344食目 迷信に踊る ~んなこといいから携帯食料だ~
無事? に国境を越えた精霊戦隊は一路、【聖都ルーインタム】を目指す。
ライオットさんの話によれば、国境から三日もあれば到着する、とのことだが彼の場合、常識が息をしていなさそうなので当てにはならない。
試しに深く問い詰めてみる、と案の定、空を駆けて三日とかほざきやがりました。
陸上戦艦が空を飛べるわけないだるるぉ!?
その前に、人が空を走る、とかしちゃらめぇっ!
というわけで精霊戦隊は急ぎつつも、のんびりと陸路を行きます。
当然ながら、そこには山あり谷ありでして。
これ絶対に三日で到着しないぞ。
「今日も襲撃があったなぁ」
『……正確に位置を把握しているのはおかしいわね』
神聖国製と思われる見たこともない戦機の襲撃を受けること五回。
たった二日で五回も襲撃とか、どう考えても位置がバレているとしか思えない。
でも、発信装置などは取り付けられてはいない、とマザーは言うのだ。
そうであれば何故、神聖国側はアストロイの位置を正確に判別できるのであろうか。
ファーラとルナティックで迎撃。
クロナミからはデスサーティーン改とアインラーズが出撃。
獣耳と尻尾を備えた犬面の戦機9機を撃破する。
なんだっけかな……そうそう、コボルトだ。
そんなモンスターがいたはず。
それをメカメカしくしたのが神聖国側の戦機であった。
量産型よろしく、武装はビームライフルと光素剣であり、ぶっちゃけ相手にならない。
パイロットの技量もお粗末なもので実戦経験があるのか、と小一時間問い詰めたくなるレベルだ。
きっと模擬練習ばかりをしていたに違いない。
そんなんじゃ甘いよ、とばかりに全機撃破してあげました。
尚、ファーラの衣服は要望通り……に行かなかったエロティックセーラー服です。
上下ともくっそ丈が短い上に、おパンツもおケツが丸見え、というパンツが機能しているかどうかわからない物を着させられておりました。
そろそろファーラは怒ってもいい。
風に煽られると下半身なんて丸見えだし、そもそもが空を飛んでいるので下から見上げると、あーっ!? となってしまう。
おパンツを履き忘れたら大惨事ですぞっ。
「う~ん、特に変わったところはないよなぁ」
上空より目視にてアストロイを観察。
やはり、変わった様子は見受けられなかった。
しかし、その三時間後、やはり襲撃を受ける。
今度も少数で仕掛けてきた。
だが結果は同じ。
ことごとくを撃破し、何事も無かったかのように聖都を目指す。
「またかっ!」
真夜中にサイレンが響き渡る。
神聖国側の襲撃だ。
「……これはこちらのパイロットの疲弊が狙いね」
「せっこい手を使いやがって」
ヒュリティアの言うように、朝夜問わずに攻撃を仕掛ける事によって精神を参らせる作戦のようだ。
そうであれば、こちらも一切の容赦はしない。
小狡い方法を用いる輩には、少々痛い目に遭っていただきたく。
「あー、クロエ君、クロエ君。死霊化、承認」
『えっ、いいの? やったぁ』
可愛らしい声が聞こえましたが、これからやることはエグイの一言でございます。
彼女のアインリールが見る見るうちに巨大な骸の剣士へと変貌する。
それは闇の衣を纏い、禍々しい蛆虫を身の内に飼うおぞましい姿であった。
この蛆虫さん、クロエの光素がオーバーフローして発生するもので、実は全くの無害。
骨の上でウゴウゴしているだけであり、物質化もしていないので触れもしないという。
しかし、その視覚効果はばつぎゅんであり、見る者に一時的な発狂効果をもたらします。
ほぅら、敵パイロットたちの悲鳴の合唱が、はぁじ、まぁる、よぉ~。
予想としてはヤケクソになって向かって来るかと思いきや、まさかの敵前逃亡でした。
これにはクロエもポカーンとしているようで。
『ふえ~? なんで逃げちゃうの~?』
『そりゃあ、逃げるだろ』
ドン引きのDチームの言う事はまったく以って理解しまくり。
俺も初顔合わせにこれをやられたら、スタコラサッサだぜ。
その後、襲撃が一切無くなりました。露骨すぎぃ!
