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さて、最後の仕上げをしましょう

二話連続投稿です

 俺は今、スプレーで、赤茶っぽく染めて、あやしそうなサングラスをかけている。

 ま、ばれない方が色々その後が楽だからね。

 周りには、『クラッシュ』と『ブレイク』のメンバー達が居る。

 ちなみに、俺はメガホンを持っている。

 何故かって、まぁ、今から毛玉君を潰すために必要だから。

 ふふ、さぁて、毛玉君を本当に思ってる人間は、どれだけ居るんだろうね?

 それを思うと、何だか笑みがこぼれた。

 「なぁ、理人! 俺が高迫律どうにかしたらさ、俺と…」

 「付き合うはありえないからね。葉月。ま、二人で遊びに行くぐらいなら許可するよ」

 「うぉお、マジ!? やべぇ、それデートって奴? 喜んでやるよ!」

 葉月の事はそういう対象には見れないけど、普通に友人としては好きだから別に頑張ってくれるなら出かけるぐらい構わない。

 「佐原理人、俺様には!?」

 「会長キモイです。そして何で俺が会長に何かしてやらなきゃいけないんですか」

 「はは、いい気味だな。東宮! 理人はお前より俺のが好きなんだ」

 ……何か言いだした会長に、得意げに笑う葉月。

 会長って、多分俺より弱いはずだし(強さを考えてみると)、そんな会長が葉月以上の働き出来るとはとてもじゃないけど俺は思えない。

 「理人はもてもてだな」

 「んー、そんなにモテテも困るだけだよ、当麻君」

 俺はそう言って、当麻君に向かって苦笑する。

 「りー兄! 『ブレイク』の総長って、噂がひどいんだから、付き合ったら嫌だよ!」

 「安心して都。あんな会長とは死んでも付き合わないから」

 そんな会話をしているうちに―――――『龍虎』のメンバー達が姿を現した。

 「ふふ、最後の仕上げをしようか」







 *香川操side





 「あー、『銀猫』!!」

 俺は、『クラッシュ』と『ブレイク』のメンバー達が居る前へと仲間達と共に躍り出た。

 仲間の中には、『クラッシュ』と『ブレイク』を同時に相手にするなんて無理です! なんていう奴もいたけど。俺達は無敵なんだ!

 俺達が力を合わせれば、誰にだって勝てるんだ。

 だって俺たちは仲間なんだから! 俺たちは絆で溢れてる。

 「……」

 『銀猫』はちらりとこっちを見て、ため息を吐く。

 「それに、隗も、螢も、ひどい! 俺の仲間にどうこうしようなんて」

 「……とりあえず、害虫黙れ」

 「が、害虫って何だよ! 今まで俺と仲良くしてくれてたのに」

 「あー、あれ演技だから」

 「なっ、親友に嘘はいちゃいけないんだぞ!」

 「親友じゃねぇし、喋りかけるな汚物」

 …害虫に汚物って、俺にそんな事言うなんて!

 今まで俺と仲良くしてくれていたはずなのにっ。

 何で、何で、なんで!!!!

 「やっぱり、俺が悪い奴は倒してやんなきゃっ」

 そう言って、俺は叫ぶ。

 「皆、こいつらは悪い奴なんだ。やるぞおお!」

 俺がそう言えば、皆が答えてくれる。

 ああ、皆大好きだ!

