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馬面彼女~チェンジ可能!~  作者: 蛇真谷 駿一


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6/62

6 Hちゃん

年が明けてめでたいので、やっぱり5日くらいまで連続更新します。

(命を縮める作業)


「………………きゃー!!」


 ベッドに横たわり、枕に顔をうずめ足をバタバタさせる。

 こんなわかりやすい、マンガみたいな行動を私自身がとるなんて夢にも思わなかった。


 でもしょうがない。これはしょうがない。


 だって、だって――。

「告白、成功しちゃった…………っ!!」


 私は今日の朝の出来事を思い出し、また胸を高鳴らせる。


 ――『よろしくお願いします』――。


「にゃー!!」

 再びベッドでゴロゴロ転がる私。


 勢いで告白したこともあり、朝のうちは実感がわかなかったが、どんどん朝の出来事を自覚していって、放課後には有頂天だった。


 おかげで今日の部活では今までで一番のタイムが出せた。

 すごく集中していたと顧問の先生や部長に褒められもした。


 正直全然、まったくもって部活に集中なんてしてなかったけども。

 一切部活の事は頭になかったけども。

 習慣で部に来て走ってただけで、ずっと朝の事を考えてたけども。


 今もその時の事を思い出し、今日の朝、奇跡的に鞄の中にあった《超高性能馬面――快頭爛馬(かいとうらんま)》を手に取る。


「うーん、思い出せば出すほど、このお面があってよかった……」


 ちょうど昨日の夜に届いた新発売のお面《快頭爛馬》。

 どんなに激しく動いてもぶれない安心設計に通気性抜群の面内、それでいて視界の広さも両立したよくばり商品だ。


 ――大量生産できない限定品だったから入手には苦労したんだよね……。


 お面収集家の間でも評価が高いこのお面を、ぜひ皆にも見てもらおうと鞄に入れていた。

「前に持って行ったカメラ映りのいい馬面《カメラ馬笑(ばえ)》は反応があんまり良くなかったから、持って行ったけど、まさかあんなところで役に立つとは……」


 ともかく、今日私に彼氏が出来た。

 ということは、今後色々と恋人っぽい事をしていくに違いない。


「…………で、でーと、とかするのかな……」


 いやでも、今は部活が忙しいから難しいかな。

 でもちゃんとデートはしてみたい。


「うーん…………と、とりあえず、連絡、してみようかな!」

 そう、決意を込めてわざわざ発言して、携帯を取り出す。


 なぜだろう、普通に友達とかに連絡するときは全然気にしないのに、今は妙に緊張する。

 恐る恐る《DOOR》を起動する。


 ――鹿島くんのユーザーネームは『大鹿』かぁ……私のユーザーネームの『SIHK』と同じで名前からもじってるんだね。


 私は『()くら() ()()』だからね。


「………………よし。えと『こんばんは、夜にごめんなさい。鹿島くんと少しお話したくて』……と。……ちょ、ちょっとあざとすぎたかな……」


 ――カチャ♪


「あ、よかったちょうど携帯使ってる時だったんだ……んと『ううん、さっそく連絡ありがとう。嬉しい。本当はこっちから連絡しようかと思ったけど、妙に照れくさくて(笑)』……~~~~っ!!」


 返事が来ただけで嬉しすぎるのに、内容で悶える。

 とにかく返事をしなければ。




「ふふふ、もう……鹿島くんてば……はっ」


 しばらく時間を忘れて《DOOR》をやっていたが、気が付くと四十分以上連続でやりとりをしていた。

「……む、これは流石に話し込み過ぎかな……ログの量が一日分じゃないや……あんまりやりすぎると迷惑だし、そろそろ終わらなきゃ」


 しかしそう思うと、中々終わらせるのは名残惜しく、少しだけ戸惑ってしまう。


 もっとゆっくり話をしたい。

 そう考えたとき、明日は部活が休みだったことを思い出した。


「そういえばそんなこと言ってた気がする……恋人っぽい事……定番なのは一緒に帰ったり、かなぁ……」

 少しだけ躊躇った後、聞いてみることにした。




SIHK:あの、ね? もし、出来ればでいいんだけど! 明日、一緒に帰れないかな? 

私明日部活休みで……


SIHK:鹿島くんが忙しいって言うのは聞いたから、無理にとは言えないんだけど


大鹿:かまわないよ? 誰から聞いたかわからないけど、別にいつも忙しいわけじゃないからね?


大鹿:習慣で早く帰る癖がついてるけどさ


SIHK:そうなんだ……! じゃあ、明日学校終わり一緒に帰ろ! 私鹿島くんともっと話したいから……


大鹿:わかった! 楽しみにしてる。……と、そろそろ遅いし、終わりにしようか。……名残惜しいけど



 ――か、鹿島くんも同じこと考えてる……!



SHIK:うん……じゃあ、また明日


大鹿:また明日ね。あーっとその、もう一個聞きたいことが


SIHK:? なになに? 鹿島くんの質問は今ならなんでもこたえちゃいます(笑)』



 聞きたいことってなんだろうと、思いながら返信する。

「あ」

 返信したところで、ちょっと責めすぎた返しだったかと若干焦った。



大鹿:……いや、やっぱり明日会った時に話したいかな? それじゃあ、おやすみ



「………………これいい……! 会ったときに話したいって感じも、おやすみってやりとりも……なんかいい!!」



SIHK:わかった。……その、おやすみなさい!



 最後に私がメッセージを出して、アプリを閉じる。


「…………………………わー!」


 改めて、今自分は恋人とメッセージのやりとりをしていたと考えて、三度ベッドで悶えた。


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