【53】推理――犯人は誰? その2
【第53話に役立つ登場人物情報】
スピア:歌劇「ロミオ王子と鏡のジュリエット王女」のジュリエット役 主演女優
ミカ:古の魔道具の手鏡により、老婆に変えられてしまった女優。元の姿に戻るため、偉大なる魔術師リンダと共にトゥステリア王国へ身を寄せる。
クララ:ミカの代役。悪しき悪戯入りのクッキーで眠らされ、フェリカが白竜の鱗で目覚めさせた。ミカの代役を千秋楽も務めることに。
「お嬢は、パーティの事件もクイーンの仕業だと言いたいんだな?」
私はブロディンに頷いた。
アメリはツインテールと眉を跳ね上げながら、私に反対する。
「でもクイーンは劇場でのことですよねぇ? 昨日、街で私たちの馬車が襲われたとき、私がクイーンの仕業かもって言ったら、フェリカ様、違うって言ったじゃないですかぁ!」
それを聞いてアクティスが慌てた。
「ええっ!? 昨夜、襲われたのかい?」
「強盗にね」
と私。
「馬車の硝子窓が粉々になって、大変だったんですよぉ」
とアメリも付け加える。
「確かにアルマンの治安は悪いけどさ、こんなにしょっちゅうはさすがに……。フェリカ、何も言ってくれなかったね」
「だって心配させちゃうでしょう?」
アクティスはぶすっとすると、溜息混じりに文句を言う。
「そういうことは話してよ? ね?」
「なぁお嬢、今夜の事件はクイーンじゃあ無いと俺も思う。クイーンは今まで魔術は使ってなかったぞ?」
ジオツキーも言葉を重ねた。
「ええ、歌劇場では『悪しき悪戯』と『古の魔道具』でしたね」
「そうね。もし魔術が使えるなら、歌劇場でも使ったはずよね?」
「ねえフェリカ、なんにせよ、君は気をつけたほうがいいかも。千秋楽にも僕のファンはたくさん来るしさ、今度は劇場で狙われるかもしれないよ?」
「ブロディンとジオツキーがいるから大丈夫だとは思うけど、そういうアクティスこそ気を付けて? スピアやクララやミカだけでなく、クイーンがあなたをターゲットにするかもしれないわよ?」
それを真っ向から否定したのは、ジオツキーだった。
「狙われませんよ。アクティス殿下は狙われません」
アクティスはその発言にギョッとして飛び上がった。
「ちょ、ちょっとまって、ジオツキー!? 狙われないのはいいんだけど、ア、アクティス殿下って……あなたまで僕をそう呼ぶの? さすがに抵抗あるんだけどさ?」
ジオツキーは珍しく曇った顔をする。
「困るんですよ、あなたは伯爵家の嫡男ですから、我々の身分からは『レジェ―ロ伯ご子息』とお呼びするところ、今は諸事情でそうも呼べない。だからと言ってファーストネームのままお呼びするわけにもいかない。ですから、アクティス殿下と呼ぶことにしました」
ブロディンはジオツキーの説明にぽんと手を打って、うんうんと頷いている。
「確かにそうだな。それしかない!」
「わぁ、いい呼び方だと思いますよぉ! それにしても、よく今までお名前を呼ばずに済みましたねえ?」
困り果てるアクティスの隣で、アメリは両手を挙げてはしゃぐ。
まあ確かに呼び方はその辺りが妥協点よね、と私も思ったのでうんうんと頷いておいたわ。
アクティスは何か言いたそうだったけど、私たちの様子から仕方なく諦めたようだった。
「それでジオツキー、どうしてアクティスが狙われないって思うの?」
私はさっき、きっぱりと否定したジオツキーに尋ねたわ。
「もしクイーンが歌劇そのものを妨害したいと思っていたら、最初にアクティス殿下に白羽の矢を立てたでしょう。でも彼には今までカードが贈られていません。これがどういうことかわかりますか? クイーンの目的は違うところにあるのです」
「その目的ってなんだ?」
ブロディンが無精ひげをさすりながらジオツキーに問う。
「今までカードを贈られたのは、ロミオ王子をかどわかそうとする役を演じたミカとクララ、そして相手役ジュリエット王女のスピアです」
ジオツキーはテーブルに、あの赤いインクでクイーンと書かれているカードを置いた。
一つはクララのクッキーに入っていたカード、もう一つはスピアの楽屋ドアに挟まっていたカードだったわ。ミカのカードは、楽屋に再び戻ったときにはもう無かったと言ってたわね。
「このカードはアクティス殿下のカードです」
「ええっ? ジオツキー、殿下がクイーンだって言いたいのぉ?」
呆れるアメリに、ジオツキーが眉間を寄せる。
私もジオツキーの言ってること、わからないわ。一体何を言ってるのかしら?
「違いますよ。このカード、アメリが買ってきたスイーツと同じ仕組みです。わかりませんか?」
アメリも、私も、ブロディンもぽかんとする中で、アクティスが言った。
「そのカードは、僕のカード。正確にいうと、僕の推し色カード……白く見えるけれど実は緑色なんだよ」
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次回【第54話】推理――犯人は誰? その3













