表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
馬面彼女~チェンジ可能!~  作者: 蛇真谷 駿一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/62

50 Hちゃん


 部活が終わり、ヘトヘトになった体を押して、もう体調を崩さないように身の回りのことを済ませて、やっともらった便箋を開いた。

「……」


 そこには一言『明日の朝、学校が始まる前に大事なお話があります。かつて大事なことを話した思い出の場所で待ってます』とだけ書かれていた。


 この文章には見覚えがある。


「……当たり前じゃない……私が書いたものにそっくりだもん……」


 違うのは、私の手紙では書き忘れた、名前がちゃんと入っていることと、私の手紙でははっきりしていた場所の指定が、この手紙はあいまいだったこと。

 私は場所を体育館裏に指定したけど、鹿島君の手紙には『かつて大事なことを話した場所』と書いてある。


「…………これって……やっぱり鹿島君にとっては、体育館裏って事……なのかな」

 手紙の文章を似せたこともそうだし、間違いないと思う。


「……顔も名前も知らない鹿島君にとって、私との思い出の場所はあそこだもんね……」


 でも、私にとって『思い出の場所』というのは、他でもない、あの図書室だ。


「鹿島君には……わからないよ……」

 そんなことを思いながら視線を落とす。

 すると、便箋にはもう一枚手紙が入っていることに気が付いた。

「……これは……?」


 開いてみると、そこには『追伸』と書かれていた。


「……『姫がどういう訳で別れを告げてきたのかはわからない。けど、一度だけ話をするチャンスが欲しい。一度でいい。もしももう一枚の手紙で書いた、思い出の場所に、誰も来なければ、話すらしたくないってことだと思うから、その時は潔く、諦める。でも、話すチャンスは、欲しい』………………」


 私はその手紙をそっとしまい、机にしまう。

 捨てたりなんか出来ない。

 でも――。


「どうしよ、かな……」

 思わず考え込む。


 これまでずっと鹿島君との接触は、DOORのやりとりでさえ避けてきた。

 それは、逃げていたんだと思う。

 だからこれは、ちゃんとお話するチャンスだとは思う。


「………………でも……怖い」

 理由や原因は、言葉に出来ない。

 一体何がどうなることを私は怖いと言っているのか、自分でもわからない。

 ただ、漠然と二人で話すことが、怖い。


 いつの間にか、枕に顔を押し付けてうつぶせになっていた。

 ゆっくりと体を起こして、何気なくコレクションの棚に目を向ける。


 そこに飾ってあった一つの物と、ふと目が合う。



「快頭……爛馬……」



 鹿島君との思い出が詰まったそのお面を少しの間眺め、私は――。



「……うん……決めた」


 ~~~~~~~~


 早朝、まだ朝練だって始まる前の学校に私は来ていた。

 お面は――被っていない。持ってきてもいない。

 快頭爛馬に頼り過ぎたから今までの状況だから、朝少し被って心を落ち着かせてた後、そのまま置いてきた。


 そして私は一直線にある場所に向かう。


「………………」

 図書室。

 そのドアの前に立ち、ゆっくりと深呼吸をした。


「すぅ…………はぁ……」


 手紙には、思い出の場所で待ってると書いてあった。

 つまり鹿島君は多分、体育館裏で待ってる。それはわかってる。

 そしてその場所に私が行かなければ、私と鹿島君との関わりがなくなってしまうのも、わかってる。


 でもやっぱり、鹿島君と大事なことを話した場所は――私の、鹿島君との始まりの思い出はこの図書室だから。



 ――私は決めた……ここで全部断ち切るって。




 そしてゆっくりとドアを開いた(、、、)



ブクマ感想評価お待ちしております!!


ありがとうございます!!←

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 鍵が…!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