433食目 宇宙戦仕様機を考えてみよう
それは唐突な話であった。
俺とヒュリティア、そしてザインちゃんがアストロイの自室でまったりとマザーの甘やかしを享受していたのだが、そこに真夏の変態プレイをやりまくっていたヤーダン主任が転がり込んできたのである。
「アイデアください」
「そんな事よりも、あなたに羞恥心をあげたい」
ほぼ全裸で謎の輝く粘液を纏った痴女はそう言った。
海産物の臭いがしたが、ここは海から遠く、しかし海鮮丼でも作っていたのだろうか。
いや、それにしてはそそる臭いではなく。うっ、となる不快な物。
「くちゃい」
『汚物は消毒いたします』
「この匂いがいいんじゃないですか。それに新たな命の素になんてことをっ」
「換気扇を回すんだぜ」
「介錯いたす」
「……そんなことよりもホットドッグ食べましょう」
「ばぶー!」
『「「「ごめんなさい」」」』
だが、この混沌はハイハイを習得したアクア君によって収められたのであった。
マジイケメン。
「ふぅ、水の精霊魔法は簡単で便利ですね。洗浄と衣服の生成が簡単に」
「あ~い」
「それ、めっちゃ難しいからな?」
ヤーダン主任は水の精霊魔法を用いて謎の粘液を除去。然る後に水の羽衣を纏ってド変態から綺麗なお姉さんにクラスチェンジしました。
「……これが本当の水商売」
「ヒーちゃん?」
「……ホットドッグ、オイシイナー」
くっ! なんということだっ! ヒュリティアまで汚染されてしまった!
「いろいろと酷かったから混乱したのでござろう」
『寧ろ、一時的な狂気に陥っているのかもしれません』
「何か混乱させてしまう事でもあったのでしょうか?」
いろいろとヤーダン主任の人間性が失われつつある。
やはり虎熊童子はダメだな。またカオス丼を喰わせて反省を促さないと。
「あ、それよりもアイデアですよ」
「アイデア? なんの?」
「宇宙戦仕様機です。私たちだけでは予算オーバーしてばかりなんですよ」
「何を作ろうとしているんだよ」
「えっとですね……」
……宇宙をかっ飛ぶ【武器庫】とか頭がおかしい。予算なんて幾らあっても足りんわ。
「それは無茶苦茶なんだぜ」
「ところがですね、何故か私たちが揃って話し合うと【結論】がこうなるんです」
「ダメだこいつら、早くなんとかしないと」
いや、分かるよ? 性能を突き詰めたらそうなるって。
重力から解き放たれたら、あとはやりたい放題になるし。
「俺たちに必要なのは数なんだぜ。それも、そこそこの性能で生存率の高い機体」
「それを突き詰めると、何故かこうなってしまうんです」
「それ、もう戦艦と変わらないよね?」
「ロマン力が不足しているんですよ。この巨大なオプションパーツをパイロット一人で操作し、使いこなすからこそ燃えます」
「う~ん、このっ」
俺たちは頭を抱えました。
どうやらメカニックチームは最近、ぶっ飛んだ敵ばかりを相手にしていたせいで思考がバグっているらしい。
「へいへ~い、きいたぜぇ」
「あっ、エリンちゃん」
ば~ん! とやる気がそがれる擬音と共にエリンちゃん登場。
ビキニの上にツナギという刺激的な姿だが、色気よりも健康さが目立つので割とエロくない。
逆にアナスタシアさんたちはくそエロい。これが大人との差というものか。
「お父さんに任せればいいんじゃないかな?」
「マーカスさん、か。う~ん、でも、大丈夫かな?」
「大丈夫っ、まだ汚染されてないよっ」
『「「「これは酷い」」」』
情け容赦の無いエリンちゃん発言に、彼女の中の精霊王もにっこりであったとか。
尚、精霊戦機エリンは遂に膝まで製造が進んでいる。パーフェクト・エリンに至る日もそう遠くないとのこと。
あ、そうそう。ファーラの事だがパイロットが決まった。
なんと【モフモフ】です。
あの毛玉、ファーラに適性があることが発覚。
あいつは確かにメスだけどさ。
あと、どうやって操縦してんだろうか。気になる。
ガラクタ号はウサちゃん号の強化パーツとして改造。
一応は操縦できるけど、脱出装置としてしか機能しなくなった。
この強化でウサちゃん号は【デリバリーウサちゃん号】へと進化。
エネルギー弾薬の補給の他、簡易修理装置を搭載。
前線の維持に期待が持てるようになった。
尚、あまりにも優秀だったので量産計画が持ち上ってます。
憎怨との戦いでも実証できたからね、仕方がないね。
「マーカスさんはキアンカ?」
「今日のお昼ごろに、ここに来るって。アインファイターがあるからすぐだよ」
「アインファイターを宇宙用にすればいいんじゃね?」
「あっ」
沈黙。そして気まずい空気はお子様の俺でも分かるわけでして。
「あのね、エルドティーネちゃん。こういうのは、ちゃうねん」
「なんでぽっちゃり姉貴口調?」
「そうやねん。ロボットの開発はロマンやねん」
「エリンちゃんまでっ!?」
「流石に今のはママ上が悪いでござるやねん」
「ザインちゃん、無理はいけない」
「……ホットドッグやねん」
「ヒーちゃんは、そろそろ戻って来るんだぜ」
「……なんだか、冒涜的存在に再会した気がするわ」
「ヒュリティア殿が割と危なかったでござる」
俺が……いけなかったのか?
