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14食目 不思議な力

「お頭! またあの変な壁だぁ!」

「ちっくしょう! 弾が弾かれる!」


 盗賊ブリギルトたちはライフル銃をガンガンぶっ放してくるが、そんなものは俺の魔法障壁には通用しない。

 ファンタジー世界の理不尽というものを、その身に叩き込んでくれる。


「ユクゾッ! 魔法障壁【びんた】!」


 ばちこーん。


 要するに、だ。魔法障壁で思いっきり引っ叩いただけである。

 しかし、それだけでブリギルトはバラバラになって地面に転がってしまったではないか。


「あっぶね!」

「……予想以上に威力があるわ。乱用は控えた方がいいかも」

「そうみたいだなぁ。でも、攻撃手段がなぁ」


 とここで【ぴこん】と閃いた。


「よし、殴るか」

「……もう騎士というよりかは闘士ね」


 取り敢えずは勝てればいいねん。

 そんなわけで、エルティナイトの両拳に魔法障壁を纏わせて殴る。


「ぐわっ!?」

「おっと、これも激烈な威力だな」


 盗賊ブリギルトの右肩を狙ったストレートパンチは容易にブリギルトの右腕を吹き飛ばしてしまった。


 いったいなんだ、この異様な攻撃力は?

 魔法障壁は、ただ単に防御壁でしかないはずなのに。


「……エル、考えるのは後で。今は止めを刺してしまいましょう」

「そうだな。んじゃ、必殺の【ふきゅんパンチ】だっ!」


 説明しよう、【ふきゅんパンチ】とは、ただのパンチである。


 説明終了っ! 続き? んなもんねぇよっ! ぺっ。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 哀れ、盗賊ブリギルトはバラバラになって地面に転がった。


「ただのパンチなのに、バラバラになった。俺は、どこかの神拳伝承者だった?」

「……それはない」

「夢も希望もないんだぜ」


 鋭いヒュリティアのツッコミにより、俺の淡い願望は儚く消えた。

 この愛と怒りと悲しみを、ふぁっきゅん盗賊団にぶつけてやるとしよう。


「おいぃ、おまえら。神妙にお縄に着けぇ」

「うぐぐ……なんで、こんなわけの分からないヤツに!」


 機体から放り出されてビクンビクンしている男たちをエルティナイトで掴み上げる。


 白状しよう。縄を買い忘れた。てへり。


「んごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」


 盗賊団のお頭が、奇妙な悲鳴を上げた後に泡を吹いて気を失った。


「……エル?」

「お、俺は何もしてないぞ」


 だが、気を失ってくれた方が楽でいい。

 残りの二人もお頭同様にエルティナイトで、むんず、と掴み上げた。


 やはり、二人とも、ぴぎょぉぉぉ、だの、ぶりりあんと、だのと悲鳴を上げる。


 最後のは悲鳴でいいのであろうか?


