表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
267/501

266食目 黄金の世代と闇に潜む烏

 レフティコーチの話を要約すればこうだ。


 全部、闇烏ってやつが悪い。


 うん、彼の話を鵜呑みにすれば、それが手っ取り早い。


 なので取り敢えず、激おこぷんぷんクライマックスインフェルノ状態で怒ってみたところ、逆に冷静になってしまった。


 今は、スン……としている。


 さて、俺は一応のところ部外者であるので、闇烏なる組織からも事情を聴きたいところ。


 そもそも彼らに、なんの力もない一般トレーナーと化しているレフティコーチを襲撃するメリットなど皆無に近いはず。

 にもかかわらずレフティコーチを襲った理由がイマイチ分からない。


 何かの秘密を見られたから、という理由で襲ったにしては止めを刺さない辺り甘すぎる。


「襲撃者の姿は見たのかぁ?」

「いや、顔は見えなかった。だが、ヤツらの組織に所属している証である紫色のローブに身を包んでいたから、まず間違いないだろう」

「闇烏なる組織に罪を被せようとしている模倣犯の説もあるぞ」

「確かにそうだが……そうだとしても、俺を襲う理由にはならない」

「ふきゅん、確かになぁ」


 場所を移したチーム専用のブリーフィングルームは平時であるなら賑やかであったのだろう。

 しかし、今は俺とチームオリオンしかおらず、レフティコーチの身にこのような事があったばかりとあって空気がすこぶる重い。


 それも、レフティコーチの過去を聞かされてから、というもの更に重くなる、という倍率ドン更に倍な状態だった。




 レフティコーチはジュニアアリーナを一時期、トップに立って牽引した存在だったという。

 そんな凄腕の彼が所属していた時代は黄金世代、或いは暗黒の時代、とも呼ばれている。

 それは、その時期に闇烏なる組織が活発に暗躍していたからだ、という。


 彼の過去話で鍵となるのが【レイナ】という少女だ。

 どうやら、レフティコーチは彼女に恋心を抱いていたようで、彼の話によればレイナなる人物も少なからずレフティコーチの事を想っていたもよう。


 でも、彼女は闇烏の構成員で、闇烏の最終計画である【アリーナ乗っ取り計画】の中核にいる存在だった。


 それでも、レフティ少年とバトルを繰り返してゆく内に、今の自分の在り方を疑問に思い始め、そして最終的には組織ではなくレフティ少年を選んだのだという。


 がしかし、運命は時に残酷だ。


 決死の覚悟で組織と決別した彼女に待っていたのは、再洗脳からの殺し合い。

 乗っ取り計画が破綻してしまい、進退窮まった組織の総統は自らが出向いて、その場にいた王族たちを抹殺せん、と規格外の戦闘能力を持つ戦機を持ち出したのだ。


 規格外の戦機はとても一人では動かせないため、サポートを同乗させなくてはならなかった。

 それに選ばれたのがレイナ少女というわけだ。


 レフティ少年は彼女を取り戻すべく、同世代の少年少女、そしてアリーナチャンピオンと共に闇烏総統に決戦を挑んだ。


 結果、多くの死傷者を出して闇烏総統、そして、レイナ少女を殺した。


 レイナの最期は詳しく話さなかった。

 たぶんというか、間違いなく話したくなかったのだろう。


 この戦いが切っ掛けで、レフティ少年は右腕に障害を持つことになり、アリーナ戦士を引退し治療に専念、二十歳になると同時にコーチに就任したのだという。


 そして、アーガス君とリリラータちゃんのコーチとなって、彼の止まっていた物語は再び動き出してしまった。


「レイナって人を見たって?」

「……あぁ、当時の姿のままでだ。疑心暗鬼だったが、エルティナの不思議な力を見て、そんなことはあり得ない、という疑念は晴れたよ。この世には人が思っているよりも不思議な現実は存在する」


 その通りだ。


 この世界は人間だけのものじゃない。

 リアルで不思議生物が沢山いる。


 ただ、それが人間には見えていないだけなのだ。


 でも、死んだはずの少女が、当時のままの姿で存在しているのはミステリー。

 アンデッドの可能性も考えられるが、大抵は腐敗して二目と見られないし、腐敗していない場合は吸血鬼とか人間に害成す存在に成り果てている可能性だってある。


「俺は、今度こそレイナと決着を付けなくちゃならないんだろう。彼女もそれを望んでいた」

「直接、話したのか?」

「いや、彼女の声が頭の中に」

「ふきゅん」


 テレパスに近い特殊能力か。

 それとも、レフティコーチの妄想か。


 だが、彼の話が本当であれば、レイナ少女は人ならざる存在であり、速やかに輪廻の輪へと送ってやるのが世の情け。

 桃使いである俺の立場からしてみれば、アンデッドはほんのりと鬼の領域に足を突っ込んでしまっている悲しい存在だ。


 まぁ、最近は割と鬼の定義もぶっ壊れているのだが。


 あいつら、邪悪というよりかは、わんぱく小僧とかチョイ悪親父的な感じで対応に困る。

 これじゃあ、遠慮なく退治できないジャマイカ。


 ところで、ジャマイカってなんだ? 教えてママン。


「これは俺の勘だが、そのレイナって人が全ての鍵を握ってそうな気がするんだぜ」

「彼女が? いや、確かに可能性としてはあるが……」

「ぶっちゃけ、闇烏の復活もなんか怪しい。二十年もの歳月が過ぎてるんだ、復讐のためにしては時間掛け過ぎ問題」

「じゃあ、俺を襲ったヤツはどう説明する」

「そんなのは専門家に依頼すればどうとでもなる。問題は、闇烏の構成員だ、と思わせようと思った経緯だな」


 ふきゅん、とすっかり冷めてしまった紅茶を口にする。

 熱かったときはそれほど感じなかった甘みが……いやいや、甘すぎんだろ。


 パプリカさんは、角砂糖を幾らぶち込んでくれやがったんでしょうかねぇ?

