
巨大な眼球だけが、ふわふわと浮いてるだけ、というヤケクソデザインの鬼が登場しました。
「……普通にキモイわね」
「そうだけど、口にしたらあかんやろ」
「あぁっ!? 眼球鬼がショックで落ち込んだでござるっ!」
黒エルフの容赦の無い感想で眼球鬼は隅っこでいじけだした。
どうやらメンタルがお豆腐のもよう。
尚、攻撃方法は極太ビームと拡散ビームで鬱陶しかった。
数が揃えば脅威足り得るだろう。
エルティナイトとブシンオー以外なら。
『ナイトにビームは効かない、通用しないっ!』
『ブシンオーにも通用しないぞっ!』
「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
哀れ、眼球鬼はサッカーボールのように蹴り飛ばされ、仲間の鬼の足を引っ張ることに。
発想は良かったけど、相手がエルティナイトたちであったのが運の尽き。
あと、レオンさんのスナイパーライフルのロングビームで纏めて貫かれる眼球鬼は串団子みたいでした。
「……エル、ガンテツ爺さんも鬼ヶ島に乗り込んだらしいわ」
「ママ上っ、勇者タカアキ殿も鬼ヶ島に上陸を果たしたらしいでござるっ」
「よし……こっちが優勢だなっ」
とはいえ、外で戦っている連中はその分、劣勢を強いられることになるはず。
のんびり戦っている暇はない。
「……エルっ、敵戦艦っ!」
「鬼を纏めて運んできたのかっ」
進行方向から無数の鬼の戦艦。
戦艦というよりかは二枚貝みたいな姿で、その口が開くと中にはキモいくらいの数の鬼たちが収まっておりました。
恐らくは輸送に特化した戦艦なのだろう。一応は申し訳程度に大砲が設置されており、ちょこまえに攻撃を仕掛けてきております。
でも、運んでくるのが青い悪魔や四つ目じゃそれほど脅威にはならない。
寧ろ一つ目の方が脅威なんだよなぁ。
「これなら【雷の鎖】が有効でござるっ! エルティナイトっ!」
『マカセロー。【雷の鎖】!』
ザインちゃんの力で雷の鎖を生み出し、手前の四ツ目に叩き付ける。
すると、雷はその鬼から近くの鬼へと伝染。
瞬く間にビリビリ祭が催され「うをっ、まぶしっ」となった。
『目が~目が~! あぁぁぁぁぁぁぁっ!』
「なんで直視したし」
これにナイトは間抜けにも一時的に目が眩んでしまったという。馬鹿なの?
『めが~、めが~、拡散目が粒子砲っ!』
「それがやりたかっただけなのかぁ」
なんという事でしょう。エルティナイトのおめめからビームが拡散されてしまったではありませんか。
『……完全に目がイカれやがったぁ』
「真のバカタレが、ここにいたっ!」
「……分かっていたことでしょ?」
視界が真っ白で何も見えやしない。
ほんと、敵のはらわたの中で、何をしでかしてくれているのでしょうか。
ボンガボンガと被弾しているのは振動で分かるけど、何をされているかは分かりませ~ん。
『おいバカやめろ。このままだと俺の怒りはマッハ。怒りのメガトンパンチがインフレレベルでフォーティーフォーマグナム。怒涛の十連ガチャに至る』
「この前、爆死したって言ってたばかりだろ。自重しろ」
『俺だぁぁぁぁぁぁ! エルティナイトだぁぁぁぁぁ! ☆3来てくれぇぇぇぇぇぇぇ!』
「誰か、こいつの携帯端末取り上げろっ!」
課金はなんとか阻止出来ました。
「おっと、視界が晴れてきた」
すると、隅っこでいじけている鬼が多数。
そして、勝利のポーズを決めている鬼が少数。それに混じるブシンオー。
『貴様……当てたのか?』
『【タップダンスシチュー】ちゃんが来ました』
『殺してでも奪い取る』
『なにをするんですかーっ!?』
取り敢えず纏めて【ファイアーボール】した。俺は悪くない。
「……エル、大変よ」
「今度はなんだぁっ!?」
「……虹が五つきたわ」
「ヒーちゃん、君もか? っつーか五つはひでぇな!?」
こんなところで運を使わないんでほしいんですが?
