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257食目 悪意 ~混沌なる大会~

 第一試合、精霊戦隊の組み合わせはヒュリティア対ミオ、ガンテツ爺さん対エリンちゃん。

 そして、ユウユウ閣下対クロヒメさん、という無茶ぶりであった。


 クロエとヤーダン主任はその他との戦いになる。

 しかし、双方とも次の戦い、順当に勝ち上がれば鬼との戦いになるという。


「これって、新人同士が潰し合うようになってないか?」

「ほんとだね。それに、チャンピオンは試合数が少ないよ」


 俺とリューネちゃんは、このトーナメント表に悪意のような物を感じずにはいられなかった。


「シード権、というヤツだな。それに新人の配置は意図的なものだろう」

「やっぱそうなのか?」

「噂に過ぎないが、チャンピオンのホワイトロードは運営と癒着しているのでは、と囁かれている。ある意味で仕方がない事なんだが、それにしたって格下とのバトルが多過ぎる」


 レフティコーチはトーナメント表を見ながら渋い表情を見せた。

 どうやら、お金儲けのために象徴たるチャンピオンを勝たせたいもよう。


 確かにルックスは良いし、人気も絶大。

 運営は彼を起点として、お金を回したいのであろう。


 でも、スポーツと銘打って行われているアリーナがそれでいいのか。

 納得していない者は少なくないはず。


 それでもホワイトロードにこだわる理由は、果たして人気だけなのか。


「第一試合、銀閃様とニャンガー選手のバトル、始まりますわ。レッドバレットはまだですの?」

「わりぃ、遅れたっ! バトル、始まってないよなっ!?」


 ドタバタとアーガス君が駆け込んできた。

 でも、社会の窓がオープンになっているのはアウト。


 これにパプリカさんは「きゃっ」という可愛らしい悲鳴を上げてしまわれた。


「おいぃ、股間の秘密部分が漏洩中だぞ! 早急に封印して差し上げろっ!」

「げっ!? しまった、このままの状態で走って来ちまった!」


 慌ててチャックを上げるアーガス君は、きょろきょろ、と周囲を見渡す。

 誰も気にしていないので大丈夫だ。


 これが、ヤーダン主任やユウユウ閣下だったなら大問題であるが。


「出てきたな。機体変更は無し。ブリギルト改とアインラーズだ」

「武装が変更になってるなぁ。ヒーちゃんは拳銃を装備させてる」

「あれはビームピストルだな。装填数は3と多くないが威力が高いタイプだ」


 流石はコーチだけあって兵器に詳しい。

 ヤーダン主任とまではいかないものの、しっかりと勉強しているもよう。


「対してニャンガー選手はライフルと……珍しい物を選んだな」

「珍しいって、あの鉄の爪のことか?」

「そうだ、アレには仕掛けがあってな。名を【シャイニングキャット】いう」

「輝く猫?」

「直訳するとそうなる。でも、あれは扱いが難しいんだ。キャラ付だけで選んでいるとするなら苦労することになる」


 じょりじょり、と無精ひげを擦るレフティコーチは、この試合の行方に興味津々のもよう。

 対する俺たちは、ひやひやものである。


 願わくば、五体満足で試合を終えてほしいものだが、ここぞとばかりにエキサイティングすることが予想される。


 果たして、勝つのは遠距離戦の精密機械か、それとも接近戦の申し子か。


 あっ、実況さんとセリフ被っちゃった。

 ごめりんこ。


試合レディ開始ゴー!』


 無情にも精霊戦隊同士のバトルが始まった。


 開幕からの銀閃のバトル。

 しかも、お互いに無敗同士、という予想もつかない試合に博徒どもは熱い声援を送った。

 その手に握る機券も握り締められてぐんにゃりとなっている。


「やっぱ、初手は銀閃か」

「二撃必殺を狙ってまして?」

「いや、あの狙撃銃は装填数が多いタイプだ。長期戦になる、と読んでいるんだろう。腰周りにもマガジンが確認された」


 レフティコーチはよく見てるなぁ。

 確かに彼が言うように、ヒュリティアは長期戦に備えているもよう。


 そして、近接戦闘の申し子、とはよく言ったようで、ニャンガーことミオは既に鉄の爪の範囲内にブリギルト改を収めることに成功。

 これに、ヒュリティアは即座にスナイパーライフルを背中へ装着。近接戦闘に備えた。


 この判断力は見事である。


『貰ったにゃっ!』

『……やり難いわね』


 アインラーズが鉄の爪を振り上げ、猫のように振り下ろす。

 それは、ブリギルト改の胸部装甲を僅かに削り取った。


 いける、ミオは勝機を見出したのだろう、連続攻撃を繰り出した。

 削り取られるブリギルト改の装甲、そして早くも舞う機券は花吹雪のようだ。


『おおっと! 銀閃選手! 初めてのダメージだっ! これは番狂わせもあるのかっ!』

『ニャンガー選手、良い動きですよ。このまま、狙撃を防げば勝利もあります』


 そう、このまま狙撃銃を封じれば、ミオにも勝機はある……とでも思ったのかぁ?


