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369食目 精霊たちの反乱

『緊急事態発生』

「何っ、マザーの声じゃとっ?」


 ホワイトキメラのブリーフィングルームにて予定を煮詰めていた時、それは発生した。

 その時、俺だけはヒュリティアさんからエルティナの想いを感じ取る方法を教わっていたのだが、中々上手く行かずにモヤモヤしていたと覚えている。


『ノアとシステム共有しました。それよりも、映像を映します』


 ブリーフィングルームの中央に映し出されるホログラフィック映像。

 それは、世界各国の緊急映像だった。


 その内容というのがとても看過できない。

 見たこともない戦機が町を襲い火の海に変えているのだ。

 老若男女問わず、情け容赦なく手に掛けてゆく様は悪鬼羅刹のそれ。


 戦機を動かしているヤツはいったい、何者で何を考えているのか。


「こりゃあ、ひでぇな」


 半魚人の巨漢が半ば呆れたように呟く。

 確か彼は、【磯谷】と名乗ったか。


「僕らは、この星と深く関わるつもりはないけど……確かにこれは酷い」

「いったい、この星では何が起こっているの?」


 御崎とその彼の隣の黒髪美人が眉を顰めた。

 彼女は【遠山】と名乗っている。清楚系のお姉さんだ。


「ありゃあ侵略目的じゃねぇな」

「あぁ、殺し方に過剰な憎しみ」

「要は復讐ってヤツだな」


 暫し映像を見ていたDチームは謎の殺戮者たちの行動から、その目的は復讐であると推測する。

 彼らは他の惑星を侵略する軍隊に所属し、その侵略行為に手を染めているので信憑性は高いか。


『た、大変ですっ! 突如として謎の軍団がドワルインの町に攻め込んできましたっ!』

『アリーナ所属の戦機乗りが応戦してくれていますが、皆さんは一刻も早くシェルターへ避難してください』


 あっ、この声はアリーナの。

 というか、何やってんのこの人たち。

 アリーナ戦士と謎の侵略者とのバトルを実況解説している場合じゃないだろ。


「……できるようになったわね」

「え~っと、この星の人間って戦闘ロボットの実弾を回避できるんだ?」

「……地獄を見た者なら或いは」


 過激な姿のお姉さん。というか、すずめ人間の【相沢】さんが呆れた顔を見せている。

 彼女は顔と身体だけが人間で、後はすずめという容姿をしていた。


 すずめというと東方国固有の小鳥で、茶色の羽毛に包まれた可愛らしい鳥との認識が一般的である。

 渡り鳥ではないので、彼らを見ることができるのは東方国のみだ。


 相沢さんは容姿が容姿なだけに、服が着れないのかほぼ全裸。

 羽毛で大切な部分が辛うじて隠れているという。


 ヒュリティアさんの教えで、露骨に女性の部分を見るな、と教わっているものの気になって仕方がない。

 これじゃあ、煩悩が勝ってエルティナの想いを感じ取れないじゃないか。


「それよりもじゃ、キアンカはどうなっておる」

『キアンカは戦機乗りたちが多く集結しています。ですが、所属不明の戦機の一団は出現していません』

「なんじゃと? キアンカだけか?」

『はい、それ以外の町や村、集落などには大なり小なりの部隊が襲撃しております』

「いったい、どういうことじゃ?」


 腕を組み眉間にしわを寄せるガンテツ老人。

 彼の言う通り、これは露骨だ。

 何故、キアンカだけが襲われないのか。

 その理由を考えた時、敵の正体など直ぐに分かるというもの。


「……敵は精霊王の手の者たちね」

「むぅ、それでキアンカだけは襲わない、と」

「……エルの機嫌取りのつもりか、それとも精霊王の手心か」


 或いは面倒臭がったか。

 確かに、今のキアンカは常に臨戦態勢だ。


 そして、ターウォだけど、そこにも精霊王の部隊は現れなかった。

 恐らくだけど、鬼たちを警戒しているのだろう。


 エンペラル帝国は既に半壊状態なので精霊王も放置安定と踏んだのか、ほぼエンペラル帝国の町や村が襲われているとの情報は入ってこない。


『ああっと! ここで戦機協会の部隊が投入されました! 謎の襲撃者との激しいバトルが始まったぞ!』

『ですが、戦力的に厳しいですね。謎の一団は、私たちが、かつて見た不思議な力を用いることができるようです』

『というとっ!?』

『トウキチロウ選手が見せた奇跡の力、それと同様と思えるもの』

『つまり、【魔法】でしょうかっ!? おっと、危ない』

『はい、これでは数に勝るとはいえ……ひらりっ。戦機乗りたちの……ほいっ。苦戦は必至かと』


 えぇ……あの人たち、平然とビームを避けたり、高速で迫る弾丸の軌道を変えたりしてるんだけど。

 そんなこと、普通の人間じゃ無理なんだからな。分かってるの?


