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453食目 大いなる守護者

 ◆◆◆ A・ヴァストム中将 ◆◆◆




 これは由々しき事態だ。

 我が栄光のエリシュオン軍が成す術もなく大敗を喫するなど、あってはならない。


「状況を報告しろ」

「はっ、我がエリシュオン・B・マキアージュ大隊は宇宙平和機構の第89大隊と接触、戦闘に入りました。ですが……」

「……成す術もなく敗れた、と?」

「はっ、B・マキアージュ少将は敗走中に戦死なさいました」

「そうか。敵機動兵器について何か分かったか?」

「それに関しては、こちらを」


 報告兵は敵機の情報を私の端末へと送信する。

 タブレットの画面には敵機動兵器情報が表示されていた。

 酷く乱れた映像だが、敵機動兵器は人型。しかし、その姿は実に禍々しい。


 一言でいえば青い色の悪魔のような姿だ。


「これが宇宙平和機構の機動闘士ウォリアーだというのか?」

「いえ、そうであるかどうかすら。新型に間違いないでしょうが、今までとは全く違うようでして、過去のデータがまったく役に立ちませんでした」

「数の方は?」

「およそ……50万かと」

「――――これが、か?」

「はっ」


 これは拙い。対処もできない敵が50万だと? 馬鹿な。


「宇宙平和機構は現在Kラインへと進攻中です」

「Kラインと隣接するラインの防衛を強化しろ」

「はっ」


 これで一時凌ぎにはなる。

 だが、この新型をどうにかしない限り焼け石に水。


 実に面倒なことになった。

 用意周到に準備を進めていたのか、それとも技術提供があったのか。

 それとも、その両方か。


 今、エリシュオン星を潰すわけにはいかない。

 ようやく、未来を掴みかけているのだ。


「形振りは構っていられんな。通信兵」

「はっ」

「エルドティーネ・ラ・ラングステン殿に救援要請」

「―――っ! はっ!」


 彼女は今別行動をしているはず。彼女からの発破を受ければモモガーディアンズ本隊も急いでくれるはずだ。

 彼らが駆け付けてくれれば、多少なりとも勝機は見えてくる。


 だが、本当に50万なのか。

 我らが対処できる数の限界を超えているが、それは宇宙平和機構も同じこと。

 兵站など到底、維持できまい。


 加えて新型だ。それ相応のトラブルがあってもおかしくないというのに、【全て】が新型に置き換わっているなどあり得るのか?

 外側だけ変更したマイナーチェンジ機の可能性は?


「敵、Kラインに侵入!」

「なんだとっ!? 馬鹿なっ! 空間転移の予兆を見逃したのかっ!?」

「そ、それがっ……予兆パターン観測できませんでしたっ!」

「な……なんということだっ!」


 空間跳躍の予兆すら掴ませない、などあっても良いのか!?

 これでは科学技術に置いても我々が劣っている事を示してしまっている!


「Kライン防衛隊混乱っ! A・ヴァストム中将っ!」

「ぬぅぅぅ……!」


 我が軍が誇る宇宙専用機獣【ザイリニガー】が次々と撃墜されてゆく。

 超大型ブースターを二基備え、大型クローと大口径ビーム砲を備えた高速戦闘型の機体が成す術もなく撃破されていった。

 宇宙を駆ける真紅の矢、と恐れられた機動兵器が青い悪魔によって、まるで赤子の手を捻るかのように駆逐されてゆく。


 他のラインから援軍を回しても、手薄となったそこから敵が侵入してくるはず。動かせない。


「我が方の増援はどうかっ」

「現在、緊急発進中ですっ」

「これでは間に合わぬっ!」


 ダメだ、このままでは……!


