430食目 反則とはこうやるのだ
何が起こっているのか分からねぇ。
決して、幻や白昼夢を見ている、というちゃちなもんじゃねぇってのは確かだ。
あまたある腕の一本を軽く振っただけで星の一つが消え去ったんですが?
星座が崩れるから止めて差し上げろっ。
「絶対に直撃するなよっ!? 絶対だぞっ!」
『さっき直撃したにゃ~ん』
「普通に耐えたのっ!?」
何かがおかしい、くそデカにゃんこ。
その正体は思念創世器だというが、幾ら思念創世器だといってもアレの直撃を耐えるとか色々とおかしい。
それと桃太郎もおかしい。基本的に歴代桃太郎もやりたい放題だったようだが、このロボット桃太郎もやりたい放題が過ぎる。
『オープン・ビースト!』
分離、合体、変形、進化。それを戦闘中にしまくる。
進化を混ぜたせいで、どんどん強くなってゆく、という訳の分からない状態に。
そして笑顔の絶えない職場になってるもようで。
尚、Dチームさんたちの笑顔は見せられないよ! SANチェック案件だからっ!
あぁっ!? 緑色の輝きが宇宙の彼方からチラ見なさってる!
お願いだから、彼らは放っておいてください! オナシャス!
「くっ……辛うじて許されたっ!」
「……何に?」
「ヒーちゃんは知らない方がいい。この先は深淵よりも暗くて深い」
「……そう」
黒いエルフさんは興味が無さそうでした。
さて、何もして無さそうな俺ですがしっかりと仕事してます。
裏三千大千世界とかいうクソ迷惑なふぁっきゅん中ボスの攻撃を全部相殺しています。
たまに相殺できなくて星が砕けてるけど、生物がいないからセーフ。
生物が存在している星って貴重なんやぞ?
幾ら宇宙が広大だから、って必ずしも存在しているわけじゃないから。
それを容赦なく全部破壊しようとしているのだから大変だ。
しかも、それが余裕で可能、という規格外のバカタレです。
「抵抗をするな! 下等生物どもっ!」
『あぁ!? その下等生物も殺せねぇ、ゴミ屑が笑わせるなぁ!』
ちょっぴり出番が無かったせいか、無茶苦茶ハッスルしているDチーム。
進化に進化を重ねているせいで桃太郎が悪魔的な形状になりつつあるのだけど、いいのかこれ。
遂に刀じゃなくてツーハンドアックスになっちゃってるけど。
『にゃ~ん、こいつ大きいだけにゃ~ん』
『さっきの厄災と同じにゃ~ん』
やっぱりおかしいビャッコニャンガー。
裏三千大千世界の拳の直撃を受けても、その全ての衝撃を完全に受け止めている。
しかも、機体に一切の損傷を確認できないのだ。
獅子はシマウマの強烈な後ろ蹴りを受けてもビクともしないというが、流石にこれで例えるのはアレなんですがねぇ。
「ママ上、先ほどからビャッコニャンガーがぶれて見えるのですが」
「え? 俺は別に」
「……っ、良く気付いたわね。私でも目を凝らさないと見えなかったわ」
えっ、えっ? 見えてないの俺だけ?
「ぐぅぬぬぬぬ……み・えたっ!」
光の枝の力を使って意識を加速させました。
じゃないとこんなの見えないよっ!
確かにザインちゃんが言うように、ビャッコニャンガーが幾つにも折り重なって見える。
まさかとは思うが、あれ全部がビャッコニャンガーなんじゃないだろうな。
あっ、また裏三千大千世界の攻撃がミオにヒットした。
その時、俺は見た。
ビャッコニャンガーに重なっていたビャッコニャンガーの一つが砕け散ったのを。
「し、思念創世器を幾重にも重ねている? そんな事ができるのか?」
「……一人じゃ無理ね」
「ってことは、ビャッコニャンガーに乗っているミオ以外も?」
「……或いは、その全て」
「マジか」
ということは【決して砕けない】、【決して折れない】獣が戦っている?
想いは尽きることなく、想いは冷めることなく、求める結末に向かって疾走することができる獣たちだからこそ、思念創世器は極まったというのか。
「にゃんこびとってスゲェな」
「にゃんこびとというか、ミオが特別なんでござろう」
「……そうね。どこまでも真っすぐで邪心が無い子だから」
だからこそ、奇跡は微笑む。
それが俺たちが導き出した結論。
そんな彼らのために、俺たちができる事はひとつ。
全てを救い幸福へと誘う事。
それは……憎怨っ、おまえたちも含まれるんだっ!
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!』
がぶっ。
『あいたぁっ!? おいバカやめろっ!』
『がるるるるるっ!』
あっ、暴走中のクロヒメさんが裏三千大千世界のケツに噛みついた。
効果は、ばつぎゅんだ!
