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484食目 束の間の休息

 ◆◆◆ エルドティーネ・ラ・ラングステン ◆◆◆




 バチリ、という感覚を覚える。

 同時に鬼ヶ島本島からの陰の力が一気に強まった。

 これは、つまるところの結界の解除。

 遂に来るところにまで来た、といったところだ。


「ヒーちゃんっ! ザインちゃんっ!」

「……えぇ、遂に、ね」

「ママ上、全ての因果に決着を付けましょうぞ!」


 母の母、そこから続く白エルフと鬼の戦い。

 いや、初代桃太郎からの因縁をここで断ち切る。

 それが俺の使命にして、俺が選んだ道。


「アイン君っ」

「あいあ~ん!」

「言葉はいらない―――か。そうだな」


 アイン君が居なかったら、俺はここまでやってこれなかっただろう。

 俺の最高の相棒。それは、ありふれた鉄の精霊。だからこそ、俺たちはやって来れた。

 彼とだったからこそ、俺は鉄の意思を身に付ける事ができたのだ。


「エルティナイトっ」

『ナイトはいつでも覚悟完了。希望の未来にバックステッポゥ!』

「昨日に戻っちゃうんだよなぁ」


 ナイトはいつも通りだった。まぁ、一応、心強いと思っておこう。


 ここで狸の女神さまから【ヴァルハラ・レッツゴー】の宣言。

 いよいよ、全戦力を投入した突撃作戦が始まるもよう。

 ここまでに散々、鬼たちを重力の牢獄にぶち込んで差し上げたので、結構数が減ってそう。減ってそうじゃない? あ、あんまり変わってないわ。


 道中に置いて、あまり鬼の数が減ってなかったので、怒りの八つ当たりアタック。効果、鬼は泣く。


 鬼は重力の檻にしまっちゃいましょうね~? おらぁん! 豚箱に入りやがれっ!


『へっ、雑魚がっ! 効かねぇんだよっ!』

「見ろぉ、ナイトがチンピラのようだぁ」

「平常運転でござ候」

「……気にしたら負けよ、ザインちゃん」

「いあ~ん」「ぶろ~ん」


 というわけでバックステップでアストロイに向かって高速移動。

 たまに鬼に衝突して「おう、ゴラァ。免許持ってんのか?」と脅迫する。


 鬼は「許してください、なんでもしますから」と隙を伺う知能派だった。しかし、外道には勝てなかったもよう。


「……じゃあ、これ飲んで」

「はいっ」


 哀れ、鬼~さんは、渡された性転丸で、お姉さんに早変わり。黒エルフさんにシバかれて「おにぃ」と鳴くだけのお人形さんにっ。


 やったね! またユウユウ閣下のお土産が増えたよっ!


