478食目 東エリア攻略戦 そのよん
黒い悪魔と神の厄災の力は要塞をどんどん崩壊させていった。
私たちが激しい戦いを繰り広げる中、結界装置が突如爆発。そこから三匹の獣が飛び出して来た。
「にゃ? あれ、なんにゃ~ん?」
「モフモフにゃっ! それと……師匠と猪のおっちゃんにゃ!」
え? でも、いなかったよね? いつの間に?
『ドルカスっ! 祭虎っ! 上手くやってくれたな!』
「馬鹿野郎っ! この綿毛に食われた時は死ぬかと思ったぞっ!?」
「あまり面妖な方法は好みではないな」
どうやら、クロム兄さんの指示でモフモフが二人をお腹の中にしまっていたもよう。
それで、隙を突いてファーラから降りていたのかも。
……あれ? でも、祭虎お師匠様たちってモフモフよりも遥かに大きいよね?
あれれ~? おっかしいぞ~?
洞窟内の崩壊は激しくなって遂にバラバラに。
外が見えてどんどん内部の物が宇宙へと放り出されてゆく。
「うおぉぉいっ!? これ、ヤバくねぇかっ!?」
「まぁ、我らなら宇宙に放り出されても死ぬまい」
「そういう問題じゃねぇっ! 毛玉っ! 俺たちを回収しやがれっ!」
「もきゅ?」
「可愛く首を傾げやがって、この野郎っ」
暗黒的な微笑を浮かべたモフモフは、突然、白い輝きを放ちながら、ムクムクと大きくなっていきました、え?
「も~ぎゅ~」
「にゃ~んっ!? モフモフが大きくなってゆくにゃっ!?」
「モコモコがもきゅもきゅになってもっふもふにゃ~ん!」
「すご~い! あれに埋まりたいっ!」
『にゃ~ん』
超巨大な毛玉になったモフモフはファーラごと、パクっと祭虎お師匠様たちを回収。
怠そうに在るかどうか分からない短い尻尾を左右に振りながらルエ・ラーに戻ってゆきました。
あっ、鬼がモフモフに追突されて宇宙の彼方にっ!? 凄いモフ度だよっ!
『ええい、なんじゃい。まったく』
でもそれはガンテツお爺さんが焼き尽くしました。
―――あっ、そうか! 外にはガンテツお爺さんが居たんだっ!
『こりゃっ、モフモフ。遊んでないでさっさと帰らんかい』
「も~ぎゅ~」
ぷぅ。
どうやらモフモフはオナラを推進力として使用して加速を試みたようです。
周囲にいた鬼たちが全員死にました。猛毒だったようです。
『これは流石に鬼に同情せざるを得ないな』
「クロム兄さん、あまりそっちに行かない方が良いよ」
『おっと、そうだった。ここは宇宙だったな』
宇宙ではオナラもずっと残るらしい。
つまり、あそこは超危険エリアにっ。
『オープンgゑt! 真・gゑtー3!』
三度、分離合体。
黒い悪魔は下半身が戦車モドキという、いかにもな腕力自慢形態に。
『gゑtーサイクロン!』
肩を覆い尽くすスクリューのような装置が起動して、宇宙に竜巻が発生する。
でも、それはただの竜巻なんかじゃない。緑色に輝く破壊の竜巻だ。
「ちょーしにのっちゃてぇ! ラストニャンガーっ! 猪の怒りにゃっ!」
『ゴォォォォォォォォォォォォン!』
真・ラストニャンガーが両拳を叩きつけ、それを掌底突きとして繰り出す。
すると、虹と黒の輝きが組み合わさった衝撃波が生れ出た。
黒い悪魔の竜巻と、真・ラストニャンガーの衝撃波がぶつかる。
パワーは互角。双方共に弾け飛んだ。
「にゃ~ん! 無茶苦茶にゃん!」
「全力でぶつかり合ってたら、こっちが先に力尽きるにゃお!」
「まだまだだよっ! ここでジャーク十三世をやっつけないとっ!」
「分かってるにゃん!」
『なんじゃい、ミオ。それは? また面妖なもんが飛び出してきよったのぉ』
「ガンテツじーちゃんっ、敵にゃっ!」
『なら、遠慮はいらんな』
ズボォウ、という音が聞こえそうな炎の一閃が宇宙を照らし上げた。
それは最早、太陽の炎といっても過言ではないかも。
というか、東エリアが完全に崩壊したから手加減していないっぽい?
ちょっと怖いです、ガンテツお爺さんっ。
燃えカスも残らないで蒸発しちゃってるよっ!
