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408食目 決戦

 風が熱を運んでくる季節。いよいよ俺たちは憎怨に挑む。

 天下分け目の大決戦。勝てば存続、負ければ滅亡。

 決して退く事叶わぬ最後の戦いに、世界中の戦士たちが集まった。


 最早、俺がああだ、こうだ、と言うのは野暮というもの。


 帝都ザイガをぐるりと取り囲むモモガーディアンズ。

 それを迎え撃つ鬼の軍団。

 両軍、数はほぼ同じくらい。恐らくは、わざと数を調整したか。


『……エルドティーネ。そろそろ桃大結界陣が効力を失うわ』

「分かった」


 俺はモモガーディアンズ全軍に最後の檄を飛ばす。


「モモガーディアンズ代表、エルドティーネ・ラ・ラングステンだ。これより、帝都ザイガ中心に存在する憎怨に攻撃を仕掛ける。ここに至って、もう言う事は無い。諸君らの全ての力を以って俺たちの明日を奪わんとする者たちを退治してほしい。そして、共に明日に歩めることを切に願う」


 簡素に、しかし、ありったけの想いを籠めて俺はそう締める。


 桃大結界陣が効力を失った。


 いざ、開戦の時。


「全軍、突撃!」


 モモガーディアンズ三十万、戦鬼三十万の激突。

 初戦から激しいぶつかり合いで両軍ともに激しい損耗を出す。

 分かっていたことなので、これには目もくれずにとにかく突撃する。


『エルティナ! とにかく消耗は避けろ!』

「モヒカン兄貴っ!」

『俺たちはおまえらの露払いだ! 何が起ころうとも決して構うな!』

「スキンヘッド兄貴っ……分かった!」


 アインファイター二百機を従え、空を切り裂く勇者たち。

 そこに空戦タイプと思わしき戦鬼の群れ。以前も遭遇した面倒臭い奴だ。


「アストロイ、前に出過ぎるなよ!」

『アイ、マム』


 まだ帝都にも入れやしない。なんという分厚い壁だ。

 押し寄せる戦鬼たちの群れ。案の定、その場で再生してやがる。

 なので、早速、ひと手間を加えようではないか。


「いくぞ! 桃仙術【桃光付武】!」


 超広域桃仙術を発動。これは桃使い以外に陽の力を授ける桃仙術。

 しかし、通常の桃光付武では効果時間が僅か十五分しかない。

 なので、機体に神桃の大樹の【葉】を組み込んだ。


 神桃の大樹の葉にはたっぷりと桃力が蓄えられている。

 それを用いれば一時間くらいは陽の力を行使できるはず。


 桃結界陣を起動しながらの戦闘は常に桃力を消費する。

 これではいちいち桃光付武を掛け直してられないので、桃先生にお願いして葉っぱを貰ったのである。

 ただし、これでターウォの神桃の大樹はダメになる可能性が高い。

 これは後には退けない、最初で最後の戦いなのだ。


『……カウント開始! 三十分よ、エルドティーネ!』

「おうっ! ムセル兄ちゃん!」

『レディ』


 TASムセル・レッドショルダー・パワード改で切り込む。

 エネルギーの温存を優先し過ぎても返って消耗し過ぎるのは稀によくある事。

 防衛網が薄い個所を見つけたなら切りこむべきだ。


『ママ上っ! 助太刀いたすっ! ブシンブラスター、発射!』


 ブシンオーの胸部放熱板から、ずびゃーっと赤い光線が放たれ、戦鬼どもが上手に焼かれてゆく。

 そして爆発四散。食いたくない肉塊へと姿を変えた。


「オカーメ隊で止めを!」

『了解! オカーメ隊は戦鬼の止めを優先せよ!』

『了解!』『了解!』『了解!』『了解!』『了解!』


 俺たちで派手に戦鬼を破壊し、オカーメ隊のお姉様型でしっかりと退治する。

 そうすれば再生することなく鬼の戦力を潰せるわけだ。


 一応、桃光付武で鬼は退治できるけど、機械の部分もあるのでそれが浄化しにくい場合がある。

 それを利用して再生を果たそうとするせこさよ。ふぁっきゅん。

 なので、こんな回りくどい事をしないといけない。


 他のモモガーディアンズにもこれを徹底するよう伝えてあるので、無駄に消耗することはないと思うが。


「クロナミ改のガンテツ爺さんはっ!?」

『健在。戦鬼を焼き払い、注視を一手に引き受けています』

「よし、ガンテツ爺さんが派手に暴れてくれている内に帝都に突入するぞ!」


 言うまでもないが、全軍が突撃陣形だ。

 何がなんでも貫き通し、帝都の憎怨に到達する。


『報告、キングの部隊が戦線から離脱』

「早速動き出したのか……分かった。レオンさんに伝えてくれ」

『了解しました』


 レオンさんから言われていたことが早くも現実になった。

 キングが誰かの指揮に入るわけがない、と。

 別にそれだけならよかったのだが、これには続きがあった。


