338食目 在り方
ズタボロのアインリールを押し退けるかのように前に出る。
盾は阿修羅戦鬼戦で既に無く、黄金盾は奥の手のために使えないがしかし、俺たちには天下無双風味の魔法障壁がある。
「魔法障壁っ」
「あ~い~あぁぁぁぁぁぁぁんっ!」
そこに思い付きそうで思い付かなかった精霊魔法をミックスする。
アイン君の鉄の精霊魔法だ。
精霊魔法【決して砕けぬ鉄の意志】をエルティナイトにではなく魔法障壁の盾に施す。
作り出す盾は一つや二つではない、十もの強固な盾が前方に出現。
迫りくる暴風や獄炎、氷の塊をことごとく跳ね返した。
「おおっ、一体それなる盾はっ」
「なんという強固な盾よ」
危機感を覚える敵は、やり難さが半端ではない。
これで、この野郎ぶっ殺してやらぁ、とか言って突っ込んでくるヤツだったら楽だったのに。
「木っ端どもは後回しに……うおぉっ!?」
『だぁれが木っ端だぁ! 木っ端もろくに潰せねぇポンコツどもがっ!』
もう半壊ってレベルじゃないのに、それでも動ける驚異の粘りはDチームでなければできない芸当か。
だが彼らは問題無くとも機体が限界だ。
動けるのが奇跡というくらいにダメージを負っている。
しかし、退けと言っても聞かないであろう彼らを生かすには、彼らと共に三体の戦鬼を撃破する必要があるだろう。
「あいつらを死なせはしない」
『当然の考え。ナイトは、全てを護るんじゃない、ついつい護っちまうもの。だから俺たちはやってのけるだろうな』
「あぁ、彼らが作ってくれた時間で俺たちは復活できたんだ。しっかり借りは返さないとな」
「てっつー!」
アイン君も絶好調だ。
これで負けたら言い訳のしようがないというもの。
「アイン君! 行くぞっ!」
「あいあい!」
「精霊魔法!【貫く鉄の意志】発動! 行けっ! 鉄の盾たち!」
出現させた十枚もの鉄の盾が高速回転を始める。
それらは俺の意思に従い自由自在に飛び回る。
そう、これはアイン君の言っていた支配の魔法。
俺はエルティナイトに防御を任せ、攻撃に専念できるのだ。
「ぬうっ! 直進しかできぬ盾などに当た……ぐわっ!?」
ぎりぎりで回避しようとした暴風野郎の顎の下で急停止する魔法の盾は、直後に真上へと急上昇しヤツの顎を跳ねる。
姿形は盾の形を成しているが、こいつの正体は魔法障壁。
質量なんて無いし、空間に固定しているものを鉄の魔法で無理矢理強固にして移動させているから、慣性の法則なんてガン無視ですぞ。
それが十もあるものだから、やりたい放題で。
でも、白状します。
実はまともに動かせているのは三つでございます。
残りは動かせている風に周りをチョロチョロさせているだけだったり。
いや~、遠隔操作、きついっしゅっ!
でも、その三つの操作を巧みに切り替えれば十もの飛行物体を動かせているように見えるんですわ。
後々、全部動かせるように特訓ですな。はい。
『まだまだ、俺のターンは終っちゃいないぜ! ナイト魔法発動!』
え? おまえ、単身で魔法使えたっけ?
