485食目 突入、北エリア
束の間の休息が終わり、いよいよ正真正銘の最終突撃。
モモガーディアンズ連合軍の消耗率も40パーセントを超えて危険水域。
多くの戦士たちが志半ばで力尽きていった。
彼らの死が無駄ではなかったと後世に伝えるのが俺の使命となっている今、是が非でも【全ての命の悪意】を打ち倒し、全てに決着をつけるのだ。
アストロイを護っていたレオンさん一家を突撃隊に。
これに加え、レギガンダー君のブシンオーもラストバトルに連れてゆく。
正直な話、エリンちゃんは迷った。
仮にだが、俺たちが敗北した場合、エリンちゃんが残ってくれていた方が都合が良いのだ。
先代精霊王は【全ての命の悪意】との交戦経験があるし、生き延びる術をもっているのだから。
でも、エリンちゃんはこれを拒否。
「これで全てを終わらせようよ」と逆に励まされる始末。
きっと俺は弱気になっていたのだろう。
なので俺は頷いた。
覚悟完了とか言って、覚悟が決まってなかったとかナイトに笑われちまう。
アストロイの防衛はキアンカ組に託す。
彼らは、何があっても振り向くな、と告げて俺の背を押した。
歴戦の戦士たちに後押しされ、俺はエルティナイトと精霊合身を遂げる。
「エルティナイト。泣いても笑っても、これが決戦だぞ」
『俺にとっては【全ての命の悪意】は前座。最終決戦は、その後の宴ってそれ一番言われてっからよ』
「ほんと、おまえはブレないよなぁ」
『ナイトは希望。希望は眩しくないといけない』
「ナイトは太陽、だっけか?」
『あぁ……忘れるな。その言葉』
「分かった」
桃使いは陽の心の持ち主。
どんな時でも心に太陽を―――そんな基本的な事を思い出す。
なんだか俺よりも、よっぽどエルティナイトの方が桃使いらしいや。
これはいかん、もっとしっかりしないと、こいつが調子ぶっこいてしまう感。
『北エリアに侵入しました。各機、発進どうぞ』
「よし、エルティナイト、エルドティーネ・ラ・ラングステン、出撃るぞっ!」
『御武運を』
先陣を切る。ナイトが先陣を切らずになんとするか。
「……いよいよね。おしっこ漏らさないようになさい」
「最後の最後にそういう注意かぁ」
「だからといって大きい方は無しでござるよ」
「おぉんっ! ラストバトルの緊迫感がどこかに逃亡してしまった!」
あぁ、シリアスさんは最後の最後まで仕事をさせてもらえないようだ。
今度はどこにバカンスに行こうかな、と旅行雑誌を寝ころびながらご覧になられているっ。こんなの許されざるよっ。
『やれやれ、最後の最後まで変わらんのう』
「ガンテツ爺さん、お疲れ様なんだぜ」
『おう、手加減というのは疲れるわい』
「こっからは手加減無しだ。ガンガン行こうぜっ」
『その言葉を待っとったわい。なら、一番槍は貰っておこうかの』
そう言うや否や、デスサーティーンが炎の矢となって鬼の大軍に突っ込み大爆発。
鬼の防衛ラインに大穴を開けてしまったではないか。
そして本人は当たり前のように炎と共に再生するという鬼畜ぶり。
これには鬼たちもドン引きでございます。
「……重力の檻に閉じ込められる再生鬼は四分の一ってところね」
「四つのエリアの内の一つでござるからな」
「それでも四分の一で鬼を封じ込めるんだから、この作戦は呆れるほどに有効なんだぜ」
現状としては、どんなに頑張っても鬼ヶ島が存在していると鬼は何度でも即再生する。
これに対抗するには重力の檻の中で再生させて身動きを封じるか、或いは「もう再生したくないです」と心をへし折るかのいずれかだ。
つまり―――西側でユウユウ閣下たちが行っている残虐非道の限りを尽くせばいい。
モザイクさんが過労死してしまうっ。早く増援を送って差し上げろっ。
【モザイクさん、討死っ!】
あ―――っ!? モザイクさんがっ!?