「また増えたでござる」

「一人や二人増えても変わらないだろう」

「残念、三人目が追加でござる」

「壊れてるなぁ、鬼のお姉さん」


 情け容赦なく性別を変えていたら鬼が近づかなくなりました。女性タイプの鬼が来たら容赦なく「ひぎぃ」に処しました。

 ちなみに俺は休憩中。一切、エルティナイトを操縦していない。


 俺は真実を伝えたかった。真犯人は黒い方であると。




 ほどなくしてアストロイに帰艦。レオンさん一家とレギガンダー君が守ってくれていたけど結構、損傷している。鬼の数が数なだけに仕方がない。

 寧ろ、この程度で済んでいるのが凄いんですわ。


「マザー、アストロイは大丈夫か?」

『装甲に多少被弾している程度です。コウサクンが随時修理をしてくれていますので問題は無いかと』

「そっか。みんなが戻って来次第、鬼ヶ島に突入する」

『了解です。それまで少しの間、休憩を』

「あぁ、そうさせてもらうんだぜ」


 結界が崩壊し、各エリアもぶっ壊れた今、丸裸の本陣を狙う。

 恐らく鬼の密度が半端ではないだろう。

 こちらも相当な被害を覚悟しなければならない。


 問題となるのが【全ての命の悪意】がどのタイミングで仕掛けてくるかだ。

 対峙するにしても鬼ヶ島を破壊してからでなければ、ただの骨折り損。しかし、無視するには難しい相手。

 出くわした場合、エルティナイトで対処し、その間にみんなで鬼ヶ島をぶっ壊してもらうべきだろうか。


 まずは補給しよう。白エルフは身体が資本。隙あらばパクパクですのよっ。


 というわけで、基本に忠実なジャンクフード【チキンバーガー】をむしゃあ。

 衣をつけて揚げた鶏もも肉にケチャップとマスタードがたっぷり。

 申し訳程度のレタスの演出が鳴ける。実に身体に悪そうな味だ。


 ―――だが、これが良い。ジャンクフードはこれがあってなんぼなのだ。


 後はレモン水でお口の中をさっぱりと。


「FUUUUUUUUUUUUUっ! 最高にハイってやつだぁ!」

「……そうね」


 そういうヒュリティアさんはナポリタンホットドッグをパクパクしていた。

 こいつもジャンクなスピリッツを感じるぜ。


 そして、ザインちゃんは究極のジャンクフード【グリーン狸】を食べていた。

 お湯を注いで「3分待ってやる」すれば天ぷらそばが出来上がるという人類の作り出した英知の結晶だ。


 こいつは確かに一から作った手作りの天ぷらそばには敵わないが、カップ麺にはカップ麺の良さがある。そもそも携帯食料であるので求めすぎるのは酷だ。


「カップ麺って、他者が食べてると何故か食べたくなるよなぁ」

「……分かる。妙に食べたくなるのよね」


「お? グリーン狸か?」

「あっ、モヒカン兄貴。スキンヘッド兄貴。お疲れ様なんだぜ」

「これからだろうがよ」

「ちげぇねぇ」


 厳つい世紀末組が無事に旗艦。その手にはカップ麺が。


「むむむ、このにおいはっ」

「へっへっへっ、新発売の【チリトマト味】だ」

「俺は【トムヤムクン味】だな。独特の酸味が好きでなぁ」


 これまた、刺激的な味をチョイスしたものだ。いずれも独特の酸味を堪能できる。

 チリトマト味はマイルドに抑えられているが、トムヤムクンはかなり尖っている味と言えようか。辛味、酸味共々頭一つ先を行く。


「なんだよ、おまえらもカップ麺か?」

「戦機乗りの定番だろ? しかし、便利な世の中になったもんだな」

「昔はくそ硬いパンが定番だったもんなぁ」


 ファケル兄貴もカップラーメンを手に合流。

 彼が持ってきたのは【ビーフシチュー味】。つまりデミグラスの味か。

 これまた匂いが溜まらない。食べたばかりなのに俺のぽんぽんは【ぐっごりゅりゅっぴ】とはよ食わせろコール。

 このままでは死因が【カップラーメン食べたかった死】になる。


「くっ! ここまでされたら、食べるしかないじゃないかっ!」

「……あ、エル。私にも」


 我が【フリースペース】に封印されし禁断のカップラーメン……出てこいやっ!


「というわけで、【キノコポタージュ味】」

「うをっ!? またレアな物を出してきたなっ!」

「スキンヘッド兄貴、知ってるの?」

「期間限定品だからな。しっかり押さえておいた」


 戦機乗りの間でカップラーメンは流行ってるからなぁ。お湯さえあれば作れて尚且つ短時間というのが受けているらしい。

 加えて身体も温まって塩分も補給できる、と戦機乗りには打って付けのジャンクフードである。


「ヒーちゃんには【チーズカレー味】」

「……素敵よ、エル。これ、美味しいのよね」

「おぉ、いいなそれ。残ったスープに白飯を入れて食うのが好きなんだよ」

「……ファケルは分かってるわね」


 カップラーメンの残り汁は色々と使えるんだよなぁ。

 わざと飲まないで取って置いて、適当なお肉と野菜の木端と一緒に煮込むと簡単に鍋になる。

 戦機乗りの仕事で夕食が面倒臭かったときは楽をさせてもらった。

 とろけるチーズを載せてもグッド。味付けが濃いから負けないのだ。


 カチカチのパンに浸す、とこれがまた美味い。

 もちろん、ご飯を入れて溶き卵を回し掛けての本格おじやにしたって良い。

 発想を変えれば、なんにだって化けるのがカップラーメンのスープなのだ。


 ただし、これを使って調理する場合は【自分専用】としよう。

 色々とスープに混入しているだろうからねっ。唾とか鼻水とか。


 ―――【隠し味】って言えばバレへんか。


「おやまぁ、全員カップラーメンですか?」


 その時っ! 刺激臭っ! というか目が痛いっ!? ま、まさかこれはっ!


「私は【地獄の火鍋・終焉の極致味】です」

「馬鹿野郎っ! それって、死者が出た回収品じゃねぇかっ!?」

「え? 美味しいですよ。自宅にダースで二十確保してあります」

「「「「マジキチ」」」」


 スキンヘッド兄貴のみならず、俺たちは絶句するより他に無かった。

 死者すら出たという極限の激辛であっても、ヤーダン主任はケロッとしていたのである。

 尚、アクア君はビクンビクンしている。強く生きてほしいものだ。


 もちろん、彼女はスープも一滴も残さずに飲み干しましたとさ。ひえっ。


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― 新着の感想 ―
[一言] ヤーダン主任が辛いもの食べても大丈夫なのは水属性だからという疑惑がありますねぇ! 辛くて灼けても水はお湯に変わるだけ見たいなガバガバ理論がありそう(偏見)
[一言] 第三者が食べてる物は何故か美味そう ヒュリティア「でも自分で作るとそれ程でもない」 珍獣「カップ麺あるあるだな」 ヤーダン「コレを差し入れに逝かなきゃ」 ヒュリティア「今の刺激臭は…」 珍獣…
[一言] レッドのフォックスは、あります?
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