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179食目 精霊戦隊には手を出すな

 二日酔いから強制復活させられたアダルトたちは、早速、俺たちの要望を形にするためにマネックのフライトユニットの完成を目指す。


 今回向かう場所は成層圏という事で追加ブースターを購入するために、ヤーダン主任たちはヤーバン共和国首都、ヤーバンへと向かう。


 その間、俺たちは特にすることがないのでオンドレラ島にて百果実の情報集めをしようという事になった。


 オンドレラ島には定期便が出ているので、エデンテルの往復はだいたい三時間程度で収まるもよう。

 なので現在はエデンテルよりも遥かに都会なオンドレラ島で百果実の聞き込みをおこなっている。


 聞き込みメンバーは俺、ヒュリティア、エリンちゃんにザインちゃん。

 そしてにゃんこびとのミオとクロエだ。

 保護者としてファケル兄貴が同行している。


 彼のル・ファルカンはクロナミ内でオーバーホール修理の真っ最中。

 結構、酷使していたようで、アナスタシアさんたちも「なんじゃこりゃあ」と悲鳴を上げていたもよう。


 でも、超笑顔だったんだよなぁ。


「早速、聞き込み開始なんだぜ」

「……私の尋問術が唸る」

「おいぃ、強引な調査はヘイトを集めるから禁止事項だぁ」

「……これはルール内の隙を突いた高度なルール違反だからセーフ」


 ヒュリティアさんが何を言っているか分からないので調査開始。


 やはり、罪もないリトルボーイが禁断の柔らかさを知ってヘブンに至り、将来が危ぶまれることになったが、俺は何も見ていない、という固い決意をもってこれをスルーする。


 そして、にゃんこびとの二人も問題を起こさない、と思っていたのが運の尽き。

 絡んできたチンピラどもを一方的にボコり、「おうおう」といきって登場した兄貴分をやっぱり一方的にボコり、「いい度胸じゃのう」と出てきた893をやはりボコり「戦争じゃあっ!」とチャカを取り出した……以下略。


「弱すぎるにゃ~ん」

「そもそも、鉄砲の弾なんて掴めるから効かないよね~」


 無数の生きた屍の山のてっぺんで、にゃんこダンスを踊りまくる少年少女は駆け付けた警察官もいよいよ以ってボコった。


 あぁ、もう、常識が滅茶苦茶だよ。

 どうしてくれるのこれ。


「……取り敢えず、ずらかりましょうか」

「ですよねー」

「へっへっへ~、もうここに用はないぜ~」


 妙に悪役チックなセリフを吐くヒュリティアとエリンちゃんは、ミオとクロエに声を掛けてクールに去ることを選択したもよう。


 翌日、新聞の一面を飾ることになったのは言うまでもない。






「んん~? マフィアグループ壊滅、癒着していた警察官も纏めて御用、だとさ」


 ホテルの一室にてファケル兄貴がコーヒー片手に今朝の朝刊を読んでいたのだが、バッチリと記事にされてしまっていたもよう。

 そこには、英雄の再来か、という文字がでかでかと。


「このマフィアグループ、よっぽど嫌われてたんだな」

「でも、こりゃあ不味いぞ。このマフィアを束ねていた大本が仕返しに来るな」

「むむむ、それは面倒臭いんだぜ」


 顔を顰めるファケル兄貴と俺は、しかし、我関せずのミオとクロエに呆れる。


「……先にマフィアを壊滅させましょうか。面倒だし」

「身内が武闘派過ぎて鳴けるぜ」


 あれれ~? おっかしいな~。


 ここには、百果実の聞き込みに来ていたはずなのに、いつの間にかマフィア殲滅作戦をおっぱじめようとしてるぞ~?


