463食目 決戦へのカウントダウン
キルラーズの完全撃破から三十分後。
宇宙平和機構も、モモガーディアンズが掌握した、との報告がありました。
どうやらカーマイン中佐が頑張ってくれたようで。
「これで、俺たちを邪魔するやつらはいなくなった、か」
「……そうね。おまけにプリエナが裏で色々とやっていたらしいし」
そう、それ。なんか知らないけど、いまだに宇宙の人々の想いがエルティナイトに注がれている。
今は俺に直接じゃないけど、もし、エルティナイトのパイロットが俺だと判明した場合、えらいこっちゃになりそうで怖い。
「救世主なんて柄じゃないんだぜ」
「……どっちかといえば【お頭】枠だものね」
「ヒャッハーしかいない不具合なんとかして?」
「……いや♡」
「ふきゅん」
アストロイの食堂にて、ささやかな戦勝祝い、なう。
この後、プリエナさんの戦艦と合流して二次会という流れに。
その前にシグルドは宴を楽しむもよう。
ユウユウ閣下と鉢合わせると「うふふ、【ぴー】くす」となるらしい。
当時の俺はお子様だったので言葉の意味は分からない。しかし、ユウユウ閣下が絡んでいるという事はそういう事なのだろう、と幼心に思ったわけでして。
「うまし」
「にく、にく、にくっ! ドラゴンとして恥ずかしくないの?」
「普通であろう」
「あっはい」
もりもりと大量のお肉を生でいくシグルド。流石は元野生動物は格が違った。
なんでまた生肉か、というと生肉を食べたらユウユウ閣下が怒るから、という理由でした。
以前、生肉を食べ過ぎて【ぽんぽんペイン】になったもよう。
でも、それは人間形態で食べたからだと思います。
尚、シグルドさんの人間形態は金髪金目のワイルド系イケメンだそうで。
全部ユウユウ閣下から聞いた話なので、真実はよぐわがんにゃい。
エビチリを受け皿にとってパクリんちょ。
ぷりぷりとした食感が口内で弾ける。
エビの甘みにチリソースの刺激的な辛味が合わさり最強に見えた。
もちろん、白米と合わせます。おいちぃ!
脅威が排除できた、とあり大人連中はお酒を飲んでおります。
主にヤーダン主任が酷い。浴びるように飲む、とはこのことか。
息子さんも「ば~ぶ」と呆れておりますゾっ。
「あい~ん」
「アイン君もご苦労様なんだぜ」
光素おまんじゅうを食べるアイン君は、もしかすると共食いだった?
でも、可愛いから許す。
「ところで……クロヒメさんは?」
「……あそこ」
「モザイクが動いてるんですが?」
「……そうね」
「四足歩行でカサカサ動いているんですが?」
「……そうね」
「天井に張り付いてるんですが?」
「……大人になるって悲しい事なのよ」
どうやら進化し過ぎて一周したもよう。
昆虫的な動きはいや~きついっす。じゃけん、もうちょっと進化させましょうね~。
まずは厨房にDチームを連れ出します。
「あ? なんだよ?」
「しっ……そこっ」
すると緑色の輝きが顔を覗かせるので虫取り網で捕まえます。
素人は真似しないように。虚無ります。
「お次は、この輝きをお餅に混ぜ込みます」
「緑色になったぞ」
ズーイさんは「うえっ」と若干引き気味です。草餅とは違って得体が知れないからね、仕方がないね。
でも、ルオウさんは興味津々なもよう。でも、あげませんっ!
「で、それをどうするんだ?」
「クロヒメさんに食べさせる」
「アレをこれ以上、酷くするのか」
「今よりはマシになるかと」
早速、クロヒメさんを捕まえます。でも、想像以上に抵抗してきました。
無表情で高速四足歩行はSAN値が1D6で失われるのでNG。
数人ほど一時的な狂気に陥りましたが、変態たちは普段とまったく変わっていませんでした。一時的な狂気に謝れ。
あと、レギガンダー君は速やかに帰って来なさい。女の子になるなんて許しません。
「捕まえたぞ!」
「がっちりお尻ホールド凄いですね」
「ここが一番、掴みやすいだけだ」
ルオウさんが、がっちりとクロヒメさんをホールド。
くそデカおケツを鷲掴みにされた彼女は腕だけをカサカサさせております。
「よぉし、こいつを喰らい……やがれぇぇぇぇぇっ!」
特に炎は出ません。お餅だけです。
先ほどの虚無り餅をクロヒメさんに食べさせます。
すると緑色の輝きが「お? いいのか? いいんだな?」とハッスルし始めたので、俺は緑色の輝きが他の者に影響を与えないように桃力でクロヒメさんを包み込み厨房へぽいっちょ。
直ちにDチームと共に厨房から退室。ドアをそっ閉じしました。
それでもドアの隙間から緑色の輝きが漏れて戦慄しました。
何これ怖い。桃力、もっと頑張って。
「……そろそろ、いいかな?」
「何が起こったんだ?」
「知り過ぎない方が良いんだぜ。人間以外の未来が失われる」
そろ~とドアをちょっぴり開けて中を確認。
なんか、色々な物がぐつぐつ煮立ってます。早く時間を戻さなきゃ。
