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383食目 目覚めし最後のニャンガー

 白と黒と黄で再塗装されたTAS・ニャンガーシリーズ最後の系譜は、そのパイロットの孫の生まれ変わりによって再び目覚めた。

 切っても切れぬ縁に、最後のニャンガーは運命というものを感じられずにはいられない。


 彼が生まれた星、惑星ティエリにはかつて、大いなる厄災が十二も存在し、人類滅亡の危機にまで追い込まれている。

 人類と人類によって作られた生体兵器、そして十二の厄災との最後の戦いに置いて建造されたのがラストニャンガー。


 量産タイプのニャンガーシリーズを、敢えて個人用にカスタマイズし、基本フレームすら新規に設計した、まさに一騎当千を目指した特別仕様スペシャルだ。


 その戦いに投入されたほぼ全ての新型が失われる中、最後の闘猫だけは生き残る。

 そして、戦いの無くなった世界に彼の出番は無く、静かなる静寂の中で無限に揺蕩う事になったのだ。


 しかし、戦いは、闘争は、遥かなる時を経て彼を目覚めさせた。


「力が漲るにゃっ! もう、抑える必要なんてないにゃっ!」

「やっちゃえ、ミオっ!」

「ガンガン行くにゃっ、にーちゃん!」


 ミオはラストニャンガーの操縦方法を魂の奥底に封じられていた記憶により引き出す。

 ラストニャンガーは彼の祖父がパイロットであったが、ミオも操縦できる操縦システムであった。

 もともと、にゃんこびととは、人類が厄災に抗うために創り出した生体コア。

 TASシリーズ運用の際のAIも兼ねているのだ。


 その血は、魂は、TASと結びつく事によって色濃く蘇る。


 ラストニャンガーが大地を蹴る。

 その脚力は虚空ですら大地とするほど強力無比。


「っ!? 何だあれはっ!」


 ラストニャンガーの脅威性、それに最初に反応したのはナイトランカー2位の聖女王。


 ヒュリティアとの緊迫した狙撃戦に置いても尚、意識を向けなければならぬ脅威。

 内心では迂闊なと自分を叱り付けたくなる彼女は、幸運にも同じく最後のニャンガーに魅入る黒エルフの油断に救われた形だ。


「……あれが、ミオの本当の実力。技術云々じゃない、あれじゃあ後れを取っていて当然だわ」


 それは、彼の本能によって引き出される真なる能力。

 戦機では成し得ない、にゃんこびとの魂を引き継いでいるからこそ可能な出鱈目な戦い方。


 ご意見無用、ルール無用、情け無用、それがにゃんこびとの流儀。


 空を駆け昇り、灰色の抹殺者の喉を食い千切る鋼鉄の獣人。それを長い尾で叩き落す。

 地上へと音速で叩きつけられた量産型サーチスラキーラはバラバラに砕け散った後、少し遅れて爆発し消え去った。


「イレギュラー、カクニン。ハイジョ、カイシ」


 仲間がやられても、既に人間性を失っている彼らは構うことなくラストニャンガーに襲い掛かる。

 オーバーブーストからの抜刀。それは確かにラストニャンガーに命中した。

 しかし、手応えが無い。そこにいて、確かに切っているのに。

 レーダーの反応は確かにそこにあるのだ。何故だ。


「イレギュラー、イレギュラー、イレ……」


 混乱をきたした強化人間は同じ言葉を繰り返すも、それはコクピットを潰されると同時に終了した。

 背後から手刀によって貫かれたのである。


「残像にゃ」


 質量のある残像。


 あまりにも高速で動き回るため、金属塗装が剥がれ落ち、あたかもそこに居るかのような残像が発生するのだ。


「あと三つだよっ、ミオっ!」

「了解だにゃん!」


 瞬く間に二機を撃墜したミオは、残りの獲物を見定めた。


「どいつもこいつも、色が無い奴にゃ」

「そうにゃおね、つまんない奴らにゃ」


 ミオの評価に彼の妹ミケは同意する。


 にゃんこびとは戦闘民族としての一面も持つ。

 人類が一度、厄災たちに大敗し敗走。その際に、にゃんこびとたちを一度手放してしまった。

 そうすることにより、彼らは野生化。

 小さな集落を作り、狩りによってほそぼそと血を受け継がせていったのだ。


 その集大成となったのが、かつてのミオ、そしてミケ。

 その切っ掛けとなったのが当時、死霊の騎士であったクロエである。


「ねぇ、ミオ。あれ、使えるよっ!」


 サブパイロット席のクロエがコンソールを弄りながら、パラメーターを確認する。


「にゃっ? 本当にゃおか? にゃら、使っちゃうにゃっ!」


 三機目の量産型サーチスラキーラを、連撃からのかかと落としで叩き落すラストニャンガー。

 残り二機の量産型サーチスラキーラが連携を取り光素剣を引き抜く。

 接近戦での決着を狙った。


 射撃武器のことごとくをかわされてしまっては、近接兵器に頼らざるを得なかったのだ。


「にーちゃん、都合よく向こうから来てくれてるにゃ!」

「チャンス到来にゃお! クロエっ!」