『……そこ』

『うにゃっ!?』


 ヒュリティアはわざと機体にダメージを与えていた。

 案の定、調子に乗って連撃を仕掛けてきたミオは、その誘いにホイホイ乗ってしまった形だ。


 猫の爪のような形状の鉄の爪は、上からの振り下ろしが最も威力があるのだろう。

 それを知ってか知らずしてか、大振りが目立ってしまった。

 それを逃すほどヒュリティアは甘くない。


 止めの一撃、となるはずだったアインラーズの右の一撃はブリギルト改によって受け止められた。


「拙いっ! ニャンガー選手が肘を押さえられたっ!」

「コ、コーチっ!」


 どうやらレフティコーチは分かっているもよう。

 次の瞬間、もの凄い金属音が鳴り響く。


 肘をてこにしてアインラーズの右腕がへし折られてしまったのだ。

 てこの原理を応用すれば、パワーに劣るブリギルト改でもこんなことが容易に可能となる。


 恐るべきはヒュリティア。

 狙撃の技術だけが目立っているが、実のところ、彼女もまた近接格闘の鬼である。


『誘われてたっ!?』

『……踏み込み過ぎなのよ』


 しかし、ミオもまた、やられっぱなしじゃない。

 戦機の特徴であるコアブロックシステムを利用し、使い物にならなくなった右腕を根元から切り離し、機体を軽くすると同時に危険地帯から離脱。


 双方とも距離を置き仕切り直しとなった。

 これに博徒どもがそそくさと機券を拾い出す。


 おまえら、試合が終わるまで機券を投げるな。ばかちんがっ。


『あぁぁぁぁぁぁっとぉ! このまま試合が終わるか、と思われましたが、そうは問屋が卸さない! 銀閃選手、戦機でサブミッションを披露したぁぁぁぁっ!』

『なんという技術、いえ度胸でしょうか。あれほどの激しい攻撃によくついて来られたものです』


 そう、常人であれば、あれで決着であった。

 しかし、そうはならないのがヒュリティアである。


『……そろそろ、決めさせてもらうわ』

『それは、こっちのセリフにゃ』


 右腕を失っても尚、闘志失わぬミオに黄色い声援を送るお姉さま方。

 こいつら、絶対にミオが負けた時の心の隙間を狙っているぞ。


「ふきゅん、ヒーちゃん、これで決めるつもりだな」

「スナイパーライフルを抜いたね」


 でも、スナイパーライフルによる決着が思い浮かばない。

 鍵となるのはビームピストルだろう。


 それはミオのシャイニングキャットも同じだ。

 アレがただの鉄の爪ではない事をレフティコーチは示唆している。


 アインラーズは右腕を失ったが、まだ左腕のシャイニングキャットは健在。

 それが、ミオの闘志を繋ぎ止めている。


『全力にゃ! アインラーズ!』

『……来なさい。悔いが残らないようにね!』


 珍しくヒュリティアも言葉に感情を載せた。

 表情は無、なんだけども。


 ミオのアインラーズが装着する鉄の爪が黄金に輝きだす。

 それと同時に、大型スクリーンに表示されていたアインラーズのエネルギーバーが急速に減少してゆくではなか。


「あれがシャイニングキャットの由来、系統としてはレーザークローだ」

「で、でも、レーザー刃は普通、青白いよな?」

「レッドバレット、アレは恐らく……光素限界突破オーバードライブを組み合わせている」

「なっ!?」


 レフティコーチの推測は当たっている。

 ミオはこの一撃に全てを掛けるつもりだ。


 そして、ヒュリティアも狙っている。


 彼女の性格上、自身も光素限界突破での勝利は狙わないはず。

 もっとスマートに、そしてクールに勝とうとするはずだ。


 勝負は一瞬。


『にゃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』


『ニャンガー選手、仕掛けたっ!』

『は、早いっ! アインラーズの動きでは……!』


 驚愕する実況解説のお姉さんズ。

 しかし、関節部分を光素で強化すればこれくらいは可能だ。


 ヒュリティアはスナイパーライフルで応戦するも、巧みなステップでこれらを回避され、懐に飛び込まれる。

 しかし、瞬時に使い物にならなくなった狙撃銃を捨て、ビームピストルを構える判断力よ。


 ますます輝きを強めるシャイニングキャットは、獲物を引き裂かん、と掲げられた。

 その隙をヒュリティアが見逃すはずもなく。


『……甘い!』

『それは、こっちのセリフにゃ!』


 構えられるビームピストルはしかし、アインラーズの足のつま先にて弾き飛ばされた。


「ば、バク転っ!?」

「シャイニングキャットを振り上げたんじゃなくて、バク転だったというのかっ!?」


 想定外、それはヒュリティアの舌打ちにも表れていた。

 アインラーズは、そのまま一回転し着地。


 シャイニングキャットはまだ十分、余力あり。


 対するブリギルト改は唯一の武器を失った。


『……やるじゃない』

『この勝負、勝たせてもらうにゃ!』


 ヒュリティアはそれでも、格闘にて抗おうとするが、いかんせん機体が脆弱過ぎた。

 レーザークローにて左腕部を失ってからは、あとは一方的。


 それでも倒れない辺りは流石の一言。

 結局はタイムオーバーとなって判定となった。


『ジャッジ……1対2! 勝者、ニャンガー! まさかの大番狂わせだっ!』

『チャンピオンシップアリーナは、これがあるから怖いんですよ』


 割れんばかりの大声援。

 大量の機券が宙を舞う。


 まさかの大番狂わせが、初戦から起こったのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 初戦から番狂わせが起こるとは…。 ヒーちゃん、メイン肉かb…ゲフンゲフン。メイン盾がいない上に機動力に制限が掛かるアリーナでは、高レベルの格闘(モンク)タイプとは相性が悪かったか。 これは…
[一言] ミオ「買ったにゃー」(勝利のにゃんこダンス) ヒュッテリア「コレで裏方に廻れるわ」 珍獣「嬉しそうに踊っちゃって…でも」 ヒュッテリア「私がワザと負けた事に気付いてない」
[良い点] ミケ「勝った〜、」 ヒ「流石“元”主人公ね」 珍「“元”主人公は伊達じゃなかったと言うことか」 クロエ「あれ?主人公って私じゃなかったの?」 モフモフ「もきゅ〜」 ミ「元言うな!泣くぞ」 …
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