401食目 復活のエルドティーネ
俺の想いの中より現実へと帰る。そこはムセル兄ちゃんのコクピット。
あのやり取りによる時間経過は無いようだ。
モニターにはバッキバキに尖ったエルティナイトの偽物さん。
さて、それじゃあ、この大騒ぎをとっとと終わらせちまおうか。
ひゅおっ、と空気を肺に取り込みそれを一気に吐き出す感覚。
内部から硬い殻をぶっ壊す感覚で、全部の【力】を放出する。
密閉された容器の中でそんなことをすれば、容器は哀れ爆発四散するだろう。
でも、今の俺であれば大丈夫。
完全に竜の力に目覚めたから。
パン、という破裂音は決して俺のおっぷーではない事を伝えておく。
アダルトモードでのお下品は無いと理解していただきたくっ。
そういうのが好きな奴はっ、別世界へと行っちまいなぁ!
「ふぃ、やっと窮屈感から解放されたぜ」
『レディ』
急加速するローラーダッシュ。俺からエネルギーが潤沢に供給されている証だ。
これにて、俺のありとあらゆる制限が解除されたわけで。
あとはもう、やりたい放題祭、は~じま~るよ~。
「エルティナイト! 待たせたっ!」
『しっかりと戻ってきたな。こっちも準備万端祭』
「応! 祭りだ、祭りだっ!」
『なら、ちょっとフェスティバルってく?』
「いいね~」
『「ららら、フェスティバル。ららら、フェスティバル」
『レディ』
『「さーせん」』
学習しない俺たちは、どこまで行っても珍獣だった……?
ムセル兄ちゃんに「めっ」された俺たちは、いよいよ以ってこの大騒動にケリを付けるだろうな。
ムクムクと巨大化するミニエルティナイト。
元のサイズに戻る兆候を見て、奮闘してくれていたチームキアンカが後方に下がってゆく。
『エルティナっ、やったんだな?』
「あぁ、あとは俺たちに任せてくれっ!」
瞬く間に巨大な騎士へと戻ったエルティナイト。
なんだか久しぶりな気もする。
『さぁ、やるぞ! エルドティーネ!』
「応! 精霊合身!」
あえ~!? ムセル兄ちゃんまで取り込んじゃうのかっ!?
そんなわけで、小型機のムセル兄ちゃんも一緒に粒子化。
そのままエルティナイトの心臓部へと降り立つ。
もうなんでもありだから気にしたら負けなのだろう。
そうさ、形振りなんて構ってられない。
常識に囚われてもいられない。
俺はたちはこれから、その全てが通用しない敵と戦わなくてはならないのだから。
「全ての命を護るためにっ!」
『精霊戦機エルティナイト、ここに見参っ!』
「この黄金の鉄の塊を砕けると思うなら!」
『「かかって来いっ!」』
もう、俺たちに限界は無い。
もし限界があるというなら、その全てを喰らい尽してやる。
『レディ』
『あぁ、やろうか、ムセル』
人機一体の戦機が精霊戦機を操る、という恐ろしい状況。
果たして、この状況を理解している者がどれだけいるのか。
オーガが黒い炎の矢を大量に発生させた。
狙いは相も変わらず弱っている連中だ。
「弱者を狙う奴は心が醜い」
『そういう輩は頭がおかしくなって死ぬ』
黒の矢が解き放たれる。その様子は横に降る雨。
普通なら絶望でGameOver。
でも、今の俺たちなら取るに足らない小技だ。
「来れ! 全てを喰らう者・闇の枝!」
「フキュオォォォォォォォォォォォォン!」
エルティナイトの左腕から黒き大蛇が飛び出し、黒の雨を貪り尽くす。
口でも食うけど、こいつの場合は体全てが口だから、触れれば全て喰い尽くされる。
『……っ!?』
オーガはこれに脅威性を感じ取ったのだろう。僅かに距離を取った。
エルティナイトのコピー。その歪な強化版。
歪みに歪んだ存在は、速やかに退治しなくてはいけない。
黒い意志、魂無き存在は、ただひたすらに悲しい。
おまえも、そんな檻の中に閉じ込められているのは苦しいだろう。
俺も苦しかった。能力を封じ込められるのは辛いんだ。
だから解き放ってやる。永遠の牢獄から。
『……っ!』
意思を押し付ける事しかできないオーガは声無き咆哮を上げ、背中から巨大な炎の腕を生やし、エルティナイトを掴まんとした。
『来たれ! 水の枝! ヤドカリ君っ!』
