256食目 選手入場
怒りに燃える俺の試合は人気順どおりラストであった。
光素の暗黒ちゃんと共にダーク☆アインリールも超エキサイティング。
もうわけの分からないオーラを撒き散らしながら、ズシュン、ズシュン、コココ……ビコーン! ブシュー、と目を輝かせつつ排気をおこない威圧感を高めた。
一回戦のお相手は【ホンノリシオアジ】というリングネームの緑髪の短髪少女だ。
おまえ……リングネーム、それでよかったのか?
きっと【ノリシオアジ】の方が長生きできたゾ。
『あんたを倒して、あたしは英雄になるんだ!』
「それは死亡フラグだ、こーほー」
『試合開始!』
ちーん。
試合開始から僅か二秒で光素固めからの首ちょんぱ。
ウスシオアジさんは無念のKO負けとなりました。
ん? リングネーム、なんだったっけかな? まま、ええわ。
暗黒卿に逆らったヤツの末路なんてこんなもん。
おまえ、調子ぶっこいた結果だよ?
尚、機券はそれはもう盛大に舞ってました。ざまぁ。
これで少年の部は終了。
今度は大人の部、というか本番が始まる。
まずは選手の紹介から始まって、48名のが半分になる、という寸法だ。
それはもう大袈裟な開催宣言であったが、少年の部も大袈裟な宣言だったので何も問題はなかった。
今年は我らが精霊戦隊の面子が参加、とあってルーキー祭となっている。
ほぼ毎年参加していた面々が、がらりと変わっており、賭けが難しくなっているのも今年の特徴とのこと。
いつもは保護者にガンテツ爺さんかヒュリティア、そしてヤーダン主任がいるのだが、今回は全員選手なので、ピンチヒッターとしてニューパさんが、俺たちお子様の保護者を買って出てくれました。
そして彼女がコートを脱いだ瞬間、ざわめきが発生。
「で……でかい」
「あっていいのか……こんなバストがっ」
あるんだよなぁ。
ナイトランカーすら魅了させる金髪碧眼褐色爆乳ショートカット娘、という属性ありすぎなニューパさんは、更におめめぱっちりで美人過ぎ問題。
これでは保護者ではなく、寧ろターゲットにされている?
仕方なく、俺とリューネちゃんで、しっかりとガードするより他にありませんでしたとさ。
本末転倒すぎぃ!
『それでは、選手入場です!』
「あっ、選手紹介が始まるみたいですよ~」
ゲートに注視する連中の大半は、その目がぎらついている。
こいつら絶対に博徒だぞ。俺には分かるんだ。
始めに真っ白なコートに身を包んだ、いかにも、という金髪碧眼の美青年が登場した。
『いきなり出たぁぁぁぁっ! 前回大会の覇者! アリーナランキング、堂々1位! みんなの憧れ!【ホワイトロード】の登場だっ!』
なるほど、あいつがアリーナのチャンピオンなのか。
確かに強者が持つ風格を備えているようだが……圧のようなものは感じられない。
それに、常に威圧感を出していればいい、というわけではないので、見た目から得られる情報はこんなものであろうか。
あと、女性ファンの黄色い声援が鬱陶しい。
ヒーちゃん、俺だぁぁぁぁっ!
こいつらを早く黙らせてくれぇぇぇぇっ!
『続いては……で、でたぁぁぁぁぁっ! 輝く色は目も眩むほどに銀! その輝きを見た者に勝利無し! 王者を戦慄させる超ルーキー! アリーナランキング44位! しかし、人気順位は堂々の2位!【銀閃】の登場だっ!』
実況さん、エキサイティングし過ぎです。
それにしても、ヒュリティアの人気が爆裂し過ぎてて恐ろしい。
当の本人は無表情にテクテクと歩いております。
せめてファンの人に手を振ってあげてどうぞ。
3~8人目は有象無象にしかみえないので胡麻煎餅を食べてました。
よって、バリボリの音しか印象に残っておりません。
そして、九人目。
『年寄りは引っ込んでいろ? そう文句が言いたいヤツは、わしに勝ってからにしろ! 全戦全勝の闘将! シニアの期待の星【ガンテツ】が今日も若手の壁になりに来たっ!』
おぉ、ガンテツ爺さん、結構人気あるなぁ。
「ガンテツお爺さん、人気あるねぇ」
「全試合、実力を発揮する前に圧勝だったもんな。アリーナの5位の人もリベンジに燃えてんだろうし」
彼の試合内容は、本当の横綱相撲ばかりであった。
一説にはチャンピオンもガンテツ爺さんとの試合を避けていた、とか噂されるほど。
『ルーキーが続くぞっ! 彼女は鬼神か、それとも修羅か! 桃色のダイナマイトガール!【クマドウジ】が入場っ!』
ピクリ、と反応せざるを得ない。
「出てきやがったな……鬼の四天王」
もこもこピンクさんが、それはもう、くそエロぴっちりボディスーツでご登場。
黒で統一されたそれは、彼女の爆乳、超くびれからの爆尻を強調し過ぎて、野郎どもが男の尊厳を守るのに必死なポージングを炸裂させるに十分し過ぎた。
『エロぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ! 説明不要っ! 魅惑のシングルマザー!【アクアクンママ】の登場だっ!』
そして、止めを刺すヤーダン主任という。
いやぁ、エロいですね。
そして、エロ童子の隣に立つと絵面がヤヴェよヤベェよ。
あそこだけ特殊なお店の従業員と化している?