『【ナイトの消えない魔球が君を熱くする】発動っ!』
「それ、ただの投石じゃないですかやだー」
「いあ~ん」
足元の石を拾っての投石は、エルティナイトがやると凶器になる。
振りかぶってからの一球は見事、獄炎野郎の眉間に突き刺さり「ぬふぅ」と悲鳴を上げさせることに成功。
無論、それを見逃すほど俺は甘くない。
ただ突っ込ませるだけなら十の盾を操作できる。
「今っ!」
超高速回転する十枚の盾で獄炎野郎をズタズタに切り裂いた。
「う、うおぉぉぉぉぉぉっ! 馬鹿なっ!?」
バラバラに引き裂かれた獄炎野郎は地面に落ちる前に爆発四散し果てる。
「おおっ、炎戦鬼がやられるとはっ!? 氷戦鬼よっ、最早、遊んではいられぬ!」
「暴風戦鬼よ、委細承知っ!」
三体の戦鬼の名前はくっそ単純でした。
凝った名前を言われても覚えられないし、良いのかもしれない。
まぁ、覚える前にお別れしたいところではある。
『へっ、やるじゃねぇか!』
『俺たちも、良い所を見せねぇとなぁ!』
『もちろんだぜ!』
折れぬ闘士のDチームは飛び交う盾の中に突っ込み格闘戦を開始。
そこにエルティナイトもなだれ込む。
「ぐっ! 十もの盾を操りながら、この動きっ!」
「阿修羅戦鬼での戦いは様子見だったという事なのかっ!」
いや、違う。
おまえらが、俺たちの力を、そのあり方を引き出しちまったんだ。
だから、先ほどの俺たちとは全く違って見えるだけ。
「つおっ!」
暴風で作り出した見えない槍は、しかし、十の盾の一枚で防ぐ。
こいつらは攻撃のための盾ではあるが、そもそもが盾なのだから防げて当然。
「ならばっ!【氷獄固め】っ!」
青っぽい鎧をまとう氷戦鬼が猛吹雪を発生させてきた。
恐らくは俺たちを氷漬けにするつもりなのだろう。
「甘い甘い。高速回転する盾との相性は最悪なんだぜ」
『動きまくる物を凍らせるには威力が足りない感』
「な、なんとっ!?」
しかも、凍り付いてもそこに放置して、新しく作り出せばいいだけの事だしな。
基本、魔法障壁は使い捨てですからっ。
「見事なものよ。しかし、火事場の馬鹿力は持続性がないものが相場ぞ」
「っ!」
ちっ、気付いてやがった。
暴風野郎の言う通り、これは火事場の馬鹿力だ。
特殊食材たちのお陰で戦えるようにはなったが持続力は無いに等しい。
ここで一気に決めておきたかったが、達成できたのは炎戦鬼のみ。
防御を固めた暴風戦鬼と氷戦鬼を中々仕留める事ができず消耗する一方。
なんとか痩せ我慢をしてきたが、いよいよ魔力と精霊力が危険水域に迫り、盾の一つが形を維持できなくなり消滅。
それを見届けた戦鬼たちの口角がニヤリと上がる。
「ふふん、頃合いか」
「やはり、燃え尽きる前の蝋燭であったようだな」
「せっこい戦い方しやがって!」
防御を解き一点攻勢に出る戦鬼たち。
残った盾も既に中身がないもなか状態で、パリンパリンと簡単に砕かれてしまう。
『盾が機能しなくなっただけで、何勝った気でいるわけ? メガトンパンチ!』
「ぐおっ!?」
エリン剣を持った手で何故か殴る騎士は、もっと剣を有効活用してどうぞ。
今斬れば決着でしたよね? どういうこと?
『唯一無二の盾はナイト。この煎餅どもを盾と言い張る、とかおまえ忍者だろ? 忍者きたない、流石忍者、きたない』
「戦鬼なんだよなぁ」
「いあ~ん」
それが言いたいがために殴りを選択するとか、おまえナイトだろ。
ナイト、自己主張はげしい。流石ナイト、自己主張はげしい。
とはいえ、エルティナイトの全力パンチで氷戦鬼の顔面を破壊できないとかエネルギーダウンも深刻化している。
残された猶予は無いに等しいか。
もう一回、食事をしようにも時間を稼ぐことはできない。
Dチームだって、当に限界を超えている。
『うおぉぉぉっ!?』
『モヴァエっ!?』
『ルオウ、カバーに入れっ!』
拙い、モヴァエのアインリールの膝が金属疲労で折れた。
敵の攻撃ではなく、その動きについて来れないで破損、とか痛恨の極み。
「ふははっ! 勝機ぃっ!」
「朽ち果てよ! 暴風戦鬼、やるぞ!」
「応よ!【氷風蹂躙陣】!」
俺たちを囲うように、足元からドス黒い円陣が発生した。
そこから発生する竜巻とそれに混じる氷つぶて。
それらは激しく機体を削ってゆく。
「ぐ……このままじゃっ!」
エルティナイトはともかく、Dチームが持たない。
彼らの機体はあくまで極普通のアインリールなのだ。
この絶体絶命の大ピンチに、しかし彼は駆け付けた。
光を纏いし獣の名は……!