エルティナイトの背中から、青い殻に覆われた巨大なハサミが生え出て、オーガの炎の腕を切断する。
それでもオーガは攻撃を止めない。すぐさま再生する炎の腕。
しかし、続けて繰り出したのは胴体から伸びる岩石の触手。
『レディ!』
ムセル兄ちゃんの呼び声と同時にエルティナイトの右手が真っ赤に燃える。
全てを喰らう者・火の枝、チゲの炎が岩石の触手を燃やし尽くす。
オーガは確かに怯んでいる。しかし、尚も攻撃を繰り返した。
それしかできない、それだけが自分であるかのように。
右足から風の牙が、左足からは雷の刃が飛び出してくる。
「来れ! 土の枝、グレオノーム! 風の枝、とんぺー!」
エルティナイトの足から大地の根が、吐き出す息は空を駆ける風の狼となる。
大地の根は風の牙を叩き潰し、風の狼は雷の刃を噛み砕いた。
オーガはいよいよ追い詰められる。
赤い目が怪しく輝き、股間から……うほっ、見事な太くて長い物がっ!
おめぇ、どこから極太のハサミを出してんだおるるぁん! モザイク入れんぞ!
『レディ!』
『来たれ! 全てを喰らう者・雷の枝、ザイン!』
エルティナイトの眼光が白き輝きを放つ。
全てを喰らう者・光の枝、いもいも坊やでオーガの意思喰らいを相殺。
雷の枝、ザインの電撃シールドでエルティナイトの全身を覆い、水のハサミを感電させる。
これで、オーガエルティナイトの全ての切り札を封じたわけだ。
でも、奴にはもう一つ切り札がある。そりゃあ、そうだ。
ヤツは鬼なのだから。
メリメリ、と音を立ててヤツの右腕が禍々しい剣へと変化してゆく。
恐らくは闇の枝の能力の応用だろう。
闇とは形無きもの。うちの、ふきゅおん様は大蛇にこだわっているので、その姿で飛び出してくるが、本来は姿を持っていない。黒い靄なのだ。
だから、あのように剣の形になることも可能。
差し詰めあれは【全てを喰らう剣】といったところか。
恐らくはオーガエルティナイトの切り札といったところだろう。
流石にアレを喰らえば、今のエルティナイトでも大ダメージは必至。
だったら、俺たちも【切り札】を使わせてもらう。
「みんな、行くぞっ!」
全ての枝の意思が一つに集う。
だから俺はこう言うだろうな。
「来れ! 全てを喰らう者・竜の枝! シグルド!」
エルティナイトから飛び出す巨大な黄金の竜。全長がどれほどになるか分からない巨体はビッグフラワーを粉々に粉砕。
そのどさくさに紛れ、チームキアンカは無事に外へと離脱する。
『うおぉぉぉぉっ!? なんじゃそりゃあっ!?』
『おいおい、マジかよ?』
「皆は、そのままアストロイにっ!」
流石にこれには呆れているもようで。
『何がなんだからわからないが……いつもの事、ってことにしておくぜ!』
『死ぬなよ、エルティナ!』
「あぁ、必ず戻る!」
モヒカン兄貴とスキンヘッド兄貴の励ましを受け、元気もりもり。
『エルティナ、エリンと……もう一人のバカ娘と待っているぞ!』
「分かった、さっさと終わらせるんだぜ」
マーカスさんも離脱してくれた。でも、逆に黄金の竜の頭に乗ってくる者たちが。
『俺たちは残るぜ』
『やれやれ、張り切り過ぎじゃないかい? シグルド』
「汝らとは違い、制約があるのでな。表に出た時くらいは暴れてもよかろう」
『レディ』
「分かっている。星を砕く真似はせぬ。桃力【固】! 我の桃力は全てを【固定】する!」
第六精霊界が桃色の輝きに包まれる。
星一個を対象にするとは、なんという大きな力だ。
でも、これで超大暴れしても第六精霊界は決して砕けないという事。
決戦のバトルフィールドは整った。
それを理解したのかオーガエルティナイトも己の力を解き放つ。
巨大化する鬼のナイト。その大きさはもう測るのが馬鹿臭くなるほどだ。
『でかっ!?』
『軽く300メートルはあるかねぇ?』
「でかけりゃいいってもんじゃないんだぜ」
『でも、でかい事は良い事だぁ』
俺たちは呆れるけど、シグルドはまだでかいんだよなぁ。
プルルさんによれば800メートルはあるっぽい。
しかも、これで抑えているっていうんだから酷い。
エルティナイトが豆粒なんですが?