「これで、盗賊団は壊滅だな」

「……お疲れ様。エル、何か違和感を感じなかった? 特に盗賊たちを掴み上げた時に」


 ヒュリティアが妙なことを聞いてきた。

 思い返してみるも、違和感など感じていなかった……はず。


 いや、待て。


 言われてみると俺の手に、何やら力が集まっていたような気がする。

 それは、温かな力だったような気もするが、今となっては何も感じることはできない。


「手に温かい力っぽいものを感じた」

「……そう、やっぱり」


 ヒュリティアは一人、納得顔をしていたが、俺はわけワカメである。


「……帰りましょう。もう、ここにいても意味はないわ」

「そうだな。こいつらも引き渡さないといけないし」


 というわけで、雑に盗賊たちを抱えてキアンカへと引き返す。

 彼らは五十万ゴドルへと姿を変え、俺のお財布を潤したのであった。






「と思っていた時期がございました」


 五万ゴドルを残してマーカスさんに徴収されました、ふぁっきゅん。


「修理はうちでやってやる。それは生活費だ」

「それはありがたいけど……」

「どうやら、おまえは金遣いが荒そうだからな」


 は、反論できねぇ。


 今の俺は借金塗れ。しかも金は投げ捨てるもの状態な俺には、ぐうの音も出ないお言葉であった。


「まぁ、それなりの実力はあるみたいだな」

「おん?」

「おまえさんがひっ捕らえた盗賊たちはB級の賞金首さ。多くの戦機乗りや民間人を手に掛けた悪党なんだ。それを殺さず、生かして捕らえた、となると噂になるぜ」


 どうやら、それなりの実力がある悪党だったらしい。

 しかし、それを感じるまでもなく撃破してしまったため、いまいち実感が分からない。


 結局、俺は「そーなのかー」と返事を返すに留まった。






 これ以降、俺は積極的に依頼をこなしてゆく。

 一ヶ月くらいは借金返済と名声を上げつつ、ランク順位を上げていった。


 尚、途中から面倒臭くなったので順位は見てない。


 四桁もあるから、当然だよなぁ?

 一桁になるのは、まぁだ時間かかりそうですかねぇ?


 そうそう、拾ってきたブリギルトはエリンちゃんによって無事に修復され、ヒュリティアの乗機となった。

 現在は彼女も戦機乗りとして活躍している。


 お陰で借金も無事に返済できそうである。


「とでも思ったのかぁ?」


 そんなんじゃ甘いよ、とばかりに、ヒュリティアはブリギルトを魔改造してくれやがりました。

 お陰様で借金は六倍です。


 どうしてくれるの、これ?


「……先行投資は重要よ」

「いやいや、新しい戦機買えたぞ」

「ぶろろ~ん!」


 買い替えるなんてとんでもない、とばかりに青銅の精霊【ブロン】君が苦情を申し立てた。

 これが、戦機を買い替えることができない最たる理由である。


 お陰様でヒュリティアのブリギルトは、その原型が分からないまでに超絶パワーアップを果たしている。


 マーカスさん曰く、ブリギルトの皮を被ったミスリルクラス、だそうだ。


 エルティナイト?


 エルティナイトに対しての彼の評価は、【評価不能】というありがたいお言葉をいただきましたふぁっきゅん。


 実際問題、訳が分からなくなっている、との事。


 整備のために、一度オーバーホールしようとしたところ、エルティナイトの内部構造が激変しており、下手にバラしてしまうと二度と組み立てることができないかもしれない、とまで言われてしまった。


 いったい、どうなっているのやら?


「エルティナイトは、ただのアインリールだったはずなのに……どうしてこうなった?」

「……エルだから仕方がない」

「その言葉は聞きたくなかったんだぜ」


 なんというパワーワードであろうか。


 全ての無茶苦茶は俺に帰結する? 納得できねぇ!


 おぉん! とマーカス戦機修理工場の休憩室で悶絶する俺の下に一報が入った。

 戦機協会に所属し一定の成果を上げた者は、協会より携帯連絡装置を支給される。


 要は協会と連絡がつなげる携帯電話だ。


 これは、協会は勿論の事、協会に所属している戦機乗り同士とも連絡が取れる。

 ただし、携帯電話同様に電話番号を知っていないと連絡を掛けれない。


「しもしも」

「あ、エルティナさん、よかった、繋がりました」


 この声は受付のお姉さんだろう。

 何やら火急の用件がありそうな雰囲気である。


「今、お時間は空いていますか?」

「特に急ぎの用はないんだぜ」

「ヒュリティアさんもおられますか?」

「隣でホットドッグ食べてる」

「またですか?」

「うん」


 ヒュリティアのホットドッグ中毒は既に戦機協会でも有名になっていた。


 なんでも戦機協会の食堂メニューにホットドッグが無かったため、加えないと戦機協会の入り口にダックスフントを屯させる、と脅迫したらしい。


 この脅迫は脅迫になるのだろうか? そもそも、ダックスフントは、どこから調達するつもりであったのか。


 このことがホットドッグの追加の決め手になったかどうかは分からないが、しっかりと食堂にホットドッグが追加されていた。


 ヒュリティア、恐ろしい子。


「では、至急、戦機協会にまでご足労ください。詳しい話はそこで」

「了解したんだぜ」


 俺は連絡を切り、ヒュリティアを伴って戦機協会へと向かった。

 今までこのようなことはなかったのだが、何か問題でも起こったのであろうか。


 不安を拭い切れないまま、俺たちは戦機協会へと辿り着いた。

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