「ありゃあ、【見えとる】のう」

「……エルの力に触れて覚醒しちゃったのね。可愛そうに」

「えっ?」


 つまり、実況解説のお姉さん方は精霊が見えていて且つ、契約を結んでしまっているとのこと。

 超人的に見える動きは全て精霊のサポートによるものらしい。


 ただの一般市民の彼女らが精霊と契約しただけでこれだ。

 もし、そんな精霊たちが機械の身体を手に入れたとしたらどうなるか、がこの映像の中にあった。


 蹂躙される戦機たち。それを成す謎の黒い戦闘兵器群。

 それは、円盤であったり、鳥であったり、獣であったり、人であったりと多種多様。


 中には機獣とそっくりな物や、アインリールと酷似した機体、そして明らかにサーチスラキーラと思わしき機体の姿もあった。


「……贄集め、と考えても良さそうね」

「ヒーちゃん、それって殺すことで成立する、と考えてええんか?」

「……恐らくは。最も原始的で乱暴なやり方だわ」


 映像に映る亡骸、そこから金色の粒子が立ち上り空へと消えてゆく光景が映しだされている。

 ヒュリティアさんの言う通り、精霊王は贄を、それから生じる光素を集めているのか。


 でも、これは矛盾する。

 ヒュリティアさんの話が正しいなら、エルティナと始まりの大樹が揃った時点で、無限の光素を発生させることができるはず。

 にもかかわらず人間を殺すのはおかしな話だ。


 つまり、最悪はただ単に人間を滅ぼしたいだけの行為、と捉えることもできるのでは。


 そのことをヒュリティアさんに伝える、と彼女はその可能性も高い、と返事を返した。


「……なんにせよ、この暴挙は止める必要があるわ。あの機体群を操っているのは、もしかしなくとも精霊たちよ」

「むぅ……ということは、この戦いは精霊たちの反乱という事になるかのぅ」

「……精霊だって友好的な連中ばかりじゃないわ。そういった連中を集めたんでしょうね」


 ヒュリティアさんの言う通りだ。

 人間だって思惑によっては手を取り合ったり殺し合ったりするんだから、精霊にそれが無いとは言い切れない。


「さて、そこまで分かって、僕らはどうしようか?」


 この危機的状況でも冷静なレオンさんは、変態的な動きをしながら実況解説を続けるお姉さん方に呆れていた。

 気持ちは物凄く分かる。


「エルティナの救出を優先するにゃおか?」

「それとも、こいつらをやっつけるにゃおか?」


 ミオとミケがふんす、ふんす、と興奮気味に聞いて来て、ヒュリティアさんは少し悩んだ様子を見せた。


 確かにエルティナ救出は最優先で行うべきだろう。

 でも、だからと言って精霊王の侵略を放っておけば最悪、この虐殺に便乗し鬼の総大将が予定よりも早く羽化しかねないのだ。

 どちらも火急的速やかに解決しなければならない。


「……同時解決するには、私たちだけじゃ無理ね。この星の全ての戦力をひとつにしないと」

「それは無理じゃ。今のこの星の連中は、自分の事で手いっぱいじゃからの」


 ヒュリティアさんのいう事は尤もであり、でも、ガンテツ爺さんの言う事も尤もであった。


 この世を護るはずの戦機協会は私利私欲に塗れているし、戦機乗りたちも基本、自由気まま。

 各国の軍隊も名目上の寄せ集めに近く、実力は戦機乗り以下という有様。

 今まともに機能しているのは、恐らくキアンカの戦力だけかもしれない。


「……マザー、ルフベルさんに連絡を」

『了解しました。繋げます』


 マザーがキアンカのルフベル支部長……いや、今は新たな戦機乗りたちのための組織、【戦機同盟】の代表に連絡を繋げる。

 やはり、ブリーフィングルームの中央に精悍な顔付の男性の姿が映しだされたのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 覚醒した撮影班たち! アナウンサー「当たらなければどうということは!」 カメラマン「見える!攻撃の瞬間が!!」 NG「見えた!スカートがめくれてパ…」 ユウユウ「それはダ〜メ♡」 ズグュリ(…
[一言] 地方戦力は、彼らに? しかし、実況のおねーさんがた… 意味なく、レベルアップしてるし…
[一言] レギガンダー君の性癖壊れちゃ^~う でも彼の本命はエルドティーネっぽいんですよねぇ…果たして彼の想いは通じるのか。 あ、娘に母への面影に欲情するとかいう呪いをかけた悪霊は成仏して、どうぞ。
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