「うんっ! やろう、ミオっ!」


 ミオ、ミケ、クロエの光素が交わり一つの形を成す。

 それは黄金の剣。因果を断つ輝ける刃。


 空に立つラストニャンガー。

 彼が掲げる右腕に、輝ける巨大な剣が出現したのだ。


「受けるにゃっ!【ディザスター・バスター】っ!」

「いっけぇぇぇぇぇぇっ!」


 対厄災用の決戦武装、ディザスターバスター。

 その輝く剣を構成するのは純粋なる光素だ。


 元はクロエに搭載されていた武装であり、厄災に唯一抗える兵器の一つ。

 その威力は第六精霊界の光素兵器とは比較にならない威力を秘めており且つ、限界というものが存在しない。

 即ち、やりようによっては惑星すらも真っ二つにすることが可能。


 しかし、厄災はそれを耐える。厄災の脅威性は人類を絶望させるには十分過ぎた。

 それなる決戦兵器が、脆いとすらされる戦機に向けられればどうなるか。


 ジュッ、という音を立て消失する二機の鋼の巨人。

 このような暴力に耐えられるはずもないのだ。


「にゃ、やり過ぎたかにゃ?」

「地面が抉れてるにゃ」

「戦機相手じゃ、やりすぎかもね」


 呆気ない勝利に不満を覚えるにゃんこびとたちは、飽くなき闘争心から次の相手を探す。

 しかし、それは見当たらなかった。


 聖女王はラストニャンガーの戦力をいち早く分析。総合的にこの機体で抗うのは難しい、と判断し隙をついて撤退したのである。

 狙撃戦を行っていたことが幸いした形だ。


 だが、一難去ってまた一難。

 脅威足り得る鋼鉄の花が戦機協会本部を粉々にしながら飛び出して来たのである。


「おのれ、おのれっ! どいつもこいつも、私に逆らうっ!」


 エルドティーネを取り逃がしてしまった精霊王が未完成の決戦兵器、【エレメ・ラワー】に自ら乗り込み白エルフの奪還を試みたのである。


 これによって、戦機協会会長ムナークは落盤に巻き込まれ死亡。

 戦機協会本部も崩落によって消失し、事実上の崩壊となった。


「なんだ、アレはっ!?」

「ばぶー!」

「いもぉ!」


 窮地を救われたレギガンターとエルドティーネは、ファーラのコクピットの中で異様な巨大花を見た。

 それは、花というよりかは山といった方がいいだろう。


 出鱈目に生える花弁は七色。本来は茎が伸びる部分には緑色の伸縮自在のアームが無数に備わっており、ハイパーエレメフライトシステムで巨体を浮かすことができた。


 戦機というカテゴリーには収まらず、移動要塞と呼称するべきであろう。


「もう何もかも要らぬっ! おまえだ! おまえさえいればいい! エルティナっ!」


 狂ったように笑う精霊王は、いよいよ本性を現す。

 それは、子供が大人になったかのような自己中心的なものだ。


 だが、決して自暴自棄になったわけではない。

 その気になれば、彼女は自分の思うがままに、あらゆるものを創造することができるのだ。


 だが物事には限界が設定されている事が往々である。

 それを取り払うのが、始まりの大樹とエルドティーネで織り成す【命の循環】。

 この大いなる循環によって生み出される光素を用いれば、それこそ神を超える事も可能といえる。


「よこせ……異界の命の大精霊を! 私は、私は神になるんだっ!」


 そして、始まりの大樹を超える。


 精霊王は嫉妬していた。己の親に。欲無き母に。

 パートナーとして生まれたのに、それが成し得なかった自分に劣等感を抱き続けていた。

 それは、彼女を歪みに歪ませる。そして、そのままで精霊たちの管理者になった。


 自分に王としての仮面を付けさせ、聖者として演じ続けた。

 それは、歪みを肥大化させるには十分過ぎる。


 が誤算も一つ。それがエリンとの出会いだ。


「この子さえっ……この子さえっ……!」


 間違いなく、エリンは精霊王にとって希望の輝き。

 その誰でも受け入れる優しさは、精霊王ですら拒まない。


 きっと、いや、間違いなく、精霊王はエリンに母を抱いている。


 彼女と共に都合の良い世界の構築を目論む精霊王が、その剥き出しの悪意を撒き散らす時、想いを糧にして成長する小さな芽もまた、己の限界を突破するだろう。


 今がその時。


 自らを赤子にしたエルドティーネは、いよいよ精霊王の想い、その悲鳴を耳にして起ちあがった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ヒーちゃん被弾の真相 ヒュリティア「アレがラストニャンガー… 近所のノラ猫に似てるわね… エルとご飯獲り合って勝ってたのに…」 女王「隙あり!」 ヒュリティア「キャー」
[一言] ニャンガーは… 最強のジョーカーだった!
[一言] ちんじゅうをよこせ おれはかみになるんだ。 スライムに一撃で溶解死させられそう(小並感)
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