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150食目 雷山

 同日、偵察を兼ねて雷山に向かう。


 紅葉さんの話によれば、ここには機獣が潜んでいるとのこと。

 そのため、機獣の数が多ければクロナミを町に残す必要性も出てくるわけだ。


 或いは戦機を護衛のために数機残すかだが、いずれにしても規模を見極めてからでないと判断できない。

 したがって、精霊戦隊全員で雷山へと向かい様子を見て見ようという事になった。


「雷山が真っ黄色なんだぜ」

「銀杏の樹ばかりなんじゃろ。その証拠に、ほれ、この臭いじゃ」


 こいつは臭せぇぇぇぇぇぇっ!

 ゲロ以下じゃない臭いがプンプンしやがるぜぇぇぇぇっ!


 ガンテツ爺さんの説明通り雷山は銀杏の木で埋め尽くされていた。

 その独特の臭いは頭がくらくらするほどに強烈だ。

 これは下手をすれば臭い対策が必要になってくる可能性が少なくない。


 既にヒュリティアなどはクロナミに引き籠って、外に出て来ることさえ拒否っている。

 どうやら、アナスタシアさんにお願いして、臭いをシャットアウトする装置を戦機に取り付けてもらう必要があるかも。


「ふきゅん、銀杏を拾って帰りたいなぁ」

「ヒュリティアが嫌がるじゃろうから、処理したもんを買った方がええぞ」

「それもそうかぁ」


 雷山は小型艦であれば車道ならぬ艦道があるため、山頂まですいすいと移動できるようだ。

 しかし、雷蕎麦がそれでゲットできるほど甘くはないだろう。


 昔話にもお爺さんは山の中を苦労しながら登って、ようやく山頂に辿り着いたとされる。

 その過程で山の神様に出会って、雷蕎麦を獲得する条件を揃えたのだ。


 であれば、俺たちも麓から、えっちらおっちらと山を登る必要があるのではなかろうか。


 やがて、何事もなく雷山の山頂に辿り着く。

 機獣の姿も確認できなかった。果たして、本当に潜んでいるのであろうか。


「うにゃ~、凄いにおいにゃ~」

「くっさ~い」


 ミオとクロエが鼻を押さえながら甲板に姿を見せた。

 彼らも銀杏の独特の臭いに困惑しているもよう。


「結局、機獣の姿も見えなかったなぁ」

「艦道は整備されておるし警戒しとるんじゃろうなぁ」

「そして、雷蕎麦の情報も一切得られない、と」


 見渡す限り、銀杏の樹の黄色しか確認できない。

 山頂の駐艦場にはクロナミの姿しかなく、観光客の姿は一切ない状態だ。

 機獣が出没する、と知っていれは観光もできないであろうから当然、と言えば当然か。


「こりゃあ、戦機で山登りをする必要がありそうだなぁ」

「じゃろうな。その場合、武装を実弾兵器にする必要がありそうじゃの」

「ふきゅん? どうして?」

「山火事になるじゃろうが。デスサーティーン改は問題無いとして、わし以外の機体は山火事の熱に耐えられんじゃろう。それに、町にも被害が及ぶぞい」

「そうだった!」


 まったくもってガンテツ爺さんの言うとおりである。


 ビーム兵器は論外、光素兵器は機獣のエネルギー源に反応し爆発を引き起こすので、これもNGだ。

 つまり、物理攻撃一辺倒で機獣どもをなんとかする必要性があるわけだ。


 これは面倒臭い条件が発生したものである。

 もしも、無駄に硬い機獣が出現した場合、俺たちは苦戦を強いられる可能性が高い。


 まぁ、エルティナイトがぶん殴るだけしかできないので、なんとかなるかも。


「一度、町に戻ろっか」

「そうじゃな。策を練った方がええじゃろ」


 何も収穫が無かった雷山の山頂から雷業市へと引き返し、初日は終了。

 二日目は銀杏の臭い対策を機体に施し終了。この間に山を登るルートを定める。


 クロナミは雷業市に置いてゆくので護衛の心配はないだろう。

 それならば、全搭載機で山を登ってはどうか、という流れになった。


 のだが……これにエリンちゃんがついて行くと駄々をこね始めたのである。


「危ないんだぜっ」

「でも、行かなくちゃいけない気がするんだよっ」


 との一点張りで埒が明かない。


 一応はエリンちゃんも戦機を操れるし、その腕前も悪くはない。

 でも、戦闘になれば話は別だ。


 命を懸けた戦いは覚悟の連続であるから、死ぬ覚悟の無い者はハッキリ言って戦力外というか足手まといにもなりかねない。

 とヒュリティアさんがビシッと断言されました。


 俺じゃあ、そこまで厳しく言えましぇ~ん。きびしーっ!


