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104食目 人質交換……するとでも思ったのかぁ?

 盗賊どもに囚われた人々を救うべく、連中の接触を待つ。


 ……なんて甘いよ?


 アジトの大体の位置が判明したのだから、やることはただ一つ。


「殴り込みなんだよなぁ」


 精霊戦隊エレメンターズは近年稀に見る武闘派集団。

 交渉なんていう頭をフル回転させる取引などできないできにくい。

 だったら、俺たちは人質交換する前に襲撃に走るだろうな。


「しゅ、襲撃ぃぃぃぃぃぃぃぃっ! もぎゃぁぁぁぁぁっ!?」


 とはいえ一応は作戦っぽいものは立てている。


 俺が単身で陽動をおこない、ヒュリティアが人質たちを奪還。

 ガンテツ爺さんがデスサーティーン改で待機し、とんずらぶっこいた連中を叩き潰す、というものだ。


 もちろん、桃結界陣を展開しているので、遠慮なくやっちまっても死人は出ないだろう。


 襲撃は真昼間におこなう。

 もりもり昼飯を喰らって満足したら、腹ごなしに盗賊どもをボコりに行く。


 このくらいの適当さでええねん。


 俺は盗賊どものアジト、と思わしき洞窟に生身で突入。

 しかも、背中にはザインちゃんを背負っている。


 これが結構、重要。


「な、なんだぁ? このガキは?」

「ばぶー!」


 ザインちゃんがバブる。

 瞬間、俺の魔力をモリッと吸収して、くそ激しい電撃を駆け付けた盗賊にぶっ放したではないか。


 在りし日のザインちゃんは雷属性の攻撃魔法の使い手だ。

 それは、赤ちゃん状態であっても健在であった。


 でも、魔法を使うための魔力が圧倒的に足りないんやなって。


「あばばばばばばばばばばばばばばっ!?」


 電撃を受けた盗賊は、身体をビクンビクンさせながら昏倒した。

 こんな無茶苦茶な攻撃を、防弾チョッキで耐えられるほど現実は甘くはない。


「おらおらっ、ファンタジーの理不尽を叩き込んで差し上げろっ!」

「あぶ~!」


 幼女と赤子の進撃に、盗賊アジトは蜂の巣を突いたかのような騒ぎへと発展。

 いよいよもって、幼女と赤子に発砲する者が現れる。


 まぁ、効かないんですがね初見さん。


「ふきゅん」


 魔法障壁が使えるようになった俺は、理不尽の塊みたいなもの。

 相も変わらず魔法は飛ばせないが、そこはザインちゃんがカバーしてくれる。


 キン、チュイン、と悲しげな音を立てて弾かれる弾丸に、盗賊たちはポカーンとした間抜け面を晒す。


「だ~」


 そこに容赦なくザインちゃんの電撃が飛んだ。

 効果は、ばつぎゅんだ!


 彼女の足りなすぎる魔力は、俺と接触することにより供給可能。

 ガンガン、電撃をぶっ放して差し上げろ。


「ふっきゅんきゅんきゅん……圧倒的ではないか!」

「あ~う~!」


 制圧前進を続ける俺たちの前に、いよいよ人質を盾に取る盗賊が現れる。

 ご丁寧に人質の女性は服を引き裂かれた状態で登場。

 へったくそな血糊の化粧を施され、いかにも暴行されました、みたいな雰囲気を演出している。

 その全てが雑過ぎて見た瞬間、吹き出しそうになるも、これをなんとか堪えた。


 性的暴行の症状を俺はよく知っているので、アレがフェイクであることは一瞬で看破。

 実際にやられた女性は、あんな遠い目をした表情ではなく、目に映る物全てに怯える顔をするのだから。


 だからこそ、俺は盗賊たちに有情を掛ける。

 一線を越えなかったのは偉いぞこれ。


「て、てめぇ! 昨日の連中の仲間だなっ!? こいつの命が……」

「あっぶ~!」

「「ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」


 そして、このザインちゃんである。


 哀れ、盗賊は【人質の女性ごと】電撃にビリビリされて昏倒した。


 今のザインちゃんは小さな暴君。

 盗賊だろうが、人質だろうが、誰かれ構わずビリビリしちゃうんだぜ。


「嫌な……事件だったね」

「ばぶー」


 そして、この満足げな顔である。


 だが、この時、トラブル発生!


 ぷぃ。


 お漏らしッ! しかも、大きい方っ!