『――――っ!? オープンgゑt! 真・gゑtー1っ!』
『おおぅ、エルドティーネが好きそうな絡繰りじゃな』
暢気に構えるガンテツお爺さんはデスサーティーンの人差し指に小さな灯を生み出した。
それに対して黒い悪魔は両手いっぱいに、緑の輝きを圧縮させた巨大な光球を作り出してゆく。
『ス【ピ―――――――】! サン【ガ―――――】!【ザ―――――】!』
何を言っているのか分からない。
でも、とにかく危険極まりないという事だけは分かる。
黒い悪魔は、巨大な太陽のような光球を、たった一機の戦機に向かって投げつける。
普通なら過剰すぎる攻撃。でも、それは正しい判断だったのだ。
『おぉ、なかなかの攻撃じゃな。じゃが、中身がスカスカではな……ほれっ』
ガンテツお爺さんがデスサーティーンの指先の頼りない灯を迫る光球に放った。
小さな灯は、ひょろひょろ~と、時折、休憩を挟みながら、わっせわっせと進む。
そして、遂に両者はぶつかり合うのだけど、その瞬間、視界が真っ赤に。
「「「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!?」」」
超大爆発。でも、爆風はこちらには来ない。
それはデスサーティーンから伸びる巨大な炎の腕が私たちを護っていたからだ。
『やっぱりのう。見てくれだけ、じゃわい』
「無茶苦茶にゃ~ん」
『ばかもん、わしらはその無茶苦茶に挑んでいるんじゃぞ。こんな前座、さっさと仕留めてしまえ。できるじゃろ? ミオ』
「できるにゃっ! やってみせるにゃ~ん!」
ガンテツお爺さんは無茶苦茶すぎる。
でも、私たちが彼を超すであろう無茶苦茶と決着を付けないといけないのは確かな事。
「ミオっ!」
「クロエっ! ミケっ! ラストニャンガー! やるにゃ~ん!」
『「「「にゃ~ん!」」」』
気合を入れて、さぁ突撃だよ。
『かっかっかっ、若いもんは良いのう。ほれ、そこの若いのもボサッとしとらんで、こっちを手つだえ。クロヒメもじゃっ。いつまで寝ておるんじゃ』
『これは参ったな。手助けをするどころか足手まといだ』
『ふがっ!? 私の巨乳が逃げて行った!』
クロヒメさん……どんな夢を見てたの?
クロム兄さんとクロヒメさんはガンテツお爺さんのお手伝いに。
ガンテツお爺さんは黒い悪魔を私たちに任せるつもりだ。
私たちはまだ、真・ラストニャンガーの力を発揮できていない。
強力なパワーに振り回されているばかり。
だから、本来の力は発揮できないのだ。
もっと、肩の力を抜くべき? でも、それは自分の体を使っている場合だ。
なら、どうするべきか。一人でがんばり過ぎない? どうすれば?
そう、うん――――そうだね。そうだった。
三人じゃなくて、四人で戦えばいいんだ。
ラストニャンガーだって、一緒に戦ってるじゃない。
真・ラストニャンガーが私たちの想いに身を摺り寄せてくる。
この子も未来を掴むために私たちと戦い抜いてきた仲間なんだ。
「クロエ、ミケ、聞こえた?」
「聞こえたにゃん」
「聞こえたよっ。ラストニャンガーの声っ!」
「にゃらっ、タイミングを合わせるにゃっ! ミオたちにゃら、できるにゃん!」
四人同時にそれぞれの力を同じ量持ち寄る。
ミオは光素を。
ミケは神気を。
私は厄災の力を。
そしてラストニャンガーは想いの力を。
それらを、ひとつにっ。
『――――っ!』
黒い悪魔が驚愕の表情を見せた。
正確には緑色の輝きが困惑しているのか。
真・ラストニャンガーは光の中に溶け、そこから新たなる獣が生れ出た。
それは獣であって獣ではないもの。人間であって人間ではないもの。神にして神ではないもの。
善でも悪でも、正義でも邪悪でも、愛でも憎しみでもない存在。
―――中庸なる者。
それは言い換えるなら、絶対なる意志を持つ者。自分の意思を貫き通す者。
「【神・ニャンコビト】! 転生降臨にゃ!」
いいかげんで、適当で、言う事を聞かなくて。
でも、純粋で、真っすぐで、どこまでも駆け抜ける力を―――今、ここに!
灰色に輝く巨大なミオ。それが神・ニャンコビトの姿。
これは、全ての獣たちの意思の姿。
そして、そんな獣たちを愛してくれる人間たちの優しさ。
それらが集まって生まれた守護者。
どちらにも傾かない、公平なる守護者。
黒い悪魔の明らかな敵意が私たちに向けられる。
それだけで弱い生き物は死に至るだろう。
でも、それは神・ニャンコビトによって掻き消された。
神・ニャンコビトは黒い悪魔を敵と見なしている。
「パワーを神・ニャンコビトにっ!」
「もってけにゃ~ん!」
「え~いっ!」
輝くミオの手から伸びる一筋の輝き。
それはミオのかつての愛刀、思念創世器【にゃんにゃん丸】で間違いなかった。
「ジャークのおっちゃん! ベルクハウンドっ! 今、眠らせてやるにゃ~ん!」
でも、黒い悪魔は抵抗を続ける。
巨大な大鎌で神・ニャンコビトを斬りつけてきた。
それを、ミオがにゃんにゃん丸で弾く。
一度、二度、三度……今っ!
黒い悪魔がミオの受け流しによってバランスを崩した。
虎牙神剣の正統後継者は伊達じゃないよっ。
「虎牙神剣、奥義っ! 心刃! 救済……ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」
ミオの最終奥義。全ての悩める魂を救済する想いの刃が、黒い悪魔、それに囚われたジャーク十三世とベルクハウンドの魂を斬った。
緑色の輝きを漏らしながら、ゆっくりと斜めにずれてゆく黒い悪魔の胴体。
その緑色の輝きの意思が、私たちの頭の中に流れ込んでくる。
―――これで終わりではない、と。
爆発。黒い悪魔は跡形もなく、この世から消え去った。
そして、ジャーク十三世とベルクハウンドの魂もまた。
「……ジャークのおっちゃん、これでゆっくり眠れるにゃ」
「うん、ベルクハウンドもね」
「割と長かったにゃ。でも、これで厄災戦争は本当に終わりにゃ」
「あとは……【全ての命の悪意】をぶっ飛ばして終わりにするにゃ~ん!」
「「「「にゃ~ん!」」」」
これで前世から続く厄災戦争との因果は断ち切れた。
でも、ここからが私たちの戦いが始まるのだ。
これで残すは西エリアだけ。
全然、心配はしていないよ。
だって、あっちには色々と抑えが効かない最大戦力が向かっているんだから。