 俺の誇れる大事な仲間達なんだ。

 きっとこの仲間って存在は永遠で…、俺たちは、俺たちは――――。

 そんな中で、一つの声が響いた。

 『あー、盛り上がってる所悪いけど、『龍虎』の皆さん、君らに選択肢を与える』

 どこかで聞いたことがあるような声が、そんなことをいった。





 *渕上隗side



 理人が、メガホンを手に、『龍虎』のメンバーに声をかけ始めた。

 …あ、ちなみに俺が『ブレイク』の奴らに素見せたのはじめてだから後ろで奴らが動揺しているが、それはもう、無視だ。

 『とりあえず、香川操――『龍姫』と一緒につぶれていいって人どれくらいいる?』

 そうやって、楽しそうに笑う理人。

 …本当考える事が理人らしい。

 そして、理人は本当面白い奴。

 だから、理人は俺のお気に入りなんだ。

 「な、なんだよ! お前」

 害虫が何か喚いてる。

 今の害虫の姿はさらさらの金髪に、可愛らしい顔立ち。

 愛されし、『龍姫』なんだけど。

 正直気持ち悪いと俺は思う。てか絶対、螢のが可愛い。

 『『龍姫』の味方するってなら、仲良く閉鎖的な生活送ってもらうよ、二度と家族にも友達にも会えない。

 ……俺の用意したある場所で、君らはずっと暮らす事になる。

 ところで、『龍姫』は仲間さえいればそれで幸せ?』

 「当たり前だろう! 俺を愛してくれる皆が居てくれればしあわせだ!」

 『じゃあ、自分を傷つける人が誰もいなくて愛してくれる人が居るなら幸せなの?』

 「当たり前だろ!!」

 そう答える、害虫。害虫の言葉に理人がニヤリと笑ったのが見える。

 『そっか。

ねぇ、『龍姫』。じゃあさ、『クラッシュ』と『ブレイク』に『龍虎』が負けたら……。

 海外のある別荘に一生居てもらう。君の大好きな仲間と共にね。君を傷つける人は誰も入ってこない。もちろん、衣食住は保障する。

 それで、どう?』

 …要するにだ、『龍虎』が負けたら、一生害虫が外に出ないように、害虫を好きだという奴らと一緒に押し込めるのだ。

 『もちろん、君が望む人が、君と一緒に居たいと言うなら、そこに一緒に連れてってあげる』

 「いいぞ、俺たちは負けないからな!」

 自身満々にそういう、害虫。

 あーあ、害虫は本当に馬鹿。

 何、あの自信に満ちた瞳。自分たちは負けない。それに負けたとしても、自分を愛してくれる人がいるならいいんだって瞳。

 その承諾に対して、『龍虎』のメンバーが動揺しているのにも、気付かない何て、本当馬鹿。

 「…隗、本当に、操を、押し込めるの?」

 「そうだな。それが一番いいと思うけど。てかあの害虫別に押し込められてもいいって納得してるしな」

 螢の言葉に、俺はそう答える。あんな害虫の身を心配するなんて螢は可愛いなぁと思う。

 『それで、『龍虎』の中で、負けて『龍姫』と一緒に海外にいって、今までの人生捨てたくないって人居る?

 居るなら、今すぐうせな。

 失せないなら、本当に押し込めるよ?

 二度と家族にも友人にも会えない、外には出れない。そんな生活嫌だろ?』

 そう言って笑う、理人に本当いい性格してる、と俺はただ思う。

 その容赦のなさには、正直俺はすっきりする。

 螢は優しいから、少し困惑したような表情浮かべているけど。

 『嘘だと思う? 思うなら残れば?

 ただし、俺は本気だよ? 俺には一応それだけ出来る力がある。後悔しても、知らないよ?』

 動揺していく、『龍虎』のメンバー。

 どこか青ざめている彼らは、きっと今にも逃げ出したいと願ってる。

 『ほら、逃げなよ。これが、最後のチャンスだよ?

 あ、あと10秒以内に決めてね。

 じゃあ、カウントするよ?』

 理人は宣言して、カウントダウンを始めた。

 『10、9……』

 それと同時に慌てたように動きだす、『龍虎』のメンバー達が居る。

 『8、7……』

 「ちょっと待って! 俺たちは勝てるのに何で逃げ――」

 「総長! だってあいつの目本気です」

 「俺は総長好きですけど、でもっ、嫌です!」

 そうだよな、所詮、その程度なんだ。

 害虫に対する、『龍虎』の連中の愛は、所詮、家族たちより強いものではない。

 そもそも、害虫は誰にでも浅い関係なんだ。簡単で単純な、友情関係……。

 『6,5,4……』

 理人はカウントをしながら、楽しそうに口元を緩めている。

 『3,2,1……はい、終了!

 ふーん、残ったのは、『龍姫』と幹部だけか。

 はは、人望ないねぇ、『龍姫』

 …そうして残ったのは、害虫と幹部達だけだった。





 *龍宮理人side


 『五人かぁ、ふふ、じゃあ一体一でもやろうか?』

 俺はそう言って笑う。

 『そうだね。こっちからは、葉月と俺と、会長と、隗と当真君で!!』

 さーって、頑張りますか!

 ちなみに、向こうもそれを了承した。

 一対一ならまだ勝てるかもしれない、とでも思ってるらしい。

 俺が、勝てる可能性を1パーセントでも与えてると思ったのかね?

