表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食いしん坊エルフ2 精霊戦機エルティナイト ~ 全てを喰らう者と精霊王 ~  作者: なっとうごはん
第10章 生まれてきた理由 ~母の愛と厳しき後見人~
133/501

132食目 茨木童子 爆誕

 お口を三角にして衝撃の事実をぶちまける銀髪の褐色肌幼女は、ジト目にて件の小鬼にロックオンぬ。

 その生まれたての命を滅殺せんと目論んでいる。


 しかしながら、俺は陽の戦士たる桃使いであり、またこれなる者を生み出した張本人であるので、なんとかならないかを模索する次第で。


「おいぃ、流石に生まれたてを抹殺するのはよくにぃ。せめて様子を見てはどうかな?」

「……鬼に情けはムッヨー。即・た・い・じ・☆、が合言葉の桃使いでしょう?」

「きびしーっ」


 確かに彼女の言う事は分かる。

 桃使いの教えも彼女の言う通りであり、鬼は速やかに輪廻へ送って差し上げ浄化されていただくのが最善であるのだ。


 しかし、これなる小鬼は生まれたてであり、鬼化した経緯も異なる存在。

 通常の鬼のように退治してしまっていいものか、これが分からない。


 加えて、こいつは鬼の総大将の片腕たる茨木童子だというのだ。

 それが事実だとしたら、桃使いにとっては脅威足り得るのであるが、俺にとっては子供のような存在でもある。


 お腹は痛めてないけどねっ。


「おにぃ、おにぃ」


 ヒュリティアの謎の迫力に気圧されたのか、小鬼はパイパイから這い出て俺の手に縋りつく。


 触れてみて分かったのだが、こいつはクソザコナメクジである。

 ちょっと桃力に触れただけで、輪廻へ送られてしまうかもしれない。


「まぁ、様子を見ればいいんじゃないかなぁ? こんな小さい子を虐めるのは良くないと思うよ」


 ここで思いがけない援軍登場。

 ビクビクする小鬼を持ち上げたのはエリンちゃんだ。


 まったく敵意が無い彼女に対して、小鬼は懐く仕草を見せる。

 その行動のことごとくが小動物チックで可愛らしい。

 二頭身であることも拍車を掛けているであろう。


「……もう、どうなっても知らないわよ」

「大丈夫だよ、こんなに素直で大人しいじゃない」

「おにぃ」


 エリンちゃんは茨木童子だ、と呼ばれた小鬼の頭を撫でる。

 その時、俺は見た。小鬼が邪悪な笑みを浮かべたのを。


 それは果たして、俺の目の錯覚であっただろうか。

 そうと思えない。残念ながら俺の視力は極めて良いのだ。

 見間違い、という事はないであろう。


 しかし、言い出しっぺの法則に従い、小鬼が何かやら貸さない限り成敗することはできないのであった。




 てなわけで朝食。


 モリモリガツガツ、と乱れ食いする俺は、やはりデカすぎるおっぱいが気になった。

 とにかく邪魔。おかずに伸ばす手を、ぼにゅんぼにゅん、と阻害する。


 おっぱいは眺めている分には良いが、所持すると途端に邪魔になる良い例と言えよう。

 ちっぱいを馬鹿にするやつは、その高性能を理解していない証。

 赤ちゃんにお乳をあげるだけなら、ほんのりパイパイで十分なのだと深く理解する。


「うぬおぉぉぉぉぉっ! おっぱいが邪魔だっ!」

「いやいや、どんだけ食べることに必死なんじゃ」


 ガンテツ爺さんの呆れもなんのその。

 朝食は戦いって、それ一番言われてっから。


 この後、俺はエルティナイトにも飯をやらなくてはならないし、何よりもザインちゃんに吸われる吸われる。

 乳房から直接エネルギーを貰える、と分かった途端に本気を出してくれやがりましたので、とにかくこちらも十分にエネルギーを蓄える必要があるのだ。


「……はむはむはむはむ」

「おにおにおにおにおに」


 そして、こいつらも食べる食べる。

 ヒュリティアは分かるとして、生まれたての小鬼も食べる食べる。


 なんで精霊戦隊に加わる連中は大飯ぐらいばかりなのだ、こんなの聞いてないよぉ、と心の中心でトンカツを揚げる俺は今夜はカツカレーと定め、スクランブルエッグを飲み物のように扱うゲフゥ。