「黙々と戦うレオンさんを見習って!」
『あ、僕も当たったよ?』
「どうなってんだっ!? 最終決戦!」
『今流れが来ている! 乗るしかないこのビッグウェーブ!』
「爆死すんだから止めろっ!」
メソメソと泣くエルティナイトを強引に動かし、鬼ヶ島の奥地へと移動。
まったく、ガチャとはなんと業が深い事か。
低レアキャラでもいいじゃないの。良いキャラいっぱいいるぞっ。
奥に入ったことでガラリと雰囲気が変化した。
そろそろ、おふざけはここまでよ、という事なのだろう。
「エルティナイトっ、強い気配を感じるぞ」
『分かってるぅ! 爆死の怒りを叩きつけてやる!』
「おまえ……引いたのか?」
『引いてない』
「引いたんじゃないですかやだー」
『俺はもう何も信じない! 神は死んだっ!』
強い振動。奥から強大な力の塊が姿を現す。
それは赤い皮膚を持ち山のように巨大で鏡餅のような姿。加えて肉がぶよぶよしていた。
角が三本で剥げている。その割に体毛が濃いという。いわゆる一つの―――。
『くそ不細工だっ!?』
「おめぇ、ぶっ殺すど」
謙虚じゃない騎士は人が傷付く言葉を躊躇しなかった。
確かに俺も喉から出かけたけどさ。それは言っちゃあだめでしょ?
幾ら鬼だからって、ハートはギザギザになっちゃうんだからね?
「……不細工だからって、口に出しちゃダメなのよ? 不細工が泣いたらどうするの?」
「ヒーちゃんも酷かった! この世には情けも人情も無いのかっ!?」
「これでは、どちらが鬼なのか分からないでござるな」
これに不細工な鬼さんは憤慨。怒りの矛先をエルティナイトに向ける。
『ヘイトは取れた感。今こそタンクの本領が発揮される』
「もう少しまともなタゲ取りオナシャス」
『考えておくぅ!』
「絶対考えないパターン、きたこれ」
真っ赤な不細工鬼は更に真っ赤になって激怒の様子を伺わせる。
「我が名は【怒鬼】! 我が怒りを力に変え! イケメンどもを、この世から駆逐してくれる!」
レオンさん、ご指名入りました。
「この世の不細工たちよっ! 我に力をっ!」
やっべ、ものすっげー力が怒鬼に入り込んでやがる。
どんだけ不細工がいるんだよ……というか鬼の殆どが不細工だったわ。
『なんて陰の力だっ!? エルドティーネさんっ!』
「気を付けろよ、レギガンダー君っ! 君は結構、男前だからなっ!」
「おのれっ! イケメンは死ねっ!」
『あぁっ!? 怒鬼が更なるパワーアップをっ!?』
し、しまったぁ。こりゃあ、うっかりだぁ。
棒読みで反省しました。なので問題はない。
さて、冗談はここまで。
姿はふざけているが怒鬼の強さは本物と見ていいだろう。
エルティナイトがマジでタゲ取りに走ったのも納得だ。
下手をすればブシンオーの装甲でも耐えられないかもしれないほどの陰の力とみる。
「ぶふふふふふっ! 感じるぞっ! この世の不細工たちが、おでを支えてくれているっ!」
「どんだけだよ」
「この世に、どれだけ不細工で泣いた者がいると思っているぅ! おでは、彼らのために、ここに起っているんだど!」
「うおぉ……何を言っているのか良く分からんが、とにかく凄いパワーだ」
拙い、不細工エナジーがこれほどまでとは。
果たして、俺たちはこの空前絶後に訳の分からない鬼を退ける事ができるのであろうか。