 はは、んなわけないよね。そもそも俺は勝てる潰しをしてるわけだし。

 ちなみに、葉月vs律、俺vs毛玉君、隗vs銀也(幹部)、会長vs時夫(幹部)、当真vs一郎(幹部)で、やる事になった。

 やっぱり、俺が毛玉君やらなきゃだよね!

 まずは、当真君が戦う事になった。

 「かかってこいよ」

 「……」

 一郎――『龍虎』の幹部の坊主頭君は、ごくりっと息をのんで、当真君へと向かっていく。

 …坊主頭君は、当真君の実力わかってるから、当たって砕けろ状態なのかもしれない。

 当真君って実力的に言えば、あの高迫律より強いはずだから。

 坊主頭君の拳は、当真君によって交わされる。

 そして当真君は拳を握り、坊主頭君の腹へとそれは直撃した。

 「――――おっ」

 そんな声をあげて、膝をつく、坊主頭君。

 そんな坊主頭君に向かって、当真君は再度、蹴りをかまし、そうして、坊主頭君は、意識を手放し、倒れた。

 やっぱり、当真君は圧倒的だなと俺は思う。

 「流石、当真君だねぇ。

 さて、次は会長ですよ。あ。負けても他で勝つつもりですから、安心してくださいね?」

 「俺様はまけねぇえ!」

 俺の中で負ける可能性があるのは、会長だけだからね。

 隗は何か強そうだし、俺は毛玉君には勝てるだろうし、葉月は多分大丈夫だし。

 そうして、次は、会長が時夫―――ツンツン頭の男、と戦う事になる。

 「ふっ、俺様は『ブレイク』の総長だ。お前何かには負けねぇ」

 「…この一対一で勝てる可能性があるのは俺が一番高いと思う」

 「なっ…」

 「いや。だってあんた馬鹿そう」

 「…貴様っ」

 そう言って会長は怒りをあらわにして、ツンツン君に殴りかかる。

 んー、相変わらず貴様って時代劇かなんかにでも出てるつもりなのかな?

 何か馬鹿っぽいよね!

 おー、会長がアッパーをかまそうとしている。

 お、避けられてるし、流石会長、ダサいな。

 お、今度の蹴りはあたった!

 だけど、浅いな。流石会長、ダサい。

 んー、会長弱くないはずで、実際喧嘩見てて強いと思うんだが、何だかかっこよく見えない。

 まぁ、会長かっこいいって思うなんて目が死んでるよね。

 なんとか会長は勝利した。

 「ふっ、俺様に勝とうなんて百年甘い」

 そんな事をいいながら、偉そうに会長はこちらに向かってきて、

 「佐原理人! 勝ったぞ!」

 ほめてほしそうに会長はやってきた。正直気持ち悪い。

 「勝てなかったら馬鹿にしてた所ですよ?

 毛玉信者に勝てないとか終わってますからね。

 第一攻撃避けられたり浅かったりダサイです。

 そしてそのほめてほしそうな目されても気持ち悪いのでやめてください」

 そう言えば、会長は落ち込んだような表情をした。

 うーん、気持ち悪い。

 そもそも俺様とか貴様とか何言ってんだろうね、この会長。

 とりあえず落ち込んだ会長を俺は放置して、隗に向かって笑う。

 「隗頑張りな。そして、勝ってよね?」

 「ああ。それにしても、本気で戦えるとか、楽しみだ」

 あー、隗って、渕上弟にあわせて喧嘩も弱く見せてたんだっけ。

 本当よく、演技するよね。隗は。

 とりあえず、隗は親友だし、ちゃんと応援してやらなきゃ!

 それにしても、楽しみだな! 隗の本気って!

