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329食目 一長一短

 桃大結界陣に必要な大桃先生はアストロイで運ぶ。

 そして、それを下ろした後に大桃先生を護る者が必要になるわけだ。


 それをやってもらうのは、ヒュリティア、ユウユウ閣下、ファケル兄貴、ぽっちゃり姉貴、そしてザインちゃんとレオンさんになろうか。


 ここで心配なのがザインちゃんだ。

 何がなんでもこの戦いに加わる、と言って聞かないので、レオンさんについてもらったのだが、果たして足を引っ張らないか心配になる。


 好き勝手に暴れていい戦いとは違い、防衛戦は非常に繊細で広い視野が必要になる。

 敵を撃破することに夢中になってはいけないため、本来は全員にパートナーを付けたいところであるが、そうも言ってはいられない。


 クロナミをキアンカに残していったのはタイミングが悪かった、としか言いようがない。

 でも、残さざるを得ないのが歯痒いところでもある。


 キアンカの防衛も大事だから仕方がないね。


 こういう時こそ、エルティナイトの理不尽パワーが必要だというのに、あいつはテコとして動かない。まったくもう。

 その分、このファーラには働いてもらわねば。


 まずは一つ目小僧どもの数を減らす。

 これに参加するのは俺とヤーダン主任、オカーメ隊。そしてDチームの面々。


 一応、リューテ皇女も出撃しているけど、彼女はアストロイの防衛に終始してもらう。

 マネックの狙撃銃なら、安全な位置での攻撃が可能だ。


 H・モンゴー君は、いつものように囮になってどうぞ。


「よし、まずは、おまえの性能を見せてもらおうか」


 突撃槍を構え、備わっている機関砲の引き金を引く。

 すると根元の銃口からエネルギー弾がドバーっと発射され始めた。

 そして、ガンガン減ってゆく俺の光素。


 ちょっとばかり燃費が悪いんじゃありませんこと?

 こんなんじゃ勝負になんないよ~?


「なんだこれはたまげるなぁ」

「あい~ん」


 これにはアイン君もにっこりであった。


 仕方がないので機関砲はほんのりと牽制に使うしかない。

 ならば、と俺はもう一つの攻撃方法を使うだろうな。


 済まないがファーラ君……きみも理不尽の権化になっていただきたくっ。


『「んファイアーっ、んボォォォォォォォルっ!」』


 ファーラの掲げた手から火球が生じ、それが瞬く間に巨大化。

 それを一つ目小僧どもの群れの中へとぽいっちょ。

 着弾と同時に大爆発が生じ、群れの一つが壊滅する。


 相手が相手なので、手加減など不要らっ!


 いやしかし、声が可愛いなファーラ。

 ハイトーンボイスとでも言えばいいのか、独特の声だ。

 生意気系な声、それとも我儘系であろうか。


 これ絶対にこだわった奴がいるだろ。帰ったら尋問しなくては。


 でも、俺の声をそのままトレースするなら、全ては残念系になるのは至極当然で。


『「んほぉぉぉぉぉぉっ! んぎもじい~っ! もっとぉぉぉぉぉぉっ!」』


 はい、早速、残念な娘になりましたよ。


『こらぁぁぁぁっ! ファーラに何を言わせてんだっ!』

「ふきゅんっ」


 おやっさん達に怒られました。


 どうやら、この機体、表情変化も搭載されているようで。

 ファイアボールで粉砕した快感がファーラの表情に反映されていたようです。


 いわゆる【アヘ顔】を晒したとのこと。


 でも、俺のじゃないし多少はね?


 これでファーラも問題無く攻撃魔法が使用できることが分かったので、この戦いもなんとかなりそうではある。

 しかし、耐久力の面では大きく劣るであろうことから、俺の精神がマッハ。

 消耗し過ぎて危険領域がリアルに見え見え。


 おっぶぇっ! 今当たるところだったぞっ!


