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351食目 いざ禁断の地へ

 三日後、プリエナさん率いるレジスタンスの裏メンバーが精霊戦隊を訪れた。

 人員7名、戦機7機という少ないともいえるそれは、果たして一騎当千の証明なり得るのか。


「お待たせだよぉ」

「予想よりも来るのが早かったんだぜ」


 現在、朝の5時。

 日が昇るか昇らないか、といった時間帯だ。


「……いらっしゃい、たぬ子。それで、どういう方針でいくのかしら?」

「うん、私たちで城を制圧するから、その間に始まりの大樹に接触してもらおうかと」

「……接触、ね。あくまでエルドティーネを会わせたいのかしら?」

「その様子だと、この星の事情を理解したようだねぇ」

「……だいたいは、ね」


 うふふ、と笑顔を見せるプリエナさんは、しかし、これから戦いに赴くような姿ではなく。


 ひらひらとした純白の衣装は古代の女神を想起させるもので、その手に持つ黄金の錫杖がそれを加速させた。


「女神かっ」

「女神だよぉ」

「マジでっ!?」

「マジでぇ」


 驚く事にプリエナさんは幸運の女神であるそうだ。

 でも、一ヶ所に留まらない野良女神だそうで。


 彼女の存在を知るとほんのりと幸運が降りてくる、そんな有り難い存在とのことだが。

 こうして濃密に関係を持つと、どうやら【ほんのり】が息をしなくなるらしい。


「お嬢、城の警護が手薄になったようで」

「ほえ? そうなんだ」

「どうやら、食中毒が発生したらしく」

「それは好都合」


 音も無く、闇の中から黒スーツに黒ネクタイ、黒いサングラスをかけた髭のおっさんが忽然と姿を現した。

 懐には拳銃の姿。その出で立ちからシークレットサービスが想起される。


「ルバールさん、私たちは城を制圧するよ」

「心得ました。配下の者たちに、そう伝えます」


 そう告げる、とまた音も無く闇に溶けて消えてしまう。

 まったく気配がしない。まるで忍者のような人だった。

 でも、忍者のような嫌味ったらしさは感じられず、淡々としていた分、恐ろしさの方が鮮明に感じられる。


「……かなりできるようになったわね、ルバールさん」

「傭兵だった頃の彼は、もういないよぉ。一応は闘神だし」

「……野良闘神とか悪夢よね」

「急にエンカウント~って最悪だものねぇ」


 神様を従える女神様とか狂ってる感。

 というか、回りくどい事をしなくても力で制圧できるのでは、と聞いたところ首を横に振りました。


「私たちは一応、外部の者だから、能力は制限されるんだよぉ」

「それは、世界の理で?」

「ううん、私たちが決めたルール」


 神様らしいルールであった。

 何ものにも縛られない彼女らは、自らを縛ることによって公平を保つのだそうだ。


 だから、現在の彼女たちは人間よりも割と強いレベルであるらしい。

 それにしたって、元の能力の十分の一なのだから、本来の能力になると想像もつかない強さになるのだろう。


 ただし、プリエナさんは非戦闘員なので元の能力に戻ってもクソザコナメクジとのこと。


「……勝てないわよ? そもそもが近づけもしないし」

「えっ?」

「……彼女の幸運が、不運を遠ざけるから、敵はね、一生彼女に近づけないの。戦わずして勝利するのがプリエナなのよ」


 うふふ、と微笑む狸の彼女に、ほんのりと戦慄を覚える。

 でも、彼女は言うのだ。

 完全に覚醒した俺には勝てないだろう、と。


「他者の運すら喰らって血肉に変える、それが全てを喰らう者。あらゆる理不尽の塊にして、あらゆる理不尽に立ち向かえる者。それがエルドティーネちゃんなんだよぉ?」

「ふきゅん、俺はそんな大それた存在じゃないんだぜ」

「残念、現実は非情なのです」


 狸の女神さまは俺を抱き上げて、俺の頬にそっと接吻をしました。


「あなたに祝福を」

「ふきゅん」

「……良い物をもらったじゃない」


 幸運の女神の祝福、とヒュリティアは言った。

 きっと幸運が舞い降りる、とはいうがそれは努力を示した者だけに舞い降りる、とも釘を刺している。

 どうやら、そんなに便利な幸運ではないようだ。


「……普段通りにしていればいいわ」

「そんなことを言われたら、普段通りに行動なんてできないんだぜ」


 というわけで俺は、うごうご、と謎の踊りを炸裂させる。

 すると、それを見たミオとクロエが反応。

 即座に、にゃんこダンスを踊り始める、と何故かレジスタンスのメンバーも珍妙なる踊りを開始したではないか。


「出来るっ!」

「負けられないにゃおっ!」

「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 突如始まったダンスバトルは危険な領域へと突入しようとしていた。

