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387食目 精霊王の宣戦布告

「おいぃ、なんですかねぇ? これはっ」

「くそったれめ。あの野郎、やりやがった」


 アストロイの多目的室、そこに据えられた大型のテレビに映る精霊王の姿。

 彼女が全世界に向けて宣戦布告をおこなっていたのである。

 のっぺりとした仮面と、純白のローブに身を包んでいるが、エリンちゃんのお見事ボディは隠せてません。


 それに憤慨するおやっさん。

 ヒュリティアは何も言わないが、彼女から放たれる圧が、えらいこっちゃな事になっている。


『人類は精霊をないがしろにし過ぎた。それは、朽ち行く世界を見ても明白である!』


 精霊王は、なんだかそれっぽい事を言って自分の正当性を訴えた。

 だが、これは絶対に格好つけているだけだぞ。


 こいつの真の目的は、精霊や自然環境の保護じゃないのは知ってるのだから。


『自然を支える精霊たちを護るために、この私、精霊王は起つ! そして、邪悪なる人類を抹消し、私も自然へと回帰するだろう!』

「……やられた!」


 がしかし、ここでヒュリティアが慌てる。

 どうしたというのだろうか。


「どったの?」

「……これは、人間に向けた宣戦布告じゃない。精霊に対する訴えよ」

「ふきゅん?」

「……つまり、人間に不満を持ってるなら、うちに来て一緒に戦おう、って宣伝してるの」

「それって、ヤヴァくね?」

「……ヤバいどころじゃない。中立だった精霊たちも、うちらと対立する可能性が孕んでいる」


 あんにゃろう、そんなに戦争がしたいのか。

 しかも、幾ら仮面を被っていても、その癖っ毛と声じゃ分かる奴は分かっちまう。


 そぅら、早速、携帯端末がぶるぶると荒ぶってますよ。


「しもしも」

「エルティナかっ! エリンはそこにいるのかっ!?」


 案の定、マーカスさんだ。

 さて、どうしたものか。


「ヒーちゃん、マーカスさんだ。どうしようか」

「……貸して。もう、黙ってはおけないでしょ」


 俺の携帯端末を受け取ったヒュリティアは、それを持って多目的室を出てゆく。

 きっと事のあらましを、一からしっかりと伝えるのだろう。


 俺が説明すると意味不明がエクスプロージョンするから助かるわぁ。


『人類の諸君らに明日は無い! だが、この精霊王は寛大だ! 救いを与えよう!』


 精霊王が仰々しく手を持ち上げる。手術でもするのかってポージングだ。

 だが、彼女は突然、拳を握る。そして言い放つのだ。


『死だ! 諸君らに、安らかなる滅びを与えよう! 既に人類の盾たる戦機協会は潰した! 人類に我々を止める術は無い!』


 といったところで、散々にぶっ壊れた戦機協会本部と周辺の町の様子を流し始める。


 いや確かに、崩壊させたけどさ。

 これは何か違うと思うんですけどねぇ。


「まぁ、事情を知らない奴が見たら、ひぎぃ、とはなるか」

「だろうな。上手い事やった、と認めざるを得ねぇな」


 これに、おやっさんが呆れる。

 ザインちゃんも怒り心頭であり、マサガト公も「戦じゃ」と咆えておられます。


「どっちにしても、やり合うってんなら戦力を集結して一気に叩かないと」

「だな。集結場所はドワルイン王国か?」

「うん。ルフベルさんが皆を送ってくれるって」

「やれやれ……この分だと、総力戦になるだろうなぁ。まだDチームの新型も完成してねぇってのによ」


 Dチームの面々は新型の都合が付かず、ぷち鉄の精霊のアインリールでオカーメ隊に混じってたとのこと。

 結構な活躍をしていたようだが、美味しいところは全部ユウユウ閣下が持っていった、とぼやいていたもよう。


 ユウユウ閣下だからね、仕方がないね。


『汚らわしい星の汚物、人類! 私は諸君らに対し、ここに宣戦布告を行うものである! 希望があるとは思わないでいただきたい! あるのは速やかなる滅びだけでありゅ!』


 最後の最後に噛んだっぽい。

 まぁ、エリンちゃん遺伝子にしては頑張った方じゃないかな。


「噛んだな」

「噛んだんだぜ」


 こうして、精霊対人類という最悪の構図が出来上がったわけだ。

 何が最悪っていったら、精霊は見えないし、どこにでもいるわけだから、普通の人間ではいつ攻撃されているか分からないという事。


 俺たちの殆どは姿を見る事ができるけど、一般クソザコナメクジ市民は精霊の存在を信じてないだろうから、まず見えない。

 きっと精霊王を頭がおかしい残念な少女程度にしか思っていないはず。

 戦機協会本部の陥落も精巧なCG加工と一笑に伏せるだろう。


 そう、一般市民は。


 ただ、直接攻め込まれた町の住民はそうじゃないだろう。

 俺が囚われている間に随分と派手にやっていたようだし。


 小さな国は相手にしていなかったが、そこで精霊たちを蜂起させる手筈だとしたらとんでもないことになる。