アインファイターこそが最適解だと思うのだが。
「その前にメカニックが過労死するんですよ。アインファイターって」
「あー、変形機構を熟知してないと危ないんだっけ? でも、コウサクンなら問題無くね?」
「あの子たちも忙しいですからね。戦機だけを面倒見ていれば大丈夫でしょうけど」
「戦艦とかも修理してるからねぇ」
「むむっ」
ヤーダン主任とエリンちゃんの言う事も一理ある。
ロボットとはいえ、二十四時間フル稼働していればコウサクンも参ってしまうだろう。
となると宇宙でそこそこ戦えて、修理がくっそ簡単な機体となる。
「アインリール宇宙戦仕様でファイナルアンサーになるじゃないか」
「それ以上はいけないっ」
ああ言えばこう言う。ちみたちはこの結論に何が不満があるのかねっ。
「おんどるるぇ、話がまとまらんジャマイカ」
「エルちゃんは、極端なんだよ~」
「そうですねぇ、エルドティーネちゃんって、割と機能効率だけを求めるというか」
「そう、お料理にはロマンを求めるのに、戦機にロマンを求めないんだよっ」
「失敬な。俺にはムセル兄ちゃんという、ロマンの塊がいるんだぞ?」
「……いっそ、ムセルを量産化する? 安いし、扱い易いし、火力も十分よ?」
―――ただし、【動く棺桶】だけど。
彼女のその一言で、ムセル兄ちゃん量産化計画は白紙になりました。
「取り敢えず、マーカスさんが着いてからだな」
「……ビックリするほどに意見が極端よね。私たち」
「そうでござるなぁ」
尚、ザインちゃんの考えた戦機は【僕が考えた最強】系でした。
こんなの、宇宙をかっ飛ぶ武器庫となんら変わらないよっ!
あと、イラストが冒涜的過ぎぃ! 女神マイアスもにっこりだぞ!?
