219食目 俺たちの実力は?
ドワルイン王国王都ドグランドに到着まであと一日。
呪いを解除した俺は、とある問題に直面していた。
この問題は俺が幼女の間は発生しない。
だが、アダルトバージョンに変じた際に、それは発生した。
「ふきゅ~んっ、やばいっ、発情してきたっ」
その問題とは、何故か発情する、というものだ。
もうこれでもか、ってほどHな気分になってしまう。
ただし、欲情する対象が特殊。
なんと、自分自身に物凄い欲情が向けられてしまっている、という大問題。
人はこれを【ナルシスト】と言うっぽいが、少々違う感じもする。
自分の感情であって、自分ではない意志のようなものを感じるのだ。
でも、この意思に強制的に引っ張られて、俺もHなお姉さんになってしまうだろうな。
「いったい、なんなんじゃ、おまえさんは」
「……困ったわね。まさか呪いが、この症状を抑えていただなんて」
これには、ガンテツ爺さんもヒュリティアも頭を抱えてしまう。
寧ろ、頭を抱えたいのは俺の方なのだが。
ぶっちゃけ、自分にしか欲情しないとか病気以外の何ものでもない。
このままでは独りHとか平然におこなうだろうな、と考えたところで独りHってどうやるんだ、との問題が発生。
取り敢えずは、わっしょいわっしょい、と踊り狂ってみる、とそれに呼応してにゃんこびと共がにゃんこダンスで対抗。
やがて、それにエリンちゃんも加わって訳が分からなくなってくる。
「……取り敢えず、エルに【マスベ】の知識がない事が救いだわ」
「むぅ、そうじゃの」
なんだかよく分からないが、みんな踊れ~!
というわけで、ヘロヘロになるまで踊る、と取り敢えずはHな気分も収まる。
でも、終始こんな事をしていたら対戦どころではなくなるんだよなぁ。
「ぜぇぜぇ……なんとかならないかな」
「……性欲を抑える呪いとかいっとく?」
「というか、なんなんだ、この症状は?」
ヒュリティアは、う~ん、と頭を捻った後に、とある仮説を提唱した。
「……エルの父親の執着心が遺伝」
「なんだそりゃあ?」
「……エドは極度のエルティナ大好き少年だったから、それが娘に受け継がれてもおかしくはない」
「何やってくれてんの、おとん」
つまり、それが大人になって発情するようになった俺に悪影響を及ぼしているのではなかろうか、というのがヒュリティアの予想である。
父親の想いが娘に悪影響を及ぼすなどとっ。
「ねぇねぇ、性欲も欲の一つなんだから、満足させちゃえばいいんじゃないのかな?」
そこに一石投じてきたのはエリンちゃんであった。
「……確かに食欲も満腹になれば収まるけど……それって、要はHしちゃうってことよ?」
「大人になれば、みんなするじゃない。おな……もごご」
「うふふ、淑女はそんなこと口にしないものよ?」
ナイスカバーでーす。ユウユウ閣下。
あと、俺はあくまで三歳児。
そして、精神がほんのり【おかん】によって精神汚染されているだけなのだ。
そう、Hなどまだ早い。
でも、興味がないわけでもなくっ。
「なんやなんや? まぁた、面倒ごとかいな?」
「あ、ぽっちゃり姉貴」
俺の珍現象に皆が頭を悩ませている、とそこにバカンスを没収されてしまったぽっちゃり姉貴がやってきた。
彼女がホームにしているのは、これから精霊戦隊が向かうドグランドだ。
なので、ついでにそこまで送っていってくれ、という流れになったのは言うまでもない。
「実は……」
ぽっちゃり姉貴はマネックのレポートを書き終えてご機嫌であったのか、この大問題に大爆笑で返してくれやがりました。
「ほんと、エルちゃんは、おもろい子やなぁ」
「こっちとしては笑い事じゃないんだぜ」
「しかしまぁ、Hな気分になるかいな。なら、本来の姿のまま戦機を操るといいんちゃう?」
「それができないから困っているんだぜ」
「無理に大人用の戦機に乗って戦おうとするからや。アリーナに出るっていうんやったら、ジュニアリーグでもええやん」
「ふぁっ!?」
これにガンテツ爺さんやアナスタシアさんたちが「あっ」との声を揃えてくれやがりました。
どうやら完全に失念していたようでございます、ちくせう。
「……これで呪いの件は完全に無意味になったわね」
「俺の苦悩はいったいなんだったんだぁ」
