443食目 エリシュオン星へ
桃会議からちょっぴり時間が過ぎ、いよいよ俺たちエルフ組がエリシュオン星にお呼ばれされることになった。
この会談を成立させて休戦協定からの終戦協定を結んで、国交樹立と行きたいものだ。
あ、この場合は惑交というべきか? それとも星交というべきか? よぐわがんにゃい。
「準備はいいか? 側だけ大人」
「おいぃ、中身だって大人っぽいぞ」
「……え?」
「え?」
さり気なく親友に疑われましたが俺は元気です。
「H・モンゴー君。覚悟はいいかね?」
「も、もちろんですっ! 我が主っ!」
H・モンゴー君は元エリシュオン軍人なので、案内役として連れてゆく。
一応は反逆者であり、脱走兵なのだが、そこはC・スルト少将にお願いして、ちょっとばかり事実を改ざんしてもらう。
つまり、H・モンゴー君は精霊戦隊に【スパイ】として潜り込んだ、といった感じにしてもらったのだ。
これなら特別任務だった、と言い訳できるであろう。
それに、彼には会談を成功させるために、とあることをしてもらう。
エリシュオン星にはエルティナイトで向かいます。なので、何かあった際はこいつで大暴れします。不正はなかった。
仮にだけど、俺が生身で暴れてもいいなら、そうする。その場合はぺんぺん草も残らんが。
ヒュリティアとザインちゃんもいるからね、仕方がないよね。俺が加減しても他が加減しないんだもん。
だからエルティナイトは一種のセーフティ。
大暴れしても、大暴れ過ぎない、という訳の分からなさは機械人にとっての有情になる。
「来るぞ」
ルオウの宣言通り、キアンカの郊外に、にゅるんと機械の巨大エイが飛び出してきた。
どうやら空間跳躍をおこなったらしい。
「これができるのに、なんで今までしてこなかったんだ?」
「できなかったんだと。途中で空間が歪められて最悪、【無限牢】に閉じ込められるそうだ」
「無限牢って?」
「脱出不可能の時空の歪みだ。内側からじゃどうにもならない」
「わぁお」
たぶん、始まりの大樹がなんやかんやしていたのだろう。交渉のために、一機だけ招き入れたんだろうなぁ。
巨大エイのお腹から光線が伸びてきて地上に接触。
それが消える、とそこには軍服姿の機械人の姿。
「やぁ、暫くぶりだね。エルドティーネ・ラ・ラングステン」
「C・スルト少将。わざわざ自分できたのか」
「そうするだけの重要人物であることを、自覚してくれると助かるのだがね」
彼は皮肉めいた物言いをしたが、そこに嫌味は無い。
右手を差し出してきたのでそれを握る。
「色々と禍根は残っている。しかし、この会談が上手く行けば戦いの歴史に一応の終止符を打てるはずだ」
「もちろん、上手くやって見せるさ。戦う原因を解決すれば、もう無駄な血は流さずに済むんだから」
エルティナイトを巨大エイに搭載させる。というか自分で動けるからな、こいつ。
『お茶と煎餅をくれ。お茶は熱々で』
「おまえなぁ……一応、よそ様の戦艦やぞ」
エルティナイトはどこでも同じでした。
もうちょっと謙虚な態度で臨んでどうぞ。
VIPルームに通された俺たちは機械人たちのもてなしを受けるも、彼らは光素のみを補給する種族なので、気の利いたもてなしはできないっぽい。
いちおう、光素茶なる物を出してくれたものの、純粋な光素にお茶っぽい味のデータが付け加えられているだけであった。
もちろん、俺たちには飲むこともできないという。
でも光素に味を付けるという技術は俺たちの方が遥かに先に進んでいる。
それはエルティナイトがバリバリ食べているであろう煎餅でも分かること。
俺たちにはお構いなく、と困惑するお世話係を安心させて小腹を満たすためにフリースペースから料理を取り出す。
尚、俺たちの小腹とは常人のディナー十回分。
小さなテーブルじゃ収まらないので至る所に料理がドヤ顔している。
「ママ上、一気に全部出さなくともよかったのでは?」
「奇遇だな。俺もそうじゃないかなぁ、とか思ってた」
「……やはり、雑にテーブルに置けるホットドッグは至高」
お世話係の女性型機械人のおっぱいにホットドッグを挟む黒エルフは邪悪の権化。
執拗に機械人を「らめぇ」させるヒュリティアは既にホットドッグを光素化していたもようで、お世話係さんの衣服などに汚れは無い。
「……さぁ、どっちの口で頬張りたいのかしら? 上? それとも……下かしら?」
「ひぎぃ、許してお姉様っ」
いいから、はよ食わせろ。そういうのはユウユウ閣下の仕事だから。
それでもヒュリティアはホットドッグにだけは真摯である。
ちゃんと正式な食べさせ方をさせたので114514点を贈呈。
「え? これが全部、光素っ!? それにこのデータはっ!」
「……それがホットドッグ。至高の料理よ。しっかりと味を覚えなさい」
「ああっ、新しいデータが身体を駆け巡るっ! こんなの初めてっ!」
なんか、エロいことになってる。
普通にホットドッグを食べてるだけなのに、ビクンビクンしてる。どういうこと?