あ、俺のイラストの事は忘れてくださいお願いします。
ザインちゃん以上の衝撃とか言われて本気で凹んでおります。ひぎぃ。
「あ? 戦機の宇宙戦仕様機だぁ?」
「うん、いろいろと意見が出過ぎて決まらないっぽい」
「要点を決めねぇで、ぐだぐだとくっちゃべってるから決まらねぇんだ」
発着場にて、アインファイターから華麗に降りてきたマーカスさんは、そう告げた。
これに俺たちはポカーンと間抜けな顔を晒す。
その後、ターウォの喫茶店へと移動。
そこでマーカスさんを交え、宇宙戦仕様の戦機開発案を求めた。
「数を作るのであればまずはコストだ。どれくらいまでがいい?」
「えっと……一機当たり、この程度で」
「なら、アイアンクラスがいい」
「でも、防御面が……」
「ここ最近の戦いを経験して分かったんだが、もう防御は意味がねぇ。それなら機体を限界まで軽量化して回避特化の方が生き残れる」
「うっ……基本的な事を忘れてました」
これにはヤーダン主任も圧されっぱなしですぞ。
正論過ぎるし、マーカスさんも実際に戦場に立っていたし。
でも、ヤーダン主任も戦場で戦っていたんだよなぁ。この差よ。
「お待たせしました。コーヒーフロートになります」
「……私」
「こちらは、メロンソーダになります」
「俺なんだぜ」
「緑茶です」
「拙者でござる」
アダルトたちは揃ってブラックコーヒーでした。
「こちらが【蜂蜜増し増しウルトラクソ甘ミルクティーどろどろスペシャル】になります」
「私~」
なんだその頭がイカれている飲み物は。
ミルクティーどこだ? ここか? ほぼ蜂蜜じゃないか。
というかネーミングっ。
よく一息で言えたなウェイトレスさん。
「うわ……」
「……うわ」
「うっわぁ……」
んずぼぼぼぼぼっ、と消えてゆくエリンちゃんのどろりとした何か。
それはヤーダン主任の顔面についていたアレを想起して、なんだか冒涜的な臭いがしてきた。
「武装は補給効率を考えて、【光素系】に絞った方がいいな」
「でも、対光素バリアを展開すると……」
「実体剣でも持たせておけ。軽量機体だから、すり抜けざまに斬り易いのがいい。それでも嫌だってやつは自分で全部用意しろって言っておけ。戦機乗りなんだからな」
「それもそうですね。あっ、軽量機体だと大型スラスターもいいですね」
「そのためのハードポイントだろ。エースパイロットの要望に応えられるように、オプションのバリエーションを増やしておけ」
「それなら、少ない費用で特化型を増やせますね」
「あぁ、後の時代にも使えるしな。たぶん、この戦いが上手く行けば……」
「人類の次代は宇宙がメインになる、と?」
「ふん……そこまでは知ったこっちゃないさ。俺はロートルだからな」
あれれ~? ヤーダン主任が真面だ。どういうこと?
「やっぱり、お父さんは汚染されてなかったね」
「エリンちゃんはいろいろと毒されているみたいだけど」
「これ、精霊王の好みだよ? 私はこの後に梅昆布茶を飲むもん」
「渋いなっ!?」
エリンちゃんは精霊王が活動している分、食べる量も増えました。
元々食べる子だったけどね。
でも、これでエンゲル係数が爆上がりですぞっ。
「ま、これを限度として煮詰めてみることだ。あと、各社の生産工場にも連絡してみるんだな。利用できる生産ラインがあるかもしれん」
「あっ、そう言えばそうですね。何も我々で全て作る必要もなかったです」
「おいおい、大丈夫か? 何もかも背負ってちゃあ、上手く行くものも行かなくなるぜ?」
これにはマーカスさんも苦笑であったという。
そう言えば、最近は何もかもを背負っちまっていた気がする。
少しばかり他の皆にも頼ってもいいのかも。
「これで、目途が付きそうです。マーカスさんが来てくれて本当に助かりました」
「こんなのでいいのかよ? いったい何を作ろうとしてたんだ?」
「えっと……」
当然、マーカスさんは呆れましたとも。
でも、そんな彼も興味を示す内容が一つ。
「アインファイターの宇宙戦仕様、か」
「マーカスさん?」
「エルドティーネ、おまえ……それ使えるかもしれんぞ?」
「え?」
「何も馬鹿みたいに作らなくてもいいんだ。一部のエース級に支給すればいい。短時間で成功させなきゃならねぇ作戦も出てくるだろうが。宇宙だろうが大気圏内だろうがよ」
「あっ、そうか」
更にマーカスさんはファイターモードに簡単に取り付けれるオプションブースターも考案していたらしい。
戦闘機に変形できるからこその、単独大気圏突破装置とのこと。
割と無茶な考えを持っていた感。
「まぁ、片道切符のロケット弾だがな」
「いや、これは使えますよ。うん。これもおやっさんに話しておきますね。ふひひっ」
脳汁がドバドバ出ているであろうヤーダン主任は、いそいそと開発案を書き殴った紙を纏め、㊙ファイルに閉じた。
表情がかなり危険。いろいろと達しちゃった感。お子様は見てはいけない。
こうして、開発の目途が付いたわけだが、変態どもが大人しくしているわけもなく。
彼らが、こっそり節約した費用で珍兵器を開発していたことに気付くのは、全てが完了してからであったという。
おまえらなぁ……。