「それじゃあ、エリンちゃんとファケルはホテルに居てちょうだい」

「あぁ? なんだよ、留守番って」

「この中じゃエリンちゃんだけが戦闘能力が無いのよ。あと、次点であなた」

「俺はザインよりも弱いのか……」

「というか、特殊な力が無いだけね」


 肩を竦めるファケル兄貴であったが、直後にヤル気満々のマサガト公の出現で顔を青くしましたとさ。


『戦の準備をいたせ。我が愛刀は血に飢えておる』

「ままうえっ、せっちゃのいきゃじゅちゅも、びりびりでしょーりょー」


 もうこうなればマフィアたちには爆発四散してもらうより他になさそうだ。


「にゃ? カチコミにゃおか? 楽しそうにゃ~ん」

「クロエも行くよ~。ほら、武器も買ったし」


 クロエさんや、それは肩叩き棒であって武器ではありません。




 そんなわけで、俺たちはオンドレラ島を根城とするマフィアにカチコミを入れに行きました。

 場所はそこら辺をピリピリしながらイキっていたマフィアを一方的にボコって聞き出しましたとさ。


「ここでふ……」

「もうお前に用は無いにゃ~ん」


 ミオは顔面をパンパンに腫れ上がらせたマフィアを、ポイっとごみでも捨てるかのように放り投げる。

 一見すると女の子のようにも見える彼だが実に容赦がない。

 そして、かなり大雑把である。


「あれがアジトにゃおね」

「そうみたいだね~」

「カチ込むにゃ~ん」

「わ~い」


 まるでピクニックにでも行くかのような感覚でマフィアの事務所へと突撃。

 直後に「なんじゃワレェ!」との怒声と銃撃音。


 そしてガラス製のドアを突き破って構成員が、ずさーっと滑り込み土下座の姿勢で飛び出してくる。


「……早く行かないと私たちの分が無くなるわよ」

「無くていいです」

「とちゅげき~!」

『いざいざ~!』


 うん、ここにユウユウ閣下がいなくて本当に良かったと思いました。


 もう機能しなくなった自動ドアを潜る。

 すると、そこには地獄絵図が広がっておりました。


「弱すぎるにゃ~」

「光素障壁も破れないなんて甘えだよね~」


 本当に肩叩き棒で戦っていたのであろう、クロエのそれは真っ赤に染まっておりました。

 そして、笑顔が眩しいが確実にそれは悪魔の笑顔であろう。


「て、てめぇら! どこのもんじゃあっ!?」

「精霊戦隊だ、馬鹿野郎」


 俺は直ちに筋肉の精霊マッソォを召喚。

 ドキッ☆ムキムキヘッドロックパラダイスを堪能させて差し上げた。


「リラックスオイル」

「筋肉がてっかてかなんだぜ」


 マフィアたちはマッソォに銃を一斉射撃するも、彼はオイルでてっかてかなので、全ての弾をにゅるんと滑らせてあらぬ方向へと向かわせてしまう。


 というか、マッソォって殆ど物質化してるのな。


「……ほんと、雑魚ね」


 ヒュリティアも光素障壁を纏えるようでチュンチュン、キンキンと弾丸を跳ね返している。

 当然ながら俺も魔法障壁を展開中。


 唯一、どちらも展開できないザインちゃんはしかし、マサガト公の中に入っておりました。


「ひぃぃぃぃぃぃっ!? な、なんだおまえはっ!」


 すり抜ける弾丸。

 どうやら、マサガト公の中に入ると霊体と同じようになるもよう。


『お命、頂戴いたす』


 しゃきーん、という音と、くるくる回転しながら飛んで行く何かに、いよいよ以ってマフィアたちは悲鳴を上げて逃走を開始。


「にがちゃないでしょーりょー」


 でも、ザインちゃんの魔法【サンダーチェイン】の雷の鎖で纏めて感電。

 これは、範囲内の敵に次々と襲い掛かる魔法で、その様子が雷の鎖であるように見えることから命名された。


 彼女の得意魔法の一つであるが、実はこれ精霊魔法ではない。


「う~ん、弱過ぎるんだぜ」

「……取り敢えず上に行きましょう」


 二階に行くと、なんとミニガンをよっこらせと構えた筋肉ムキムキの変態がいました。


「悪いな、恨みはないがミンチになってもらうぜ」


 そして発砲。


 だが、対象にしたのがミオだったのが運の尽き。


「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ」


 機械音と共に吐き出される弾丸と薬莢。

 そして、ミオの足元に溜まってゆく吐き出された弾丸。


「……じょ、冗談だろ?」


 からから、と空しい音を立てるミニガンは既にその機能を果たせなくなっていた。


「もう終わりにゃ~お? 割と楽しかったにゃ」

「次はクロエの番ねっ! 早くっ、早くっ!」


 当たり前のようにミニガンの弾丸を全て受け止めたミオ。

 そして、次は自分だと主張するクロエ。


 そんな化け物を目の当たりにした筋肉ダルマはミニガンを放り投げた後、悲鳴を上げて逃げ出した。

 しかし、獣たちに背中を見せるのはいけない。


「にゃ、背中を見せたにゃ」

「背中を見せたってことは狩っていいやつだね」


 ボッ、という音を立て一瞬で掻き消えたにゃんこびと。

 直後にボキッという音を立て、逆くの字を描いた筋肉ダルマはコンクリートの壁を突き破ってお星さまになったとさ。


 ミンチよりもひでぇや。


「……機獣基地攻略戦があったら、あの子たちを投入しようかしら」

「機械人が鳴くからやめて差し上げろ」


 もう、この世界の常識が息をしていらっしゃらない。

 精霊戦隊には、銃を撃ったら人は死ぬ、が一切通用しないもよう。


 ミオも弾丸キャッチを失敗する時があるようだが、やはり通り抜けた弾丸は光素障壁に阻まれて効果を成さない。


「へたっぴぃ」

「にゃ~ん」


 実にほほえましいやり取りだが、既にマフィアの事務所は地獄と化している。

 今はそのボスを追い詰めたところなのだが、ご覧の通り、ミオとクロエはいまだに遊園地ではしゃぐ子供のままであった。


「て、てめぇら……こんなことをして、ただで済むと……」

「……取り敢えず、自分の心配をしたら?」

「ひっ」


 人外に囲まれる哀れなデブっちょボスは、最早、猫に弄ばれる餌だ。


「じゃあ、ボコるにゃ」

「引き裂くにゃ」

「んマッソォっ!」

「……串刺しも良いと思うの」

「びりびりでごじゃるぅ」

『打ち首御免っ』

「マジで容赦ねぇな」


 結果、ボスはフルコースをご馳走されましたとさ。


 これだけの事をしたが、桃力は何も反応を示さない。

 寧ろ、たいへんよくできました、とのハンコを押してくれたので、こいつらは相当の悪事を働いていたのであろう。


「ふきゅん、これで少しは世界も平和になったんだぜ」


 最後に証拠隠滅とばかりにファイアボールをビルに打ち込んで木っ端みじんにする。


 爆発オチは伝統だから仕方ないね。






 かくして、哀れにも精霊戦隊にちょっかい? を出したマフィアは、ヒュリティアさんの面倒臭いからぶっ潰す、という意向の下、完全に叩き潰されたのでありました。


 これ、どっちがマフィアだかわっかんねぇなぁ?


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― 新着の感想 ―
[良い点] よかったボコられた善良な警官は居なかった! 善良でない警官は居たみたいだけど [気になる点] ミニガンって高いのよ!すぐ弾無くなるし!撃ち終わった後のメンテも大変だし サバゲ向きでは・・・…
[一言] うわっ! タチ悪いなあ。
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