「……チャンスよ!」
「おっしゃ! 酒呑童子っ! セット!」
『ここに立ってればいいのかなぁ~? ひっく』
まずは入れ物を用意します。これが無いと始まらない。
ちょっぴり危ないけど、ブシンオーの手の上に酒吞童子をちょこんと……酒盛りをおっぱじめやがりました。一応、憎怨との決戦やぞ。
まぁ、いい。酔っ払いには何を言っても無駄だ。
「ユウユウ閣下、ここに来たからには協力してもらうぞっ!」
「いやぁん、ダーリン、ここでしちゃう? しちゃう? 見せつけちゃう?」
「馬鹿者。出番だ」
「あぁんっ、焦らすのがじょ・う・ずぅんっ」
ダメだこいつら、早くなんとかしないと。
乳繰り合っている異種間恋人たちをさり気なく引き裂く。情けは無用らっ!
「もう、良いところだったのに」
「終わってからにしてください」
「しょうがないわねぇ。それじゃあ、いっくわよ~」
ユウユウ閣下にお願いするのはもちろんアレ。
「超重力破界砲! すたんば~い!」
きゃぴっ、とかいう効果音がなんとも。
ユウユウ閣下のてへぺろも頂いたところで砲撃の準備。
超重力破界砲を駄々洩れさせずに一点集中型にする。
豪華絢爛、枝を十六本使って円を作り、その中心に超重力破界砲をセット。前方へ向けて発射。
「オワルセカイ……発射!」
ターゲットはもちろん裏三千大千世界。
これは憎怨の入れ物なので、ぶっ壊しても構わない。
寧ろ、完全に破壊しないと中身が取り出せない。
「―――――っ!」
桃太郎に気を取られていた裏三千大千世界に直撃。
桃太郎とビャッコニャンガーは闇の枝に丸飲みさせて速やかに回収。
一点集中した分、威力は更に加速するけど、その分、星に接触しようものなら大変。
と思ったら接触してないのにどんどん星が抉れちゃってる。ヤヴェよ、ヤヴェよ。
「張り切り過ぎちゃった。てへっ」
「てへっ、じゃないんだぜ」
ユウユウ閣下。マジユウユウ閣下。
流石にこれは拙いのでオワルセカイを枝たちに食べさせる。
全員げっぷをしているのは、甘すぎて胸焼けしているせいだろう。
こら、竜の枝は責任を持て全部食べなさい。
「うっぷ……」
貴重なシグルドさんのぐるぐる目。
相当に甘ったるかったもよう。
「……エルっ! 核が見えたっ!」
「っと、いけるな! エルティナイトっ!」
『誰に言っているぅ! ナイトはいつだって準備万端! 今、用意する!』
「準備出来てねぇじゃねぇか! 四十秒で支度しな!」
「四十秒も待ってられないでござるよっ!」
「……早くしなさい」
「『さーせん』」
やはり、俺たちはどこまで行っても俺たちだった。
「ユクゾッ!」
『応!』
仲良く頭にタンコブを作った俺たちは思念創世器カーンテヒルを構え突撃。
狙うは裏三千大千世界の核こと憎怨。
カオス・エルティナイトとなった今、距離、時間、その他もろもろなど意味を成さない。
斬る、そう思った瞬間、その行為は完了し、結果だけが残るのだ。
「――――なっ!?」
ばさり、と憎怨の上半身と下半身が切り裂かれた。
彼女には巨大なエルティナイトがいきなり出現したように感じているだろう。
それも当然だ。そのように全てを喰らう者の能力を行使したのだから。
「憎怨、おまえを斬るまでの【過程】を喰った。だから、おまえは俺の行動を【認識できない】っ」
そう、これは絶対だ。結果だけが示される。これぞ―――!
「必殺【オールイート・エンド】! 全ての過程は省略され、結果だけが示されるっ!」
「ば、馬鹿なっ!?」
おっと、ここからが本番だっ。
霧散しようとしている憎怨を思念創世器カーンテヒルに封じ込める。
『よし、エルドティーネっ! 納まったぞ!』
「おっしゃ! じゃあ、それを酒吞童子のケツにぶち込んで差し上げろ!」
『わぁい!』
「……酒呑童子がブシンオーで逃げ出したわ」
「酔っぱらっているのに早いでござるっ!」
「捕まえろっ! 何が何でもだっ!」
その後、十五分ほど掛けてブシンオーを捕縛。
面倒臭いので、そのままブシンオーのケツ越しに【ぬぷぅ】してやりました。
『ア―――――――――――っ!』
絵面はブシンオー、喘ぎ声は美少女という混沌が生まれました。
こりゃあ、ひでぇ。
でも、俺は謝らない。混沌だから。てへっ。
こうして、第六精霊界の危機はグダグダな展開で救われた。
もちろん、ノーカット生中継だったので、いろいろとアレだったっぽい。
実況解説のお姉さんズのニューチュービの配信動画はとんでもない閲覧数に。
これによって、モモガーディアンズの精霊戦隊は、あらゆる意味で伝説となったのであった。
何はともあれ、これでひと段落。
憎怨も無事に酒吞童子に封印できた。
あとは……大本、女神マイアスを救うのみ。
彼女を救ってこそ、真の意味で全てを喰らう者の旅路は終るのだから。




