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474食目 戦力分配

 ◆◆◆ プリエナ(狸の女神様)◆◆◆




 戦況が動いた。南エリアの制圧及び破壊を確認する。

 予想よりも早い結果に若干の余裕が生まれた。


「南エリアの戦況はどう?」

「はい、我が軍が圧倒的優位。エルティナイトはその場に残って鬼たちをブラックホールへと放り込んでいるもよう」

「なるほど……こっちの戦力を他に回せってことだねぇ」


 エルドティーネちゃんは現場に出る性質上、指揮は無理だ、と私に指揮を丸投げしている。

 だから、状況に合わせてモモガーディアンズを動かしていい、と正式に通達されていた。

 ならば、ここはヴァルハラとタヌ教義勇軍を残し、強力な戦力を東西に分けた方が良いか。


 ただし、G・アースは引き続き、ここの防衛を維持してもらう。

 グリオネの超範囲攻撃はここの防衛の要。

 義勇軍は数で圧してゆくタイプだが、個々の戦闘能力は一つ目小僧と比べ1:3と低い。


「マジェクトさん、出撃準備、よろしいですかぁ?」

『あぁ、準備できてるぜ。アレに一泡吹かせたくて、ここまで生き恥を晒したようなもんなだからな』

「そうでしたね。たぶん、あなたの生きた意味がそこにあると思いますよ。ユウユウちゃんたちと合流してくださいな」

『うっし……マジェクト、アイン・ホーク、出るぞっ!』


【残る者】となった鬼、マジェクトさんが今日も紫色のリーゼントをバッチリと決めて出撃した。

 彼が率いているのは彼と同じく、かつてのカーンテヒルで終末大戦を生き抜いた猛者たち。長きに渡る戦いの果てを求め、私たちと歩んできた。


 彼らは鬼。本来なら私たちとは相容れぬ存在。

 でも、彼らとはとある一点で共闘、いや……仲間として歩んでゆくことができた。


【全ての命の悪意】、その打倒。

 彼らを鬼に堕とした忌むべき存在。その存在を理解した時、彼らは死に場所を悟った。

 私たちに還るべき輪廻の輪は無い。死ねば消滅。

 でも、彼らは死に恐れを感じるどころか、辿り着くべき場所と捉えている。


 以前、聞いてみた。それは疲れたからか、と。

 マジェクトさんは答えた。


 生き物が死ぬのは摂理だ。俺は、神でもなんでもないのだから、と。


 私はそれを聞いて、女神に変異した自分を恥じた。

 私には死んでも還る場所があるのだ。


「……マジェクトさん。私はできるなら、あなたには死んでほしくないよ」


 私たちが受け入れられなくても、きっとエルドティーネちゃんなら、なんとかするだろう。

 あの子は可能性、そして希望だ。


「ふぅ……チーム願野多がやたに繋いでください」

「はっ」


 少ししてノアに繋がった。結構に映像が乱れているのは攻撃を受けているからだろうか。


『大井です』


 生真面目そうな黒髪のエルフ少年がスクリーンに映った。今日も眼鏡が輝いている。


「あっ、大井君。チーム願野多は宇宙平和機構に合流して」

『え? 構いませんが……ここはいいので?』

「うん、エルドティーネちゃんが南エリアを落としたよぉ」

『……うわっ、落としたというか跡形もなくなってるじゃないですかっ』

「あれ? 気づかなかった?」

『少しシステムにエラーが生じているようでして、コウサクンが総出で修理中です』

「どれくらいかかりそう?」

『三十分程度かと』


 う~ん、微妙な時間。これは……ノアは防衛拠点として残した方が良いかな。


「大井君、ノアに詰んであった艦艇は生きてる?」

『コウサクンが五隻、修理しました。【ルエ・ラー】出せますよ』

「うん、それじゃあノアは拠点としてそこに残して、チーム願野多は宇宙平和機構と合流してください」

『了解しました』


 さて、これでいいかな?


