56 T君
時間軸お戻りします。
姫との話が終わり、ある程度登校の人数が増えてきたので、互いに教室に戻ることになった。
クラスにつくともうすでに何人か教室にいて、その全員が声を揃えて、俺がこの時間に来るの珍しい! と驚かれてしまった。
この時間でも結構早めではあるんだけどな?
ちなみに今日教室入って一発目の挨拶は村木だった。
とりあえず席に着くと、すぐさま生島さんが寄ってくる。
「およよよ? カシカシ機嫌よさげね。なんかいい事あった?」
「ん? あーまあね」
「ふむふむ……ええ、わかりましたわかりました。当ててしんぜましょう」
額に指を当て、むむむむと唸る生島さんに苦笑いしつつ、とりあえず乗っかる。
「ほう? お手並み拝見」
「ずばり――彼女さんとイチャイチャしてたね?」
「うぉっふ」
まさかの所にまさかの人が直球を投げてきた。
「まあ櫻井さんは先週ずっとお休みしてたみたいだし、仕方ないかぁ」
「う……な……」
それも剛速球を。
慌てて周りを見渡し、誰も聞いていないことを確認した後、少し声を小さくして生島さんに話しかける。
「……え、な、なんで……」
「ほよ? だってカシカシ見たら恋人出来たのはすぐわかったし、その後に一緒にお面被ったこと帰ってたりしたから、付き合ってる相手はお面の子かなって思って」
「す、すぐ……? あいや、それより、その、なんでお面の子が……」
「櫻井さんかわかったって? ちょっと気になって聞いてみたのよー。ほら! カシカシにお面の事聞いた後、私他のクラスに遊びに行ったじゃない? その時。で、色んなクラスの友達にお面好きな女子いない? って聞いて、そしたら同じ部活の樅野ちゃんが櫻井さんお面趣味だって教えてくれたの」
「え、ええ……?」
確かにあの話の後、自由気ままに他の教室に遊びに行ったのは覚えてるけど、そんなことしてたの?
後、もう一つ気になることが。
「えっと……同じ部活って……生島さん、どこにも入ってないよね、確か……」
「そんなことないよ? 私は帰宅部なの」
「………………いや帰宅部って」
要するになんの部活にも入っていないと言う事では。
そんな風に思っているのだが、生島さん的にはそういう事ではないらしい。
「帰宅部は伝統ある秘密クラブ的な部活だからね。カシカシが知らないのも無理はない…………しかぁし! 実はカシカシも帰宅部の間では有名なのだよ」
「………………ごめ、情報過多すぎて混乱が」
存在してないはずの帰宅部内で俺有名なの?
いや、今の言い方なら帰宅部は秘密裏に存在してて、その秘密組織内で俺が有名ってこと?
ちがう、そもそもの論点がズレ過ぎてる。
「おーよー……ま、その辺は置いといていいかもね? とにかく、同じ部活の樅野ちゃんにお面好き女子櫻井さんの事を聞いて、カシカシと結び付けてみたと言う事」
「……あー…………とりあえず俺も訳が分からないことは置いといて、主題だけ話そう、うん。それで、えっと、あー……そっか、聞きたいことはちゃんと答えてくれてたか。経路はともかく、お面収集趣味のお友達がいる子に聞いたと」
「そ。樅野ちゃんは櫻井さんと仲いいみたいだからねー。で、そこから諸々つなぎ合わせるとって感じ。というかカシカシわかりやす過ぎだとおもうだわよ? ここ数日明らかに元気なかったのに今日は遅れてきたのにすっごく元気。多分私以外も何かあったと思ってる人はたくさんいるんじゃない?」
「あー…………」
確かに思い返してみると、ここ数日の俺はショックを引きづったままだからテンション低かったかもしれない。
「まあまあ、何にせよカシカシが元気になってくれてよかったよかった。じゃ! 私また他の教室行ってくるね!」
「あ、うん……いやまた急だな。……もしかして今度も何か調べたり?」
「え? 別に? 私はフラフラが趣味なのさ! この前はたまたま。帰宅部でも直帰部門じゃなくて寄り道部門だしねー。そいじゃ!」
「そですか……うん……」
――な、謎の部活、帰宅部はかなり大きい組織なのかな……? 部門分け……。
「そうだった! カシカシカシ!」
若干帰宅部について考えを巡らせていたところに、いなくなったはずの生島さんが急に戻ってきた。
「どぅお! びっくりした……そして一つ増えた……えと、なに?」
「んゃ、大したことじゃないんだけど、カシカシカシカシカシに朗報的な?」
「今度は三つも……朗報って?」
あとがき小ネタ
帰宅部簡易組織図
・直帰部門
《いかに早い自宅への帰還を測るタイムトライアル部門。自分自身との戦いを追及する人向け。個人主義の部員たちが多く在籍しているが、中には競うためにここの所属している部員もいる》
・寄り道部門
《心に残る寄り道を探し、定期的に報告し合い交流を図る部門。交流が主目的なので、中には他の部活と秘密裏に兼任している部員も多数》
・計測部門
《直帰部門の記録や、寄り道部門の報告のまとめ、そして正式に部に入っていない仮帰宅部員の観察、それらを一手に引き受ける部門。帰宅部最大人数の部門だが、ほとんどが他部門に在籍しつつ計測も手伝う部員ばかり。計測部門のみに所属している部員は希望が通りやすいとの事》
小毬ちゃんは計測部門。
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