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陰謀論の住人  作者: 六年生/六体 幽邃
3部 チェーンメール
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19章 データ回収


 19章 データ回収


 公安局の地下。

 あらゆる暗部の更なる深部。


 その床を這う液体金属。

 うねうねと動くそれは盛り上がり、人の形を取る。


 闇の中に現れた門叶を終夜は気怠そうに迎える。


 ●


 終夜は門叶と合流し、階段を下りる。


「お疲れ門叶。でも楽勝だったでしょ」

「いやヒヤヒヤしましたよ。警視1人で進んじゃうし」

「ふーん?」

 

 終夜はちら、と門叶を見ながら地下を進む。

 前方には金属製の扉がある。 


 門叶が扉を開く。

 終夜は部屋の寒さに辟易としながら奥へと進んだ。

 

 そこに準備されたのは智嚢学園と同じ設備。

 インターネットから遮断されたそれらは監獄だ。

 

 画面に映し出された仙薬は苛立ちを隠さない。

 本体を滅茶苦茶にされたのが堪えたのだろう。


 門叶がスーパーコンピューターに攻撃を仕掛けたタイミングで公安局から接続。

 開戦を通じて仙薬はこの地下に逃げ込んできたのだ。


「どうも、六道星です」


 終夜は自分の警察手帳を見せる。

 その仕草に仙薬が更なる苛立ちを見せた。


『どうなっている……! 何故六道の一族が……!』

「どうなってるんでしょうね。こっちが聞きたいんですが」


 最近の機密の流出は目に余る。

 箍が外れたかのように己の欲望を追求する、と言っても過言では無い有様だ。


「地下に居た男達、あれクローンですね。そんな所まで協力してたんです?」

『……』


 蜥蜴人間の力を借りる前はクローンの脳を外付け保存装置にしていたのだろう。

 スーパーコンピューターや今の機材でどれだけ人格を保存できるか、と言うのは重要な部分だ。

 それを人間の脳で補ったのだろう。


 仙薬は何も答えない。

 どうでもいい、と言う風に終夜は部下に指示を出した。


「まぁ解析すれば判る話です」

『何を……!』

 

 何をされるか察した仙薬が叫ぶ。


 今の仙薬は言うなればただのデータの塊だ。

 そしてそれは逃げられないようにインターネットから遮断されている。


 全部バラバラにして解析する事など造作も無い。


「後は報告書で確認しますよ」


 そう言うと終夜は地上に戻るべく踵を返した。

 背後から仙薬の叫び声が木霊する。


『人殺し!』

 

 その言葉に終夜は不思議そうに足を止めた。


「何で? 人間辞めたんじゃないの?」


 分厚い扉は静かに閉められた。


 ●


 夜勤の人間しか居ない警察庁。

 開庁前の朝日を浴びながら門叶は警察庁の屋上で資料を読む。


 智嚢学園地下で発生した事件。


 蜥蜴人間を増やそうとした試み。

 それらは校内で行われていた人身売買、と報道されていた。


 救出された被害者達。

 無傷ではあるものの薬物の後遺症が残る為、入院。

 その内、記憶の処理が行われ、被害者達は事件の事を忘れるだろう。


 智嚢学園は閉口。

 生徒達は新たな学校へと転校になった。


「……」

 

 門叶アガマ。

 蜥蜴人間と人の子。

 

 今回の実験とは別件の事件で門叶は産まれた。

 未だに生かされている理由は判らない。


 蜥蜴人間の様な悪意を持ち得ない、と判断されているからだろうか。

 それが氷室が火泥を傍に置く理由だろうか。

 

 門叶の思考は事件から氷室へと移る。


 死なない死刑囚の事件から氷室の事件に対する姿勢が変わったように思える。

 以前は誰かと組むなど考えられなかった。


 火泥と組んでいる事。

 今回の事件でもシャッターで分断された後、門叶が居る事に気付いて単独行動をした節がある。


 いくら何でも力尽くであの金属扉は開かない。

 門叶が鍵を壊しておいたからだ。


 シャッターは力尽くで壊されたし、もう少し時間をかけていれば金属扉も開けられたがそれはそれとする。


「……」


 門叶は首を振り思考を戻す。

 

 それ以上にあの場面で銃を撃つのをギリギリまで待った事だ。

 以前は手早く処理を済ませていた。


 あのクローン達を処分した所で何の問題も無い。

 起こさせないのが門叶達の仕事だ。


 だが、まるで。 

 明らかに、火泥の前では殺しを避けている?


「……まさかな」


 そう言って門叶は資料をくしゃりと握った。



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