「まぁ、食いながらでもいいわい。そいつは、いったいなんじゃ?」

「こほほは、ふぉふぉひふぁ」

「やっぱり食い終わってからじゃな」


 食いながらで良いって言ったじゃないですかやだー。


 結局は食事が終わってから小鬼の説明をおこないました。

 はい、事情を知らないガンテツ爺さんたちは呆れましたとも。


 食後、エリンちゃんが淹れてくれたグツグツ大根の葉を煎じたお茶で一息つきながら、小鬼の説明をおこなう。

 グツグツ大根の葉は、乾燥させて煎じると【チャイ】のようなスパイシーなお茶へと変化する。

 捨てる部位の無い、実に素晴らしい食材であると言えよう。


「こいつは小鬼の【茨木童子】らしい。陽とは反対の陰の存在だ」

「陰……というと機獣どもが使うバ・オーガの力の源か。なんでそんなものを、おまえさんが生み出しとんのじゃ?」

「説明すると長くなるから端折るけど、陰と陽は元来、一つであり、正しく両者を従えて初めて強大な力を得ることができるんだぜ」


 俺の説明に、ガンテツ爺さんは顎髭を擦りながら難しい表情を見せる。


「むぅ……極東の伝承に聞いたことがあるのう。随分と昔の事だったから詳しい事は忘れてしもうたが」

「……奥さんから聞いたの?」

「そうじゃ、火呼子の奴が話しておった伝承に、そんな説明があったわい」


 ぽん、と府が落ちたかのように、ガンテツ爺さんは手の平に拳を落とす。

 彼の亡くなった奥さんは、結構な博識であったもよう。


「陰は暗くて邪悪な力を持っているのは確かなんだけど、それすら自然に置いては【ただの力】に過ぎないんだぜ。要は使いよう、ってことだぁ」

「おにぃ」


 俺の結論に、小鬼はうんうんと頷き妙に偉そうな態度を取った。

 よって、躾のために顔をぷにっと掴み、ぶちゃいく面へと変じさせた。


 おまえ……調子ぶっこき過ぎた結果だよ?


「まぁ、こういう奴だけど、今すぐどうこうってわけじゃないから暫く様子を見てやってくれい」

「わしらは構わんが……そっちはどうなんじゃ?」


 ガンテツ爺さんたちは、ずもももも、と瘴気を放つヒュリティアに苦笑している。

 まだ、隙あらば、という姿勢を見せる黒エルフの幼女は筋金入りだ。

 下手をすれば専門職の桃使いよりも使命に燃えているのではなかろうか。


「どうどう、落ち着くんだぁ」

「……私は冷静よ」


 そういう奴が一番冷静じゃない。


『おいぃ! 朝飯はまだですかねぇ?』


 といったところで食いしん坊スーパーロボットが露骨に朝食を要求してきたので、茨木童子をデカくなってしまった胸の谷間に押し込んで、エルティナイトの待つ格納庫へと退散する。


「……あっ、待ちなさいっ、エルっ!」

「あばよぉ、とっつぁん。行くぞ、アイン君」

「あい~ん」

「おにぃ」


 バタバタとダイニングを後にして向かうは格納庫。

 そこに腹ペコナイトは奇妙なポージングを無駄に炸裂させ、バァァァァァァァンッ! という文字エフェクトを発生させていた。


 無駄にエネルギーを消費させるのはNGって言わなかったっけ?


「おいバカやめろ、エネルギーが無駄に消耗される」

『ナイトは行動に後悔しない、し難い、だから俺は奇妙な行動を躊躇わないだろうな』

「ナイト、凄いですね」

『それほどでも……どちらさまですか?』


 ここまでのやり取りで、ようやく俺の姿が変わっていることに気付いた愚鈍なナイトは、やはり新たな奇妙なポーズを炸裂させる。

 文字エフェクトも、ドドドドドドドドド、というものに変化させていた。


「おまえの相棒様に決まってんだるるお?」

『おいぃ、嘘偽りはメガトンパンチで粛清だぞ』

「なら、証拠を見せてやろう」


 俺は桃先生を十二個召喚して見せた。


『ほう……九個でいい』

「やはりナイトは謙虚だった」


 こうして、俺はエルティナイトの朝食を兼ねた証拠を提示。

 晴れてエルティナイトの信用を勝ち取ったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