『果たして、その実力は本物かっ! 可愛さなら絶対に負けないもんっ! おじ様たちに絶大な人気を誇る【エーリン】が今日も波乱を見せつけに来たっ!』
そこに加わるぴっちぴちのエリンちゃん。
地味の彼女もスタイルがよろしい。
「……うっ、ふぅ」
遂に賢者が発生してしまった?
だが何故、俺はヤツらを賢者と?
いや、その以前に賢者とはいったい、うごごごごご……。
『初戦の敗北はどこに行った!? 連戦連勝! 元気爆裂娘!【ホネ】参上!』
両手を振って、はち切れんばかりの笑顔を携えてクロエが登場した。
ほんのりと膨れているおっぱいが尊い。
尚、クロエもボディスーツだが、彼女は身体に諸事情あるのでパレオを腰に巻いている。
その理由はもちろん、腰から伸びる尻尾を隠すためである。
「俺たちはいったい、何を見ているんだ……」
「美女美少女コンテストだろ……」
「今年の円盤は高値になるな」
「俺、十枚予約するんだ……」
だめだこいつら、早くなんとかしないと。
ギンギンにエキサイティングする野郎ども。
それらは、果たして次に出てきた者を前に耐えることができるのか。
『我が前に立ち塞がる者には恐怖と敗北を! 戦慄の女王、【イバラキドウジ】がチャンピオンシップアリーナを蹂躙しに来たっ!』
どたぷーん、という表現が人の姿を得た、そんな感じで。
はい、ユウユウ閣下もコスチュームを新調しております。
もうほぼビキニなんじゃないのかな、というくらいに過激な衣装は、腰回りに申し訳程度のスカートが。
というか、サイドにスカートモドキが付いているだけじゃないですかやだー。
お尻ばっちぇ見えてますよーえろい、えろいっ。
『くっそエロっ!?』
実況の人っ!? 正気を保って!
彼女も思わず口に出してしまうほどのエロさは、果たしてユウユウ閣下の対抗心であったのだろうか。
ある意味で試合前にアリーナを蹂躙しちゃった気がしないでもない。
もう収集が付かなくなっている野郎ども。
ぷるぷると震えている辺り限界が近いのだろう。
茹でダコのように顔が真っ赤になっているのが、もう本当にキモい。
『お尻の……げふんげふん! 凶暴さなら誰にも負けん! アグレッシブビースト!【ブラックプリンセス】の登場だっ!』
実況さんぇ。
「あっ、エルちゃん。クロヒメさんだよ」
「おっ、クロヒメさんも灰色のボディスーツか。てっかてかだな」
クロヒメさんもボディスーツでした。
それがまた、てっかてかで、照明や日光に反射して妙に艶めかしい。
特に尻、というか見る部分が尻しかない。
おっぱい? 家出中ですね。
がたっ。がたがたっ。
ここで、席を立つ野郎どもが続出。
わらわらと大移動を開始した。
選手紹介の真っ最中だ、というのにどこへ行くつもりだぁ。
「みんな、どっかに行っちゃった。クロヒメさんが怖かったのかな?」
「本人の前じゃ、絶対に行っちゃいけない。いいね?」
「う、うん」
うっかりなリューネちゃんに釘を刺して置く。
野郎どもは犠牲になったのだろう。
でも放っておいてもいいんじゃないのかな、という結論に至りました。
『さぁ、来たぞ! おまえらのショタ魂を燃え上がらせる、にゃんとも愛らしいボーイ!【ニャンガー】きゅんの登場だっ!』
ミオが小走りで登場。
衣装は三毛猫をイメージしたパイロットスーツだ。
こちらはぴっちりしたタイプではなく、ゆるりと余裕がある。
三毛猫をイメージしたのは自前の猫耳と尻尾を隠すのが面倒だ、ということからだろう。
これで、それらも衣装の一部、と錯覚させることができるのだ。
ナイスアイディアである。