 これじゃあ、紅茶の味が壊れちゃ~う!


「つーか、エルティナって頭いいんだな」

「おいぃ、その言い方だと、俺がまるでおバカのように見えていた、ってことじゃねぇか」

「うん」

「もう許さねぇぞぉい、法廷で会おうっ!」


「後にしろ、後に」

「「あっはい」」


 絶妙なレフティコーチのツッコミ。

 是非とも我が精霊戦隊に欲しい人材だ。


 ツッコミ要員の圧倒的人員不足は、ガンテツ爺さんが過労死してしまう可能性が示唆されている。


 まぁ、死んでも炎と共に蘇るんですがね。

 俺が生きている限り、彼は火の精霊と同化してるから滅びることはないのだ。


 あれ? ガンテツ爺さん……強過ぎじゃね?


「復讐にしては時間を掛け過ぎか。いや、確かにそうだが」

「資金調達、ったって二十年も掛けて今更行動ということは、くそしょぼい組織にしか成ってないって証明だな」

「う~ん」


 当事者としては、脅威だった組織に過大評価したい気持ちはよく分かる。

 でも、一度、壊滅した組織って元の状態には戻らないのだ。


 資金もそうだが、人材が集まらない。

 信用というものが根底から崩れているのだから仕方がない。


 それならば、わざわざ闇烏という組織名を使わずに、新たなる組織を立ち上げた方があらゆる面でメリットがあるだろう。


 人は泥船なんかに乗りたくないのだから。


「もし、闇烏が復活していたとしても、俺が新総統ならターゲットを絞る」

「誰にだ?」

「国のトップ。元々、国家転覆を狙ってたんだろ?」

「た、確かに……アリーナ乗っ取りはそのための伏線だったからな」

「小規模なら、ワンチャンスに賭けるしかない。存在自体がバレたらアウトなのに、わざわざ身元がバレるようなことをするかな?」

「言われてみれば……おかしな点ばかりだな」


 これで、闇烏の復活の線はほぼ消えただろうか。

 もし、仮に復活していたとしても、クソザコナメクジレベルでしかないだろう。


 その場合は、我ら精霊戦隊でボッコボコにして差し上げればいい。


 ただ、これが個人的にレフティコーチに恨みを持っている人物の犯行だと厄介。

 レフティコーチが無事だったと知れば再度、襲撃してくる可能性もある。


 常に俺が付いていれば最悪の事態は避けられるかもしれないが、俺も一応アリーナ戦士なので試合が控えている。

 なので彼に付いていられないのが現状だ。


 事情を説明してクロヒメさん辺りに護衛してもらう件も説明したが、レフティコーチはこれをきっぱり断った。


「自分の身は自分で守らないとな」

「でも、次は助かるとは限らないぞ」

「狙われると分かっていれば身構えもできるさ。それよりも、おまえらは自分の試合に集中してほしい」


「そんなの無理に決まってますわ! コーチが狙われておりますのよっ!」

「だよなぁ……気になって試合どころじゃないぜ」

「ぐむっ」


 それでも試合は迫ってくるわけで。


「そろそろ、アーガス君の試合なんじゃないか?」

「あぁ、去年も戦ったヤツだから問題はないけど……リリラータは」


 アーガス君はリリラータちゃんを心配そうに見やる。


「えぇ、レギガンダー君とですわ」

「エルティナは、レギガンダーのヤツがおかしいと感じてたんだよな?」

「そう感じた。邪気のような物を感じたぞ」


 それこそ、レギガンダー君の意志を感じないほどに強烈なものを、だ。


「そうだ、一応、これを持っておいてくれ」

「これって……桃ですの?」

「桃先生だぁ。お守り代わりにコクピットの隅にでも置いておいてくれ」

「え、えぇ……」


 涎を拭きなさい、涎を。

 絶対に食べちゃダメだからなっ。


 取り敢えずは、これで最悪から護ってくれるだろう。


 本当はレフティコーチにも渡したいところだが、桃先生の守ってやるぞ基準は、純粋であるかどうかなので、グレーゾーンな立ち位置のレフティコーチでは加護が発動するかどうかは不明瞭だ。


 なので、別の手段を講じようと思う。


 取り敢えずはアーガス君の試合が迫っているという事で一旦、話し合いはお開きに。

 続きは俺の試合が終わった後、と相成った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] コーチを襲った襲撃犯は過去の因縁なのか、それとも因縁を知っている人物によるミスリードなのか…珍獣と黒幕、読者と作者の頭脳戦が今、始まゆ! [気になる点] 規格外と言うか、常識くんがサヨナラ…
[一言] あ…そっかぁ。 母上に注がれた記憶は消えて言ってるから叔父上経由で母上に接がれた地球の記憶なんてほとんど残ってないんだなぁ…。 だからジャマイカとか南米とか解らない。
[一言] ジ○ンの残党並みですな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