409食目 新旧の四天王
淫鬼をユウユウ閣下に任せ、俺たちは先に進む。
アストロイにはガンテツ爺さん、レオンさんを除く精霊戦隊が所属。
クロナミ改は完全に囮として運用している。
そして、エルティナイトの偽物も建造。
こいつはただのハリボテ。クロナミの甲板の上にちょこんと乗せた偽物で、中身はぷち鉄の精霊のアインリールである。
おそらくだが、連中はエルティナイトがデカくなったり小さくなったりできる事を知らないだろう。
そして、俺がムセル兄ちゃんに乗っている事を知らないはず。
これは一度しか使えない奇策。
現に鬼たちはクロナミ改の方へと戦力を回している。
だからこそのガンテツ爺さんの配置。
彼の超火力はこの作戦の要だ。
懸念材料は、やはりキング。
彼の離反に従った戦機乗りも多い。
数は多くはない。
しかし、彼らがいる限り全ての命の意志が一つになる事は難しい。
できることなら説得できると良いのだが……でも、俺は最悪の結果も受け入れる覚悟だ。
今はレオンさんを信じるしかない。
『ヤーバン艦隊、後退』
『申し訳ない! 態勢を整えさせてもらう!』
「了解。再攻撃はドワルイン王国艦隊と合流してくれ」
『了解した!』
布陣の一角が崩れた。
でも、これは想定内。寧ろ、良く時間を稼いでくれた。
そして案の定、後退するヤーバン艦隊を追撃するヒャッハー共。
なんの策も立ててないはずがなかろうに。
桃色の大爆発が発生。一つ目小僧どもが吹き飛びながらバラバラになり、桃色の粒子となって天に昇ってゆく。
「ふっきゅんきゅんきゅん……桃力入りの地雷は痛かろう」
桃仙術【桃光地閃陣】。要は桃力で作った地雷。
これは普通の者が踏んでも効果を発揮しないが、陰の力に満ちている者が踏むと桃力が爆発し大ダメージを与える、という仙術である。
こうしてきちんと策を立てれば効果は絶大。加えて牽制効果もある。
問題点は製造と設置が面倒臭い事。割と時間もかかる。
でも、これをとある方法で簡略化させる。
それは通常の地雷に神桃の大樹の葉を仕込む事である。
これで、簡単に量産化することに成功。
結果は先ほど確認した通りである。
問題は、これでターウォの神桃の大樹が丸坊主になったこと。
見るも無残な姿ですぞっ。
『開戦から三十分経過』
「よし、交代だ。Aチームは旗艦! Bチーム、頼む!」
憎怨への到着までは二交代制で、なるべく体力を温存する形だ。
辿り着くまでに全ての力を使い切ってしまったら意味がない。
『おっしゃあ! 待ってたぜぇ!』
『退屈だったからな』
『がっはっはっ! こいつの力を見せてやる!』
Bチームだけど、Dチームな彼らは新型機を試したくて、すっとウズウズしていた。
それが今日、叶うとあってテンションMAX。
割と桃力を漏らしてとんでもない状態に。
ルオウのライオン型戦機【オライン】は、機獣と戦機の能力がミックスされた特殊機だ。
戦機の継続戦闘能力と機獣の俊敏な機体性能を受け継いだ赤いライオンは、大地を疾走しながら一つ目小僧どもを切り刻む。
鬣から長いレーザーブレードが伸びる仕組みになっているもよう。
戦場を走り回るだけで鬼どもが切り刻まれ退治されてゆく。
『ひゃっほう! こいつぁ、ご機嫌だぜ!』
『ルオウ、あまりはしゃぎ過ぎんじぇねぇぞ』
『あ? おめぇだってかっ飛ばしてんじゃねぇか、ズーイ』
『おまえほどじゃねぇよ』
白い山羊型の新型機【リプコ】は頭部の二本の角がドリルになっている。
うん、何も言うまい。突撃だ、突撃。
それだけで全部、粉砕されてバラバラになる。
しかも桃力が混ざってるから割と無茶苦茶。
弾丸も、ビームも、鬼力もバラバラにしちゃう。
攻防一体だけど、欠点はそれが正面にしか展開できない事。
でも、リプコ早過ぎぃ! いったい時速、どんだけ出てんだっ!?
『おぉ、こりゃあ、スゲェや! 痛くもかゆくもねぇ!』
モヴァエさんはご機嫌なもよう。
そうだろう、そうだろう。そいつの建造には俺も関与しているのだ。
大蛇と聞いたら、全てを喰らう者である俺も開発に参加してしまうのは世の情け。
というわけで、闇の枝をモデルにしてバッチリ開発しました。
でも、困ったことが一つ。
ああっ、黄色の大蛇から黒いオーラがっ!