 何も、世界を我が物にしようと考えていたのは精霊王だけではない、と。


「王は一人でいい、か。つまんない男だな」


 出会った当初は凄い男。

 でも、知れば知るほどに、つまらない男に格下げ、とかよくある話だ。


 キングは戦いこそが人生、と言っているがそれは単に自己顕示欲。

 自分が常に一番でないと不安で押し潰される、という弱さを隠すものに過ぎなかった。


 だが、彼は困ったことに強かった。誰も彼に逆らえなかった。

 でも彼は組織を纏める事ができない。だから彼は組織に寄生して我儘を通した。


『レオンだ。ちょっといいかな?』

「うん、何か用かな?」

『キングの事さ。この件を任せてくれてありがとう』

「それは構わない。でも、いいのか? とーちゃんなんだろ?」

『いいんだ。僕も彼と向き合わなくちゃならない。それがどう結末になろうとも、ね』

「分かったんだぜ。武運を」

『あぁ、行って来る』


 なんとなく、纏ている光素が似てるなと思ったが、やはり彼らは親子だった。

 そして、キングの傍らにいたクイーンが彼の母親だという事だ。


 そのクイーンは今、ヒュリティアとコンビを組んでいる。

 キングの傍から離れたのは、レオンさんが彼女を説き伏せたからだ。


 人類の明日が決するこの大事な戦い。恐らくキングは野望の牙を剥く。

 そして、十中八九、キングは憎怨に手を伸ばすだろう。


 それを阻止するため、レオンさんは一度は逃げ出した、強大なる父親の前に立つ決意をした。

 全てのけじめをつけるため。再び前へと歩くために。


 こんなの、俺がどうこう言うべきことじゃない。

 こっちはこっちでなんとかするから、とっととケリをつけてこい、というエルティナイトの言葉が全てというものだ。


『ニャングラップラー、小破』

「何ですとっ!? いやいや、クロヒメさん、無茶しすぎぃ! 弾幕に飛び込んでどうするのっ!」

『回収します』

「よろしく!」


 割と無茶……いや、違うっ! 弾幕に突っ込んだんじゃない!

 これは突っ込まされたんだっ!


『おいぃ、来てるぞっ!』

「分かってる! 幻術……鬼仙術かっ!」

「あい~んっ!」


 アイン君がいち早く、ヤツの姿を捉えた。


 面積の少ない赤黒い鎧を身に纏う巨大な女。

 しかし、その顔は肉に覆われておらず白骨。

 そこから伸びる五本の角。


『ようやく復讐の時が来たねぇ! 待っていたよ、糞虫どもっ!』

「その声は淫鬼みだらきか!」

『あぁ、焦がれたよ。この恥辱を雪ぐ日をさぁ!』


 淫鬼の新たなる戦鬼は腰から棒のようなものを取り外し、それを大地に向けて振る。

 すると棒の先端から縄状の何かが飛び出し大地を砕いた。


「鞭かっ」

『いんや、もっとエゲツねぇもんだな』

「なんだって?」

『まぁたリサイクル、凄いですね』

「んなろぉ……あれ全部、人間の死体かよ」


 淫鬼のお得意、死体の有効活用。反吐が出るほどに邪悪っ。


『うふふ、まだ懲りてないのね。ここは任せてもらってもいいかしら?』

「ユウユウ閣下!?」

『どうせ、アレも私をご所望だろうし……ここで潰しておくのも一興じゃなくて?』


 アストロイから木製戦機イバラキドウジが出撃、淫鬼の前に立ち塞がった。


『茨木童子ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!』

『くすくす、また酷いセンスの戦鬼ねぇ? たかが知れるわ』

『黙れっ! この【淫髑髏いんどくろ】でお前をバラバラに引き裂いてやる!』

『やってみるといいわ。このイバラキドウジをねぇ』


 ここに新旧の鬼の幹部の戦いが始まった。

 でも、じっくりと見届ける事なんてできないものでして。


「ユウユウ閣下!」

『うふふ、早く行きなさいな。ここは私だけで十分』

「任せた! 信じてるから!」


 俺たちは薄くなった防衛網をこじ開け先へと進む。

 帝都はまだ向こう。


 なんとしても、憎怨に辿り着かなければ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 神桃の大樹も後がない状態での決戦…ほんまに最後の戦いとなるのか…?最終決戦で戦況が二転三転するのはお約束だから多少はね?
[一言] 新旧の鬼同士の戦いを見てる暇はない NG「というかモザイク確定な戦いが見せられない」 火の精霊「イヤァァァ!ラメェェェ!」 珍獣「ナニが起こった!?」 NG「知らない方が良い」
[一言] 敵がクズすぎて閣下にはピンチすらなく圧勝してもらいたいところ
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