『なんか大変そうやなぁ? 手伝ったろか?』

「む……この声は」

「はっ、エルドティーネ様より【大き過ぎるから】と先に送られてきた巨大な小惑星です」

「君は? そして小惑星で何をするつもりかね?」

『うちはグリオネ。そんで、こいつはG・アースや。ごっついんやで、こいつ』


 一応はモモガーディアンズの一員で、小惑星は何かしらの兵器という事か。

 いや、今は悩んでいる余裕などないはず。


「我がエリシュオン軍は貴官に救援を要請する」

『よっしゃ、うちの連中が来る前に、ひと暴れしたろやないかい!』


 通信映像は切られた。果たして……こう言っては何だが、痴女に何ができるのか。

 うむ、あの姿はない。うん。


「小惑星に反応あり! Kラインに移動中!」

「むっ?」


 自力で航行できるというのか? それにしては推進装置らしき物がないが。


「宇宙平和機構第89大隊がG・アースに気付いたもよう! 攻撃を開始し始めました!」

「攻撃が分散したか。これで少しは耐えれれば良いが」


 Kラインの消耗率は既に四割を超えている。これ以上は持ちこたえられないか。


「我が方のエースは出すな。犬死をしてもらっては困る」

「し、しかしっ!」

「今は耐えるのだ。アレにはザイリニガーで対処できん」


 少し早いが……我が軍も新型を投入するしかない、か。


「通信兵、連絡を……」

「G・アースに異変っ!」

「何っ?」

「映像、出ます!」


 小惑星が砕けてゆく。もう破壊されてしまったのだろうか。


『いっくでぇぇぇぇぇっ! チェェェェェェンジ! G・アース!』


 やたらと汚い声。それと共に劇的に崩壊速度が速まるG・アース。


 だが、私のカメラアイが不具合を発生させていないのであれば、小惑星は人の姿へと変化していっているように見える。

 そんな事があってもいいのだろうか。エリシュオン星にすら、そのような機能は搭載されていない。


 仮にそのような技術力があっても、そのような愚かな真似はしない。

 拠点だぞ、拠点。


 拠点に直接戦闘をさせてどうするというのだ。信じ難い。


『うおっしゃ! やったるでぇ!』


 それは、あまりにも大雑把過ぎた。

 それは、あまりにも雄々しかった。

 そして、あまりにも大き過ぎた。


「動いている……あれが人の意思で動いているというのかっ!?」

「G・アース、kp……53億を突破! これ以上は計測できませんっ!」

「アレにエリシュオン星を超える光素が蓄えられているというのかっ!?」


 G・アースの光素が更に高まってゆく。まだ向上させるというのか。


『おんどれら、好き勝手やってくれたなぁ!? こいつはお返しや!』


 G・アースが両手を突き出し、それを腰だめに構える。


『ブロォォォォォクンっ! シャウトォォォォォォォォっ!』


 ……腰だめに拳を構えた意味が知りたい。


 G・アースが行った攻撃は、どうやら雄叫びを音波砲にしたもののようだ。

 しかし、それはザイリニガーがどうやっても傷付けられなかった青い悪魔の装甲を崩壊させてゆくではないか。


「ぶ、分子分解砲ですっ!」

「な、なんだとっ!? この規模でかっ!」

「は、はいっ! 敵軍、三割が消滅っ! 残存勢力も著しく防御力が低下中のもよう!」

「我が方の被害はっ!?」


 あの戦場には我が兵もいる。

 あのままでは全滅の可能性もあったが故に強くは当たれないが、苦情は伝えねばなるまい。


「損害……0! はぁっ!?」

「なんだと? 完全に音波砲の範囲内だったはずだ!」

「いえっ! 艦隊、機獣ともに損害無しです! 状況は完全にこちらに傾きました!」

「なんということだ……G・アースとはいったい……!?」


 混乱する我々にG・アースからの通信。


『どや? 機械人のお偉いさん』

「グリオネ君といったね? 助かったよ」

『へっへっへっ、感謝しぃ。G・アースは全ての平穏を信じる者の【守護神】や。あんな【悪意の塊】を使う連中に負けたりなんかせんわ』

「守護神……G・アース」

『残りも、いてこましたるわ! ほな!』


 通信は切れた。このタイミングでモモガーディアンズの艦隊もワープアウトしてくる。


 連中の賑やかな声が通信を乱しに乱した。


「賑やかな連中ですね、ヴァストム中将」

「あぁ、頼もしいばかりだ」


 最早、我々に出番はなかった。

 宇宙平和機構は散々に叩き潰され、止めとばかりに空間を引き裂いて飛び出してきた巨大な何かにことごとく貪り食われ消滅。

 やがてそれは縮小してゆき、一機の戦機へと姿を変えた。


「エルティナイトですっ!」

「あれが―――」


 果たして、どちらが悪魔なのか。

 あまりに禍々しく、そして、どうしようもないほどに縋りたくなる希望。


 それは恐らく【毒】だ。抜け出せなくなる【優しい毒】。


 確実に頼り過ぎてはいけない存在。

 だからこそ我々は冷静に、彼女らとの距離を考えなくてはならない。


『A・ヴァストム中将、遅くなったんだぜ』

「いや、【守護者】が我らの危機を救ってくれたよ」

『そっか』


 G・アースの活躍は―――彼女の咆哮は、エリシュオン星の同志たちにも伝わったであろう。


 エリシュオンの守護者、G・アース。

 そのように呼ばれるようになるまで、そう時間は掛からなかった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒュリ「(・ω・)スクラップ、おいしいです」もぐもぐ ナイト「(^o^)それは燃料です」 ヒュリ「結構いけるわね」グビグビ レキ「最近の外殻って有機素材でできてるんだー(白目」 主任「味も…
[気になる点] >小惑星に感あり! 誤字か分からないので修正の方は入れませんが艦でしょうか?
[一言] 守護神ぽっちゃり 姉貴「なんか拝み倒されてる気配が…」 珍獣「あんだけ目立てばな…」 姉貴「供え物されてるんや…女の生贄の…」 珍獣「男を供え物にしろと言っとくぜ」
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