「私も、それくらいの覚悟はできてるよっ! 私だって精霊戦隊の一員だものっ!」


 驚いたことに、エリンちゃんはヒュリティアの脅しにも屈しない。

 恐らくではあるが、彼女の中の精霊王が何か企んでいる可能性があるのかもしれない。


 しかしながら、それを確認することはできないので、あくまで推測にしかならないのである。


「う~ん……ま、いっか。エリンちゃんは戦機学校に通ってたし、一応戦闘経験はあるんだろ?」

「うん、模擬戦だけど」

「なら一度、実戦を経験してみっか」


 俺の決定にヒュリティアは不服そうな表情を見せる、といっても相変わらず無表情であるのだが。


 こうした経緯を経て、俺、ヒュリティア、ガンテツ爺さん、クロヒメさん、ミオにクロエ、そしてエリンちゃんとで戦機部隊を編成し、秋深い雷山に再チャレンジする。

 ヒュリティアは機体にマネックを選択。どうやら、機体のテストを兼ねて乗り込むもよう。


 レポートを見て表情を引き攣らせる、ヤーダン主任とアナスタシアさんが見れますぞ。




 アナスタシアさんたちの臭い対策にて銀杏の独特の臭いは殆ど気にならない。

 これにはヒュリティアもにっこりである。笑ってないけどな。


 エリンちゃんは組み上げられたマネックではなく、実家から持ち出したブリギルトに搭乗した。

 使い慣れている方が、万が一の際に操縦しやすい、とのこと。


 ブリギルトが手に持つライフル銃は、アマネック社製の新型ライフル【エレガント】だ。

 十分な威力を持たせつつ、射撃時の反動を限界まで抑え込んだ扱い易いライフル銃とのこと。


 これを用いて簡単な射撃訓練をおこなったところ、エリンちゃんは十発中八発を的のド真ん中に命中させた。


 ちなみに、俺は十発中、一発も当たりませんでしたっ。くやちーっ!


 でも、俺が下りた後、エルティナイトだけで射撃訓練をおこなうと百発百中だった件。


 まさかの俺が足を引っ張っているパターンにより、速やかに白目痙攣状態へと陥るのは仕方のない事であった。


 いいもん、いいもん、俺、いじけちゃうからっ。剣の道に突入しちゃうからっ。

 銃なんて必要ねぇんだよっ、ぺっ。


 と銃器を全否定していると、ひょっこり機獣が顔を見せたので腹いせにボコボコにして差し上げました。


 腹を見せても結果は変わらねぇぞ、おらぁんっ!


『ついに出てきおったの』

「うん、でも、またレ・ダガーだな」

『……強敵ではないけれども、一般人やへっぽこ戦機乗りにしてみれば十分過ぎる強敵ね』

「むむむ」


 ヒュリティアの指摘に自分の感覚がマヒしていることに気付く。

 確かにレ・ダガーは、ゴーグル兄貴たちもビビる程度に強いはずであったのだ。


 しかし、俺たちはレ・ダガーを遥かに上回る機獣やよく分からない存在を相手に戦った経験がるので、最早レ・ダガー程度ではビビりもしなくなっていたのである。


『一機、撃破だよ~』


 そして、このエリンちゃんである。


 ヒュリティアやガンテツ爺さん、とまではいかないものの、その動きは鋭く無駄がない。

 そして、射撃の腕前もあってか五機いたレ・ダガーの一機をエレガントの一撃で仕留めていたのだ。


 尚、ミオとクロエはマネックに搭乗。

 戦機用に、と作ってもらった鋼のこん棒で、エルティナイトと一緒になってレ・ダガーをボコボコにぶん殴っておりました。


 最新鋭機なのに、やっていることは原始人の戦い方とか精密機械、壊れちゃ~う。


『ナイトが獣風情に後れを取るはずがにぃ』


 無駄にスタイリッシュなポージングを決めるエルティナイトであったが、やはりというかパワーダウンが否めない。

 正確には俺のパワーダウンなのだが、エルティナイトはその影響をもろに受けているようだ。


 それでも、レ・ダガー相手なら圧倒できる。

 しかし、これ以上の機獣が出てきた場合、エルティナイト単機では対処が難しいかもしれない。

 やはりルフベル支部長が言うように、これからは連携が必要不可欠になるのかも。


『機体を損傷した者がいなければ、先を急ぎましょうか』

「そうだな、クロヒメさん。皆、大丈夫か~?」


 ダメージを受けた機体は無かったもよう。実に優秀である。




 かくして雷山の本格的な探索は始まった。

 とはいえ、三日目も成果は上がらず四日、五日とも同様の内容。

 探索は六日目に突入するのであった。


『……雪』


 だが、ここでアクシデント発生。遂に雪が降ってきたのである。


『雪にゃ~』

『綺麗だね~』


 暢気なにゃんこびととは裏腹に、ガンテツ爺さんは苦い表情をみせた。


『こりゃあ、いかん。積もる前に帰艦じゃ。雪中装備にせんと、下手をすればレ・ダガーにも後れを取るぞい』

「戦機って雪上だと動きが鈍るの?」

『というか滑るのう。地面に足を付けずスラスターで浮いたまま戦えれば話は別じゃが』

「そんなのルビートルしかできないじゃないですかやだー」


 というわけで、雪が降ってきた事により探索は中断。

 俺たちは探索六日目も早々に切り上げて、七日目の探索に賭けることとなった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 銀杏といえばこの前食べた茶碗蒸しに入って無かった! [一言] 銀杏の臭さで感想が浮かばない! 鳴くしかない! 「ンベェェェェ!」
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