そういう俺たちも、ホビーブリギルトの存在をすっかり忘れていたのだが。
アリーナは将来のスター選手発掘のため、ジュニアリーグの開催もおこなっているようだ。
賞金こそメインリーグに及ばないものの、それなりの賞金が出るらしい。
であれば、俺はそっちに出るべきだろう、とのこと。
「ヒーちゃんは、どっちにでるんだぁ?」
「……私は今更、子供たちと戯れる気にはならないわ」
「そらそうやな。ジュニアリーグに銀閃が出場したら大騒ぎになるで。弱い者虐めやって」
「あ~、二つ名持ちだもんなぁ」
「エルちゃんも二つ名持ちやないか。知名度低いけど」
確かに俺も【深緑殺し】という二つ名を頂戴している。
でも、いまや深緑さんは落ちに落ちぶれているので、その二つ名は最早ないに等しい。
とはいえ深緑さんが弱かったかといえば、決してそうではない。
俺たち以外が戦っていれば、相当な命が奪われていたことだろう。
「ふきゅん」
俺は深い悲しみと共に元の姿へと戻る。
やはり、この状態だとおとんの呪いは効果を発揮しないもよう。
それどころか、温かな力に護られているかのような感じすらする。
まったく以って難儀な力だなぁ。
「こんなことだったら、家からホビーブリギルトを持って来るんだったね」
「それは仕方がないんだぜ。ドグランドで練習するよ」
これにエリンちゃんが腕を抱えてくねくねと身体を揺らした。
それにつられて、にゃんこびととモフモフも身体をくねくねさせる。
元気が有り余っている彼らは、常に身体を動かす癖が付いてしまっているもよう。
「エルティナの件はこれで一応解決じゃな。じゃが、問題はわしらじゃ」
「そうですねぇ。実際、僕らの腕前はどれほどのものなんでしょうか?」
ガンテツ爺さん、そしてヤーダン主任は自分たちの腕前に疑問を抱いた。
ならば、総当たり戦で実力を計ろうじゃないか、という事になり手当たり次第に対戦する流れとなる。
戦機シミュレーターには評価ポイントとというものが設定されており、命中率や回避率、与えた損害率などでSSからEのランクが表示される。
ぶっちゃけ、俺はE以外の文字を見たことがない。
こんなクソゲーに評価されても嬉しくないもんっ。本当だもんっ、ぐすん。
そして、対戦の結果、ヒュリティア、ガンテツ爺さんがB、ヤーダン主任、ユウユウ閣下がC、ミオ、クロエ、エリンちゃんがDという結果となる。
ちなみにH・モンゴー君はBの評価。
異常なほどのチキン戦法で、ほぼ全ての戦闘がタイムオーバーという。
おまえ、よく軍人として戦場に立つ気になったなぁ。
そして、意外なことにクロヒメさんがEという結果になってしまった。
これには理由があって、彼女は攻撃にフェイクをやたらと入れるのだ。
そして、わざと被弾して相手を誘い込んでのカウンターで仕留める、という無茶な戦法を取っている。
どうやら、これらは評価が低いらしく、結局Eという評価に落ち着いてしまう。
でも、対戦相手の全てを撃墜しているのは修羅以外の何ものでもない。
あのヒュリティアですら撃墜されてしまうのだから、実際の戦場で敵として遭遇したら失禁ものですぞっ。
「クソゲーねっ! これ、クソゲーよっ! なんで相手を撃墜してEなのよっ!」
「そうだ、そうだー。もっと言ってやれー」
「……エルの場合は、手も足も出ないでやられているから正常」
「ふきゅん」
ヒュリティアさんの正論に、ぐうの音も出ませんでした。ふぁっきゅん。
「実際、アリーナの勝敗はどうやってきめるんだぁ?」
「うん? 確か……撃墜か、制限時間内に稼いだポイントが多い方じゃったかの」
「つまり、これを参考にするとクロヒメさんは撃墜以外の勝利は無いと」
この情報に俺たちは、アリーナが紅蓮に燃えるような気がしてならない。
果たして俺たちは、そこに修羅を放っていいものなのか。
「ふふん、上等じゃない。皆殺しにしてやるわ」
「アリーナはスポーツって言われてんだよなぁ」
やる気満々なことはいいが、その殺意はノーセンキュー。
かくして、ある程度の実力を計った俺たちは昼過ぎにドグランドへと到着。
早速、アリーナ戦士としての登録を済ませるために【コロッセウム】へと向かう事になった。