デカさが売りなのにどうしてくれるの?
「ま、いっか。それじゃあ、超くそデカバトル。おっぱじめんぞ!」
『よっしゃ! やっちまえ!』
『んふふ、こういうのもいいねぇ』
戦闘はシグルドに丸投げ。
俺たちはとにかくシグルドにパワーを送る。
彼も暫く何もできなかったようでストレス溜まりまくり。
オーガ君には本当に済まないと思うが……ストレス発散の捌け口になっていってね!
「ひえっ、暴れすぎぃ!」
『久々のバトルはガルンドラゴンを止めない止めにくい』
ガルンドラゴンというのはシグルドの種族名であるもよう。
基本的に8メートルくらいの竜種で、くっそうるさい咆哮で獲物を麻痺させて、頭からがぶりんちょするらしい。何それ怖い。
『わはは、相変わらず、戦い方が変わってねぇな』
「ふふん、汝らとも、こうしてじゃれ合ったな」
『あの時はマジで死ぬかと思ったぜ』
「喰らうつもりだったからな」
おう、のぅ。
そういえば、お母んとライオットさんって、シグルドとマジで殺り合ってたんだった。
それが今や、共に戦う仲間だというのだから運命って分りませんぞ。
さて、戦況はというと……餌にじゃれつくにゃんこ、といった感じで。
あっはい、オーガさんが不憫でならないです。
剣も普通に噛み砕かれてしょぼんとしております。
「手応えが無いな」
「中身が無いモナカみたいなものだしな」
「飽きた。あとは好きにするがいい」
それなりにストレスは発散したとのこと。
じゃけん、オーガさんに止めを刺しましょうねぇ。
「それじゃ、行ってみようか!【竜信変化】! ドラゴンエルティナイト!」
『全てを支配する力がナイトを黄金の鉄の塊にする!』
黄金の竜がエルティナイトに取り込まれる。
その際にイシヅカとシシオウもエルティナイトに取り込まれてコクピットに。
どんどんでかくなる黄金のエルティナイト。
その大きさは、だいたい1000メートル。デカすぎぃ!
「なんでもありなんだぜ」
『デカすぎると返ってやり難い感』
『まぁ、的がデカくなるだけだからな』
『今回くらいは良いんじゃないかい? 大きさを変えられるんだろう?』
「うむ、窮屈ではあるが、な」
ドラゴン風の意匠の鎧を纏ったエルティナイトが右腕を掲げる。
そこに現れしは思念創世器カーンテヒル。
「さぁ、暗黒に囚われし悲しき意志よ。今、そこから解き放ってやる!」
散々にボコボコにされたにもかかわらず、立ち向かってくる根性は見習う部分がある。
でも、鬼は退治だっ!
「必殺! おんどるる斬りっ!」
『娘もネーミングセンスが酷いんだな』
『遺伝って怖いねぇ』
なんか酷い事を言われた。
それでも、輝ける剣はオーガエルティナイトを両断し爆発四散させる。
そして、格好良いと思われる決めポーズ。実に勇者的。
「これで良しっと」
『おう、お疲れさん』
『これで、ひと段落だねぇ』
こうして、完全復活を遂げた俺は、オーガエルティナイトを退治した。
残るは全てを喰らう女神だ。
第六精霊界の全ての意思を引き連れ、俺は最後の戦いへと身を投じるだろう。
でも、その前に一休みだ。
戦士には休息も必要って、古事記にも書かれているしな。