「くっ! おのれ盗賊めっ!」


 すかさず盗賊に罪を擦り付けて危機を回避。

 あらかじめ携帯していた紙おむつを取り出して、いそいそとザインちゃんのオムツを交換する。


「よぉく、お尻は清潔にするのだ」

「あい! うんうん先生っ!」


 ザインちゃんから爆誕した【うんうん先生】。

 彼は、俺の桃力の影響を受けてか言語を操る。


 そして、赤ちゃんに必要不可欠な情報を提供してくれるのだ。


 ザインちゃんのお尻を魔法瓶に入れておいたぬるま湯で洗浄、赤ちゃん用パウダーでべとつかないように処理した後に紙おむつを装着。

 ご満悦な表情のザインちゃんに、うんうん先生も合格点を出す。


「それでは、さらばだ」

「あい! あるごとうございましたっ!」


 ここにトイレは無いっぽいので、紙おむつにくるんでうんうん先生は洞窟内に放棄。

 きちんと隅っこに置いておき、自然に浄化されるのを待つ。


「さぁ、ちょっと時間は食ったが前進開始だぁ」

「ばぶー!」


 最高にハイな状態になったザインちゃんは最早フィーバータイムへと移行。

 ジャンジャンバリバリ敵味方関係なく電撃をごちそうして差し上げている。


 まさに鬼畜の所業!

 でも、まったく悪意が無いので、桃力はこれをまさかのスルー!


「勝てばよかろうなのだー」

「だー!」


 こうして制圧前進を続けた結果、盗賊と人質の死体の山が築き上げられた。

 いや、全員生きているけどな。


「な、なんなんだ! おまえらはっ!? 非常識にも程があるっ!」

「ファンタジーに常識は通用しねぇんじゃ、おらぁん!」

「あっぶー!」


 ちょこまえに常識を訴える盗賊に非常識の塊をプレゼント。

 やはり、ザインちゃんの雷無双の前にビクンビクンすることと相成った。


「これは、ヒーちゃん、いらんかったかもなぁ」

「うー」


 とここでヒュリティアからのお電話が入った。

 ケツのポケットから折り畳み式の携帯電話を取り出す。

 タブレット式と比べ、安くて頑丈なのでありがたい。


「しもしも」

『……盗賊どもが、裏から人質を連れて逃げたわ』

「知恵の回るやつがいるっぽいなぁ。そっちは任せるんだぜ」

『……了解。アイン君もいるし、任せて』


 電話を終えて再び携帯電話をケツのポケットにしまう。

 ここは洞窟内であるが通信が繋がるのは、この携帯電話に特別な処置を施しているからだ。


 はい、またしてもファンタジーでございます。


 魔法に遠隔通信魔法【テレパス】というものがある。

 その術式を、俺とヒュリティアの携帯電話に纏わせておいたのだ。


 電波と違って魔力は物質を通す性質があるので、岩だろうがコンクリートだろうがお構いなしなのだ。


 情報を制する者は全てを制する。

 まぁ、俺らは情報も暴力で制しちまうんだがな。


 暴力はいいぞぉ。


 暗黒面をそこはかとなく撒き散らしながら、暗黒微笑で前進する幼女と赤ちゃんは遂に最奥へと到達。


 ヒュリティアの情報通り、そこはもぬけの殻であった。


「ま、こっちの役目は果たした、って感じかな?」

「あーい!」


 ザインちゃんは作戦の成功にご機嫌のもよう。


 早く大きくなるといいなぁ、とかなんとか考えつつ、ぽっかりと空いた裏口へと進む。


 隠し通路だったのであろう薄暗い通路を進むのだが、暗視能力のある俺にとっては、この程度お茶の子さいさい。


 例え明かりが無かろうが「ふきゅん」と鳴くことによって跳ね返ってきた音を聞き取り、大体の構造を把握できる。

 そもそも、暗かったら魔法で明かりを出せばいいだけ。


 でも、俺は盗賊たちに気付かれないように、こそこそ後を追うだろうな。


「お、出口だ」

「ばぶっ」


 明かりが差し込む洞窟の出口から、ひょこっ、と顔を出す。

 そこには、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開していたのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ファンタジーから見ても、非常識なのです。
[良い点] ヒャッハー!殲滅戦だー!!!!!(確保対象ごと無差別攻撃) [気になる点] (盗賊に)ボディタッチ(※肩揉み)や穴という穴をほじくりまわす(耳かき)拷問する上にさらに放置プレイとか非人道的…
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