 正面にはエルドティーネちゃんたちもいるし、G・アースも健在。

 ヴァルハラもノーダメージ。タカアキ様を温存しておく理由は無し。


「タカアキ様、エリシュオン軍のカバー、お願いできます?」

「もちろんです。出番が無いまま終わるものかと思っていましたよ」

「まさか。結界装置の破壊をお任せします。たぶん、ユウユウちゃんたちは好き勝手に暴れているだけだと思いますから」

「相変わらず元気ですね、あの子たちは」


 タカアキ様は、にっこりと微笑むとヴァルハラの艦橋を後にした。


 ここの艦橋は戦艦というよりかは王の間だ。

 白を基調とし黄金の意匠が施され荘厳さを感じさせる。

 以前の所有者オーディンの趣味がそっくりそのまま残っているのだ。


 私としては、ピンクを基調にして、もっと可愛らしくしたい。

 ガイ君に相談したら、全力で却下されちゃったけど。


「報告!」

「どうかした?」

「西エリアに未確認の何かが大量出現との報告! 敵味方関係なく襲い掛かっているもよう!」

「映像に出せる?」

「映像……出ます!」


「「うわぁ……」」


 そこには、もう形容し難い謎の存在が宇宙を埋め尽くしていました。


「神話生物……アルアの仕業だねぇ。困ったちゃん」

「そんなに可愛らしく言われても困ります」

「そうだよねぇ。でも、困ったなぁ。その内、飽きて帰るかとは思うけど……それまでエリシュオン軍の精神が持つかなぁ?」

「無理じゃないでしょうか? 私も割と見たくない部類ですし」

「だよね~」


 オペレーターお姉さんは鬼っ娘です。もちろん、終末戦争を経験してます。

 なのでアルアの神話生物には見慣れており、この程度では発狂したりはしません。


 でも「うわぁ」とは言うよ? 他に言いようがないんだもの。


「プリエナっ! 機体を一機貸してくれっ! あのバカがまたやった!」

「あ、シーマちゃん。知ってるよぉ、ほら」

「あ~もうっ! 上になんて報告すればいいんだ!」


 シーマちゃんが頭を掻きむしって悶絶している。

 彼女の仕事は神話生物の監視、及び過剰接触の抑止だ。


 まぁ、大体は失敗しているみたいだけど。


 なので、主な仕事は神話生物の後始末や、外なる神々を宥めて帰らせる、といったものである。


「格納庫に試作型のスペグラが残っているはずだよぉ。それでもいいのなら」

「助かるっ!」


 不死身のシーマちゃんは、そう言うや否や格納庫に。

 まぁ、不死身だから死なないでしょう。

 おやっさんって、必ず最初はパイロットの安全を度外視したものを作るんだよねぇ。


『シーマ・ダ・フェイ! プロトタイプ・スペグラ、出撃るぞ!』


 カタパルトで射出されるオレンジ色の機体。

 その背部には針ネズミのようにスラスターが設置されていた。


『全速力だ!』

「「あっ」」


 ぐちゃっ。


 シーマちゃんを映していたモニターが真っ赤に染まりました。


「潰れちゃいましたね」

「うん、いつもの事だし……大丈夫でしょ」


 案の定、少しの間、ぷか~、と宇宙を漂っていたプロト・スペグラが元気に動き回るように。


『なんだっ、これはっ!? 死ぬかと思ったぞっ!』

「いやいや、死んでいたからね?」

『ええい! この怒りは神話生物にぶつける!』


 保護対象にぶつけちゃダメでしょ。


 とはいえ、殺しても死なないのが神話生物。

 機能停止しているだけで、放っておけば勝手に再生したり、転生したり、寄生したりするから、それが手っ取り早いらしい。


「西はうちの戦力を送らない方が良さそうだねぇ」

「面倒臭いことになりそうですしね」

「マジェクトさんは送っちゃったけど」

「ご冥福を祈りましょう」

「部下が薄情だった。合掌」

「あのくらいじゃ死にませんよ。うちの親分は」


 さて、ヴァルハラの守りはガイ君とルバールさんで十分として、やっぱり東エリアだよねぇ。いやな感じがビンビン伝わってくるよぉ。

 どうにかしてあげたいけど、私もここを離れるわけにはいかないから。


「ん~」

「どうかしましたか? プリエナ様」

「東エリアにね、いやぁなものを感じるんだよぉ」

「ふむ、大丈夫じゃないですか?」

「根拠は?」

「ほら、ミオ君って子がいるじゃないですか。あの子、エルティナ様みたいな感じがするんです」


 なるほど、言われてみればそうだね。結構、似た感じの子だ。


「そっか。うん、そうだと信じよっか」

「きっと上手くやりますよ」


 オペ子ちゃんとは付き合いが長いので気楽に会話ができるのが救い。

 なお、この子に名前は無い。物心ついた瞬間、既に鬼だったとのこと。

 なので、いつの間にか【オペ子】という愛称で呼んでいた。オペレーター娘だから、オペ子だ。

 赤髪ショートカットの素朴な女の子。密かに人気があったり。


「本隊をちょっと東側に寄せておこうか」

「そうですね。アルアちゃんですし」


 そう言っている間にも、鬼ヶ島の西エリアに絡み付く巨大なタコのような生物が確認できた。


 相変わらず、アルアちゃんは自由だよぉ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] これはひどい
[一言] 宇宙に宇宙的恐怖が出現するのはある意味当たり前だから(震え声)
[一言] 狸神さまの苦労は続く 珍獣「ヒャッハー鬼狩りだぜぇ!」 狸「脊髄反射で動くから事態がどう転ぶか わからないのよね…」
感想一覧
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