274食目 決戦の朝
◆◆◆ エルドティーネ・ラ・ラングステン ◆◆◆
本日はいよいよ運命の時。
チャンピオンシップアリーナの頂点が決定する日である。
あ、ユウユウ閣下は当然の権利のごとく勝利しました。
やっぱり、おっぱいを詰め込むのに難儀していたもよう。
いまだに成長なさっておられる、てな感じで。
朝早くから起きて朝食の支度を開始。
今日が運命の日だろうと、大事なことがある日であろうと、朝ごはんよりも大切なことがどこにあろうか。
朝をしっかり食べれないヤツは途中でエネルギー切れになって死ぬ。
これは割と古代から言い伝えられ続けてきた事ってナイト界隈では有名。
だから俺は、しっかりと朝ご飯を食べるだろうな。
「ヒーちゃん、昨日も帰ってこなかったなぁ」
流石に二日も帰って来ないと心配になる。
でも、しっかりと連絡はくれたので、そこまで深刻ではないが。
そして、ヤーダン主任も帰ってきてない。
そう、彼女は虎熊童子との第2ラウンドへと向かったのだ。
一応止めたのだけど「約束ですからね」とやんわり断られたのだ。
「ふきゅん、結局、【両刀】とはなんの事だったんだろうか」
ヤーダン主任は自分の事をそのように称していた。
服に二本の剣を隠して虎熊童子を暗殺しよう、とでもいうのであろうか。
でも、あんなピチピチのエロい服じゃ隠せないしなぁ。
お米を研ぎながら、ふきゅんふきゅん、と鳴いているとヤーダン主任が無事に戻ってきた。
「ただいま。相変わらず早いですね」
「ふきゅん、ヤーダン主任、ふきゅん、おかえり、ふきゅん」
「研ぎを入れる度に鳴くんですね」
「癖なんだぜ、ふきゅん」
米研ぎは結構な重労働なのだ。
気合を入れなくては美味しいご飯が炊けないぞっ。
「それにしても、無事で何よりだぁ」
「別に殺し合いに出向いたわけじゃないですからね。食事をごちそうになって、軽く大人のスキンシップをしただけです」
「大人のスキンシップ? 詳しく」
「大人になれば分かりますよ」
「けちんぼだっった!」
どうやら機密事項だったらしくて教えてくれなかった。
でも、子供でも分かる出発前と出発後のエロさの度合いの変化。
同性の俺でも思わず引いちゃうほどの魔性のエッチ力は、下手をすれば陰の力に属性が傾いている感じだ。
ヤーダン主任は喉が渇いた、といって水を飲もうとしていたので、【ウルオリーブ】の果汁を一滴落としたホットミルクを作って差し上げる。
このウルオリーブは潤い成分たっぷりのオリーブであり、肌に付けてもいいし、食べてもいいという、ドワルイン王国の万能食材だ。
もちろん、美味しい。
ホットミルクは温め過ぎないようにする。
ゴクゴク、行ける程度の温かさに調節すると喜ばしい。
「おや、これはいけますね。安心する味です」
「小腹が空いた時や、寝付き難い時もいいんだぜ」
妙にすっきりした感じのヤーダン主任は俺に礼を言い、むっちりとしたお尻をフリフリさせながら自室へと戻っていった。
尚、ヤーダンママがいない間、アクア君はアナスタシアさんが面倒を見ていてくれました。
彼が機械フェチになってない事を祈ろう。
チャンピオンシップアリーナが終われば、今度は特殊食材探しを本格化させることになる。
いまだに、その気配すら見せない特殊食材。
果たして、それは本当に実在するのか。
ちょっぴり不安になるも、俺の勘は絶対に存在すると告げている。
でも、今までにない黒い不安はいったい何事か。
今までは食材と聞くとウキウキの虹色ハッピーだったというのに。
「うをっ、しまったぁ、揚げ過ぎた」
今日は願を掛けて、朝からトンカツ尽くし、としていたのだが、考え事をしていてちょっぴり焦がせてしまった。
「しょうがない、こいつはカツサンドにして焦げを旨味に昇華しよう」
たっぷりと粒マスタードとマヨネーズを塗してやれば、焦げも旨味に変化してくれるはず。
流石に真っ黒こげでは無理であろうが、この程度なら大丈夫だろう。
余ったら持って行ってお昼に食べればいい。
……今まで余ったことなんてないけどなっ!