どうにもミリタリル神聖国は迷信をマジで信じちゃう体質らしい。
邪神の祟りだ、とかなんとかと信じているんだろう、というのがライオットさんの予想だ。
まぁ、それであればそれでいい。
鬱陶しい襲撃が無くなって万々歳なのだから。
そんなわけで、ただいませっせと訓練の合間を取って回復アイテムの製造中。
もちろん回復アイテムとは美味しい料理の事でございます。
戦闘中に素早く食べれてエネルギー補給するに適した料理を試行錯誤するのは楽しい作業。
一種類だけでは恐れ多い事に飽きちゃうので何種類も用意しなくては、との使命感に突き動かされてキッチンに立っております。
冷蔵庫やシンクに立つための台、その上り下りだけで結構な体力が養われている件について。
こりゃあ、明日というか本日中に足がパンパンになりますゾっ。
「ふっきゅん! ふっきゅん!」
それでも美味しい料理のためなら、えんやこら。
ザインちゃんもお手伝い、えんやこら、せっせ。
ヒュリティアはホットドッグしか作らない、ふぁっきゅんきゅん。
「このキャベツはどうするの~?」
「千切りにして置いておくれい」
これにリューテ皇女がお手伝い。
お手伝いというか花嫁修業のそれに近い。
ヤーダンママが女の子は料理くらいできた方が喜ばれる、との発言を受けての行動らしいが、本人も元々興味津々だったらしく。
そもそも男女関係なく料理はできた方が人生の色が映えるというもの。
お料理できるヤツは人生が楽しくなるぞっ。
「……むむむっ、そばは、きんきゅーじには、たべにきゅいでしゅーりょー」
「そのままだと食べにくいだろうなぁ」
ザインちゃんはイメージトレーニングを行い、蕎麦をフリースペースより、さっと出して食べる真似事を敢行。
その結果、蕎麦をこぼす光景がリアルに見えたとか。
笊に乗った蕎麦を勢いよく出すのはNG。
勢いよく笊から射出されて【あなたは悲しくなった】状態に陥る。
「蕎麦は落ち着いた環境で食べるのが一番と見た」
「およよ……むねんでごじゃる」
そもそも蕎麦ツユもないと食べれないから戦闘中は無理があるだろう。
振動でツユがコクピットにぶちまけられたら、えらいこっちゃですぞ。
「手軽に食べれて種類豊富なら、やっぱサンドイッチ、ハンバーガー、おにぎり、かなぁ」
「……ホットドッグ」
「あっはい、そっちはヒーちゃんに任せます」
「……よっしゃ」
露骨にガッツポーズ、凄いですね。
まぁ、ホットドッグはヒュリティアに丸投げすればいいだろう。
問題は俺たち以外。
空間魔法フリースペースが使えない連中に用意する料理だ。
冷えていても美味しく日持ちする料理を考える、とどうしても味気ないものになる。
下手な具材は傷みやすくなる原因になるからだ。
そうなるとアースラの小麦だけで作ったパンが候補に挙がる。
でも、具無しのパンばかりだと心が瘦せ細るに違いなかった。
だから、何か良い具は無いかなぁ、とふんふんカスタードクリームを混ぜ混ぜしながら試行錯誤する。
とここで俺は急に、カレーパンが食いたい、という欲望に駆られた。
「そうだ、カレーパンを作ろう」
「ままうえっ、しょれは、すてきな、かんがえでごじゃりゅっ」
「カレーパンってなぁに?」
「ありゃ、リューテ皇女はカレーパンを食べたことが無いのかぁ?」
「うん。カレーって物も食べたことが無いかなぁ」
そういえば、まったくカレーライスを作ってなかったな。
こりゃあ、うっかりだ。
「よし、それじゃあ、まずはカレールーから作ってみるか」
おんどるるぁ、カカツ、とカレールーを完成させました。
とろみをつけるためにアースラの小麦粉を混ぜる。
するとカレールーが黄金色に染まりました。
「ひえっ、これがカレールーっ!?」
「いや、普通はこんな色にはならないから」
なんでも受け入れる小麦粉は実のところ自己主張が激しいお方でした。
それでも外見だけの事で味はしっかりとカレーであり、安心と信頼のスパイシーさで舌を喜ばせてくれます。
「ふぁ~、とってもスパイシーで、癖になっちゃう……」