「これは私も覚えがございますな」
「そういえば、H・モンゴー君が光素料理を機械人で食べた第一号だったな」
「その通りでございますっ、我が主!」
「暑苦しいっ」
むっはー、とテンション増し増しなH・モンゴー君は華麗にスルー安定。
その後も着実にお世話係ちゃんはヒュリティアの毒にやられてゆく。
この先は見せられないよ! の看板で酷い絵面をガードするも、俺たちはそこまでの防衛力は無く。
モザイクー! 早く来てくれー!
三十分後――――哀れにも半裸でビクンビクンしているお世話係ちゃんの姿がっ。
「……彼女は死ぬほどビクンビクンしている。起こさないでやってあげて」
「壊れるなぁ、機械人」
「せめてアヘ顔をどうにかするでござる」
取り敢えずハンカチを顔に掛けておいた。機械人は呼吸が必要無いからだ。
「H・モンゴー君、あとどれくらいでエリシュオンに着きそう?」
「そうですな……一時間ほどでしょうか。エネルギーチャージを挟むので」
「結構遠いんだ」
「空間跳躍といっても限度がございますので」
ほ~ん、と窓から外の景色を眺める。さっきから代わり映えのしない宇宙の景色はエネルギーチャージをしているからか。
「空間跳躍中は景色がグネグネしていて気持ち悪いでござるなぁ」
「俺もそう思ったけど、ヨーグルトにフルーツソースを掛けて混ぜた時のような感じで美味しそうに見えたんだぜ」
「……流石はエルね。それで……味は?」
「不味かった」
「いつの間に食べたのですかっ、我が主っ!?」
いや、食べるだろ。そこに変わった食材があるならば。
でも、この俺の信念を理解してくれる者はなかなかいないんやなって。
ヒュリティアとザインちゃんにも「食べる?」と問うたら、スッ……、と顔を背けました。
なのでH・モンゴー君に無理矢理食べさせたらバグりました。俺は悪くない。
「んん~! 時が見える! 時が来た! 来てるぞっ!」
「……どうするのこれ?」
「そのうち直るだろう。H・モンゴー君やし」
「……それもそうね。直らなくても変わらないだろうし」
「何気に酷いでござる」
「時は来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
一時間後、H・モンゴー君の予想通りエリシュオン星に到着。
エリシュオン星はルオウたちの事前情報通り、機械で出来た巨大な惑星であった。
「でかっ。よくもまぁ、こんな巨大な物を作ったもんだなぁ」
「最初は小さな宇宙船だったそうです。我が主っ」
普通に立ち直ったH・モンゴー君は伊達に精霊戦隊で生活してはいなかった。
情けない性格だけど、割とタフなんだよね、こいつ。
「……酸素とかはあるのかしら?」
「他の惑星から連行してきた有機生命体の関係もあるので、それらを管理するエリアがありますゾっ。それ以外はエネルギーの節約で酸素はございませんが」
「……それもそうね。じゃないとDチームの連中が生きて行けないだろうし」
疑問も解決したところで巨大エイがドックへと帰港。
ドッキングアームで固定されてエンジンを停止させる。
「到着したようですぞっ」
「いよいよか。観光する時間はあるのかな?」
「ママ上っ、一応は敵陣ですぞっ」
「そもそも、期待するような食材は無いでしょうに」
「今の俺は金属も食える」
「「「その発想は無かった」」」
遂にエリシュオン星に到着。
これより二つの星の未来を賭けた舌戦が始まる。
でも俺は割とリラックスモード。
既に勝敗とかどうでもいいし。まずは飢えた者の腹を満たしてから。話はそれからだ。
「H・モンゴー君、準備はいいか?」
「もちろんです! 我が主っ!」
「よろしい。では、決戦の場にユクゾッ!」
エリシュオン軍との決戦は武力ではなく。
しかし意地と意地とのぶつかり合いになるであろうことが予想されるのであった。




