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馬面彼女~チェンジ可能!~  作者: 蛇真谷 駿一


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49/62

49 Hちゃん

あともう少し、Hちゃんの視点が続きます。


 あの後、私は風邪をひいてしまった。


 原因は走って帰ってきて汗もかいていたのに、そのまま寝落ちてしまったことなんだと思う。

 しかも変に長引いちゃって、一週間も休むことになってしまった。


 ――…………その間、大我くん――鹿島君からのメッセージは、全く開いていない。


 もしも届いたメッセージを見てしまえば、鹿島君からの言葉を目にしてしまえば、私はまた鹿島君の優しさに甘えてしまう気がしたから。


「週末にはある程度よくなってたけど、様子見て部活は休んだおかげで、今日は絶好調だね」


 ――体調は、だけど……。


 ~~~~~~~~


「おはよ!」

「おはよう! 姫ちゃんよくなったの!? よかった……よかったね……っ!」


「あはは、小毬ちゃん……難病から生還した人を相手にするみたいなリアクションだね……」

「だって姫ちゃんがそんな長いことお休みするの初めてだったから」

「そうだっけ……そうかも」


 思い返すと、割と皆勤賞取ってた気もする。

 ――今日、小毬ちゃんが妙に何か言いたげにしてるのはそのせいなのかな。



「おー姫、お勤めご苦労様でした!」


 難病から返ってきた後は、塀の中から返ってきたみたいな言い方された。

「英玲奈、もしかして喧嘩を販売しているの?」

「ひぇっ……た、ただいま売り切れとなっております……」


「そっか。再販したらすぐに教えて!」

「ごめんなさい!!」

「許します」


 全く。英玲奈は相変わらずバカみたいなことするんだから。

 ――でもなんだろう、今日はバカみたいなことしてるのに、たまに表情が真面目になるね。



「姫、おはよ」

「美琴おはよー! ………………………………」


「え、何?」

「あ、いや、二連続でおかしな出迎えされちゃったから、つい……」


「…………ああ! えっと……」

「ごめんごめん違うの! フリとかじゃないから! 小毬ちゃんは天然で英玲奈は頭可笑しいだけだから!」


「姫っ!?」


 後ろで英玲奈の声が聞こえた気がしたけど、今はスルースルー。


「とりあえず、元気になってよかった……でいいの?」

「えっ……も、もちろんだよ! まだ体調悪そうに見える?」


「……………………ううん、体調は……良さそうだね」


「…………うん」


 ――美琴は、知ってるよね。もちろん。

 鹿島君に一番近いところにいるんだから。


 でも私も美琴も、そのことには触れなかった。


 ――どこかで、話さなきゃいけないのはわかってる。





 その後は、いつも通りの――本当にいつも通りの時間が流れた。

 授業を受けて、四人でご飯食べて、余った時間でゲームとかして、そして放課後になった。



「…………よしっ、体も鈍ってるし。色々調整してかないとね!」

「姫」

「ん、美琴?」


 部活に行くのに廊下を歩いているとき、美琴に呼び止められた。


「……えっと……姫、病み上がりなのにこれから部活?」

「うん! 病み上がりって言っても元々金曜日くらいには体調戻ってたから、土日で万全に整えてきたよ!」



「そう…………………………あのさ、その前に少しだけ話があるの」


「……話?」


 いやな予感がした。



「……うん……あいつ――大ちゃんのこと」



「っ!! ご、ごめん、その、ギリギリだからもう行かないと――」


 美琴の言葉に、反射的にその場を離れようとする声が出てしまった。



 本当は自分でも、どこかでちゃんと話そうとは思っていた事なのに。

 ――本当は、少しずつでも先延ばしにしたいと思っていた事だから。



 でも、美琴は必死に私を引き留めた。



「待って! 別に姫から何かを聞きたいわけじゃない! ……ううん、本当は聞きたいけど、それは全部終わった後に聞く…………だから今は、これだけは受け取って」



 美琴が取り出したのはシンプルなデザインの便箋――手紙だった。

 差出人は、鹿島大我。


「これ、は……」


「本人はげた箱に入れるつもりだったみたいだけど、私が無理言って受け渡し役にしてもらった」


「……え……と……」



「………………とりあえず読むだけはしてあげてほしい。何があったとかは何も聞いていないから、全くわからないけど……読んで、それから判断してあげて……」



「………………う、ん……」

 美琴の真剣な顔を見て、少しのためらいの後、手紙を受け取り、部活に向かう。




 その日の部活。

 私は、部長や式見先生に怒られるまで、がむしゃらに走った。




 ――そうでもしないと、部活の間ずっと手紙のことを考えていそうだったから…………。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 気張れよ、大我君…!
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