58 Hちゃん
これでやっと十万文字。
終盤で十万文字なのは割と想定通りに書けてる気がします。
「んん……それにしても、まさか姫まで覗いてたなんて思いもしなかった」
「ご、ごめんね……? あの時は本当に偶然……って、私まで?」
「……そ、あの時もう一人覗き見してたの。……今まさに同じように覗いているそこの馬鹿がね!」
「……な、なんのことかなぁ!? いや、偶然、偶然今まさにこの場所に来たんだけど、何かあったのぉ!?」
「え、英玲奈!?」
角からわざとらしく汗を拭きながら現れた英玲奈を美琴はジト目で睨む。
「だったらもっとうまく隠れてもらえる? あの時もそうだったけど、さっきなんて乗り出してこっち見てたから顔丸見えだったんだけど」
「ぎくぅ!」
そうだったんだ、私の背中側にいたみたいだから全然気づかなかったや。
後、口でぎくっていう人初めて見た。
「英玲奈……私が言うのもなんだけど、覗きはよくないよ?」
「そ、そんな当たり前のことを諭すように……で、でも今日は共犯もいるもんね!」
その言葉に、ばつの悪そうに出てきたのは、小毬ちゃん。
まあこの流れだったらそうかなとは思いました。
「ごめんねぇ」
「いいよいいよ」
「どうせ英玲奈に巻き込まれたんでしょ?」
「私との対応の差っ!!」
「日頃の」「行い」「です」
「私そんなにひどいかなぁ……!」
泣き真似を始めた英玲奈をうるさいからと言って美琴が連れていく。
――あはは……なにしてるのさ……。
二人で連れてかれる英玲奈を眺めた後、小毬ちゃんは少しバツの悪そうな顔をしながら、話し始めた。
「まあでも、その……今覗いてたのは、英玲奈ちゃんに誘われたのもあるけど、私自身気になってたところもあって……その色々の原因と言いますか余計な手を出したといいますか……」
小毬ちゃんの言葉に美琴から聞いたことを思い出す。
「あ! そうだった、小毬ちゃんは大我くんがお面の下を知らなかったこと気づいてたんだよね! どうしてか聞いてもいい?」
「あ……美琴ちゃんに聞いてたんだね……えと、そのぉ偶然ではあるんだけど、エースさんが姫ちゃんに申し訳ないみたいな事呟いてるのを聞いちゃって、そこから色々と繋ぎ合わせて……かな。なんか姫ちゃんの話とエースさんの呟きと噛み合ってない気がして」
「あ、あの時の質問! ……そっかぁ……小毬ちゃん探偵さんみたいだねぇ」
「……………………え、そ、それだけ?」
「え、他にももっと褒めたほうがいい?」
「そうじゃなくて! 私そのことに真っ先に気づいたのに姫ちゃんには伝えず、美琴ちゃんにだけ伝えて変に引っ掻き回したりしたし……怒ってるんじゃないかなって……」
「怒ってなんかないよ? 確かに教えてほしかった気持ちもなくはないけど、最終的にはちゃんと大我くんとしっかりお話しできたしね。結果オーライオーライ」
「えー……っと……私としてはそれなりにやらかしちゃったなってすごく反省してたんだけど……」
「そうなの? じゃもう反省はー終わり! いつもどーり!」
「………………」
小毬ちゃんは少しだけポカンとした後、プッと吹き出し、笑い出した。
「あはははははっ、もぉ……姫ちゃん強すぎない? そんな風に言われるなんて全然思ってなかった」
「ふっふーん、大我くんとよりを戻した私は、最強なのです!」
「ふふ、みたいだね………………よかったね」
「うん。……だから改めて言わせてもらうね? 小毬ちゃん」
「え?」
「あの時、私の背中を押してくれてありがとう。お陰で今私は強くいられるんだよ」
「姫ちゃん…………うん、応援した甲斐があったかな!」
「あー! もうなんか物語の終わりを迎えている気がする! 姫と毬ちゃんのイチャイチャストーリーの!」
「「そんなのやってない!!」」
突拍子もないことを唐突に言われたので反射的に二人でツッコミを入れる。
さっきの泣き真似はどこへやら、英玲奈が笑顔で戻ってきた。
一緒に戻ってきた美琴は無表情。
いや、何があったの。
「いつも通り私がボケ倒してみーこがツッコミを入れてたんだよ! みーこがイライラしだすまで!」
「なんでそんなことするの……?」
「みーこへの……愛、かな?」
「それで、二人の話は終わったの? なんか、小毬ちゃんは姫と話したそうだったけど」
「無視っ!」
「あ、やっぱり気を使ってくれたんだ……うん、お陰でちゃんと話せたよ」
「無視っ!」
立て続けに二人に無視された英玲奈は期待を込めて私を見る。
――その期待って、天丼への期待かな?
とりあえず笑顔を作っておいた。
「……とりあえず、無視はしないけど笑ってごまかしておこう的な? ねえ姫、反応に困るんだけど、無視するならきっちり無視して? 構ってくれるならちゃんと構って?」
「……(ニコッ)」
「ひめー!」
「さて、そろそろチャイムなるしもどろっか」
「そうだね」「うん」
「最近私へのちょっとイジりの比率多くなってない? おかしいなぁ、ちょっと前まで私がイジる側だったと思ったんだけど」
――だからあえてこっちからイジって英玲奈からイジられることを減らそうとしてるんだよ……それは言わないけど。
「そ、そうだ! 美琴に聞きたいことがもう一つだけあったんだ!」
教室に戻る途中、思い出したことがあって慌てて尋ねる
「なに?」
「あのね………………あの時のあの馬面、どうしたの!? 遠目からはっきりはわからなかったけど、構造的に快頭爛馬に近かったけど別のお面だよね!!」
「えぇ…………それ気にする……?」
するよ! 多分私持ってないやつだもん!!
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