それにしてもこの人気ぶり。
特に若いお姉さま方からの絶大な人気は、アリーナのトップにも負けないほどだ。
というか実況のお姉さんもその一人かと思われる。
判官贔屓過ぎるでしょ。
ショタコンきたない、流石ショタコン、きたない。
『衝撃はどこまでも伝わってゆく! ナイトランカーの、この人が来てくれたっ!【滅振】の登場だっ!』
どたぷん、どたぷん。
歩く度にそんな音が聞こえてくるような気がした。
一部のマニアックな方々に大人気のぽっちゃり姉貴が、やっぱりピチピチボディスーツで登場。
黄色のそれは、くそエロボンレスハ……おや? 誰かが来たようだ。
「うわ、やべぇな、あの格好」
「ふきゅん、レフティコーチ」
「よぉ、隣、お邪魔するぜ」
ぽっちゃり姉貴の姿を目の当たりにしたレフティコーチはEROチェックです。
でも、そう言う属性が無かったようでセーフだったもよう。
しかし、周りの野郎どもはそうではなかったもようで、ガタガタと脱落してゆきました。
今年のアリーナは大荒れなんやなって。
「あれ? アーガス君とリリラータちゃんは?」
「あいつらならトイレだ。もうすぐ来ると思うんだが……」
でも、来たのはパプリカさんだけでした。
「あれ? アーガス君は?」
「男子トイレだけが混んで酷かったようなので、自宅に戻ると」
「これは酷い」
ナニがどうなってこうなったかは想像したくもないのでカットだ!
『暴君、現る! 俺の前に立つヤツは粉々に粉砕されるのみ!【トラクマドウジ】見参っ!』
瞬間、黄色やら、ピンク色やらの声援は鳴りを潜めた。
ゆっくりと肩を怒らせながら道を行く褐色肌の大男。
禍々しいほどの威圧感は人々を委縮させるには十分過ぎた。
「あ~、好みかもです~」
「正気に戻れっ、ニューパさんっ!」
同じ金髪褐色だからって、あれはダメですぞっ!
「虎熊童子……!」
思わず呟く、とヤツは急に立ち止まり、こちらに振り向いたではないか。
目と目が合う、瞬間に宿敵だ、と思った。
意識していないのに、桃力が溢れ出る。
それはヤツも同じ。
桃色と赤黒い輝きは宿命を感じ取り、互いの存在を誇示し合ったのだ。
獰猛すぎる笑みを残し、ヤツは背を向ける。
それは俺が越えなくてはならない男の背であった。
「エ、エルちゃん?」
「ふきゅん、大丈夫。引っ込める」
ひゅん、と俺の魂に戻る桃力。
ちょっぴり残っているのはご愛嬌。
「あい~ん」
それをぱくり、と食べたのはアイン君だ。
すると、たちまちの内にアイン君がピンク色に染まってしまったではありませんか。
「アイン君が桃色にっ!?」
「アイン君、ぺっ、ぺっしなさいっ!」
「いあ~ん」
尚、三分後に戻ったもよう。
びっくりさせないでよな~。たのむよ~?
このドタバタを精霊が見えないレフティコーチたちは不思議そうに眺めておりましたとさ。
こうして、出場選手の紹介は終了。
でも、その中に幽霊の存在は確認できなかった。
ヒュリティアの予想通りの形、といえる。
彼女はきっと、裏で動いているのだろう。
それでも俺の前に姿を見せたのは、この大会が一つのターニングポイントになる可能性が高いからか。
ここから少年の部、同様に即試合が始まる。
そのトーナメント表だが……ビックリすることに第一試合で精霊戦隊の面々が半分になります。
そう、チーム内での対決が三組もあるのだ馬鹿野郎。
「ヤヴェな、この組み合わせ」
「誰が勝つか予想もつかないよ」
組み合わせは当日発表。
大型スクリーンには、そのトーナメント表がでかでかと映し出されていたのであった。




