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113食目 帝都防衛戦

 クロナミにてガンテツ爺さんたちを降ろした俺は一足早く戦場へと向かう。


「ばぶー」

「あっ」


 そして、ザインちゃんを連れたままエルティナイトと合身していたことが発覚。

 これも、重力制御魔法【ライトグラビティ】の弊害なんやなって。


 だが、まぁいっか、ということでこの件は安全に解決の流れとなった。

 これで、ええねん。


 向かう戦場は帝都ザイガ北東部。

 帝都までは結構な距離があるが油断は禁物、といった距離感である。


『エルティナちゃん、準備は良いかい?』

「おう、問題無しなんだぜ」

『それじゃあ、発進どうぞ』

「エルティナ、ついでにザインちゃん、精霊戦機エルティナイト、発進っ!」

「だーっ」

『え? ザインちゃんっ!? ちょっ、それはもんだ……』


 最早、とき、時間切れ。

 エルティナイトは止まらない止められない。


 しゅぽーん、と得体の知れない金属の塊である黄金の魂を持つナイトは軽やかに、巨大な銃から戦場へとぶっ放された。


『着地っ』


 どっすーん、と地鳴りを響かせて戦場手前へと着地。

 ここからは徒歩になりますよ、とほほ。


「エルティナイト専用の乗り物があってもいいかもな」

『あい! 興味あるますっ!』

「あい~ん」


 俺の考えにエルティナイトとアイン君も同意を示す。

 であるなら、まず確実にお馬さん型の乗り物なんだよなぁ。


 ナイトにはホースって、それ一番言われているっぽい。


 でも今は無い物ねだりなので、えっさほいさと大地を駆け抜けて差し上げろ。


「戦場は平地、荒野地帯か。防衛側には辛い地形だな」

『身を隠せないと戦えない貧弱戦機は帰ってどうぞ』


 無茶を言うナイトだが、他の戦機はエルティナイトと違うので多少はね?


 だが、この地形となると完全に戦機乗りの腕前がものをいう。

 攻撃に当たらず、一方的に攻撃できる腕前が無いと生き残るのは難しい。

 それは、戦機の性能に物をいわせるしかないだろうか。


 帝都防衛隊の戦機はいったい、どんなものか見せてもらおうか。


「アインラーズばっかりじゃねぇか」

「てっつー」


 なんと言う事でしょう、そこにはアイアンクラスの戦機がわちゃわちゃと集結していたではありませんか。


 機獣は新型を出してきてんだぞっ? やるきあんの?


 しかし、これにアイン君はハッスルしている様子を窺わせる。

 これだけアイアンクラスの戦機が集えば鉄の精霊である彼が高揚するのも頷けるというものだ。


 しかし、現実は残酷である。

 戦いが始めれば、ボコボコにされる未来が透けて見えちまう。

 さてさて、どう立ち回るべきか。


「やるべきことなんて、一つなんだよなぁ」


 前に出て機獣の敵意を一身に引き付ける。

 ナイトの役目は壁役、それができなければ味方は安全に戦えない戦い難い。

 だから俺たちは危険を顧みず猪突猛進するだろうな。


 などと考えているとエルティナイトに振動が伝わった。

 アインラーズの一機がエルティナイトの肩に手を置き、直接通信を試みてきたのだ。


『貴様、戦機乗りか?』


 女性の声、しかもまだ若そうである。


「おう、俺は精霊戦隊のエルティナ。帝都の危機に即参上なんだぜ」

『物好きな戦機乗りがいたものだ。軍部の方は戦機協会に協力を要請していない。それぞれの思惑が対立しているからな。きっと、ただ働きになるだろう。だから、無理して……』


 どうやら、彼女は親切心で忠告してくれているのだろう。

 そして、恐らくは部隊を指揮しているのは彼女かと思われる。


 言動にそれなりの自信と責任を感じ取れるのだ。


「俺たちはナイトだからよ。貧弱一般市民の盾なんですわ」

『何?』

「だから、退けない退き難いっ。超一級の騎士の戦いを見せてやるから楽しみにしとけっ」

『……本当に物好きがいたものだ。なら、もう何も言わん。生き残れ』


 こうして、彼女は納得したのか、はたまた諦めたのか、エルティナイトとの直接通信を終えて部隊へと合流。

 やはり部隊長だったのか、彼女のアインラーズの指示に従い、配下どもが少々ぎこちない動きで陣形を組む。


 アインラーズが手にしているのは光素系兵器だ。

 その殆どがライフル銃であり、中にはバズーカ砲を担いでいる機体も見受けられる。

 やはり、重量がかさむのを嫌がったのか、盾を携帯している機体は見受けられない。


 そんなんじゃ勝負になんないよ~? もっと、盾を見直してどうぞ。


『おいぃ、牛さんどもがモーモー言いながらビーフになりにきやがったぞ?』

「食えない牛さんは、ただの鉄屑にして差し上げろっ」

「あいあ~ん!」


 新型の機獣が見えた。

 砂埃を上げつつ、横に広がって突進してくる鋼鉄の牛ども。

 それはバッファローを想起させる攻撃的なデザイン。白を基調として黒いラインが走る塗装が施された機体であった。


 シマウマの牛バージョンかな?