「メシの顔しやがって……!」
初めてのカレーを口にして五歳児とは思えないエロティックな顔を見せたリューテ皇女にちょっぴりのライスを進呈。
これとカレールーをドッキングし一緒に咀嚼すれば、そこは黄金郷だ。
誰も盗ったりしないのに急ぎ、口腔に食べれる黄金を放り込みモグモグする姿は決して皇族には見えないだろう。
年相応の可愛らしい女の子であることは間違いようがなく。
「これは素晴らしいお料理だよっ。フルベルト君にも食べさせてあげたいなぁ」
「リューテ皇女はフルベルト王が好き?」
これにリューテ皇女は、ぽっと頬を赤らめて「しゅき」と答えました。
彼と一緒に過ごした時間は多くは無いはずなのだが、いったい何がどうなって相思相愛へと発展したのだろうか。
だが、それを維持することは中々に大変だとも思う。
二人ともまだ幼すぎるし、恋に恋する年頃の可能性だって十分にあり得るのだ。
こんな考えに至るのは俺が純粋に不純だからだろうか。
お母んの記憶は俺を完全汚染し、素直さを遥か因果の彼方へと置き去りにしたに違いない。
そういうわけで、今から取りに行こうと思いますれば。
「スクランブルエェェェェェッグ!」
「え?」
「だだっだぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そう、俺の因果の彼方とはスクランブルエッグだったのだ!
「……エル、静かに」
「ふきゅん」
究極のホットドッグ作りに余念がないヒュリティアさんに「めっ」されました。
だから俺は静かに鳴くだろうな。
さて、冗談はさて置き。
カレーライスにスクランブルエッグは良く合う。
なのでささっと作って冷ましたカレールーと共にパン生地へ組み合わせる。
問題は混ぜるか、上に乗せるか、だ。
ここは混ぜないで載せるを選択。
具を包み込んで油で揚げる。
ミラージュ油は実に優秀。
くどくない油はカレーパンをお上品に仕立ててくれました。
「よし、まずは揚げたてだ」
「「「わぁい」」」
四人で揚げたてサクサクのカレーパンをいただく。
もう全てが黄金に染まっていてリッチを通り越した何かを感じる。
でも、それは紛う事なきカレーパンでございます。
さくっ、かりっ、じゅわ~。
カリカリのパンの中から飛び出してくる刺激的なカレールー。
具は細かく刻んだ玉ねぎとゴロゴロお肉。
この肉はもちろん無限食材の水豚である。
むっちりとした肉の感触はそのままに、しかし、カレールーにすら瑞々しさを分ける究極の食材は、カレーの品格を数段ほど上げた。
スクランブルエッグはこれに、ほっとする安心感を与えてくれる。
やはり、別々にしたのは正解であったようだ。
「やっぱ、揚げたては一番だよなぁ」
「……問題は冷えてからね」
「そうだな。それじゃあ、これにキッチンペーパーを被せて暫く放置だ」
もちろん、網の上に置いて流れ出る油に浸らないようにする。
折角のカリカリ感が台無しになるから。
こうして冷やしたカレーパンを再度、みんなで試食。
結論からいうと大成功。
ヒュリティアの見立てでも、特殊食材が持つ傷み難さから一週間は常温で保管できる、という究極の携帯食が完成した……はずだった。
「……パ、パン粉がっ」
「ふきゅん、床にボロボロこぼれまくりなんだぜ」
「こりぇは、こくぴっとが、たいへんになるでごじゃりゅ」
「どんなに頑張ってもこぼれちゃうね」
そう、カレーパンは衣を揚げるが故に、カリカリのパン粉が零れ落ちてしまう、という欠点があったのだ。
これではアナスタシアさんや、おやっさん達からの苦情は想像に難しくは無く。
「ふきゅん、行けると思ったのになぁ」
「……そうそう上手くはいかないわね。やはり、ホットドッグ無双」
結局、片手で食べ易く零れにくいホットドッグが最強、という事になりました。
ザインちゃんのおにぎりも良いと思うんだけど、アースラの小麦粉が使えないので日持ちしないという致命的な弱点で不採用に。
携帯食料は難しいんやなって。