 しかし、この戦いを諫めた者がいたのだ。


「君たち☆、これから☆、戦いに☆、赴くんだよね☆」


 誰しもがうっとりと魅入るほどの切れのあるダンスを披露したのは、ムーンウォークをしながら乱入してきたレオンさんだ。

 彼の乱入によって、群雄割拠の時代は終わり、ようやく天下泰平の時代が訪れたのである。


「ありがとう、助かったよ。もう駄目かと思った」

「どういたしまして」


 しかし、彼の活躍の影で「ぐぬぬ」と怨念めいた波動を放出している者がいた。

 樹の影に隠れているようで隠れていないエルティナイトである。


 人間サイズに縮んでいるところを見るとダンスバトルに参加したかったのであろう。

 でも、どうせバックステップからのコサックダンスという訳の分からないコンボを炸裂させるだけだし、君、もう帰っていいよ。


「さて、それじゃあ出撃しようか」

「「「わぁい!」」」


 謎のダンスバトルによって、やたらと士気が向上した俺たちはレオンさんの音頭によって出撃。

 現聖王の居城と、禁断の地を目指す。


 今回の作戦は城の制圧と禁断の領域の奥にあるという始まりの大樹への接触、となるのだが、この両方の達成が長時間ずれ込んでしまっても作戦失敗となるらしい。


 聖王の城が制圧されたことをなるべく外部へと漏らさない、それが作戦の鍵となるらしく。

 しかし、こちらは先ほどのルバールさんがなんとかしてくれるとのことで。

 俺たち精霊戦隊はとにかく始まりの大樹との接触を急げとの事。


 それで、その場所となるのが町の北側。

 ぶっちゃけた話、城を通り抜けた先に存在しているとのことで。


「船で移動はできないなぁ」

「そうだねぇ。戦機での移動も大事になるよぉ」


 では、どうするのか。

 プリエナさんの回答は単純明快であった。


「【フリースペース】を使えばいいじゃない」

「その手があったかぁ」


 そう、戦機を異空間収納スペースに放り込んで城内で取り出せばいいのだ。

 折角、ファンタジーの暴力りふじんが使えるというのに、俺はこの世界に馴染み過ぎてその考えに至らなかったのである。


「……でも、結局は白兵戦にもなるから、覚悟はしておきなさいな」

「震えてきやがった」

「いあ~ん」


 恐らくは鬼で溢れ返っているだろう、とヒュリティアは予測する。

 この考えにプリエナさんもガイリンクードさんも同意した。


 そしてライオットさんだが、彼は俺と行動を共にするらしい。

 彼の繋ぐ能力が必要不可欠、という事なので当然と言えば当然だ。


 今回、オカーメ隊はクロナミとアストロイの防衛のために残ってもらう。

 こういう時に頼りになる部隊が存在すると安心できるというもの。


 もちろん、リューテ皇女とヤーダン主任も残ってもらいます。

 彼女たちに白兵戦は無理だし。


 森を抜ける。

 すると町が見えて城が見えて、その奥にまた森が見えた。


「よし、準備はいいかぁ? おやつは300ゴドルまでだぞぉ」

「ぶー、ぶー」


 これに不満が爆発。士気が大いに下がった。


「くっ、こんな事になるだなんて……俺、戦うのが嫌になっちまうよ」

「300万ゴドルにすればいいにゃ」

「ミオ、それだっ!」

「それだ、じゃないわい。破産するぞい。おまえらもシャンとせんかっ」


 結局、ガンテツ爺さんの一喝により、この事態は収拾。

 彼だけは怒らせてはいけない、という擦り込みが発生し、違った意味で士気が向上しましたとさ。


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[良い点] Q 一体何が始まるんです? A 大惨事スーパー生身大戦だ [気になる点] 運だけの女神と実力の戦神 何も起こらないはずもなく 主任「仲間外れはよくないな~ボクも仲間に入れてくれないと♀…
[一言] 自分ルールで力縛り プリエナ「自分はクソ雑魚なんで たれ流しでも平気と思ってたんだけど 最近は考えを改めたわ〜」 珍獣「なんで?」 プリエナ「虎熊童子が赤玉出しかけたと聞いて…」 珍獣「ブッ…
[一言] おやつの金額って!?
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