『「にゅあぁぁぁぁっ! ぷじゃけんにゃっ! 当たったら、ポロるだるるぉっ!?」』


 そう、ファーラは色々と際どいのだ。

 一見、スーパーロボット寄りなのに、実のところ回避して敵を穿つというリアルロボット。


 まったくリアルじゃないけど、ある意味でリアルな巨大美少女は、色々な部分がリアルすぎてヤヴァイ。


 そして、何故か一つ目小僧を応援する野郎どもは、おくたばりくださいまし。


「ふぁっきゅん。やっぱり、ナイトが一番だってそれ一番言われているっぽい」

「あい~ん」


 くっそう、アイン君も何か知っている感じだ。

 彼は隠し事が苦手だらかすぐに顔に出る。


 でも、今問うても答えてはくれないだろう。

 であるならファーラを使いこなして見せるしかない。


 足りない技術ちから魔法ぼうりょくで補う、これ異世界理不尽チートの基本。


『「風属性補助魔法っ、【クイックムーブ】! 続けて土属性補助魔法【アースリング】っ!」』


 二種類の補助魔法を発動させる。

 クイックムーブは風を纏って挙動を加速させる魔法で、アースリングは周囲に石の輪を発生させる魔法だ。


 この石の輪が非常に便利で、自動的に防御や迎撃をおこなってくれる。

 ただし、使用には剥き出しの大地が必要になるため条件が揃っていないと発動しても失敗扱いになる。


 これらはもちろん、それぞれの属性と契約が成ったからこそ可能な魔法達。

 知識はあっても資格が無いと使えないとか、いや~焦らされましたよ。


 これで移動と防御は充実した。あとは攻撃面だ。

 集団にはファイアボール安定だが、これでは取りこぼしが発生する。

 それらをチマチマと槍で突っつくのは効率が悪いので、これを使う。


『「雷属性補助魔法っ【ライトニングチャージ】っ」』


 ライトニングチャージは対象を帯電させる効果がある。

 こいつを槍に施して攻撃の際に電流を流し込んでやる、とあら不思議。

 強烈な電流は突き刺した対象の他にも獲物を求めて飛び出し、次々と感電させてゆくのである。


 しかも、敵味方の判別機能付きという優れもの。

 もっとも、これは雷の枝を司るザインちゃんがいなければ無差別になる、という恐ろしい側面を持っているので、普通の魔法使いは集団戦で使っちゃいけないぞっ。


「ふきゅん、エルティナイトと違ってファーラは魔法が素直に発動するなぁ」

「あいあい」


 エルティナイトは若干、魔法を抵抗してしまう。

 発動までにタイムラグが生じる分、調整が難しく、しかも想定以上の威力に爆上がりしてしまう不具合があった。

 でもファーラはそれが無く、極めて素早い魔法の発動と思った通りの魔法の結果を生み出した。


 正直な話、ファーラの方が集団戦に置いては、エルティナイトよりも遥かに有能だ。

 問題は俺の戦い方の好みに合うかどうかだが……割とこれが嚙み合わない。

 俺はもっと豪快に、ぐぉん! とくっそ派手に戦いたいお子様なのだ。


「あい~ん」

「その調子だって? んもう、他人事だと思って」


 ふふ~ん、とお澄ましアイン君可愛い。


 一つ目小僧どもの第一波を蹴散らした俺たちは、そのまま第一ポイントへと到達。

 アストロイからの大桃先生設置作業に入る。


『敵、第二波来ます。飛行タイプの存在を確認』

「うわ、面倒臭いのが来た」


 ここで帝都より翼の生えた一つ目小僧どもの群れが急速接近。

 戦機はほぼ陸戦型なので、空戦タイプの兵器は苦手であり、いまだに戦闘機が頑張っているレベルなのだ。


「アストロイは対空防御急げっ」

『了解』


 さて、エルティナイトは魔法障壁の足場を多用した空中戦をおこなっていたが、機体重量の軽いファーラがそれをおこなうのは愚の骨頂。

 エルティナイトの場合は機体が重すぎて叶わなかった、あの魔法を使ってみる事にする。


『「日常魔法【ライトグラビティ】、続けて風属性補助魔法【エアバースト】発動っ」


 日常魔法【ライトグラビティ】は対象に掛かる重力を軽減する魔法だ。

 エルティナイトは、これを抵抗しやがりますのでまったく軽くならない。

 でも、ファーラは素直なのでくっそ軽くなります。


 そして【エアバースト】は風の爆発を起こす魔法。

 こいつを推進力にすることで、こんな事ができるようになる。


「よ~し、イメージ通りだ」

「あい~んっ」


 空を飛ぶ巨大美少女騎士の爆誕でございます。


 本当はエルティナイトでこれをやりたいのだが、あいつは唯一無二の盾を自称するので、軽くてはいけにぇ、とかで重さを重視するから絶対にできない芸当だ。


『おいおい、本当に何でもありだな』

「ファケル兄貴っ」

『やっぱ、それに乗っているのは、おまえか』

「ファーラ、っていうんだぜ」

『くそデカくなけりゃあ、惚れてたかもな。来るぞっ!』

「おうっ!」


 敵の空戦戦力はざっと見ても百は越える。

 対して、こちらはたったの二機。


 絶望的な差であるが、こんなの事で絶望などしてはいられない。

 それに桃大結界陣の最初の一手でコケるわけにはいかないので、連中には早々にご帰宅願うとしよう。


 俺はファーラに【大魔法】の発動を準備させるのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] H・モンゴー君は回避盾。 空蝉張替え失敗で撃墜されないように注意して差し上げろ。
[一言] 万能のくせに、使いようがナイト・・・
[一言] ファーラの機体性能は? 珍獣「なんとかなるがやはり声が…」 NG「珍獣の口にモノを詰めれば塞げるか?」 珍獣「フガフガ」 ファーラ「こんな大きいの入らな〜い」 おやっさん「ナニ言わせてる!!…
感想一覧
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