53 T君
昨日の夜勤中、暇な時間職場で書き上げて、職場からなろうにログインするわけにはいかず、8時に上がって8時30分に家について、そしてWordからなろうに投稿。
ハイパー急ピッチ……ッ!
俺は本当にバカだ。
考えが足りないにも程がある。
交際するうえで、最も大事なことを――俺は、貰うだけで返していなかった。
「自分の無能さ加減に今更ながら呆れ果てるわ……」
改めて自分の気持ちをきちんと伝えた後、そんなことを思わず呟いてしまうほど自分のふがいなさにうなだれそうになる。
――好き。
この短い言葉を、心の中で想いはすれど、口には出していなかったことに今気づいた。
これじゃあ姫を不安にさせるのも当然だ。
「ほんとごめん。この言葉を言わないでさっきまでの話をされたって何も解決なんかしないよな………………うん、そうだ。まず根本から違うや……考え直して、じゃないわ……」
「え…………あ、あの……えと……鹿島君?」
姫に謝りながら、自分自身の根本的な間違いに気づく。
話しかけながら自問自答した形になってしまったので、姫を混乱させてしまってるのは申し訳ないが。
俺はそもそもがズルかった。
正体を知らない事を隠して正体を探るのも、ここに呼び出してまで姫に考え直してと懇願するのも。
なにより、最初の告白の答えも。
全部姫の行動に、俺が乗っかっただけなんだ。
だったら、今俺が本当にやらなきゃいけないことは、自分から行動することだ。
「……姫。改めて言わせてほしい」
「え……え、な、何を……」
「櫻井姫香さん。俺は、あなたが好きです……! 俺とお付き合いしてください!!」
当たり前の事だ。
好きなら自分から告白すればいいんだ。
せっかく手紙で呼び出して来てもらったのに、そんなことすら思い至らなかった。
どうやら俺は随分と姫に甘えていたらしい。
「うぇ……あ……え……?」
「いやほんと……話の流れがメチャクチャで混乱させてしまってるのは重々承知してるけど。俺が本当に言わなくちゃいけなかったのは、これだって気付いたから」
「ぁ………………」
「今回の事は、今までちゃんと言わなかったツケが回ってきたともう反省している……だからこそ、今はちゃんと、思っているだけじゃなくて口に出して言う。……姫の事が好きだ……もしも、あの時告白してくれた時と同じように、今もまだ俺に好意を持ってくれているなら……俺と、付き合ってほしい」
俺はあの時、告白してくれた姫と同じように、眼をつむり返事を待つ。
告白を口にするだけなら勢いに任せてしまったが、何とか出来た。
だが今、告白の返事を待つこの時間は、酷く長く感じ、息が止まりそうなほど苦しい。
改めて、あの日告白してくれた姫に尊敬と感謝の念が湧き上がる。
そしてどれほどの時間が立ったのかはわからないが、姫がゆっくり話し出す。
「私も……鹿島君の事があの日からずっと、好きで……本当は別れたくなんてなかった。でも……鹿島君が私の顔も名前も知らないで付き合ってると知った時、私は申し訳なさでいっぱいになった。鹿島君の優しさに甘えてるって」
「姫……そんなことっ――」
「でも! ……今の鹿島君の言葉を聞いて、それは違ってたってちゃんと理解できたよ……だから…………その、こちらこそ……よろしくお願いします!」
「っ!! ……ありがとう! ……よかったぁ……」
「……あ……えー、コホン…………むしろこっちからお願いしようか? なんちゃって」
「あ……」
それはあの日、俺が告白を受けた後に続けた言葉。
改めて聞くと随分調子に乗った返しだ。
――……いや、調子に乗ったと言うか、浮かれた返し、だな。
でもふと思う。
俺の勝手な想像だけど、姫もあの時の俺と同じように、無意識に浮かれた返しをしたんじゃないかと。
そう思うと無性に笑いと、姫への愛おしさがこみあげてきた。
「ふっ……あはは! ありがとう姫!」
「うわわ!! ……へぅえ!?」
喜びのまま姫を抱きしめる。
「……改めて、よろしくな……櫻井姫香さん……」
「あううううわ……う、うん! よろしくお願いします、鹿島大我君……! で、でも一旦、いったんタイム……! こ、こころの準備してない……!」
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ついでにやんわり布教も……(強欲)