『あい~ん』


 俺の中にいるアイン君が心配そうな声を上げる。

 フロウやお雪さんも困惑しているようだ。


 マッソォは相変わらずだけど。


「……戻ったわ」

「おかえり。どうだった?」

「……こっちに来るって」

「だろうなぁ」


 自分の娘が、こんな大それたことをやっていて、黙って座しているわけがない。

 でも、どうやってドワルイン王国にまで来るつもりなんだろうか。


「迎えに行った方が良いのかな?」

「……その必要はないわ。新型のテストも兼ねて向かうって」

「新型? マーカスさんが?」


 いや、確かに彼が戦機を操れるのは知ってるけど、かなりの間、操縦してなかったのだからきついのでは。


「……人間って、自分の大切なものが掛かる、ととんでもない力を発揮するものなのよね」

「それは、人間だけじゃないと思うけど」

「……特にって意味よ」


 俺がアダルトモードだからだろう、ヒュリティアもセクシーアダルトだ。

 どっかりと悩ましいおヒップをソファーに投下した彼女は、隣の俺に携帯端末を返してきた。


「……ムセルはどう?」

「たぶん、よく馴染んでいると思う」

「……そう。なら良かった。もう少しで、【スピリッツ・オブ・ドリル】が完成するわ」


 待て待て、ドリルって単語が聞こえたのだが。


「俺のお耳が腐ってなければ、ドリルって単語が聞こえたんですが?」

「……えぇ、言ったわ。愛と勇気と努力で回転する、意志を貫く力よ」

「マジで震えてきやがった」


 まさか、そんなとんでも武装をムセルに積むっていうんですかやだー。


 ぼくのムセルは、りあるろぼっとなんですよ、わかっているんですか。

 まじでぷじゃけんなよっ。


「……あの巨大花の内部に突入するなら、これしかないわ」

「空を飛べないムセルでどうすれっていうんだぁ?」

「……フライトユニットがあるじゃない」

「あっ。あれ、ムセルにも付けれるんだ」


 どうやら、互換性があるようで、ムセルにも装着することができるらしい。

 それどころか、おやっさんはそのフライトユニットを魔改造しているとのこと。


 中の人が酷いことになることを考慮して作られているのか、それが問題だ。


「……いずれにしても、面倒臭い事になったわ。プリエナたちも呼び寄せないと」

「ミリタリル神聖国が手薄になるんじゃ?」

「……そうね。でも、護ってやる義理なんてないわ。【連中】がなんとかするでしょ」

「ひえっ」

「……今はとにかく、精霊が敵対する、という最悪の状況をなんとかしないと」


 ヒュリティアにしては焦っている様子。

 それだけ状況が厳しいという事なのだろう。


 実際、俺もこれが良くない事は頭ではなく体で感じてしまっている。


 肌がひりつくんじゃ~。


「本当に精霊たちが敵対するのかな?」

「……全部が全部とは思いたくないけど……精霊も色々いるから」


 人間に折角の職場をぶっ壊されたら、精霊だって怒るに決まっている。

 特に都市開発が進んでいる小国とかは絶好のカモだろう。


 テレビのチャンネルを適当に変える。

 すると、謎の怪現象が各地で発生しているとの報道が。


「なんてこったい」

「……思ったよりも深刻ね」


 精霊王の思惑通り、精霊が人類に対し敵対し始めている。

 こんな事をやっている場合じゃないっていうのにっ。


「全ての命の敵が、目の前にいるんだぞっ!」

「その存在を知らないから、こんな事をしちゃっているんだよ」


 レギガンダー君の言う通りなんだよなぁ。


「全部、ぶっ飛ばせば解決にゃ」

「そうにゃ~ん、面倒臭い事は殴れば済むにゃ」

「そうそう、拳で分からせちゃえばいいんだよ」

「流石にゃんこびとは格が違った」


 うん、単純明快でスッキリですよ。


 ああだ、こうだ、と考えても結局はぶん殴るでファイナルアンサー。

 その拳に愛と勇気と努力を乗せて、精霊王の精神を矯正してくれる。


『間もなく、ドワルイン王国です』

「分かった。状況は?」

『敵影は確認できず。問題無し、と判断します』

「了解、ドグランドにつけて」


 マザーの報告に了解した俺は多目的室を後にする。

 向かうのはアストロイの艦橋だ。

 そこで、まずはドワルイン王国の詳しい状況を説明してもらおう、というわけである。


 まったく、面倒臭い事になったもんだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 真相 精霊王「かくかくじかじか」 精霊「なるほどなるほど~」 精霊王「かみゅっ!」 精霊達「「「「噛んだ!?」」」」ズッコケ 一斉に怪現象が発生 人間「なんだ?何が起きたんだ!?」 …
[一言] やっぱにゃん小人は世紀末思想なんやなって。 暴力は良いぞ〇ンシロウ。
[一言] 噛んだ…
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