その中心にやたらと緑色の輝いているクロヒメさんの姿。
どうやら昆虫期を過ぎているようで、しっかりと二の足で立っております。
いや、立ってないわ。宙に浮かんでるわ。
「やり過ぎたか」
「……アレを制御しようなんて考え自体が無茶よ」
黒エルフさんの言う通りでした。でも、桃力じゃ進化が遅いんですよねぇ。
「そうか、こんなにも簡単な事だったのね」
そう言い残してクロヒメさんはどこかへ飛び立っていきました。
「あぁっ!? 厨房に穴がっ!?」
「えっ? 驚くとこ、そこ?」
モヴァエさんの、心に滲み渡るツッコミに感動を覚える。
尚、クロヒメさんは後日、火星っぽいところで発見。回収されました。
完全に人間を辞めている感じがしないでもないけど、人間だそうです。
人間って怖いな~、とじまりすとこ。
三日後、プリエナさんたちと合流。クロヒメさんの回収に手こずりました。
現在は集中治療室で例の輝きを丁度いいくらいに除染中です。目がぐるぐるしていて怖かったです。はい。
「プリエナさん」
「やぁ、我らの救世主様」
「そんな大層な者じゃないんだぜ」
「うん、もっと格上だもんね。神様になって、一緒に雑用しようよ」
「おいぃ、それもノーサンキューなんだぜ」
狸様は本当に恐ろしいお方。いつの間にか俺は救世主にさせられてしまっていた。
でも、世界の平和は一人が作る物じゃないので、考え方を変えると全ての命が救世主。
「それよりも、ピースコロニーにジャーク十三世の痕跡があったよ」
「キルラーズを諭した可能性のあるおっちゃんだっけ?」
「そうだけど、そうじゃないね。どうやら、彼は【鬼化】を解除する術を持っているみたいなんだよ」
「えっ?」
てことはなんだ? 接触した際にジャーク十三世がキルラーズが鬼になっていたことを知って、鬼化を解除したってことか?
それなら、連中が桃力で死んでいないにもかかわらず、再生してこなかったのも頷ける。
あぁ、そうか。女神マイアスはキルラーズがキングキルラーズの暴走にも耐えられるように鬼化させていたんだ。
でも、解除されちゃったから計画は破綻した。
「……キルラーズは完全に自滅したのね」
「これは酷い」
でも、ある意味で苦しまずに逝けたのか?
あぁ、ダメだわ。エリンちゃんで散々に精神をやられてるわ。
ある意味で凌辱ものですぞっ。
「それで、そのジャーク十三世っておっさんはどこに?」
「たぶん……【全ての命の悪意】の下だね。全ての邪悪、悪意を返して、その上で倒すつもりなんだよ」
「無茶だ」
「彼にはそれしか選べる道が無いの。人類に絶望し、それでも人類を信じたが故に」
まるで、そのジャーク十三世のここまでの人生を見続けてきたかのような言い方は、きっとそうなんだろうなぁ、と俺に思わせた。
「私はその当時の傍観者だったからね。ミオ君たちの戦いも見届けていたよ」
「にゃっ? そうにゃん?」
「そうだぽん」
にゃ~ん、とにゃんこびとたちが踊り始める。
それにつられたのは、プリエナさんの頭の上のたぬき人形だ。
「さて、宇宙平和機構はなんとかなったよぉ。新体制のリーダーにはカーマイン大将を据えたから問題は無し。これから彼は忙しいだろうけど……今は忙しい方が彼のためになるかな」
「何かあったの?」
「うん、いろいろ……ね」
バチコーン☆とウィンクを炸裂させてきたのは、これ以上は聞くなという事なのだろう。
なら、あれやこれと聞くのは無作法というもの。
そして、真っ赤なまだら模様のドレスを嬉しそうに着ておりますはユウユウ閣下で。
「見て見て、久しぶりの力作よっ」
「ユウユウ閣下が、子供みたいにはしゃいでるんだぜ」
「うふふ、久しぶりに納得が行く染物ができたんですもの。あぁ、早くダーリンに見せたいわっ」
今、当の本人が俺の想いの中で「ひゅいっ」となったんですわ。止めて差し上げろ。
「それじゃあ、俺が特に何かをすればいいわけじゃないの?」
ユウユウ閣下から逃れるために、タヌキ様に話題を振ります。俺は悪くぬぇ!
「うん、宇宙平和機構には、暫く【勇者様】が付いてくれるから」
「勇者様?」
「【勇者タカアキ】。かつてのカーンテヒルの勇者で、今は宇宙の勇者様」
「活動範囲ひろすぎぃ!」
「でも、アニメオタク文明を広めて回るのだけは、ちょっと困ってるかも」
「平和になるんじゃないのか?」
「ありとあらゆる存在を美少女にしちゃうんだよ?」
「お、おうっ」
昆虫も美少女化するそうです。
さっきのクロヒメさんを見ても美少女化したいと言えるのかぁ? 俺は無理だ。
「それじゃあ、一旦エリシュオン星に戻る方針になるのかな?」
「そうだねぇ。いよいよ、決戦だよぉ」
こうして、最終決戦への段取りはほぼ完了した。
ただ、【全ての命の悪意】も準備に入っているもよう。
俺たちがぶつかるのは半年後くらいになると予測。
最後の強化期間をフルに使い、全てに決着をつけて差し上げろっ。