 機体の大きさは約15メートルほど。

 つまり、通常の戦機よりもデカい。


 彼らの突進を受け止める事はアインラーズでは難しいだろう。

 そして、体当りを受ければバラバラにされる勢いで走っている。


 アレを止めることは容易くはナイト。


『激ウマギャクに涙を禁じ得ない』

「人の心の中のギャグを採点するとかナイトか」


 でも、俺たちは現在、心身共に一体なのでバレバレなんですわ。


「よし、いっちょやるか」

『応、最前線に乗り込め~』

「わぁい!」

「あい~ん!」

「ばぶー!」


 エルティナイトが最前線へと躍り出る。

 いったい何事か、と奇異の視線に晒されるがもう慣れっ子だ。


 じゃけん、名乗りを上げましょうかね~?


「精霊戦機エルティナイト見参っ!」

『この唯一無二の盾は砕けない砕きにくいっ!』

「黄金の鉄の塊のナイトは逃げも隠れもしないっ!」

『かかってこいやぁっ!』

「あいあ~ん!」

「ばっぶー!」


『『『赤ちゃんの声だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』』』


 オープン通信にザインちゃんの気合の声が混ざり、戦場は割と大混乱に陥りました。

 俺は悪くない。


 さて、混乱しているのは帝都防衛隊だけだ。

 俺たちは、俺たちの仕事をしようじゃないか。


「エルティナイト、魔法障壁発動を発動させるっ!」

『遠慮なくやっていいぞ』

「遠慮なんてするわけねぇだろ」


 突進してくる鋼鉄の牛の群れ、その最前列を走る新型がエルティナイトを目標と定めた。

 どうやら、景気づけにエルティナイトを粉砕してくれん、としているもよう。


 でも、そんなんじゃ甘いよ。


「多重魔法障壁、ワイド型発動っ!」

『このナイトを突破しようとか、激甘ケーキに蜂蜜をトッピングするくらいに甘い』


 エルティナイトの盾に横に広く広がる魔法障壁を纏わせて鋼鉄の牛の衝撃に備える。

 我ながら無茶な行為とは考えるが、考えるだけ無駄だってアイン君に諭された辺り、彼も結構な勢いでナイト思考に侵食されているもよう。


 だから、何も考えずに、俺たちはナイトをするだろう。


「おんどるるあっ!」


 ガシャン、と金属音。


 ガリガリ、とエルティナイトが圧される。

 やはり、一万機にも及ぶ体当りの衝撃は激烈なんやなって。


 しかしそこは魔法障壁を三角形にすることで衝撃を左右に逃がす、という姑息なトリックを用いて緩和してる。

 この場合、牛さんどもが左右に分かれて突っ走りそうであるが、急に止められたからか、後続の牛さんどもが前列の牛さんにぶつかって圧し潰してくれる、という嬉しい誤算が発生。


 結構な数が爆発四散してくれましたとさ。


「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

『爆発を考えない魔法障壁、凄いですね』


 はい、牛さんの爆散で魔法障壁が一瞬にして溶けました。

 やっぱ、数の暴力は侮っちゃあいけないんやなって。


 しかし、慌てて魔法障壁を追加することで、エルティナイトの装甲が焦げた程度で収まりましたとさ。


「よし、なんとか突進を抑え込んだぜ」

『これくらいできて当然。ナイトが抑え込まないで誰が抑え込む』

「あいあいあ~ん!」


 エルティナイトが鋼鉄の牛を抑え込んだことで流れが変わったことを肌で感じ取る。

 どうやら、この牛さん、突進能力はあるものの、小回りが利かないようなのだ。


 もたもた、と再突進の準備を進めている内にアインラーズの集中射撃によって一機、また一機と撃破されてゆく。

 頼もしい、と思う反面、危機感を覚える。


「固いな、牛さん」

『光素ライフルで十二発だな』

「九発でいい」

『謙虚だな~』


 と冗談をかましている場合ではない。

 撃破が遅れれば、牛さんどもが再突進モードへと移行してしまう。


 それは帝都防衛隊も理解しているのか、攻撃に焦りが見えてきた。


 果たして、俺たちは帝都ザイガを護りきることができるのであろうか。


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[一言] エヴァに、二人で乗った状態!?
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