さて、タイミングも頃合い。
皆の勝利を祈願して、【カツどぅん】を作ってゆこう。
このために、わざわざ三つ葉を購入してあるのです。
「う~ん、この色合いは芸術だぁ」
やっぱ、カツどぅんには三つ葉なんやなって。
黄色と白と緑、このコントラストは神が創りたもうし美の到達点。
この魅力には抗いがたく。
「……やっべ、無意識のうちに食べちゃった」
美味しかったです、げふぅ。
直ちにカツどぅんを作り直しました。
そのタイミングで、わらわらと精霊戦隊の面々がダイニングへと顔を見せる。
「おはようにゃ~ん!」
「なんだか良いにおい」
にゃんこびとのミオとクロエは、いち早くカツどぅんの存在をロックオン。
光の速さと錯覚するかのような動きで着席。
「「いただきま~す!」」
そして、合掌からの一礼をおこない、食と命に感謝しガツガツとカツどぅんを胃袋に納め始めた。
「早いっ、ここからが俺の戦場かっ!」
完食までに三分も掛かっていない。
でも、ご安心を。
この日のために作り溜めしておいたカツどぅん軍団がフリースペースに控えております。
「ふあ~、おはよ~。朝からカツ丼とか、凄いねぇ」
「エリンちゃん、おはよう。ヘビーだと思う者にはガンテツ爺さんの朝食セットを用意してあるんだぜ」
塩鮭にワカメの味噌汁、胡瓜の漬物に炊き立ての銀シャリ、がガンテツ爺さんの鉄板朝食となる。
朝に重たい物を食べれない時などは、こちらを選択する者が多い。
やっぱ、和食はジャスティスなんやなって。
でも、精霊戦隊はヤングばかりなので、朝カツどぅん余裕でした。
そして、カツサンドも皆殺しにされました。
やっぱり今回も余らなかったよ。
「あれ? 誰か【カツホットドッグ】食べた?」
「食べてないにゃお」
ミケがそう言うなら誰も食べていない事になる。
つまみ食いの常習犯が彼なので、他の者が犯行をおこなうとは思えない。
カツホットドッグはヒュリティアのために試作したものだ。
といっても衣を塗して揚げたソーセージをコッペパンに挟んだだけの物なのだが。
少し酸味を利かせた、しんなりキャベツの千切りをコッペパンに敷き、たっぷりの粒マスタードとマヨネーズを塗した割と自信作。
それが消失してしまい、ふんにゃりとしたところにH・モンゴー君が俺の背中を指し示す。
「我が主、背中に何か張ってありますぞっ」
「なんだって?」
背中に手を回し、それを取ると……紙に【ごちそうさまby怪盗ヒュリティア】との文字が。
「いつの間にっ!?」
恐るべし、怪盗ヒュリティア。
ホットドッグとあらば即参上、は伊達ではなかった。
このままでは俺の背中が無法地帯と化してしまい、終いにはバッサリとやられてしまいかねない。
「今日からH・モンゴー君には俺の背中を見守る係になってもらうっ!」
「ははっ! 謹んで任に当たらせていただきますっ!」
でも、H・モンゴー君は二日でサボり始める事で有名なので期待してはいけない。いいね?
取り敢えず、光素でH・モンゴー君用のカツどぅんを製作する。
一通り作り終えたら、今度はエルティナイトの朝食作りと忙しい。
「とんぺー、ひとっ走りお願いなんだぜ」
「おんっ」
彼もカツどぅんに興味があるっぽいので、あとでご馳走してあげなくては。
格納庫に到着。
相も変わらずデカい態度のナイトがそこに寝っ転がっていた。
「おいぃ、おはやう」
『おはやう、ちんちくりぃん。早速、モーニングディナーを所望する』
「朝だか夜だか分らん食事は混乱するのでNG。このままでは世界がカオスになる」
『混沌の世の中でこそナイトは輝くので、この問題は回避された』
「ぐぬぬ、これで勝ったと思うなよ」
『もう勝負ついてるから』
いつものやり取りをおこなって、エルティナイトサイズの光素カツどぅんを製作。
それをエルティナイトは『うま、うま』と言いながら食べ進めてゆく。
そんな光景を見て、ふと気付いた。
何気なく光素でエルティナイトの飯を作っちゃったけど、この光素量、普通に致死量じゃね? と。
はて、俺はいつから、こんなバカげた光素を放出できるようになったのであろうか。
そして、貯蓄もだ。
人間が貯蓄できる光素量はだいたい肉体の大きさに比例するらしい。
光素限界突破の仕組みは、いまだ謎が多いらしいが、人が貯蓄できる光素量は自分の身体のサイズというのが世間一般的と聞き及んでいる。
では、ちんちくりんの俺が、どうしてこれほどまでにバカげた量の光素を保有できているのか。
「なぁ、エルティナイト」
『何か用かな?』
既にカツどぅんを完食し、戦機サイズの爪楊枝で歯の隙間の食べカスを「しー、しー」していたおっさん臭いナイトに、俺の光素量の謎を問うてみる。
彼は答えた。
『おめぇ、身体って何で出来ているか知ってるか?』
「肉」
『正しいが、同時に愚かしい』
「ふぁっきゅん。もったいぶらないで、教えてください」
『素直だから教えてやろう。それは【細胞】だ』
「さいぼう?」
ここで俺はキュピーンと閃いた。
なんてことはなかったのだ。
『気付いたようだな』
「そうだった! 身体の大きさは細胞の保有量に関係あるけど、【細胞の光素保有量】には関係のない事だった!」
『正解。ちんちくりぃんは細胞一個の光素保有量が異常』
エルティナイトは答えた礼を出せ、とばかりにお茶を所望した。
光素保有量の謎が解けてスッキリした俺は、素直に緑茶を出してやることにする。
「でも、なんで俺の細胞は光素を馬鹿みたいに溜め込むことができるんだろうか?」
『一種の才能、素質。そして破壊と再生を繰り返した結果だな』
「破壊と再生?」
『おめぇの中には何がいる?』
「……全てを喰らう者かっ!?」
『それを内包するには、普通の肉じゃ足りない足りなすぐる。だから、おまえは食いまくるんだろうな』
大量の飯を食って死滅する細胞を高速再生させている、という事でいいのだろうか。
だからこそ、まったく身長が伸びない?
だからこその突然の赤ちゃん化とアダルト化?
俺は普通に成長することができないってことじゃないですかやだー。
『その顔だと、知らなくてもよかったことに気付いた感』
「俺は正気を失った!」
『失っちゃったかー』
まさかの事実に、俺は正気を失い【アサッパラカラクルフチンジウ】と化したのであった。
でも、チャンピオンシップアリーナの最終日はもう始まっているんですわ、ふぁっきゅん。