 そう思ったらどうしようもなく胸がわくわくしてきた。

 隗は、面白そうに笑って、銀髪の男――銀也を見る。

 銀髪君は隗をただ冷たく見つめていた。

 銀髪君に向かって、隗は動き出す。

 素早いスピードで、銀髪君に向かっていく。

 おー、隗足速いな。今度隗と競争してみたら楽しそうだ。

 「――っ」

 隗の拳が、銀髪君に直撃して、銀髪君はうめき声を上げる。

 おー、流石隗。

 かっこいーね。なんて思いながら隗を見る。

 本当、隗って強さ隠してたらしいけど、強いなぁと思う。

 てか、何か圧倒的に喧嘩してるんだが、今まで強さ抑えてたから思いっきりやれて楽しいのかもしれない。

 ボコッ、バキッ――という打撃音が続く。

 そして、銀髪君弱いなぁ。

 隗に案だけ一方的にやられるとか…。

 なんて思いながら俺は隗の喧嘩を見ていた。

 そしてそんな俺の隣で会長はブツブツいっていた。

 「か、隗の奴、あんなに強かったのか……」

 …なんてショックを受けたように呟いている会長。

 会長と隗ってどっちが強いんだろうと、俺はただ考える。

 だって、会長はダサイしな。

 てか、隗が会長より強い方が面白いと思う。

 そんな事を考えていれば、隗が、喧嘩から戻ってきた。

 すっきりしたような表情の隗。そんな隗に向かって俺は笑いかける。

 「隗、かっこいーね、流石!」

 「それにしても楽しかった…。思いっきり暴れるって楽しいな」

 「だね! 今度暇なら憂さ晴らしに喧嘩する?俺と一緒に」

 「あー、それ楽しそう。

 てか、次理人だろ」

 「うん、俺頑張ってくる!」

 ―――そして、俺は毛玉君と向かい合った。

 あー、わくわくする。思いっきり毛玉君ぶちのめして、オッケーなんだよね。

 ふふ、てか、俺の声聞いても俺って気付かない毛玉君って、馬鹿だよねぇ?

 「ねぇ、『龍姫』。五人だけで、別荘行くの? 他に連れていきたい人居る?」

 『龍虎』が負ける前提の話を俺は毛玉君に向かってする。

 「お前が、お前が変な事言うから、俺の仲間が…」

 「俺のせいじゃないと思うな。

 『龍姫』と一緒に閉鎖的な海外の別荘に居るの嫌だったんだよ。きっと。

で、連れていきたい人っている?」

 「『銀猫』と…母さん達!」

 「あー、『銀猫』は『龍姫』と一緒嫌みたいだよ? それに君の両親は君を見捨てたよ?」

 俺はさらっとそう言って、毛玉君をさらに絶望に追い込みたくて、言葉を放つ。

 んー、俺って性格悪いのかな? 何だか毛玉君が絶望に追い込まれるの滅茶苦茶楽しいんだけど。

 毛玉君の表情は、俺の言葉に歪んだ。

 そして、毛玉君は言う。

 「そんなわけない! 俺は愛されてるんだ! 母さんたちは俺が大好きなんだ」

 「んー、でも何を捨ててでも『龍姫』と一緒に居たいわけじゃなさそうだよ?