『ふきゅおん』
『ぬわーっ!?』
かぷりんちょ。
モヴァエさんが闇の枝に気に入られてしまいました。
今は彼を甘噛みしてる。
これっ、いちゃいちゃするのは後にしなさいっ。
『もがががっ』
『ふきゅお~ん』
どうやら彼はいわゆる人外に大モテ体質。悲しいなぁ。
でも、これだけで彼の戦機【ナコン・アダ】は強力無比になっております。
ぶっちゃけ、全てを喰らう者・闇の枝の加護ありだからね、仕方がないね。
管理者のヒュリティアも放任主義だから、面倒見てやって。
俺? もちろん放任主義です。きりっ。
『お~、お~、張り切ってんなぁDチーム』
『うちらも負けてられへんなぁ』
『まぁ、な』
ファケル兄貴とぽっちゃり姉貴も出撃。
ル・ファルカンとうねうねアインリールだ。
ファケル兄貴はともかく、ぽっちゃり姉貴の戦機はなんでもいいらしい。
耐久盾なので専用機があっても、結局は触手戦機になってしまうとか。
それならば、アインリールでいいとのこと。
そうそう、ちっこくなったG・シェイカーだが、相変わらずぽっちゃり姉貴と一緒である。
一応はぽっちゃり姉貴のサポートも行っているようで。
最近は同じく小さくなったエルティナイトとも交流をおこなっているもよう。
『にゃおぉぉぉぉぉぉっ! 出番にゃ~ん!』
『待ってたにゃ~ん!』
『我慢できなくて、色々出ちゃいそうだったよっ!』
そして、いよいよ戦闘民族さんが出撃。
うん、全力を出すなって言ってんだるるぉっ!?
あぁ、もう滅茶苦茶だよ。絶対に目を付けられるよ、これ。
戦場に突如として巨大な火柱の群れ。
一つ目小僧どもを巻き込んで、それが一ヶ所に集まり巨大な人型を作り出した。
「四天王が一柱! 炎戦鬼、見参!」
「ちっ、面倒臭いのが出てきた」
鬼の四天王、炎戦鬼。
俺も散々に手こずった新たな鬼の四天王だ。
『おい、小娘。出るぞ』
「おいぃ、まだ出番は先だろっ」
『指図するな。それに、こいつは単に酒のつまみだ』
『私もついて行きますので、大丈夫ですよ』
「むむむ、分かった」
ここで虎熊童子が暴走し出撃。
ヤーダン主任が奴の援護というか監視というか、ナニをナニするとのこと。
完全に彼女の尻に敷かれているので、大丈夫だとは思うけど。
骨の戦機と、リミッターを外され強化パーツを追加されたマネックが獄炎野郎に対峙する。
『にゃっ!? そいつはミオが狙ってたにゃ~ん!』
『はん、早いもん勝ちだ』
そしてまさかの奪い合いが勃発。
これには獄炎野郎も激おこですぞ。
「どいつもこいつも……地獄の業火で焼き尽くしてくれるわっ!」
戦場が黒い炎で包まれる。
しかし、青き水の壁が地面から吹き出し、黒い炎を阻んだではないか。
『早く行ってください! 直ぐに追いつきますからっ!』
『ばぶー!』
「またアクア君がそっちに行ってるのかぁ」
『最近はやんちゃで困ります』
「分かった、獄炎野郎は任せるんだぜ。ミオもサッサと戻って来いよ?」
『わかったにゃ~ん!』
獄炎野郎がこっちに来た、ということは俺がこっちにいると仮定したか。
そうであれば、暴風野郎と氷野郎もくっちに来るだろう。
案の定、暴風と氷つぶてが周囲に被害を与えながら巨大な人型へと変じましたとも。
「鬼が四天王、暴風鬼、見参!」
「同じく、氷戦鬼、見参!」
わぁい、面倒くせーのが大挙してやってきたよー!
流石にここは出撃して一気に叩くべきだろうか。
でも、やっぱり無断出撃をする困ったちゃんが。
『あいつらは、うちらがもらってもいいだろ?』
『うえっへぇ~い! いけいけ~!』
「おいぃ、星熊姉貴は分かるとして、酔っ払いガールは危険がデンジャラスだぞ」
『あぁ、大丈夫だよ。一応は鬼の総大将だし』
星熊姉貴は、まさかのアインリールに乗って出撃。
酒吞童子は無理矢理コクピットに入ってはしゃいでいる。
大丈夫か、こいつら。
「おい、金爺さん。大丈夫なのか?」
「ひっひっひっ、放っておけい。死んだら死んだで、そこまでだった、という事じゃよ」
流石、鬼。情け容赦ない。
『やれやれ……ちょいとこの子を借りるよ』
『てっつー』
「え? プルルさん、アインリールだぞ?」
『大丈夫だよ。僕は桃使いでもあるんだから』
イシヅカでは機動力が無さ過ぎる、そう判断したのであろうプルルさんは、ぷち鉄の精霊のアインリールで出撃。
これで新旧の鬼の四天王同士の激突となった構図だ。
でも、ヤツが出てくる様子はない。
待っているのだろう。
俺を。
エルティナイトを。
憎怨まで温存するつもりだったが、ヤツが決着を望んでいるのであれば、エルティナイトをぶつけるより他にない。
何よりも、俺がそれを望んでしまっている。
鬼の防衛網を貫き、いよいよ内部へと突入となった時……ヤツは姿を現した。




