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55話 なつかしいひとたちに再会しました

「受付嬢さん?」

「はい、お待たせしました」

「いや、待ってはいませんでしたけど・・・・・・」


 王都の隣町、タイレムのギルド。彼女はそこの受付嬢、そのひとだ。


「こちらのギルドのお手伝いの要請がきまして、それでわたしが来たってわけなんです」


 胸に手を当てて、彼女は言う。


「おう、お主か。早速すまんのう」

「大丈夫でしたか、オーウェンさん。って、全然大丈夫そうじゃないですね」


 とことことベッドに寄って、彼女はオーウェンを見舞った。


「それで、今日はオーウェンさんに会いに来たの?」

「それもありますけど・・・・・・ロッカさんがこちらにいるって聞いたので」

「俺に会いに?」


 なんでまた、と聞く俺に、受付嬢が答える。


「こう見えて、わたし、みなさんを引率してきたんですよ」

「みんな?」

「そしたら、みささんがロッカさんに会っておきたいって」


 誰のことだろう。俺には心当たりがなかった。


「さすがに、病室にはいるのは邪魔だと思って、みなさん外で待ってもらっているのです」

「そう、なんだ」


 うぉほん、とオーウェンが咳払いした。


「タイレムのギルドには、ギルド人員の補充だけでなく、戦力としての冒険者の勧誘もお願いしていての。その者たちのことじゃろう」


 なるほど。と俺は思う。

 けれども、その人たちが俺に会いたいというのはなぜだろう。


「それよりも、じゃな。受付嬢くん。ちょいとこの縄をほどいてはくれんじゃろか。そろそろ、この老体には堪えて堪えてたまらんのじゃが」


 オーウェンがちらちらと受付嬢の方を見ながら言った。


「あはは、それは無理ですよぅ」


 ね?と彼女が見た先で、看護師が大きくうなずいて、それからオーウェンのほうへ歩み寄る。


「オーウェンさん。元気が有り余っているようなのは結構ですけれど、そろそろおねむの時間ですよ。怪我人はきちんと寝るのもお仕事のうちなんですから」

「この儂を老人あつかいするでない!これ、やめんか」


「お邪魔みたいだし、いこっか」

「そうですね」


 俺たちはそろって病室を出ることにした。


―――――――――


「おお、ロッカくん」

「ロッカさん、お久しぶりです」

「ロッカ」

「ロッカ先輩」


 病院から外に出ると、おれはたちまち冒険者たちに囲まれた。

 オーウェンによればタイレムギルドをホームにしている冒険者ということだ。

 そう言われてみれば、見知った顔が多くいる。


「ロッカくん、早速で悪いのだが」


 一人の男が歩みでた。見覚えのある冒険者だ。

 確か、どくトカゲ事件の時に仲間が取り残されて、ダンジョンの外で一悶着あったベテランの冒険者だったか。

 一団の中では最も経験があり、冒険者ランクもC級と相応のものをもっている。


「今回の件について、詳しい話を聞かせてはもらえないだろうか。我々の全員がギルドからの依頼と、伝聞以上のものを知らないのだ」

「わたしからもお願いします。思ったよりも被害が大きいみたいですけれど」


 俺はうなずいた。


「わかりました。ここではなんなので、移動しながらでいいですか?」


 皆が一斉にうなずいた。


―――――――――


「なんと、そんなことになっていたのか」


 冒険者たちはそれぞれに顔を見合わせる。

 アドルフのことは避けつつも、おおむねのことは話し終えた。


「それで、皆さんにはここまで来てもらって悪いんですけれど、もう一度タイレム近くのダンジョンに攻め込もうって話なんです」

「なるほどな。それで、計画はどうなっているのかね?」

「それは、オーウェンさんか、ここのギルドのえらいひとに聞いてみないと」

「うーん」


 ここで、受付嬢が首をかしげた。


「実は、ここに来る前にこちらのギルドに寄ってきたんですけど、戦闘ができるえらいひとはほとんどダウンしちゃってるみたいですよ?オーウェンさんもあの調子ですし」

「じゃあ、あなたが指揮を?」


 言われた冒険者はむ、と言葉につまった。


「確かに、私はこの中では一番の高ランクではあるが・・・・・・それをいったらロッカ君のところのリンネさんのほうが適任ということになるのでは?」


 リンネはB級だから、たしかにランクだけで言えば、彼女が最高位ということになるのかもしれない。

 けれども、彼女が指揮を執る、という姿はなかなか思い浮かばなかった。


「彼女は、そういうのに向いているとはおもえないですね。だからやっぱり、あなたのほうがふさわしいとおもいますけど」

「そうかな。私はむしろ、君に指揮をとって欲しいんだが」

「俺が?それこそ無理ですよ」


 俺は大きく首を振った。


「今回の作戦の要はタロくんと、それからロッカ君だと聞いている。ならばやはり、君がやるべきだと私はおもうがね」

「そうだぜ。ロッカの言うことになら、従えるってもんだ」

「ロッカ先輩なら大丈夫ですいけますよ」


 ドラゴン騒ぎのときに知り合った冒険者が続ける。

 それから最後の一人は、誰だろう。


「会うのは初めてですけど、ロッカ先輩の話しはたくさん聞かせてもらってます。あとでサインください」

「このように、君を慕っている者もいるんだ。上に立つ資質は、充分にあるんじゃないかね?」


 俺はむむ、と考えた。

 確かに、作戦上彼らにはタロのつゆ払いをしてもらわなければならないだろう。

 それにアドルフのこともある。俺が指揮をとれば、そのあたりもどさくさにまぎれられるかもしれない。


「そうですね。あくまでオーウェンさんや、こちらのギルドの許可をとってからになりますけれど、俺の指示が嫌でなければ・・・・・・」

 

 皆がいっせいにうなずいた。

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