 ふふ、まあ後で別荘に押し込んでか連絡とらせてあげる」

 それで、原口さん夫婦に、毛玉君何か知らないって言わせるのも楽しいかもしれない。

 「じゃあ、はじめよっか」

 「ああ、俺は負けない!」

 何処からその自信が来るのか、本当に毛玉君は謎。

 第一、『龍虎』の総長って立場は半分お飾りのはずだし。

 俺、毛玉君に負けたくないし。てか、負けるつもりない。

 そうして、俺は動き出した。

 拳を握り、蹴りを入れる。

 とはいっても、一発で気絶なんてやわな事にはしてやらない。

 わざと、浅く攻撃して、じわじわと痛みを感じさせる。

 毛玉君の顔が、苦痛に歪んでる。

 「俺が、俺がこんなわけ…」

 ボロボロになりながら、言う、毛玉君。本当、お飾り総長なんだよね、毛玉君って。

 そこそこの強さしか持っていない、お飾り。

 ボロボロの毛玉君に俺は笑っていってやる。

 「君は、弱いんだよ」

 俺はそう言って、拳を握って、毛玉君に向かって、拳を振り下ろした。

 ―――そうして、毛玉君は気絶した。

 それを見届けて、元の場所に戻り、葉月に告げる。

 「さぁて、葉月、ぶっ潰してきてね」

 「ああ! 俺やってくる!」

 俺が二人っきりで出かけてやるといったおかげか、妙に葉月がやる気で、思わず苦笑してしまう。

 本当、俺は葉月を好きになる気なんて全くないんだから、他の女か、男にでも目を向ければいいのにってそう思ってしまう。

 葉月はもてるし、他に目を向ければ、葉月はきっと幸せになれるんだろうけどってそう思う。

 葉月の気持ちにこたえる気はないから、俺は徹底的に葉月の告白を拒否する。

だって、変に気を持たせるより断然そっちの方がいいから。

 葉月の背中を見つめる。

 葉月は、高迫律と向かい合っていた。

 ……頑張りなよ、葉月。

 俺はその様子を見ながら、心の中でそう思うのであった。

 葉月は、高迫律に向かって拳を向ける。

 高迫律は、それを避ける。

 攻防が続く。

 互いに力強く、舞う、彼ら。

 ――『クラッシュ』での№1の強さを誇る葉月と、『龍虎』での№1の強さを誇る高迫律。 

 高迫律には、俺だって勝てない。

 彼は、葉月同様、まぎれもない強者なのだ。

 バキッ、ボコッ――と打撃音が響く。

 だけど、互いに倒れはしない。

 その喧嘩は、とてもじゃないけど、俺たちじゃ割り込めない強さがあった。

 本当、葉月も、高迫律も強い。

 そんな攻防が、しばらく続き、

 ―――ボコッ

 と、葉月の拳が、モロに高迫律の体へと直撃した。

 今までは浅くかすれる程度だったが、今回は深く、深く、拳が突き刺さる。

 「――っ」

 うめき声をあげながら、どうにか立ち上がろうとする、高迫律。

 ……そうして、葉月に向かって行こうとする。

 その拳は、葉月に止められ、そうして、葉月は、アッパーを繰り出す。

 それと同時に葉月へと拳を入れた高迫律は流石だと思う。

 互いの攻撃に、互いが宙を舞う。

 「…うぅ」

 高迫律は、うめき声をあげながら、立ち上がれない。

 葉月は、どうにか、体を起こし、立ち上がると、高迫律へと近づく。

 「俺の勝ちだろ?」

 それに対し、高迫律は、力なく倒れたまま、頷いたのだった。

 「おー、流石葉月、やるね」

 俺はそう言いながら、高迫律と、葉月へと近づく。

 ちなみに、気絶した残りの敗者の四人はというと、渉兄に回してもらっていた車に縄で縛って、押し込んでもらったよ。

 『クラッシュ』のメンバーに頼んだら、やってくれたんだ。

 「高迫律―――、俺は本気で押し込むつもりだよ。

 それで、これを渡しておくよ」

 俺はそう言って一枚の紙を高迫律へと、渡す。

 「もし、閉鎖的な生活が嫌になったら、連絡しなよ。一度だけ、チャンスを上げる。

 本当にあの、『龍姫』に愛想を尽きたら、連絡しなよ

 一度だけ出るチャンスをあげる。

 でも、ごめんね? 『龍姫』は、そうしてあげる気にはならないんだ」

 高迫律は倒れたまま、頷く。

 そうして、俺と葉月で、高迫律を車まで運んだ。






 *高迫律side





 車の中に、俺らは押し込められていた。

 あの、男は本気だろう。

 俺らを本気で、監禁にも似た形にするつもりだろう。

 …縄で縛られながら、それを思う。

 操…、俺の一番大事な人。

 そうして、どこかおかしかった人。

 いつか、操が痛い目に会う事、俺は知っていた。

 …操が一番で、操のために何かしてやりたいと思って、何でもやった。

 それは、俺が何が何でも、操の傍に居たかったからだ。

 俺は、操のためなら何でもして、

 操が痛い目見るなら、俺も一緒に痛い目を見てやろうって、そう決めてた。

 まさか、監禁にも似た事をするほどまでの奴が操を潰そうとするとは思っていなかったけど。

 ……いいんだ、俺は。

 閉鎖的な空間だろうと、海外だろうと、外に出れないだろうと、二度と家族に会えないだろうと。

 それでも、俺は、操が傍に居るならいいんだ。

 そう、姉に言ったら、おかしいって言われた。あんたはおかしいって。

 でも、おかしくたって、狂ってたって、別に俺はいい。

 操の傍に居たい。

 せめて、俺だけは、あの男に連絡して外に出るなんてしない。

 他の奴らがどうするかは、わからないけど、俺は操と一緒に居たい。

 ……ああ、操に捕らわれた俺は、操から離れる事をしたくない。

 ――――操が、閉じ込められた先で、退屈しないように、俺が操を笑わせてあげよう。

 操は、『銀猫』ともう一人、好きな奴がいたらしいけど。

 …そんな日常で、操が、俺を好きになってくれればいいのに。

 そしたら俺は『銀猫』と違って操を幸せにしてやれるのに。

 俺は、ただそんな事を考えていた―――。



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