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今でも気にしてる

 お姉さんを部屋の外に追い出そうと、キタガワがドアノブに手をかけた時に向こうからドアが開いた。

 綺麗なお母さんと妹が心配そうな顔で見つめている。

 ちっ!と大きく舌打ちするキタガワ。

 お母さんが心配そうな顔のまま聞く。「どうしたのあんたたち、せっかく彼女が来てくれてるのにそんな…、もう来てくれなくなったらどうす…」

「お母さ~ん」お姉さんがお母さんにわざとらしく助けを求めた。「今こいつが中学の時の話しようと思ったらいきなり力任せに掴んで来てさ」

「お兄ちゃん…」妹も非難の目だ。

「何その中学の時の話って、」とお母さん。「私も知ってるやつ?」

「今彼女に性懲りもなくネックレスやろうとしてるからさ、」とお姉さんが答える。

 彼女じゃないって言ったのに。

 なんかでも…お姉さんの顔は笑っている。

「従兄弟のハル兄にこいつが中学の時…」


 「あれでしょ?」と妹が口を挟んだ。「中学の時にお兄ちゃんが彼女いないのかってハル兄に聞かれて、彼女はいないけど、小学からずっとオレの事を好きで、オレもまぁそいつを好きかなって思ってるヤツはいるって、カッコつけて答えてたヤツでしょ?その女の子が自分が上げたネックレス、キーホルダーにしていつまでも持ってるってだけでそう思ってるって気持ち悪い事答えてた…」

「え、キモっ!」と言ったお母さんの声をかき消すようにキタガワが大声を出した。

「あ~~~~~~~っっ!!」



 私は自分の顔が真っ赤になり過ぎるのがわかって真下を向く。熱い熱い顔が熱い。

「それ、こいつの事だから」キタガワが力無く言った。「その時の話もこいつの事なの!ちょっともうほんっとに出てけって」

 お母さんが「ぅあ、」と言い、妹が「マジで!」と言ってゲラゲラ笑い、お姉さんは「ふっ」と鼻で笑って3人とも出て行ってしまった。

 私もこのまま出て行きたい気持ちだ。



 静かになった部屋でいたたまれない。

 キタガワがネックレスを指して静かに言った。「お前、それどうする?」

「…」

「もう無理して持って帰んなくてもいいけど。…なんか疲れた…あいつわざといろんな余計な事しゃべりやがって…」

「…無理って何?」

やるって言ったくせに。

「なんかいろいろ!もう欲しくなかったら別にいいって事」

 胸がズキン、とする。そんな言い方をされたら。

 無理じゃない。全然無理なんかじゃない。すごく嬉しかった。

 そう言えばいいのに言えない。



 「え…と、」

1回キタガワの目を見たけれど、やっぱり恥ずかしくて反らしてから言った。「私…着ける。もらって帰って…着けたい」

 やっと、持てるだけの勇気を振り絞って言ったのにキタガワは聞いてきた。

「…着けんの?」

 着けちゃいけないの!?

 今の話の流れ、キタガワも私の事を好きでいてくれたって事じゃないの!?



 前もらった時には『オレがやったって誰にも言うな』って言われた。

今度は『着けんの?』って…

 なんだそれ!やっぱり他にも上げた子がいたとかそういう…

「…ねぇ…他の子とかには上げてない?」

つい聞いてしまって瞬間嫌な気持ちになる。なんかこういう事聞くヤツ嫌いだ。気持ち悪い。キタガワも静かに私を見つめたりなんかしてる目がちょっと怖い。もう…なんでそんなカッコ悪い事言っちゃうんだろ私。

 だからすぐに謝ってしまった。「ごめん」

「…そういう事聞くって事は」とキタガワが言った。「お前…今でもオレの事結構気にしてるって思っていいわけ?」

「…」

 わ~~~~!



 「なぁ…オレは…オレは今でもすげえ気にしてる。お前の事すげえ気にしてんの!…けど、お前もそうだと思っていいわけ?」

それに…、とキタガワがぷいっと視線を反らして言った。「オレの事見てる時あるじゃん教室で」

「ないよ!」と慌てて嘘をついてしまう。

「…いや、ある。オレも見てるから目が合うじゃんたまに」

「…」

「…そうじゃねえの?」

「…」

「だから中学ではアレだったけど今またオレの事をって思ったのに、…お前、友達の彼氏のツレとかと軽く会おうとかしてっから意味わかんねえ」

「…だって…見てたのはキタガワがあんまりむかしと違うからだよ」

「違わねえわ」

「違うよ。あんな…みんなに優しいみたいな調子良い感じじゃなかったじゃん。だからなんかちょっと…なんかそれがちょっと嫌だなって思って見てたの!」

言ったらキタガワがビックリした顔をした。

「…お前、オレが他のヤツに優しくしたら嫌なの?」

「…」

「じゃあこれからはもう…」

「もういいじゃん帰る!」と言ってガタっと立ち上がる。「でもネックレスは私がもらうから!3つとも私がもらって帰る!」

だって他の子にあげたりしたらイヤだもん。

 そんな感じ悪い私を見てキタガワが微笑む。何笑ってんのコイツ。

「うん」とキタガワが言う。「お前のだから。全部それ」



 そうだよね…むかしと違うと思って、嫌だな、って思って見てたのは、自分にだけ目を向けて欲しかったからだ。

 私だけに、って思ってたわけだよね。もうヤだな私。



 ご飯を食べていけというお母さんの誘いを断って、お母さんとお姉さんと妹に見送られてキタガワと家を出る。妹が「また来てね」と可愛く言ってくれたのがすごく嬉しかった。お姉さんは「簡単にチュウとかさせちゃダメだよ」、とからかって来たがキタガワはただもう無視するだけ。私だけがやる気のない作り笑いで「ありがとうございました」とお礼だけ言った。



 「私、一人で帰れるよ」と一応言ってみる。

本当は送られたいと思っている。

「送る。家まで送る」

家まで送ってくれるの!?

「家がどこかの確認だよ。月曜は朝練ねえから迎えに行くからな。お前絶対着けろよ、オレの作ったソレ。着けるって言ったからな自分で」

 今度は誰にも言うなって言わないキタガワ。月曜迎えに来てくれるって…




 

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