バーン! という効果音と共に悲報が舞い込んだ。
なんてことだ! GameOverだぞ!
「嫌な事件だったね……」
「どうかしたでござるか? ママ上」
「いや、西エリアが十八歳未満禁止エリアになっただけだ」
「はぁ……左様でござるか」
つまり俺たちは決して立ち入る事ができないっ。一歳児だからっ! ばぶー!
さぁて、そろそろ鬼さんが本格的な抵抗を見せてきた。
お遊びはここまでにして、桃使いとしてバッサバッサと鬼退治じゃい。
「流石に最終防衛ラインは簡単に通してはくれないか」
『なら、うちに任しときぃ! G・アースパンチやっ』
効果、鬼は死ぬ。
そんな質量爆弾かまされたら耐えれるわけないんだよなぁ。
小さな星が、おんどれぇ、してくるわけだから。
でも、鬼も後が無いのでゾンビアタックをかましてくる。
つまりは神風特攻。これが実際、一番怖い。
こっちは死んだら終わりなのに、向こうは何度でも復活できるとかきたない。
でも、それを捻じ伏せて強引に突破するのが俺の仕事なわけで。
『道を作るっ! エルドティーネっ、行けっ!』
「ファケル兄貴っ!」
風の精霊戦機ル・ファルカンが竜巻のトンネルを作り出し、鬼たちを粉々にしながら要塞までの道を作り出す。
そこに俺はエルティナイトを侵入させる。付いてきた者はレギガンダー君とレオンさん。
後はタイミングが悪くて入り込めなかったか。でも、この戦力でやるしかない。
「レオンさん、レギガンダー君っ、行くぞっ!」
『あぁ、任せてくれ』
『了解ですっ!』
北エリア要塞内部に突入。そこは南エリア同様の光景が。
しかし、満たされる陰の力の濃さは比べ物にならない。
『こ、これほどとは……!? はっ!? レ、レオンさんっ! 大丈夫ですかっ!?』
あっ、桃使いのレギガンダー君ならともかく、レオンさんは桃使いじゃない。
こんなに濃い陰の力に晒されたら、下手をしたら鬼化してしまうのではっ。
『あぁ、問題はないよ。確かに悲しい力であることは理解できるけど……今の僕にはそれ以上の愛情で包まれているからね』
レオンさんの力強い返事が返ってきた。
確かに彼は陽の力で包み込まれている。それは彼から発せられているものではない。
彼の両親の想いが、彼を護り続けているのだ。
「これが―――家族の想いの力なのか」
『愛は非常識って良く言われる感』
「家族か」
俺にも好きな人ができて、やがて家族ができるのだろうか。
……う~ん、珍妙な一家にしかならない気がっ。じゃけん、今はそっとしておこうね。
「……どうしたの? 白目痙攣状態になって」
「俺の宿命が憎い」
「……あら、エルドティーネなら、幾らでも変えれるじゃない。現に、これまでも変えてきたでしょう?」
「そうなのか?」
「……えぇ、あなたは、あなたの母にも出来なかった事を幾度も成し遂げてきているわ」
「良く分からないんだぜ」
「……死すべき運命だった者たちが、この場には何人もいる」
「えっ?」
「……あなたが変えたのよ。力尽くでね」
「俺が……!?」
「……胸を張りなさい。【運命を超える者】エルドティーネっ」
「あぁ!」
俺が悲劇を阻止する力があるというなら、とことん使いまくってやる。
「エルティナイトっ! 盛大にかましてやれっ!」
『ヒャッハー!【ファイアーボール】だっ!』
俺たちにバッドエンドは似合わない。
完全無欠のハッピーエンドを迎えて見せるっ。
その為に【全ての命の悪意】っ、おまえは邪魔だっ。
俺が……俺たちでっ! しっかり、きっかり、浄化してやんよっ!




